第二次小説スーパーロボット大戦   作:L田深愚

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真ゲッターロボ、発進!!


第三章 ゴッドマジンガー対真ゲッターロボ
第十四話「甦れ真ゲッターロボ」


 ランドウ軍との戦いが終結し、一文字號たちNISARの面々が宇宙へ飛び出してから半年ほどが経った頃、早乙女研究所へ詰めかけた記者たちの前で早乙女博士が新発明の発表を行っていた。

 七十年代から九十年代へ、小学生だった次男の元気が成人し、長女のミチルに孫が産まれるという時の流れの中、かつての黒々とした髪も髭も、今やすっかり真っ白になっている。

 

「どうも、早乙女研究所所長の早乙女博嗣(さおとめ・ひろし)です。今回完成したのはゲッター線核分裂反応炉……通称ゲッター炉と申しまして、ゲッター線を宇宙からの収集に頼ることなく自前で発生させるという装置であります」

 

 焚かれるフラッシュ、飛び交う質問。その一つ一つに博士は丁寧に答えてゆく。

 頓珍漢な質問を繰り出す素人記者なんぞではなく、きちんと勉強してきている科学ニュース専門の記者は面倒が無くていい。

 

 ゲッター炉――――高濃度のゲッター線によってゲッター放射性同位元素と化した金属を加工した燃料ペレットへ、ゲッター線増幅装置による高出力ゲッタービームを打ち込むことでゲッター核分裂反応を起こさせ、発生する膨大なゲッター線を利用するというもので、基本的な構造は通常の原発と変わりないがゲッター線は専用の発電機で直接電力に変換できるため、お湯を沸かしてタービンを回す必要はない。

 おまけに燃料ペレットの原料も、希少価値のないありふれた元素で十分賄えるというから驚きだ。

 もっとも、発電所として利用するなら発生する熱を無駄なく使用するためにタービンを併設することになるだろうが。

 

 ゲッター線は宇宙から無尽蔵に降り注ぐハイパワーなクリーンエネルギーだが、永遠にそれが続くとは限らない。

 宇宙の自然環境に異変が起これば、たちまち供給が止まってしまうかもしれないのだ。

 この日、人類は自らゲッター線を生み出す力を手に入れた。

 

「博士……遂に完成しましたね……!」

「ああ! これを完成させるために、ゲッタードラゴンをどれだけ実験機材として酷使してきたか……」

 

 取材陣が去った後、早乙女博士は娘婿の隼人と共に格納庫へ足を運んでいた。

 空戦形態ゲッタードラゴンの状態でそこに安置されている、ゲッターチームと長年苦楽を共にしてきたゲッターロボGの隣に、新たなゲッターロボが聳え立っている。

 身長はドラゴンと同じくらい、頭部は初代ゲッターのゲッター1の流れを汲む真っ赤な二本角だが、胴体の形状は大違い。

 上へ張り出した大きな肩に、細く締まった腕から幾重にも生えた巨大な刃。

 マント状ではなくコウモリを思わせる羽根を背負った紅白の胴体は、逞しさはあるものの、曲線を主体としたつるりとした印象で、今までのゲッターはまっすぐな円筒だった脚部も、より太くなり樽のようなカーブを描いている。

 

 ――――その名は真ゲッターロボ。

 

 かつての世界で臨界状態の超高エネルギーゲッター線、真ゲッター線を動力とするために建造されたものの、暴走事故を起こして研究所を壊滅させ、博士たちを死に追いやった悪魔のマシン。

 

 未来世界でクローン武蔵たちを乗せ、複製されたゲッター號と共にパリアッチョが繰り出し、圧倒的な力でゲッターGを苦しめた末にかろうじてシャインスパークで倒された。

 そんないわくつきの機体が、ゲッター炉を得て人類の希望として生まれ変わったのだ。

 

□□□□

 

 早乙女博士の発表から半年後、月面で行われていた一年に渡るGT−R運用テストが終了し、信一と號翔剴のNISARの面々は、大量のジャパニウム鉱石というお土産と共に地球への帰路に就いた。

 

「いやあ~地球の大地が恋しいぜ」

「恋しいのはレミちゃんじゃないの?」

「そ、そりゃあレミちゃんにも逢いたいさ? 逢いたいとも……」

 翔に図星を突かれて號はタジタジだ。

 

「俺もメイの顔が見たいよ……」

「おや剴? 哲君はいいのかな?」

「あいつはいいんですよ! いい加減兄離れさせてやらなきゃ……」

「困った兄貴だなぁ……」

 地球を離れる前にやっと射止めたメディカルチーフのリー・フォア・メイに熱を上げ、弟を放ったらかしにする剴に、散々大道兄弟のトラブルを見てきた信一は苦笑い。

 心の底では弟を案じてはいるが、素直になれず厳しく当たってしまう兄と、まだまだ甘えたがりの弟という関係は、そのうち「優しいメイ姉ちゃんが居るから剴兄ちゃんはいいや」なんてあっさり兄離れされてもおかしくない。

 

 兄弟仲が良いってのはありふれてるようで貴重なんだぞ……と信一は、シャトルのシートで立派に仕事をこなす翔を見やり、妹が難しい年頃だった時期を思い返す。

 

 そろそろ大気圏突入準備に入ろうかという矢先に事件は起きた。

 

 レーダーが突然、大型デブリの接近を感知したのだ。

 有り得ない。軌道上は定期的に掃海されているし、この大きさならもっと早く見つかるはずだ!

 

「翔はSOSを! 號と剴はゲッターに乗り込んで飛び出せ!!」

 

 突入で通信が途切れる前に、信一は翔にSOSを発信させ、號と剴を格納庫へ急がせる。

 

 ────一か八かだ!

 

 デブリはこのまま行けば、シャトルの横っ腹を直撃する軌道を取っている。

 信一は少しでも被害を減らそうと、スラスターを全力噴射した。

 今の時代、宇宙船や人工衛星は大気圏突入やデブリへの対策で、熱に強く強固なゲッター合金やジャパニウム合金コーティングが使用されているし、NISARのシャトルも例にもれず、耐熱コーティングを施した人工G鉱石で造られている。

 超合金Zに匹敵する強度のG鉱石なら、その辺のデブリなど物の数ではないはずだが嫌な予感を覚えた信一は、自らの直感に従ってスロットルレバーを全開にした。

 

 衝突――――轟音がシャトル内部に響き渡り、後部が引きちぎられジャパニウム鉱石を積んだコンテナが放り出される。

 操縦席と事前に飛び出したゲッターはかろうじて無事だったが、スラスターがごっそり抉られコントロールを失ったシャトルは、引力に捕らわれたまま地球へと落下し始めていた。

 

「チーフ! 翔!!」「今、助ける!!」

 

 號と剴のGT-Rがシャトルにしがみつき、外付けのスラスターと、せめてもの盾にならんとスクラムを組んだ。

「馬鹿! そんなことしたらあんたたちまで!!」

「そうだ馬鹿な真似はよせ!!」

「二人を見捨てる方が我慢できねえよ!!」

「それに、死ぬと限ったわけじゃない!!」

 GT-Rは宇宙でこそ活動できるが、大気圏内を単独で飛行する能力はない。

 このまま大気圏へ突入すれば、よくてブレーキをかけた二人を犠牲にしてシャトルが不時着。

 最悪の場合突入角度が狂い、全員仲良く燃え尽きておしまいだろう。

 シャトルもGT-Rも人工G鉱石で出来てはいるが、G鉱石自体はゲッター合金やジャパニウム合金ほどの理不尽な耐熱性は無いのだ。

 

 やがて空力加熱が始まり、視界が真っ赤に染まる。

 唯一の希望は、発信したSOSを拾った誰かが救助に来てくれることだけだ。

 温度が上昇してゆく操縦席で、信一は祈った。

 

 ――――炎にも負けないほど真っ赤な何かが、窓の外にぬっと現れた。

 

「な、何だ!?」

 GT-Rに倍する巨体の真紅の巨人は、二機をシャトルごと優しく抱きかかえるとそのコウモリに似た羽根を広げ減速を開始する。

「悪魔……?」

「いや、ゲッターだ……」

「ゲッターロボだ……!!」

 

「そのとおり、こいつは俺たちの真ゲッターロボだぜ!!」

 

 ハヤトからの通信に、號たちは沸いた。

 祈りは届いたのだ。

 

 反重力機関の力でふんわりと着地した真ゲッター1は、ビッグネイザー基地ではなく再建されたNISAR本部の発着場にGT-Rたちを下ろすと、駆け寄ってきた橘博士たちに手を振って応えた。

 

「こいつはただ事じゃないぜ……」

「ああ、これは事故なんかじゃない……」

「あの()()()……奴らの仕業に間違いねえ」

 

 真ゲッターのカメラには、シャトルから放り出されたコンテナが黒々とした亜空間ゲートに飲み込まれる様子がはっきりと写っていた。

 漆黒の宇宙を背にしていれば気づけなかっただろう。

 だが真ゲッターから見た向こうには、NISAR組がやって来た月が輝いていたのだ。

 

 ほんの一瞬開いたゲートを視認することなど訳もなかった。

 

 ゲッターチームはすぐさま各研究所と国防軍へこの情報を通達し、甲児たちフリード星使節団の帰還を待った。

 

□□□□

 

 夕飯を待つ休日の剣家では、お気に入りのアニメ番組を観終わった子供たち――――小学四年生の純也と一年生の陽児が、支度をするジュンの手伝いをしようと食器を運んでいる。

 鉄也はそのままソファーに腰を据え、はじまったニュース番組から目を離そうとしない。

 普段なら彼もいっしょに手伝うのだが、今日ばかりはNISARの面々が月から帰還する記念すべき日なのだ。

 なのでジュンも咎めたりはしない。

 

 着陸予定地点である北海道サロマ湖畔、NISAR本部の敷地に詰めかけた報道陣は、損傷したシャトルにしがみつく二機のGT-Rを抱えて飛んできた見慣れないゲッターロボの姿に困惑を隠せない。

 ――――真ゲッターだ。

 突入時にトラブルがあり、SOSを受けて救助に駆け付けたらしい。

 鉄也は未来世界で戦った恐るべき悪魔の戦闘ロボットの姿を思い出し、それがまさしく平和の為に活動していることを我がことのように誇らしく思った。

 

「あ、GT-Rと新しいゲッターロボだ!」

「あいつはな、早乙女研究所の真ゲッターロボっていうんだ」

「真ゲッター? おとうさんあれ知ってるんだ?」

「ゲッターチームのみんなとはお友達だから、教えてもらったのさ」

「さあみんな、そろそろいただきますしましょうね」

「はーい」

 子供たちと共に愛妻の手料理に舌鼓を打った鉄也だったが、その後リョウから受けた連絡で奴らの蠢動を知り、眉間のしわを深くするのだった。

 

□□□□

 

「何だって!? 月面のジャパニウムが盗まれた!?」

「うむ、NISARのゲッターロボが試験中に掘り当てたはいいんだが、帰還中に襲撃されたそうなんだ」

 

 フリード星への使節団を乗せた白樺二世号と、護衛についていたゴッドマジンガー、グレンダイザーが無事帰還した。

 各国大使が帰国したのち、宇宙科学研究所の宇門博士から事件を知らされた甲児は、ゴッドマジンガーで早乙女研究所へ飛んだ。

 

 研究所の会議室には、早乙女博士とゲッターチーム、鉄也とジュンだけでなく、さやかに橘博士と、信一を含むNISARのゲッターチームまでが勢ぞろいしていた。

 

「――――それではみなさんが揃ったところで話を始めようか……ハヤト君」

 

 早乙女博士に促されたハヤトが、まず事情を知らないNISAR組に甲児たちのタイムスリップ事件と、未来世界での戦いのあらましを語って聞かせた。

「素粒子物理学の世界的権威ライオネル博士が、まさか既にタイムマシンを発明していたとは……!」

「俺たちのゲッターが、コピーされて悪の手先にされただなんて許せねえ……!!」

「そのパリアッチョとかいうやつ、もし会ったら僕の手でぶちのめしてやりたいわ!!」

「なんてことだ……グレンダイザーが敗北し、人類が文明を奪われ、ロボットの奴隷になる未来だなんて……」

「あの真ゲッターが、本来なら大事故を起こして早乙女研究所を滅ぼしてしまっていたとは……」

 時間をつかさどる素粒子・時粒子(クロノ・レプトン)と、人類が夢見た時を越える装置、時間砲――――悪の魔の手を逃れるため闇に葬られた偉大な研究成果と、悪の手先と化したゲッターロボ、未来を知ることで回避された悲劇に、橘博士たちは驚きと怒りを隠せない。

 

「――――そしてギャラハンの先兵とみられるナルキスの暗躍に、先日奪われたジャパニウム鉱石だ。奴さん、この分じゃいつ神聖騎士(ゴーディアン)を繰り出してくるかわかったもんじゃねえぜ」

 

 未来世界で人類文明にとどめを刺した悪の光子力ロボット・神聖騎士……本来なら甲児たちが年老いてこの世を去った後に満を持して投入されるはずのそれが、早まるかもしれないのだ。

 

「ギャラハンかパリアッチョか……俺たちの調査と発明に恐れをなして、時計の針を進めようとしているんだろう」

 

 事故に見せかけたジャパニウム強奪という愚行……正体を知られているとも知らず、焦って尻尾を出した連中に、鉄也が獰猛な笑みを浮かべる。

 長年の調査によって、ミケーネ帝国が使用していた地下拠点への入り口はかなりの数が発見できていた。

 実用化されたワープ機関の研究から派生した、亜空間への干渉手段も手の内にある。

 兜十蔵博士と剣造博士が遺した感情エネルギー変換装置を端緒とした、超能力への対抗手段も。

 本拠地が既に例の亜空間なのか、それとも未だ地下深くなのかはわからない。

 どちらにせよ必ずや奴らを引きずり出して、トドメを刺してやる。

 

「――――博士! NISARから緊急電!! ラセツからのSOSだそうです!!」

 

 伝えられた座標を告げる所員の声に、一同に緊張が走り、號たちが歯噛みした。

 ゲッター號は北海道のビッグネイザー基地にあるのだ。

 取りに戻る時間はない。

 

「號、翔、剴! ラセツのことは俺たちに任せな!!」

 

 不敵な笑みを浮かべたハヤトが会議室を飛び出し、リョウたちと共に格納庫へ走る。

 

「真ゲッターロボ、発進!!」

 

 赤、白、黄の戦闘機、真イーグル、真ジャガー、真ベアーがカタパルトから飛び出し、一直線に合体、真ゲッター1となってラセツの居る太平洋を目指した。

 

□□□□

 

 太平洋上の荒れ果てた孤島。岩礁が多く船も近づかぬうえに資源も無いため各国から忘れ去られていたその島は、今や大賑わいを見せていた。

 空を、海を埋め尽くす戦闘獣の大軍勢。

 まさにミケーネ七つの軍団と呼ぶにふさわしい多種多様な怪物サイボーグたちが、なわばりを侵した獲物を囲み屠り去ろうとしている。

 その姿は甲児と鉄也たちが見れば、かつて倒したものと同一の機種だと看破しただろう。

 

 岩礁には乗り上げた潜水艦ジャイガン・シンが(むくろ)を晒し、島の上ではラセツが操る最後のメタルビーストが孤軍奮闘していた。

 二年に及ぶ調査の末たどり着いたこの島の海底で、未発見の通路を見つけ出したラセツは戦闘獣軍団の襲撃を受けた。

 ここまで劇的な反応を見せるということは、ここが本命であり連中にもう後がないということなのだろう。

 ジャイガン・シンは魚類型戦闘獣相手に奮戦の末、大破し座礁。

 数体が相手ならまだ勝ち目もあったが、この数を相手に挑むのは無謀というものだ。

 メタルビースト・ラクシャーサに乗り込み脱出したラセツは、陸地へ飛び移り迫りくる戦闘獣たちへ蟷螂の斧を振りかざす。

 

 ラクシャーサは打倒ゲッターロボを目指していただけあって確かに強力だった。

 さほど広い島というわけでもないうえに足場が悪い中、キャタピラが唸りを上げて攻撃を回避し、下半身の連装砲が、両肩のニードルミサイルが上空の戦闘獣を撃墜、山を跳び地を駆け、懐に入った敵は鋭いアンカークローが打ち据える。

 しかし戦闘獣の武装は、超合金Zを容易く破壊できる威力があるのだ。

 躱しきれなかった攻撃の前にG鉱石のボディーも砕け、溶け、あるいは裂ける。

 

「フッ……ここの情報は確かに伝えた……後は一体でも多くこいつらを倒すだけだ!」

 

 過去に世界中の主要都市を襲い、震え上がらせたミケーネ帝国の戦闘獣。

 こいつらを野放しにしては、レミの命も危険に晒されるだろう。

 ラセツは吼えた。

 多くの人々を苦しめた罪を償い、作り物の自分を人間なのだと言ってくれた少女に報いるために。

 キャタピラが千切れ飛び、ニードルミサイルも肩ごと吹き飛ぶ満身創痍のラクシャーサは、もはや風前の灯火だ。

 残された武器はプラズマボムス動力炉を即席の水爆と化して自爆する以外ない。

 にわかに暗雲が垂れ込め、スコールが降り注ぎ雷鳴が轟いた。

 まるでこれからのラセツの運命を予言するかのようだ。

 獲物にとどめを刺すべく殺到する戦闘獣。

 外側の群れは日本を目指して進攻しようとこの海域から離れつつある。

 操縦席のラセツは自爆スイッチのカバーを叩き割ろうと拳を振り上げ――――

 

 刹那、眼前を埋め尽くす戦闘獣が一瞬で切り裂かれた。

 

「――――何っ!?」

 

 スコールにも負けぬ鉄血の豪雨となった戦闘獣。

 それを成した刃――――身の丈ほどの大戦斧を手にした下手人が、雷光に照らされてその姿を現した。

 

 大きな二本角とコウモリの如き翼の巨人。

 まさしく悪魔のシルエットが暗雲に浮かび、瞬く間にこちらへ詰め寄った。

 

「ヒッ――――!?」

 

 怯むラセツを他所に、真紅の大悪魔は手にした戦斧を、腕の刃を、広げた翼を存分に振るい、周囲の戦闘獣たちを微塵切りにしてゆく。

 

「怪我はないか? ラセツ!!」

「神――――隼人? そいつは、ゲッターロボだというの!?」

「そうさ、あとは俺たちの真ゲッターロボに任せておけ!!」

 

 間一髪間に合った真ゲッター1が、ラセツを背に腹部の砲口を開いた。

 凄まじいエネルギーが迸り、桜色の奔流が視界に映る戦闘獣を一気に消し飛ばす。

 ゲッタービームだ。

 その威力に、ゲッターを残して日本へ侵攻することは出来ぬと悟った戦闘獣たちは、数を頼みに襲い掛かった。

 

「チェンジ・ゲッター2! スイッチオン!!」

 

 ゲットマシンが分散し、真ジャガーを先頭にしたフォーメーションが一瞬で完成する。

 高速戦闘形態、真ゲッター2だ。

 本来なら地上で戦うのが最も能力を発揮できるが、空中戦だって十分可能だ。

 背負った真ベアーのスラスターを全開に、海上から撃ち掛けられる攻撃を躱しざま音速の壁を軽々突破した真ゲッター2は、分身しながら無数のドリルミサイルと化して戦闘獣を貫き、砕き、引き裂いてゆく。

 マッハスペシャルの流れを汲む分身殺法ミラージュドリルだ。

 

「ドリルテンペスト!!」

 

 超音速で回転するドリルの唸りが嵐を呼んだ。

 ミキサーの如き竜巻に巻き込まれた戦闘獣は天高く吹き飛ばされ、雷雨をもたらす黒雲を爆炎で彩った。

 

「チェンジ・ゲッター3! スイッチオーン!!」

 

 地上を片付けたゲッターは、海中へ飛び込んだ。

 真ベアーを頭部にした、水中をホームとする剛力火力形態、真ゲッター3だ。

 

 海中にはほぼ手つかずの魚類型戦闘獣がウヨウヨいる。

 コックピットのベンケイは迷わずミサイルを全弾発射した。

 

「ミサイルストーム!!」

 

 キャタピラを備えた下半身の前後が反転し、ガバリと開く。

 そこに収められた無数のミサイルが解き放たれ、まさに嵐の如く戦闘獣の群れを爆炎に飲み込んでゆく。

 

「キャア――――!!」

 

 通信機越しにラセツの悲鳴が響いた。ゲッターが慌てて飛び出せば、ゲッター並みかそれ以上の巨大戦闘獣がラクシャーサを取り囲んでいる。

「ゲッターミサイル!!」

 やらせてなるかと真ゲッター3の肩口から大型ミサイルが飛びだし、ラクシャーサに魔の手を伸ばすファラオめいた戦闘獣ファラボスを木っ端微塵にした。

 

「ラセツ! ゲッターの後ろに居るんだ!!」

 ラクシャーサを背に庇い、真ゲッター3が必殺技の構えに入る。

 左肩からミサイルの代わりに引き抜かれたのは、ゲッターサイズの金属バット、その名もずばりゲッターバットだ。

 右肩からは合成鋼G製の金属球が転がり出でて手のひらに収まった。

「行くぞぉ~! ゲッターホームラァン!!」

 快音一発、打ち出された金属球は島の如き威容の亀型戦闘獣ガバラの顔面に直撃し、一撃のもとに葬った。

 

「まだまだ行くぞぉ~~~~! 千本ノックを受けてみろぉ~~~~!!」

 

 バットを水平に構えたまま高速回転する上半身。

 竜巻すら巻き起こる速度で撃ち出され続ける無数の必殺打球が、グレートマンモスをはじめとする巨大戦闘獣たちを蜂の巣にしてゆく。

 だがその猛攻に唯一耐えたものが居た。

 頭上に煌々とコロナを燃やし、単眼をギロリと光らす最強戦闘獣ソルゴスだ。

「へぇ~骨のあるのが居るじゃないの」

 ソルゴスの砲身となっている右手からミサイルが、レーザーが放たれた。

 ラセツを庇うゲッターは、即座にラクシャーサを抱えて海へ飛び込んだ。

「ちょっと我慢しててくれよな」

「あ、ああ……」

 損傷してはいてもコックピットまで浸水はしないだろうと、海底の手ごろな岩陰に安置し、ゲッターは三度(みたび)オープンゲットして海面から飛び出す。

 

「チェェェェンジ・ゲッタァァァァァァワンッ!!」

 

 流竜馬の叫びが轟き、真イーグルを先頭に再び真ゲッター1に合体する。

 ソルゴスが胸のスーパーストロングコロナ砲を撃ち放った。

 迎え撃つゲッタービーム。

 ぶつかり合ったエネルギーは空中で火球と化してはじけ飛ぶ。

 

 さすがは単騎でグレート・マジンガーをあと一歩まで追い詰めた戦闘獣だ。

 だが真ゲッターも負けるわけにはいかない。

「お前のコロナと、俺たちの太陽……どっちが上か勝負だ!!」

 ゲッターの両掌の間に、膨大なゲッターエネルギーが集中しスパークする。

 高密度のエネルギー球と化したゲッター線は臨界点に達し、核融合反応にも似た現象を経て真ゲッター線へ変貌した。

 悪魔の破壊エネルギー・真ゲッター線……されどゲッターチームは信じている。

 早乙女博士の、神隼人の科学力を。

 共に戦う仲間たちを。

 その若き命と青春を懸けて、共に戦い続けてきたゲッターロボを。

 俺たちが居る限り、ゲッターを悪魔にはしない!!

 

「ストナァァァァァァァァ! サァァァァァァァァンシャァァァァァァインッ!!」

 

 正義の怒りと希望に燃えるゲッター線の太陽が、裂帛の叫びと共に投げ放たれた。

 コロナを一際燃え上がらせて、すべての火器を撃ち放って迎え撃つソルゴスだったが、命を燃やし続ける三つの心が一つになったストナーサンシャインに抗しきれるはずもなく、跡形もなくこの世から消滅した。

 

 黒雲吹き散らされた青空の中を、ゲッターに抱えられてNISARへ飛ぶラクシャーサの中で、生きている素晴らしさを噛みしめるラセツは心の底から安堵していた。

 あの時レミの手を取っていて本当に良かった、ランドウやナルキスの野望と心中しなくて本当に良かったと。

 

 先ほどまで自分が居た島は、ゲッターの攻撃で戦闘獣もろとも消し飛び、周囲の岩礁の仲間入りを果たしていた。




車弁慶オリジナル必殺技、ゲッター千本ノック!!
このベンケイはハヤトと大雪山おろしの特訓してないしムサシから直伝もされてないので大雪山おろし使えません!!
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