第二次小説スーパーロボット大戦   作:L田深愚

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見せてやるぜ……この世界での「国連決議・降伏せよ!!」をなぁ……!!


第十三話「ゲッターよ永遠に眠れ」

 蛇牙城(ベガゾーン)を掌握したナルキスとの、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 奴の目的は、人類支配にあらず。

 美しい地球そのものを我が物とし、神として君臨する事……!!

 そのためなら自然を汚す人類は不要とさえ言い切る。

 

 怒りに燃える一文字號は、真っ向からナルキスの挑戦を受けて立った。

 

 寒風吹き荒ぶ真冬のサロマ湖に襲来した氷の巨人、メタルビースト・ボルザスの脅威!

 ゲッターを遥かに上回る巨体に、いくら破壊しても再生してしまう氷の身体を攻略するには、奥に隠された本体を狙うしか無い。

 ナックルボンバーで砕いても、ブーメランソーサーで切り裂いても徒労に終わり、危うく冷凍ブリザードで氷漬けにされそうになる始末。

 

「こうなりゃソードトマホークでぶった斬って……ああっ!?」

 

 Gアームライザーを呼ぼうとする號だったが、ボルザスの放つ冷気は湖だけでなくビッグネイザー基地さえ凍らせてしまっていた。

 支援は望めず、ゲッター號では歯が立たぬと判断し、力に秀でたゲッター剴が立ち向かう。

 ボルザスの口から猛烈な勢いで超低温の冷凍ブリザードが放たれ、再びゲッターを氷漬けにせんとする。

 迎え撃つブレストビーム。

 超低温と超高熱の対決だったが、ボルザスの力は凄まじく、鋼鉄をも一瞬で融かす熱線も遂には押しやられてしまった。

 

「助けに行こうにも基地がこれでは……」

 

 Gアームライザーどころか、ゲッターM2改で救援に出ようにも、氷漬けにされたハッチはどうあっても開くことが出来ない。

 

「このままでは基地の機能は停止してしまう……!」

「もう停止してるニャン!!」

「ワン!!」

 

 基地内部へも冷気は及び、ポチとタマのワンニャンドクターなぞ、寒さに震え上がり丸々と着膨れしているほどだ。

 

「……早乙女研究所でも昔似たような事があったな……そうだ!」

 

 ハヤトは由自にGアームライザーの発進準備を指示すると、単身格納庫へ走る。

 ハヤトの操縦で逆立ちしたM2改は、脚部スラスターを全開で噴射し、凍りついたハッチをバーナーのように炙った。

 

 ────ドライスノー作戦。

 かつて百鬼帝国が行った、早乙女研究所攻略作戦の一つだ。

 溶けない氷に変わる特殊な雪を降らせ、ゲッター発進を封じるため研究所を氷漬けにしたはいいが、ゲッター線を照射しながらの加熱に弱いことを見抜かれ、ゲットマシンのスラスターをバーナーに転用されて失敗に終わった。

 

 そうこうするうちにゲッターM2改の全エネルギーと引き換えにハッチは解凍され、Gアームライザーの準備が整った。

 勇者の勝利の一助とならんと、キャリアーマシンが空へ舞う。

 

「ブレストビームでも、駄目なのか……? そうだ!!」

 

 剴が思い付いたのはソードトマホーク!

 かなりのエネルギーを消費するが、Gアームライザー無しでも使えないことはない。

 

「ソードトマホォォォォゥク!!」

 

 ブリザードに圧されながらも、どうにか生成したそれは起死回生の切り札となった。

 

「トマホーゥク! ブゥゥゥゥゥゥメラン!!」

 

 エネルギーを少しでも節約するために刀身を省略し、両刃斧へ変じたソードトマホークをゲッター剴は渾身の力で投げ放つ!!

 

 トマホークは見事にボルザスの首を断ち切り、ブリザードを止めることに成功した。

 

「Gアァァァァァァムライザァァァァァァ!!」

 

 この機を逃すまいとプロテクターを装着、ハープーンキャノンのアンカーがボルザスに突き刺さり、巻き上げられたワイヤーがスーパーゲッター剴とボルザスを密着させる。

 

「スゥゥゥゥパァァァァ! ブレストビィィィィムッ!!」

 

 胸部プロテクターで増強された赤熱光線が最大出力で迸り、氷の巨人をみるみる融かしてゆく。

 その熱は本体にも届き、ゲッターは見事勝利を掴んだ。

 

□□□□

 

 各国の大都市が映し出されるモニターへとナルキスが笑みを向ける中、全世界へ贈るプレゼントが蛇牙城を飛び立ってゆく。

 プレゼントの名はマグーラ。核に匹敵する威力の爆弾を内蔵した、自爆型の巨大メタルビーストだ。

 一度コイツが根を張れば、並のやり方での撤去は不可能。

 下手に振動を与えればそれだけで大爆発だ。

 都市を丸ごと人質に取られた愚かな人類が、どのように振る舞うのかナルキスは楽しみでならなかった。

 

 ――――モニターの中で、夜のロンドンへ向かったマグーラが火球と化した。

 

「――――何っ!?」

 

 いくら核兵器並とはいえ、この距離では大した被害は出ない。精々が窓が割れたり屋根や街路樹が吹っ飛んだ程度だろう。

 これをしでかした下手人とは――――

 

□□□□

 

「我が英国海軍が誇るゴッドタートルの力を思い知ったか!!」

 

 海中から迎撃ミサイルを放ったのは、英国海軍最新鋭のノンスクリュー潜水艦ゴッドタートル。

 かつてラセツ伯爵が各国の潜水艦のコントロールを乗っ取り、ゲッターへの盾にした事件でも被害に遭った艦だ。

 その戦いでは、艦首に搭載されたスーパーロボット、キングダム007(ダブルオーセブン)との共同戦線でゲッターは勝利を掴んだわけだが、遂にランドウ軍への逆襲の時がやって来た。

 監視衛星とリンクしたゴッドタートルは、北極圏から飛来したメタルビーストの反応とその正体を決して見逃さない!

 

 そして他の国でも――――

 

「テキサスナバロン砲、ファイア!!」

 

 アラスカに陣取って北極へ睨みを利かせ、北米の守りを固めていたテキサスマックの一撃が第二の太陽を生んだ。

 

「ジェネレーター出力異常なし!」

「ゲッターエネルギーチェンバー正常に加圧中……リョウさん、いつでもいけます!!」

「ゆくぞぉ! ゲッターレーザーキャノン!!」

 

 国防軍機関士コンビの、チビの古田と強面の団六が、クジラ2005Dの動力と直結されたレーザー砲のチェックを終え竜馬へ発射のゴーサインを出す。

 レーザー砲を抱えるゲッタードラゴンがトリガーを引けば、ゲッターエネルギーによって発生したレーザー光が迸り、地平線の向こうから顔を出したマグーラを爆散させた。

 

「超ウェポン砲発射ぁ!!」

 

 ソ連最大最強の火砲、超ウェポン砲が火を噴いてモスクワに迫るマグーラを粉砕した。

 

 スクランブル発進し日本海上空に陣取った、グレーのボディに青いラインのゲッターM1が、腹部に砲身型のアタッチメントを取り付けた。

 その先端は、まるでゲッター線収集アンテナのような十字に開いており、内側に膨大なゲッターエネルギーを蓄えている。

 

「ゲッターハイビーム発射ぁ!!」

 

 エネルギーを目いっぱい蓄えたゲッターコンデンサーが直結されるのと同時に、凄まじい威力の高出力ゲッタービームが放たれた。

 かつて初代ゲッターロボが洪水を食い止めるために山を吹き飛ばしたという、神の如き逸話の再現が、再び脅威を祓い日本を救う。

 ゲッタービームによる超長距離狙撃。

 東京を目指していたマグーラはゲッター線の奔流に飲まれ跡形もなく消し飛んだ。

 

「メタルビーストめ、思い知ったか!!」

 

 空になったコンデンサーが音を立ててリボルバーのように切り替わる。

 用心の為に次弾を装填しながらも、今までランドウ軍に散々煮え湯を飲まされてきた国防軍パイロットは、メタルビースト相手の初勝利に喜びを叫んだ。

 

 浅間山の早乙女研究所にもマグーラは迫っていた――――しかし。

 

「データ受信、目標発見目標発見」

「親分、照準完了しました」

「よしジョーホー! ゲッターナバロン砲発射ぁ!!」

 

 髭面オーバーオールの中年大枯文次と、ワインレッドのとぼけたロボット浅太郎、メガネをかけた丸坊主のチビ、ジョーホーの三人組が砲座に陣取りトリガーを引く。

 幾度となくメカザウルスを粉砕してきた早乙女研究所の誇る必殺砲、ゲッターナバロン砲が久方ぶりに活躍し、見事に危機を救ったのだった。

 三日間寝ないで作業し、衛星とのリンクを確立した努力の勝利である。

 

□□□□

 

「なんだこれは……なんだこれは!?」

 

 予想外の事態に、ナルキスは困惑を隠せない。

 なぜこうもあっさりメタルビーストが迎撃されるのだ!?

 今までだったら最初の被害を与えるまでは発見すらされなかったはずだ!!

 後ろのディアナも、いつも通りの無言だが「お可哀そうなナルキス様」とでも言いたげに憐みの視線を向けている。

 一瞬のうちに企みを粉砕されたナルキスを嘲笑うかのように、モニターがジャックされハヤトの姿を映し出す。

 

「神隼人……!!」

 

「お前さんの頭はどれだけ鈍く出来ているんだい? 今まで散々騒ぎを起こしておいて、警戒されないわけないだろうが」

 

 かつてナルキスが號へ言い放った嘲りがブーメランとなって帰ってきた。

 端正な顔が怒りに歪み、カッと赤く染まる。

 

 手品の種はこうだ。

 度重なる各国へのメタルビースト被害に業を煮やした国連は、遂に監視衛星網スペースアイの使用に踏み切った。

 

 かつて宇門博士が開発、提唱し、ベガ星連合との戦いで活用しようとした監視衛星網だったが、恩師シュバイラー博士に成りすましたベガ星のズリル長官の策略で一度は廃案に追い込まれてしまう。

 だがその後、救出された本物のシュバイラー博士の尽力により、スペースアイは再び対侵略者用の防衛設備として採用されたのだった。

 

「全地球規模の監視衛星だと……? そんな……そんなもので私の作戦が見抜かれるなど……」

「かれこれ二十年近く悪党どもと戦い続けてる俺たちの経験を、甘く見ないこったな」

 

 スペースアイのセンサーは、たとえ異星人のマシンだろうと見つけ出す優れもの。

 同じ地球の、同じ時代のマシンを見つけ出せないわけがない。

 そして、優秀なセンサーと高性能のコンピュータが爆弾の存在を瞬時に見抜き、各国に通達したのだ。

 

「すぐにでもお前さんのところまで殴り込みに行ってやる――――首を洗って待ってるんだな」

「おのれえええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 通信が切られるのと同時に、怒るナルキスの拳がアームレストへ叩きつけられる。

 ――――最終決戦はすぐそこだ。

 

□□□□

 

 アラスカ、シベリアの二か所から合流した二機の大型輸送機クジラ2005Dが、蛇牙城目指して北極の空を行く。

 その腹に抱えるのは、三大ゲッターロボにZ、グレートのダブルマジンガー、米ソ両国のスーパーロボットという鉄鋼軍団だ。

 中には囚われの科学者たちの救出に志願した、吉井レミの姿もある。

 かつて囚われていた故に内部の構造をある程度は把握しているとはいえ、当然任務の危険さから参加を渋られたが、號たちは彼女の熱意に折れGアームライザーのキャリアーマシンを任せることになった。

 

 そして不測の事態に備えてということもあるが、ビューナスを含むスクランブル騎士団と、水中戦闘がメインのキングダムは留守を任されている。

 

 クジラが蛇牙城を目視できるところまでたどり着くと、鉄鋼軍団を無数のメタルビーストが出迎える。

 大半は量産された同型機だったが、中には今までに倒された機体とそっくりなものも何十体と確認できた。

 かつてネパール基地でヤシャ男爵が研究し、基地壊滅の折りにナルキスが設計データを拝借していった強化型メタルビーストだ。

 

「ゲッターチーム! ここは俺たちに任せて先に行け!!」

 

 すぐさま発進した鉄鋼軍団は、氷の大地を踏みしめて鋼の魔獣たちに飛び掛かった。

 バロソフのテリブルサンダーが、グレートのサンダーブレークが突破口を開き、七機のゲットマシンとゲッターウイングを翻すゲッターM2改が駆け抜けてゆく。

 

 続いてマジンガーZのミサイルパンチが、ステルバーのミサイルが立ちふさがる敵を吹き飛ばし、パスチャーキングに跨って空を駆けるテキサスマックがシールドからのテキサスビームで、手にしたテキサスハンマーで空から陸からメタルビーストを薙ぎ払った。

 

 敵の数は、一向に減る様子はない。

 

 蛇牙城まであと一歩というところで、またしてもメタルビーストが現れた。

 いかにもパワータイプであると言いたげな、巨大な刃を頭に頂く太い手足の機体だ。

 ゲットマシンはそれぞれスーパーゲッター號とゲッタードラゴンへ合体し、ゲッターM2改と共にメタルビーストを迎え撃つ。

 

「このメタルビースト・アドロボスは蛇牙城の守護神……私との決戦はアドロボスに勝ってからだ」

 

 ナルキスの送り出したメタルビーストとの戦いをゲッターに任せ、レミの乗るキャリアーマシンが科学者救出に向かった。

 

「G鋼剣! ソードトマホーク!!」

「ダブルトマホォォォォゥク!!」

「ドリルアァァァァム!!」

 

 二振りの刃とドリルが振り下ろされるが、アドロボスの身体はゴムのように伸縮し、ゲッターの力でも切り裂くことができない。

 ならばビームはどうかと思えば、頭部の刃が大ぶりな両刃斧と化しゲッタービームを切り払う。

 

「アドロボスは身体を構成する物質を瞬時に変えられる。果たして君たちに倒せるかな?」

 

 切ろうが突こうが傷つかず、煮ても焼いても食えないと號が評する強敵に、三体のゲッターは如何にして立ち向かうのか……?

 

□□□□

 

 蛇牙城に突入しようとするキャリアーマシンだったが、猛烈な対空砲火に晒され奮戦むなしく撃墜されてしまった。

 それを見て、蛇牙城には何者も侵入できぬとほくそ笑むラセツ伯爵は、警戒をロボット兵たちに任せ一人管制室を離れる。

 レーザースキャナーがラセツ本人であることを認証すると、厳重に封鎖されていた扉が開き奥へと主を招き入れた。

 

 そこに広がっていたのはメタルビーストの製造工場。

 囚われた科学者たちが作業を命じられ、漁夫の利を得んとするラセツのためのメタルビーストを造らされているのだ。

 不意に、設備のコンピュータが光を放ちランドウの姿を映し出した。

 肉体は死んでも魂は死なず!

 そう豪語するランドウは、ラセツの肉体に宿り蘇った。

 胸元にあるはずの男の顔がランドウのそれに変わり、ラセツは悲鳴を上げる。

 

 ランドウは、ラセツに命じてとある場所へと足を運ばせた。

 

「メタルビーストなど要らぬ! 蛇牙城ごと戦うのだ……ゲッターを倒し、ナルキスに復讐を……!!」

 

□□□□

 

「――――物質を変化させているなら、必ずどこかにそれを制御するコンピュータがあるはずです!」

 

 流石は守護神と呼ばれるだけあり、アドロボスは強敵だ。

 だが決して勝てない相手ではない。

 ゲッタードラゴンが二振りのトマホークで大斧を抑え込む中、由自のアドバイスでゲッター號の頭部センサーがアドロボスの弱点を探り出し、背面に回ったM2改のドリルアームが制御コンピュータごとアドロボスを貫いた。

 

「――――號さん! こちらレミ、蛇牙城への侵入に成功しました。救出が終わるまで攻撃は待ってもらえませんか?」

「レミちゃん!」

 

 間一髪脱出に成功し、徒歩で蛇牙城へ侵入したレミからの通信が入る。

 Cブロックにて脱出用ポッドを確認、そのまま人質を探し出すつもりらしい。

 ロボット兵に発見されぬよう、レミは通信機のスイッチを切ってしまったが、號たちは彼女を援護するべく蛇牙城内部へ突入せんとする――――その時!

 

 蛇牙城の髑髏が地響きを立てて動き出し、機動要塞ベガゾーンと化したのだ。

 

 ランドウの求める場所へたどり着いたラセツは、中枢コンピュータと一つになったランドウに用済みの不要な部品と切り捨てられ、失意の底に沈んだ。

 父と慕っていたのに、今まであれだけ尽くしたというのにこの仕打ち……もはや心の砕けたラセツは何をする気力も残されていない。

 

「我が名はプロフェッサー・ランドウ! 地獄から蘇りし者!!」

「ランドウ……?」

「死んだんじゃないの!?」

「あれが、奴の新しい肉体なんだ!!」

「じゃああの巨大髑髏が、ランドウだっていうの!?」

 

 驚愕するゲッターチームを他所に、上空のラビュリントスからベガゾーンを見下ろすナルキスはランドウの執念に感心していた。

 

「私はランドウを見くびっていたようだ……私からの復活祝いをくれてやろう」

 

 降り注ぐ凄まじい威力の火球、ビーム……たちまち周囲が爆煙に包まれ、余波だけでゲッターたちは吹き飛ばされてしまう。

 

 だが煙が晴れると無傷の機動要塞が顔を出した。

 

「何っ!?」

「ナルキスよ……お前は所詮神の掌で遊ぶ小童……思い知るがよい」

 

 髑髏の眼窩から、返礼のビーム砲が迫り出しラビュリントスを射抜く。

 そのたった一撃で、あまりにもあっけなく浮遊要塞は崩壊し、見るものすべてにランドウの力を見せつけた。

 

「くたばれ! ゲッター共!!」

 

 ビーム砲が次々に氷原へ着弾し、爆風に煽られたゲッターの巨体が木の葉のように舞う。

 弱点は無いのかと必死に要塞を分析すると、顎の下の装甲が薄いことが分かった。

 ゲッターGはライガーにチェンジし、スーパーゲッター號とM2改はブースターを全開にして内部へ突入する。

 ゲッタードリルが、ソードトマホークが外壁を切り裂いて足を踏み入れるが、飛びだして来たワイヤー触手が彼らを拘束し、電撃を浴びせた。

 

「この程度か、他愛もない……」

 

 この要塞はランドウそのもの……内部で何が起ころうがすべてお見通しなのだ。

 

「叩き壊してやらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ランドウの嘲笑に號が吼えた。

 ソードトマホークが、変形して引き抜いた腕が投げ放ったブーメランがワイヤーを切断し、ライガーミサイルがワイヤーの基部を吹き飛ばす。

 

 ワイヤー地獄を脱したゲッターを続けて襲うのは、おびただしい迎撃ミサイル!

 チェンジしたドラゴンのゲッタービームが撃ち落とし、間に合わないものは切り裂いた床板を引っぺがして即席の盾にしてやり過ごす。

 

 そうこうするうちにレミがAブロックに囚われていた科学者たちと接触、Cブロックの脱出用ポッドへ誘導を開始したと連絡が入る。

 

「號さん、脱出の援護をお願いします」

「わかった! すぐそっちに向かう……無理するなよ、無事にまた会いてえからな」

「ええ!!」

 

 脱出作業が進み、號たちもカタパルトの位置を確認した。

 だがレミは他にも残された人がいないか確認すると言って聞かず、またAブロックへ戻ってしまった。

 射出される脱出ポッド。

 逃がしてなるかと起動した対空機銃からポッドを守るため、ゲッターたちは身を挺して盾となる。

 パルスレーザーの驟雨が全身を叩くが、怯むわけにはいかない。

 ここで一歩でも下がれば、それだけ人々が危険に晒されるのだ。

 鋼の砦が、不滅のマシンが、無敵のロボが、それを許すわけにはいかないのだ。

 

「誰かぁー! 誰かいませんかぁーっ!?」

 

 逃げ遅れた人を求めて走っていたレミが、ようやく見つけた人影――――それはあてもなくトボトボと歩くラセツだった。

 反射的に銃を向けるが、私はお前の父の仇だ、撃ちたければ撃てと投げやりで、まったく覇気が感じられない。

 誰に聞かせるでもなく語りだしたラセツの身の上を耳にしてしまったレミは、もう怒りに任せて彼女に銃を向けることなどできなかった。

 父に捨てられた哀しい娘に、どうして追い打ちをかけられようか。

 

 ――――遠雷のように轟く爆音。

 各部を吹き飛ばし、ベガゾーンを揺るがすまでに強まったそれが、遂に二人の居るエリアの天井を崩落させた。

 

□□□□

 

「何だ……? 何が起こっている!? ワシの、ワシの身体が!!」

 

 ベガゾーンを内部から破壊し始めたのは、生きていたナルキスだった。

 ランドウの宿る中枢コンピュータの下へやって来た彼らは、雌雄を決さんと激突する。

 

 かたやワイヤーアンカーと化し、弾丸の速度で迫る接続ケーブル。

 かたや霊石ゴッドストーンのもたらす人知を超えた超能力。

 

 ナルキスの頭蓋を打ち砕かんと迫るケーブルが、寸前で音もなく静止した。

 一瞬の間を置いて、ランドウの絶叫と共に中枢コンピュータは回路をズタズタに破壊され、その機能を永遠に停止した。

 衝撃波の如く叩きつけられた念動力の勝利だった。

 

□□□□

 

「レミちゃん! もういい!! 早く脱出するんだ!!」

 

 ベガゾーンの爆発を知り、號は悲鳴のように通信機へ呼びかける。

 だがレミは、瓦礫の下敷きになったラセツをなんとしても助けたいと言うのだ。

 そんな奴は放っておけと號が叫ぶが、彼女は救出の手を休めない。

 

「信一君、由自、悪いがお前らの命――――俺が預からせてもらう!!」

「了解です!!」「構いませんとも!!」

 

 リョウたちが止める間もなく、ゲッターM2改は全速力で要塞の奥まで突っ走った。

 

 ――――レミちゃん……吉井博士を、君のお父さんを救えなかった俺に出来る、唯一の罪滅ぼしがこれだ!

 君の命は、なんとしても俺が守る!!

 

 敵であろうとも手を差し伸べる人間の優しさを、美しい心を知り、ラセツは涙した。

 どうせなら作り物の、機械と生物の融合体などではなく人間に生まれたかったと嘆く。

 

「あなたは心のある人間よ……決して作り物なんかじゃないわ!!」

 

 レミの言葉に救われたラセツ――――だが無情にも炎は二人の下へも迫ってくる。

 

 死の恐怖に思わずあがる悲鳴。ラセツはせめてもの盾になろうとレミに覆いかぶさる。

 

 ()()()()()()()()()と共に、二人の居た場所は爆発に飲み込まれた。

 

 ランドウを滅し、上空にテレポートしたナルキスは、トドメとばかりに最大出力の念動光線をベガゾーンへ撃ち込んだ。

 裁きの雷さながらのそれを受け、不滅に思えた機動要塞は跡形もなく炎に消える。

 

「レミちゃん……レミィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」

「兄さああああああああああああああああああああああああああん!!」

「由自ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「ハヤトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

 遅れてM2の後を追うが、間に合わず爆風に吹き飛ばされるダブルゲッター。

 そのまま氷原に叩きつけられた六人は、目の前の光景を信じたくないと炎に消えた友へ、兄へ、淡い恋心を抱く少女へ喉も裂けよと絶叫した。

 

 ――――不意に、ドラゴンの目の前にドリルが生えた。

 分厚い氷を割り砕き、装甲を罅だらけにした満身創痍のゲッターM2改が姿を現して、仲間たちが驚愕と喜びに声を上げる。

 

「俺たちも、レミちゃんたちもご覧の通りピンピンしてるぜ!」

「馬鹿野郎! 心配させやがって!!」

「足は付いてるか? おばけじゃねえだろうなぁハヤト?」

「兄さん……無事でよかった……」

「信一さんも、由自も博士もみんな無事だったか……!」

 

 號も、涙をぬぐい口を開く。

「レミちゃん……おかえり」

 気を失ったレミの返事は無い。

 だが彼女が無事ならそれだけでよかった。

 

「元気、選手交代だ――――奴さん、お出ましのようだぜ」

 

「流石はゲッターチーム……あの爆発から生き延びるとは」

 

 見れば収まりつつある爆炎の中に、メタルビーストと思しき影が浮かび上がっている。

 悪鬼の首に腰掛けた仏――――菩薩でも如来でもなく、明王や天部の様な勇ましい姿のそれを思わせる機体が、不敵な笑みを浮かべてこちらを見下ろしていた。

 ナルキス最後のメタルビースト・カローンだ。

 ギリシャ神話に名を連ねる冥府の川の渡し守の名を冠するとは、ゲッターロボへの死神を気取ろうというのか――――

 

 速やかに乗り換えを済ませたハヤトが、久々にライガーのシートへ座り操縦桿を握る。

 損傷したM2改は、レミたちを乗せているため安全な場所へ下がらせた。

 

「ここが正念場だ……皆、行くぞぉ!!」

『――――応!!』

 

 竜馬の声に、全員が唱和した。

 

 ランドウが滅んだ今、ナルキスさえ倒せばすべては終わる。

 この地でつい先ほど、敵と味方の、人間と被造物の垣根を超えた、本来手を取り合うはずのない命が溶け合う奇跡が起きた。

 奴に負けてしまうのは、そんな奇跡を、優しさを踏みにじることと同じだ。

 

 そして人の命を何とも思わないナルキスに地球を明け渡すなど、一文字號が、その仲間たちが、ゲッターロボが許さない!!

 

「ダブルトマホーゥク! ブーメラン!!」「ブーメランッ! ソーサー!!」

 

 投擲された刃が飛んだ。ナルキスは慌てることなくそれを念動力で受け止め、投げ返す。

 スピンカッターが、レッグブレードが繰り出されるが、どうあってもカローンに刃が届かない。

「私に刃を向けること自体が間違いなのだよ……私は身の程も知らず、無謀にも向かってくる君たちが好きだ」

 そう嘯くナルキスに、ゲッターチームの怒りが燃える。

 子供をあしらう大人を気取った奴に、目に物見せてやる!!

 

『ゲッターチェンジだ!!』

 

 二機のゲッターが分散し、超高速でフォーメーションを変える。

 

「チェーンアタック!!」「ストリングアタック!!」

 ゲッターライガーとスーパーゲッター翔が、チェーンアンカーとビームリボンを振るう。

 ナルキスに受け止められ、逆に投げ飛ばされるものの、二機は空中で態勢を整え逆襲に打って出る。

 

「「マッハコンビネーション!!」」

 

 ゲッターの速度が瞬時にトップスピードに達した。

 残像を残し幾重にも分身して見えるほどの超機動でカローンを襲うドリルの連撃、そしてミサイル。

 ナルキスも防戦一方で、ガードを固めるしかできない。

 そこへ瞬間移動でもしたかと錯覚するタイミングで目の前に出現した、ライガーミサイルとブレストボンバーが炸裂し、ナルキスの視界を奪う。

 

「ええい、このような子供だまし――――何っ!?」

 

 背後に出現したのは、(ゲッター)ツインキャノンを構えるスーパーゲッター翔。

 プラズマ弾を間一髪サイコバリアーを張って防ぐナルキスだったが、既にゲッターは目の前から姿を消していた。

 

「ストロングミサァーイル!!」「インパクトキャノン!!」

 

 チェンジし、ミサイルを発射するゲッターポセイドンとスーパーゲッター剴。

 ミサイルの軌道が捻じ曲げられ、同士討ちしてまたしても視界が爆炎に染まる。

「同じ手に二度は――――!?」

 曲刀を手に振り向くも、周囲には誰も居ない。

 ドラゴンにチェンジし、天空から降り注ぐゲッタービーム、そして足元の氷をブチ割ってしがみつくスーパー剴のスーパーブレストビーム!!

 

「おのれえええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 念動防壁サイコバリアーで屈折させたビームを互いへ撃ち返し、どうにか追い払う。

 再びチェンジしたライガーのドリルを機体ごと投げ飛ばして氷原に叩きつけ、斬りかかってきたスーパー號のソードトマホークを微塵に砕く。

 

 徐々に、無敵を誇ったナルキスの超能力が精彩を欠き始めてきた。

 

「この私を……ここまで消耗させるとは……!!」

 

 そう、ナルキスの超能力も無限ではない。

 機械ではなく生身の人間であるなら、使い続ければいつかは消耗するのだ。

「やっと疲れが見えてきたか……!!」

 ヘルメットの風防が割れ、血を流しながらもハヤトは不敵に笑った。

 

 ゲッターの消耗も激しい。

 遠くないうちにこちらのエネルギーも尽きるだろう。

 

 ドラゴンへチェンジ、マッハウイングを伸ばし、トマホークを居合切りのように構える。

 スーパーゲッター翔にチェンジ、ドリルを構え、弓を引き絞るように背部ブースターの出力を上げる。

 F1レースのスタートのような緊張感を湛えた一瞬の間の後、弾かれたようにカローンへ襲い掛かる二機。

 

「私を……舐めるなああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 最大規模の念動力が二機の突進を押し留め、ドラゴンの巨体を吹き飛ばした。

 ゲッター翔の纏うGアームライザーが砕け散り、それでも届けと突き出すドリルを掻い潜りカローンの剣が胸を貫く。

 かろうじて操縦席は逸れた――――こちらの勝ちだ。

 

「捕まえたわ!!」

 

 右手のGトルネードが排除され、顔を出すマニピュレーターが胸を刺すカローンの腕をしかと掴む。

 ゲッター1と3が分離、ゲッター號へチェンジする。

 

「――――ソードトマホォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォク!!」

 

 アームライザー無き今、残されたエネルギーすべてを託した必殺の剣。

 もはやG鋼剣とも言えぬ、ただのプラズマの塊。

 実体のないエネルギー剣と成り果てた、されど一文字號の、ゲッターチームの、勇気と愛のすべてを込めた光の刃が振り下ろされ、カローンを一刀両断した。

 

 そこで完全にエネルギーが尽き、動きを止めたゲッター號の計器が光を失う。

 

 かろうじて両断を免れたナルキスは、吹きさらしとなった操縦席から號へ問い掛けた。

 

「私は負けたのか……? 教えてくれ一文字君! 何故……何故そこまで私相手に立ち向かってこれたのだ!?」

「人を愛しているから……お前がちっぽけと嘲笑う、人間を愛しているからだ!!」

「たった……それだけのことで……?」

 

 問いに一片の恥じらいもなく堂々と答えた號に、ナルキスは感嘆した。

 もう長くはない。カローンごと真っ二つになるのだけは避けられたが、メタルビーストの破片がゴッドストーンを貫き、胸にまで深々と刺さっている。

 真っ赤な血が止め処なく流れ続け、彼の赤い衣装をじっとりと濡らす。

 そこへゲッタードラゴンが歩み寄り、ハヤトが口を開いた。

 

「神、隼人か……」

「どうだナルキス、人間の底力ってやつを思い知ったか」

「ああ……完敗だとも」

 

「あの世でランドウたちに詫びを入れるんだな……お前さんみたいな色男が増えたら、パリアッチョやゴールにブライ、ギャラハンなんて化け物揃いの地獄もちっとは華やかになるだろうさ」

 

 ────ハヤトのその言葉を、ナルキスは聞き逃さなかった。

 

「待て……何故お前がその名を知っている!? あの御方の……ギャラハン様の名前を!!」

 

「かまをかけたらドンピシャだったか」

 予想が外れていなかった事を知ったハヤトは、笑みを浮かべて言い放つ。

「闇の帝王ギャラハンと、直接戦って最期を見届けたことがあるからに決まってるだろうが……お前さんがミケーネの手のものだってのはただの予想だったがな」

 

 ナルキスは、出血で朦朧とする意識の中狂ったように笑い続けた。

 

「これは傑作だ……! あの御方が死ぬはずがないだろう……!! この私以上の超能力を持った、不滅の肉体のあの方が……ハハ……ハハハ……」

 

 遂にナルキスは力尽き、こちらを射殺さんばかりの視線を向けるディアナが、母親が子を守るように彼の遺体を抱きしめる。

 ナルキスの亡骸を離そうとしない彼女の全身から、オーラのような光が立ち昇った。

 全身が光に包まれた二人は、まるで昇天したかのように跡形もなく消えて無くなる。

 

 主に殉ずるように、真っ二つにされたカローンの残骸が盛大に爆発した。

 

 向こうでも片が付いたのだろう。

 グレート・マジンガーを筆頭に、メタルビースト軍団を蹴散らした鉄鋼軍団のスーパーロボットたちが駆け寄ってくるのが見える。

 

「酷え有様だぜ、メタルビーストの残骸で北極が白く見えねえ」

「黒が七分に白が三分か?」

「こいつは大掃除しないと環境保護団体にどやされちまうな!!」

「そりゃあ大変だ! ヒーローがそんなじゃ、子供らにも顔向け出来ねえや!!」

 

 晴れ渡った北の空に、戦士たちの笑い声が響き渡った。

 

 北極のG鉱石と、人類の平和と尊厳を懸けた、プロフェッサー・ランドウたちとの戦いはここに終結したのだ。

 

□□□□

 

「ラセツ……やはり行ってしまうのね」

「レミ……わたくしは、罪を重ねすぎた。せめてもの償いに行かねばならない」

 

 北極の氷の裂け目に、かろうじて無事だったジャイガン・シンが浮かぶ。

 彼女は號たちにとって憎むべき敵の一員だったが、レミとハヤトが全身全霊で救った命でもある。

 ならば法の裁きを受けさせるのかというと、この世界に人造人間を裁く法は無いし、作り主のランドウは既に滅んでいる。

 そこで協議の末、潜水艦ジャイガン・シンを鹵獲したという(てい)で、ラセツには闇の帝王たちの調査を手伝わせることにしたのだ。

 

「ラセツ……! レミちゃんを悲しませるような真似だけはするなよ!!」

「無論だ、一文字號……そちらもな」

「あ、当たり前だ!!」

 

 悪事を働いていた時からは想像もつかない柔和な笑みを浮かべるラセツは、ジャイガン・シンに乗り込むとレミやゲッターチームに別れを告げ、深く深く海の底を進んでゆく。

 海面に透ける魚影を、レミとその肩を抱く號は見えなくなるまで見送っていた。

 

□□□□

 

 ────一年後。

 遂にNISARから、號と剴、リーダーの信一、そしてメカニックとして翔と、完成した作業用ゲッターロボを載せたシャトルが打ち上げられた。

 G鉱石製の頑強なボディ、ドリルやワイヤーアンカー等のオプション装備が充実した橘式ゲッター・GT−Rは、マジンガーと同程度の二十メートルという取り回しのいいサイズから、繊細な作業に向いていると判断された。

 

 そして號たちは、月の裏側での採掘試験中にジャパニウムの鉱脈を図らずも掘り当ててしまうのだが、それはまた別の話。




東映版ハヤトの居る東映版ゲッターロボ號、完!!
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