第二次小説スーパーロボット大戦   作:L田深愚

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幹部退場回。


第十一話「ヤシャ、緑の地に死す」

 新兵器ソードトマホークとGアームライザーを手に入れたゲッターロボ號は、まさに無敵だった。

 破竹の勢いでランドウたちの野望を、強大なナルキスメタルビーストを打ち砕いてゆくその勇姿は、世界中の人々の希望だ。

 そんな中、大型台風が一週間も北海道に居座り広い範囲に被害を出すという異常事態の報せが入る。

 台風を引っ張ってどかすことができない以上、国防軍の救助活動の手伝いでもしようかと盛り上がる一同だったが、嘲笑と共にナルキス子爵とディアナが現れた。

「一文字君、君の頭はどれだけ鈍く出来ているんだい?」

 剴がすかさずレーザーガンを撃ち放つが、念動力に阻まれて効果が無い。

「考えればすぐにわかることだが、この大型台風は私が操っているということだよ。まあ私には気象さえ自由自在に操る力があるということです」

 煽るナルキスに號が歯噛みする。

「君たちはこの大型台風をどうするのかな? 楽しみに見させてもらうよ。ハハハハハハ……」

 

 ナルキスたちが光と共に姿を掻き消すと、台風の正体を知った號たちは弾かれたようにゲットマシンへ走った。

 

 暴風雨の荒れる空を突っ切り、晴れ渡る雲の上へ飛び出したゲットマシンは一路台風の目を目指す。

 果たして、そこに待ち構えていたのはローマにある真実の口か、メデューサの首をあしらったイージスの盾の如き形状の巨大な円盤メタルビーストだった。

 ナルキスの操るメタルビースト・デュボンの口から放たれる雷撃を躱し、ゲッター翔にチェンジした彼らだったが、逃げるデュボンを追って飛び込んだ雲海の中、不意打ちで浴びせられた雷撃。

 そして視界の利かない中撃ち込まれた本命のプラズマ弾が、ゲッターチェンジを不可能にした。

「カセットキーが!?」

 合体変形に必要不可欠な、音声コードを入力するためのカセットキーが、コンソールから強制的に排出されたのだ。

 プラズマ弾の電磁場に包まれたゲッター翔は、デュボンの裏から生える竜の首に嚙みつかれ海中へ引きずり込まれた。

 

「ゲッター翔が!!」

 NISARの面々が悲鳴を上げる。

 

「さあ、ゲッター翔には水遊びでもしてもらいましょうか……それとも、溺れてしまうかな?」

 強制的に排出されたカセットキーは、まるで同じ極の磁石のように反発し、どんなに押し込んでもソケットへセットすることができない。

 プラズマ弾の電磁場で、接続端子が磁化されてしまったのだ。

 こうなればもはや、ゲッター翔で水中戦を行うほかない。

「ブースターが……働かない!?」

 強電磁場はプラズマジェットにさえ悪影響を与えていた。

 推進機が不具合を起こしていては手足を使って泳ぐしかないが、そんなスピードでは丸鋸と化して迫りくるデュボンの高速回転を躱すことはできず、体当たりの餌食となる。

 ブレストボンバーは通じず、ストリングアタックも水の抵抗で届かない。

 

「ソードトマホークに対抗できないからって、こんな手に出てくるなんて……」

 

 水中ではゲッター翔の戦闘力は三十パーセントにまで低下する。

 M2改で助けに行こうにも、こちらも水中戦が得意なわけではないためミイラ取りがミイラになりかねない。

 このままゲッターは海の藻屑と化してしまうのか……?

 

「――――Gアームライザーだ!」

 

 ハヤトの一声で、セッティングされたGアームライザーがカタパルトから発進した。

 

 海中へ飛び込んだGアームライザーは、ゲッター翔を救い出すと空中へと躍り出る。

 再起動したプラズマジェット。

 よみがえったゲッター翔は、Gアームライザーと共に風雨荒れ狂う空を舞う。

 

「合体だ、翔!!」

 

「――――Gアームライザー!!」

 

 翔の声に応え、分離したプロテクターが背中のブースターへ、そして胸へと装着された。

 溢れんばかりのエネルギーが漲り、歓喜に吼えるエンジンがゲッター翔に超加速を与え、スーパーゲッター翔は一瞬にして雲を突き抜けた。

 発生したショックコーンが暗雲を噴き散らし、台風に大穴が開く。

 

「ソードトマホーク! ――――ゲッターツインキャノン!!」

 

 ゲッター翔の振り上げた左腕にプラズマがスパークし、二連装のプラズマ砲、G(ゲッター)ツインキャノンが装備された。

 雲海の穴の向こう、眼下に迫るデュボンを目掛け、真紅の女神が番える(いかずち)の矢が解き放たれる。

 

「今回は命拾いしたようですね、ゲッターの諸君」

 

 悪を裁く雷霆に射抜かれ、メタルビーストはゼウスに討たれたテュポーンさながらに打ち倒された。

 爆発の寸前、ナルキスとディアナは余裕の表情でテレポーテーションを行いデュボンの管制室から姿を消した。

 

□□□□

 

 ラセツ伯爵がバイオテクノロジーを駆使して、エネルギーを吸収し無限に成長する植物を作り上げた。

 植え付けられたロボット兵をたちまち内部から食い破り、人型の植木鉢にしてしまうというその成果に気を良くしたランドウは、エネルギーと情報の中枢たる日本の中枢部、東京への攻撃を命じる。

 機械であって機械にあらず、植物であって植物にあらず。

 ラセツの改造植物を組み込んだメタルビースト・ジュラが完成した。

 だが出撃直前、格納庫に音もなく影が忍び寄る――――ナルキスとディアナだ。

 空中浮遊したナルキスはジュラの内部へ潜り込むと、人工植物をコントロールする中枢細胞にペンダントから光線を照射、良からぬ細工を行った。

「東京もろとも消滅するがいいラセツ伯爵……むっ?」

 気配を感じ、姿を消すナルキスとディアナ。

 現れたのはヤシャ男爵。このままラセツの作戦を成功させてしまっては、手柄を立てる機会が永遠になくなるとメタルビーストを奪いにやって来たのだ。

 

「……馬鹿者が」

 

 馬鹿で扱いやすいヤシャはどうにでもなるが、ヒステリックだがなかなかに頭の切れるラセツが死んでくれれば楽になったものを……無断で出撃し、計画を狂わせたヤシャに、ナルキスは吐き捨てた。

 

 東京を襲撃するメタルビースト・ジュラ。

 伸ばした触手は鉄道の送電線を、ビルの電気系統を襲い、存分に電力を吸収する。

 成長して巨大になった植物メタルビーストは、さらに広い範囲に根を、蔦を伸ばし、エネルギーを吸収する獲物を増やしてゆくのだ。

 

「これは一体どういうことだ!?」

 ラセツが居るのに東京で暴れるジュラを見て、ランドウは困惑する。

 そういえばヤシャ男爵が見当たりませんね、と白々しく呟くナルキスに勘付いたラセツは、モニターに顔を出したヤシャへヒステリックに食って掛かった。

「おのれ! よくもわたくしのメタルビーストを!!」

「俺たちはいつまでもお前のかませ犬じゃない! いかに素晴らしい発明だろうが、操縦者の腕次第……実戦では俺たちの方が上だ!!」

 もはや交代する時間は無いと、ランドウはそのままヤシャに作戦続行を指示し、ラセツはやり場のない怒りに叫び狂った。

 

 大都市を襲う緑の恐怖。

 駆け付けたゲットマシンが機銃掃射を行うが、やはり効果は無い。

「フルパワーチャージング、セットアップ! チェーンジ・ゲッター號!!」

「ダブルナックルボンバー!!」

 合体し、降り立ったゲッター號の両拳が先制攻撃とばかりに飛んだ。

 直撃し、至極あっさりと千切れ飛ぶメタルビーストの両腕に號たちは訝しむ。

「やけに手ごたえが無いな……?」

 分析によると、あの触手のような部分はあくまでも植物で、G鉱石で出来ているわけではないらしい。

 電力を吸い上げ、見る間に再生した触手がお返しとばかりに勢いよく伸びてゲッターへ絡みつく。

 レッグブレードで切り裂こうとするが、追いつかないほど急速に成長してゆく植物体にゲッターは完全に絡めとられてしまった。

 

「よし、根を張るぞ!」

 

 足元の触手を束ねたジュラは、それをドリルのように回転させ地中へと潜り込ませる。

 地下鉄や、下水道を通じて繋がった遠隔地の送電網が被害に遭い、存分に大都市の電力をジュラは貪り巨大さを増していった。

 そして、その大電力はゲッターにも牙を剥く。

 触手の先端から放たれた電撃が、身動きの取れないゲッターを責め苛んだ。

 

「うわああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 シールドされた操縦席にさえ電撃が及び、三人の悲鳴が上がる。

 東京中の電力を味方につけた恐るべき高電圧、このまま喰らい続ければゲッターも長くはもたない……

 

「やったぞ兄者! ゲッターが伸びておるわ!!」

「ああ、弟よ……! 今こそ我らの勝利の時だ!!」

 

 幾度とない敗北の末、やっと転がり込んできた勝利のチャンスに歓喜し、ヤシャ兄弟は男泣きに泣いた。

 

 ────勝ち誇るヤシャの意識の外、エネルギーを吸っていた触手に花が咲いた。

 

「あれは……?」

「どうしたラセツよ」

「いえ、あの植物に花は咲かないはずだったかと……」

 その異状に、モニター越しに観戦するランドウたちの脳裏に疑問符が浮かび、ナルキスは僅かに表情を歪める。

 

 一方、NISARでは、怪植物の調査を行っていた帝都大学からの情報提供で、恐るべき事実が明らかとなった。

 

「────あの植物は、爆発します!」

 

 送られてきたレポートによれば、エネルギーを吸収しきった怪植物は、花を咲かせた後プラズマ放出を始め爆発する。

 その威力たるや、触手の全てが爆発すれば東京を吹き飛ばして余りあるほどだという……!!

 

「なんということだ……!!」

 

 モニターの向こうで、絶望のカウントダウンが始まったかのようにジュラ本体にも真っ赤な花が咲いた。

 

「號さん! 翔さん!! 剴さん!! 目を覚ましてください!!」

 由自の悲痛な叫び、そして遂に起こった爆発でゲッターに絡みついた触手が吹き飛び、気絶していた三人が目を覚ます。

 ハヤトから手短に説明を受け、事情を把握した三人はゲッターチェンジを敢行しようとするが、寸前で待ったがかかる。

 

「なんだよ! 時間がないんだろ!?」

「エネルギー量を計算しましたが、ゲッター剴で地下へ引きずり込むだけでは、爆発を防ぎきれません!!」

 下手をすれば地下での爆発で、地盤のあちこちに穴の開いた東京一帯が陥没してしまう。

 じゃあどうするんだと訊かれ、答えを引き継いだハヤトとポイント選定を終えた由自の声が揃う。

「Gアームライザーと合体して奴を根こそぎ引っこ抜き……」

「地下からこのポイントまで、一気に駆け抜けてください!!」

 

 そうと決まれば三人の行動は早かった。

 作戦会議の間、死んだふりで息を潜めていたゲッター號が分散し、ゲッター剴へとチェンジする。

 ゲッターを縛めていた触手が、見事に吹き飛んでくれたのが幸いした。

 

「ゲ、ゲッターが生きていただと!?」

 

 ヤシャの困惑を余所に、飛来したGアームライザーがプロテクターを射出、ゲッター剴の肩が、腕が真紅の装甲に覆われ、白い胸甲が輝いた。

 スーパーゲッター剴の誕生だ!!

 

「どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ドリルで地下へ潜ったスーパーゲッター剴は、ハープーンキャノンで本体ごと一纏めに貫いたジュラの根っこを引っ掴むと一気に地の底へ引き摺り込み、目標ポイント目掛けて駆け抜けた。

 

 大東京の一千万都民を救うため、唸るキャタピラ、吼えるモーター。

 例えこの身が砕け散ろうと、エンジンが吹き飛んでも、ゲッターロボは止まらない!!

 

 Gアームライザーの大パワーがゲッター剴に莫大な推進力を与え、地底を掘り進むスーパーゲッター剴は音速を突破した。

 

 瞬く間に到着した指定ポイントで、水柱を上げて出現したゲッターとメタルビースト・ジュラを出迎えたのは、新科学要塞研究所。

「ここは……」

「科学要塞研究所だと!?」

 グレート・マジンガーの基地として知られるその要塞は、NISARから受けた連絡どおりにバリアー発生装置を海上のメタルビーストへ向けた。

 

「よし、剴! 爆発はバリアーで抑える、ソードトマホーク武装で叩き潰せ!!」

 

「了解! ――――ソードトマホォーク!! G(ガイ)ハンマァァァァァァ!!」

 

 スーパーゲッター剴の拳の間で迸るプラズマが、鎖につながれた鉄球を創り出す。

 

「どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 生成されたハンマーの柄を掴み取ったゲッターは、勢いよく鉄球を振り回しジュラ目掛けて投げ放った。

「いかん防御だ!!」

「――――ぐぇああああ!?」

 その威力、やわな植物体で防ぎきれるものではない。

 防御姿勢をとった両腕を圧し潰しながら、Gハンマーは操縦席のあるジュラの本体を直撃し、内に秘めたエネルギーを電磁パルスとして解き放った。

 衝撃をもろに受け、苦悶の叫びをあげるヤシャ兄弟。

 だがスーパーゲッター剴の攻撃はこれしきでは終わらない。

 下半身を構成するゲッター1とゲッター2のシステムを切り替え、前後を向いたそれぞれのスラスターの片側全力噴射による水上超信地旋回!

 両手でしっかり握られたハンマーは、ネズミ花火さながらに火を噴いて回転するゲッター剴によってハンマー投げ競技の如く全身で振り回され、その絶大な遠心力を解放された。

 

「トドメだぁ! ――――Gハンマーッ!! クラァァァァァァァァッシュ!!」

 

「ランドウ様ぁぁぁぁぁぁ!」

「お許しをぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 高速で飛来した、高密度の質量兵器というシンプル・イズ・ベストな暴力の塊に操縦席を完全に叩き潰され、断末魔をあげるヤシャ。

 損傷した動力炉から漏れ出したプラズマエネルギーを浴びて、主の居た場所を埋め尽くしながら手向けの花が咲き誇る。

 操縦者を失ってもなお蠢くジュラの全身に、スパークが迸った。

 

「――――今だ! 光子力バリアー展開!!」

 科学要塞研究所設立当初から、所員として働き続けていた現所長が指示を出し、メタルビーストだった植物の塊は、爆圧を逃がすため真上だけを残してバリアーに囲われる。

 

 ――――爆発。

 

 轟音と共に、天高く火柱を上げて吹き飛んだメタルビースト・ジュラ。

 千切れ去り、東京のあちこちに残されたジュラの触手はエネルギーを失って枯れ果て、爆発することなくその赤い花びらを花吹雪と散らしているという。

 

「ヤシャ……我が、息子よ……」

 愚かでも、息子同然のヤシャ男爵を喪い、モニターから目を伏せたランドウは一筋の涙を流した。

 

「どうせならゲッターを道連れにしてくれればよかったものを……」

 その場を離れたナルキスは冷ややかに呟く。

 

 ――――ランドウ、せいぜい滑稽なピエロとして踊るがいい。

 

 ――――最終的な地球の支配者は、この私だ。




メタルビースト・ジュラ、原作だと地下に引きずり込めば無事に倒せたんですが、この世界だと光子力発電やらゲッター線発電やらでエネルギー有り余ってそうなので爆発もやばくなりそうだと思いこうしました。
スーパーゲッター翔、スーパーゲッター剴の武器は玩具オリジナルの付属武器です。
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