第二次小説スーパーロボット大戦   作:L田深愚

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おまたせしました。


第十五話「アルバトロス公爵驚異の超科学!!」

 大破したメタルビースト・ラクシャーサと負傷したラセツを抱え、太平洋から北海道を目指して北上する真ゲッターロボの前に、大型輸送機クジラ2005Dの原型機、早乙女研究所のコスモフリーダムが顔を出す。

「わざわざ戻る必要はないぜゲッターチーム! ここでコスモフリーダムにバトンタッチだ」

「おお! 鉄也さんたちか!!」

 ゲッターの操縦席に剣鉄也の声が届いた。基地発見の報を受け、時間との勝負だとスーパーロボット軍団をかき集めてはせ参じたのだ。

 着艦したゲッターチームはラクシャーサを整備スタッフに、ラセツを医療スタッフ――――ビッグネイザー基地から同行してきたメイへ引き渡すと、しばしの休息と作戦の再確認の為に指令室へ向かった。

 

「さすがに俺たちも三十七だ、真ゲッターのパワーがつらくなってきたな……」

「まさに今回が最後のチャンスってわけだ」

「今度こそ終わりにしてえもんだよな」

 スポーツドリンクを飲み干すと、リョウたちは寄る年波に眉を寄せながら格納庫へ振り返り、分離され点検と補給作業の行われているゲットマシンたちを見やる。

 真ゲッターは確かに強力極まりない兵器で、それは間違いない事実だ。

 だが戦いが無くなればきっと、真ゲッターだって空飛ぶゲッター線発電所として平和の為に働くことができるのだ。

 ハヤトにはミチルとの間に娘・雪香が、リョウも実家の道場で出会った女教師のりょうとの間に息子・拓馬が産まれた。

 ベンケイも鉄也とジュン経由で知り合った国防軍所属の南風隊員と結ばれ、娘の渓を設けた。

 三人とも子を持つ親となったゲッターチームは、我が子らに平和な未来を残したいと改めて誓うのだった。

 

□□□□

 

 ――――地球からの使節団がフリード星に滞在し、各種条約締結のための話し合いをしていた頃。

 

「……そうか、地球では決戦への準備が進んでいるんだね」

「あたしたちの分まで頑張って頂戴ね、甲児!」

「任せておいてくれよ大介さんにマリアちゃん……!!」

 人目を離れ王宮の一室に招かれた甲児と吾郎、新一たちは、堅苦しいのを抜きにして旧交を温め大いに語り合った。

 嫁いだひかるから、吾郎のグレンダイザーの秘密と甲児たちの激闘の顛末を知らされたデュークたちはそれは驚いたものだが、王族として星を離れられない歯がゆさを押し殺しながらも、甲児たちが最悪の未来を変えるために努力を続けていることを陰ながら応援してくれている。

 

「さあ皆さんの勝利を願って、今晩は飲み明かしましょう!」

 マリアが戸棚から何本もの酒瓶とグラスを取り出した。

「吾郎君たちももう立派な大人でしょう? フリード星復興の味を楽しんでほしくて準備しておいたのよ」

 風味をつけた合成アルコールではない正真正銘の、蘇ったフリード星の大地で育った果実や穀物のワインやブランデー、ウイスキーの数々に、デュークは団兵衛と飲み明かした夜を思い出し、甲児たちは異星の酒に興味津々な様子を隠せない。

 使節団が歓待を受けた際には、護衛として万が一があってはならぬとソフトドリンクにとどめていたのだ。

 そして出てくる肴の数々。クラッカーにチーズやハム、野菜を乗せたり、ソーセージをそのままスライスしただけの簡素なものばかりだが、こっちの方が堅苦しくなくてありがたいと評判だ。

「これがフリード星の酒の味かぁ……」

 呑兵衛というわけではないが、甲児とて招かれたあちこちのパーティーでそれなりに飲む機会はあるし、いろいろな銘柄の酒を口にした経験だってあった。

 それでもやはり異星の未知の味わいは新鮮な驚きを与えてくれたし、友と飲み交わす酒は格別だ。

 

「それにしても、父上は初孫に首ったけだなぁ」

「爺さんってのはそういうもんさ。ひかるさんも二人目に男の子が産まれそうなんだろ? そしたらもっと騒がしくなるぜ」

 使節団についてきた牧葉団兵衛は、ひかるの長女でありフリード星のプリンセス、ミドリにべったりで、あまりの爺馬鹿っぷりに世話係の侍女たちの笑いを誘っていた。

 吾郎と新一は、はるばる宇宙まで来て娘に恥をかかせないでくれと愚痴りながらグラスを煽った。

 

 久しぶりの対面で、立派に成長したかつての少年たちを交えた友との楽しい酒宴はまさしく夜明けまで続き、マリアを除いて仲良く酔いつぶれた一同は、その惨状を発見した侍従長に叱られたのだった。

 

□□□□

 

『――――甲児君、もうすぐ目標の海域だ』

 ゴッドファルコンのコックピットでしばしの間思い出に浸っていた甲児は、鉄也からの通信で我に返り、操縦桿を握りしめる。

 他のメンバーも続々と格納庫へ集まり、各自準備の整った愛機のコックピットへ乗り込んでゆく。

 

「作戦開始!!」

 

 鉄也の号令と共に巨鯨が口を開け(ハッチが開き)、手筈通りに真ゲッターのゲットマシンが先陣を切って飛び出した。

 続いてダブルスペイザーと合体したグレンダイザーが、スーパーゲッター號が、グレートブースターを背負ったグレート・マジンガーとビューナスAが。

 殿(しんがり)としてゴッドマジンガーが発進し、一直線に並んで海へと突っ込んでゆく。

 合体した真ゲッター2がドリルテンペストで海水を吹き飛ばして海に穴を開け、その中をスーパーロボット軍団が突き進む。

 

 海中に直接潜らない理由は、グレンダイザーとゲッター號の耐圧性能の低さにある。

 マジンガーは約八千メートル、真ゲッターは3になれば一万五千メートル以上潜れるのに対し、グレンダイザーは三千メートルまで潜航可能な深海用アタッチメント・ウルトラサブマリンなしでは四百メートルしか潜ることができない。

 ゲッター號も、変形システムの都合上千メートルが限界だ。

 これがゲッター効果で根本から構造を変化させられるゲッター合金や合成鋼G製ではない、G鉱石製チェンジロボットの限界なのである。

 問題の出入り口が発見されたのは島付近にある海底千五百メートルの谷底で、普通のやり方ではグレンダイザーとゲッター號が置き去りになってしまうため、この方法が考案されたのだ。

 

「見えたぞ! 突入だぁ!!」

 

 ゲッタードリルが海底のハッチを食い破り、ロボット軍団がなだれ込む。

 戦闘獣軍団の敗北を経て当然のように通路は爆破されており、瓦礫が行く手を塞いでいたが、岩盤やマグマをも透視するゲッター線レントゲン装置の前には行先に何があるのかなどお見通しだ。

 通路だった場所を強引に再開通させながら、遂に開けた空間へ飛び出した真ゲッター2とロボット軍団。

 すかさずゴッドマジンガーは振り向くと、来た道へギガントミサイルを発射する。

 マジンガーたちを追いかけて押し寄せる海水は、再び通路を塞いだ瓦礫に押し留められ、流入は防がれた。

 それにしても広い空間だ。都市が丸ごと収まるほどの広がりの中に、工場施設や格納庫と思しき施設が所狭しとひしめいている。

 念のために各センサーで走査してみれば、この空間は案の定円盤型をしたカプセル内に造られたものであることが明らかとなった。

 この円盤型カプセル内の地下空間は、設備の配置や機械類の設計思想から見ても今まで鉄也たちが発見してきたものと同様ミケーネの前線基地だろうと思われた。

 だが形状は同じでも、これほど巨大なものは見たことがない。

 

「――――むっ!? とうとうおいでなすったぜ!!」

 

 鉄也の叫びと時を同じくして、燃え盛る火球が彼らの前に飛来するとたちまち形を変え、邪悪な顔を持つ炎の巨人――――闇の帝王の姿を現した。

「久しいな、剣鉄也、炎ジュン、兜甲児……そして初めましてゲッターチームとグレンダイザーチームの諸君」

「闇の帝王……! ここで会ったが百年目、覚悟してもらうぞ!!」

 各々がブレード、ドリル、ソードにハーケンといった得物を携え身構える。

 リョウたちは未来世界で戦っているので面識はあるのだが、わざわざ伝えてやる必要はないとだんまりだ。

 不意に地下空間に轟音がとどろいた。

 流石にアルテミスではないだろうが、新手の飛行要塞でも連れてきたのか……?

 そう思ったのも束の間、ものすごい速度で巨大な何かが上空を通過した。

 

「うおっ!?」「何だ!?」

「巨大な、鳥……?」

「まさかまだ戦闘獣が残っていたっていうの!?」

 

「まあそう慌てるな、紹介してやろう……我が永遠の半身にして師、アルバトロス公爵だ」

 速度を緩め、闇の帝王側に降り立った翼長百メートルはあろうかという三本足の青い鳥型のロボットは、翼を折りたたむと慇懃無礼な嗄れ声で嘲笑混じりに名乗りを上げた。

「お初にお目にかかる地球の英雄諸君。私がアルバトロス、闇の帝王から公爵の位を頂いております。それにしても探し出してまで我らに立ち向かおうとは、貴方がたの勇気には頭が下がりますなぁ……知らないというのは恐ろしいものだ」

 

 ────闇の帝王の師……? この戦闘獣は奴の教育係だったのか……?

 

 未来世界でもついぞ姿を表さなかった奴の仲間の登場に、鉄也は訝しむが脳裏に見過ごしてはいけないはずの何かがこびりつく。

 

「さあアルバトロス公爵、肩慣らしに一丁揉んでやるといい」

「久々の戦働きで勘が取り戻せておらぬが、一瞬で蹴りがついてしまわないよう注意させていただこうか」

 

 鉄也の全身の毛が逆立った。生存本能が全力で警鐘を鳴らしている。

 

「────皆、避けろおおおおおおおおおお!!」

 

 アルバトロスが広げた翼に刻まれた幾つものスリットから、無数の鳥型メカがミサイルのように飛び立った。

 間隙を縫いながら撃ち放つビームを、電撃を、暴風を駆使して鳥型メカを薙ぎ払い、ロボット軍団は危機を脱した。

 警告のおかげで辛うじて避けることができたが、嘴から放たれたレーザーや、翼が掠めただけでも装甲が切り裂かれているのが見て取れる。

 すれ違いざまに切り裂く、飛翔体に備わった刃……まるでアイアンカッターだ。

 脱落者こそ居ないが、まったく無傷の機体も一機たりとも居はしない。

「なんて攻撃だ……!」

「ゲッター2のスピードでも捌くのがやっととは!!」

「名ピッチャーの剛速球が可愛く見えらぁ……」

 挨拶代わりの猛攻に、ゲッターチームだけでなく全員の背筋を冷汗が流れた。

「スウォームペッカーを持ちこたえるとは大したものです。大抵この程度の発展度合いの文明の兵器はこれで片が付いてしまうのですがね? いやはや流石はジャパニウムとゲッター線と言ったところでしょうか」

 面白そうに目を細め、素直に称賛するアルバトロス。

 

「それではこれには耐えられますかな? ――――ソリトンブラスター!!」

 

 嘴が開かれ、探信音(ピンガー)めいた独特の音響から一拍置いて放たれた、津波の如き勢いの破壊音波がロボット軍団を襲う。

「いけねえ! みんなゴッドの陰に隠れろ!! アンチウェーブバリアー!!」

 探信音で武器の正体に勘付き、咄嗟に盾となったゴッドマジンガーが、Z時代から引き続き搭載されている超音波防御装置を起動し、音の津波を押し留めんとする。

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 だが防ぎきれない。音波攻撃に逆位相の波をぶつけて相殺するアンチウェーブバリアーでも、そもそもの出力が桁違いすぎて相殺しきれないのだ。

 機体の破損こそ起きていないが、凄まじい振動が操縦席の甲児を襲った。

「甲児君!?」「甲児さん!?」

 仲間たちの悲痛な叫びと、アルバトロスの感心したような笑い声が響く。

「固有振動数への共鳴破砕も防ぐか……さすがは光子力エネルギーだ。そのサイズの動力源でよくバリアーを保たせたものだ」

 音波攻撃を中断したアルバトロスは、反応を楽しむように新たな武器を繰り出してきた。

 闇の帝王は、マジンガーたちが苦しむさまを最高のショーだと楽しみ、炎の身体を揺らしながら特等席で眺めている。

 

「――――超重力ストーム」

 

 アルバトロスの胸部装甲が開き、三つ並んだファンを思わせる回転円盤が顔を出した。

 唸りを上げて回転数を上げるそれから嵐の如き重力波が放たれ、ロボット軍団を圧し潰さんとする。

「吾郎! 反重力ストームだ!!」

 前へ飛び出したグレンダイザーの胸から虹色の反重力光線が放射され、光を歪めるせいで漆黒の光線としか形容できないアルバトロスの重力波とぶつかり合った。

「駄目だ! 押し返される!!」

 奮戦むなしく重力波がロボット軍団を襲い、一機残らず地へと這いつくばらせる。

「ピクリとも動かねえ……あの時より強烈だぜ!!」

「反重力装置が全然役に立たない……このままじゃボクたち……」

「伸し烏賊にされちまう!!」

 重力攻撃に覚えのあったスーパーゲッター號だったが、もはや全力を振り絞ってもかつて切り札となったソードトマホークを投げるどころか持ち上げることさえ出来ない。

 戦訓としてゲッターウイングの反重力素子を装甲の内張りに使用し、ある程度は対抗できるよう改良したものの、そんな付け焼刃でどうにかなる威力ではなかった。

 この重力地獄の中で辛うじて動けるのは、大出力の反重力機関を搭載した真ゲッターとグレンダイザーだけだ。

 

「ジュン! 無事か……!?」

「こ、こんなの……お産に比べたらなんてことないわ!!」

 細身のビューナスAも危機に晒されているが、超合金の強度とジュンのガッツで気丈にもどうにか持ちこたえている。

 甲児は必死に情報を分析しながら、グレンダイザーと真ゲッターが、逆転のチャンスを掴んでくれることを祈った。

「頼んだぞ吾郎、新一、ゲッターチーム!!」

 

「サイクロンビーム!」

 新一の叫びと共にダブルスペイザーの光量子ビームがアルバトロスを襲うが、ビームは装甲に受け止められあっさりと霧散した。

「機体が重い……!!」

 分離したゲットマシンが真ゲッター1に合体するも、思うように飛ぶことができない。

 あまりの過負荷にゲッターバトルウイングがオーバーヒートを起こしかけているのだ。

 そして身動きの取れない彼らに非情な死神の鎌が振り上げられる。

 アルバトロスの中央に位置する回転円盤に光が灯り、エネルギーを漲らせ何かを発射しようとしている。

 

 ――――銀河ジェットだ!

 

 甲児の脳内でパズルのように今まで得た情報が組み合わさり、答えを導いた。

 今まで打ち上げられた観測機からの情報、フリード星への道すがらその目で見た天体ショー、そしてアルバトロスの攻撃に対する計器の反応……そのすべてが奴の力の源を読み解く鍵となったのだ。

 

「奴の力の源はブラックホールだ! 避けろゲッター!!」

 

「はいそうですかと聞けるかってえの――――反重力ストームだ!!」

「よしきた!!」

 マジンガーたちを庇うように着地した真ゲッターの背へ、ハヤトの意図を理解し同じく降り立ったグレンダイザーは反重力ストームを照射する。

 振り上げた両掌の間に、ゲッター線の太陽が生じる。

 地に足を下ろし、反重力ストームで負荷を軽減したからこそ生まれた余裕での全力攻撃。

 

「クエーサーバースト!」

「ストナァァァァサァァァァンシャァァァァイン!!」

 

 高出力のプラズマ流とガンマ線バーストがないまぜとなった、超エネルギーのジェットストリームを、投げ放たれた臨界ゲッター線の太陽が迎え撃つ。

 方や恒星の終焉たるブラックホールの力、方や生まれたばかりの若き太陽。

 ぶつかり合い、拮抗した相反するそれらの勝負は、超重力と膨大なエネルギー流によって圧縮されたストナーサンシャインが超新星爆発を起こしたことで決着を見せた。

 機体を押え込んでいた重力が消え去り、次いで巻き起こった爆風で、今にも潰されそうだったロボット軍団は一転木の葉のように軽々と舞った。

 

「――――奴らは、奴らはどうなった!?」

 

「いやはやどうして大したものだ――――」

 

 体勢を立て直した鉄也がアルバトロスたちの姿を確認しようとする。

 爆煙の中から現れた影は、以前と変わらぬ巨大な姿。

 されどあちこちに傷がつき、胸元にもへこみが出来ている。

 これで倒されてくれていればと思ったが、流石に虫が良すぎたようだ。

 

「健闘の褒美に私の正体を教えて差し上げよう――――私こそはかつて外宇宙からこの惑星にやって来てミケーネ帝国に、いやこの闇の帝王に科学技術を授けたシグマ文明の使者で、このボディーも戦闘獣ではないのだ」

 

 ――――道理で強力なはずだ。

 甲児たちは力の秘密に納得しつつ、体勢を立て直す時間が欲しいと奴の話に聞き入った。

 

「彼はとても優秀な生徒でね、素材や機材の提供こそしたが、私の知識をたちまち吸収してあっという間にサイボーグやロボットを造れるようにまでなったのさ。あの時代、あのレベルの文明の人間としては驚異的なことだね」

「私はそれが面白くて、彼がどこまでやれるのかを楽しみに力と知恵を貸し、帝国の運営と発展を陰ながら助けたというわけさ」

 

□□□□

 

 ――――約三千年前、シグマ星系の惑星ミュケーナイより飛来したアルバトロスは、ミケーネ王国の山中で逃亡生活を送っていた若き日の闇の帝王と出会った。

 権力争いに破れた父を喪い、いつの日か仇を討ち王座を取り戻さんと欲した若き王子と、周辺諸国に比べて頭一つ抜けて発展していた王国の文明に興味を示したアルバトロスは、彼に科学知識を与えた。

 真綿が水を吸うように教えを我がものとしてゆく王子の優秀さに舌を巻いたアルバトロスは、遂には機械工学とサイボーグ技術を授けることとなる。

 アルバトロスの乗ってきた円盤内部の設備を使って部品を作り、山賊や町のごろつきなど、居なくなっても困らない連中を実験台にして意のままに働くサイボーグ兵士たちを生み出した王子は、満を持して闇の帝王を名乗り打って出た。

 手駒を増やすために勇名馳せる鬼将軍の守るアレス国を征服し、兵力を蓄え暗黒大将軍という右腕を手に入れる。

 マンパワーを確保し結成された軍勢は、破竹の勢いでミケーネへ攻め入り、父が手に入れるはずだった王位を奪ったミケーネ王の息子ケルビニウスを生け捕りにし、立ち向かってきた七人の勇者たちを返り討ちにして配下に加え、帝国に国号を改めたのち、着々と周辺諸国を支配下に置いていったのだ。

 そこから先はまさに絶頂であった。

 産業革命を成し遂げた帝国は、火を噴く巨人――――戦闘用巨大ロボットを完成させ、まさに無敵の存在と化したのだ。

 

 だが栄光も長くは続かなかった。

 

 紀元前千二百年のカタストロフとして知られる災害及び社会変動に伴う異民族の襲来によって、ミケーネ帝国はあっけなく滅亡したのだ。

 しかし帝国滅ぶともミケーネ人は滅びず。王族をはじめ、軍部や科学者技術者などの優秀な人員を優先して地下シェルターへ逃げ延び、捲土重来を夢見て技術を高め、いつしかミケーネ人たちは生身の肉体を捨て強力な巨大サイボーグたる戦闘獣へと姿を変えたのだった。

 

□□□□

 

 アルバトロスの語る過去のいきさつを聞くうちに、甲児の脳裏にミケーネの調査を行っていた頃の疑問が浮かんでは氷解してゆく。

 当時のギリシャ、エーゲ海周辺に栄えた、ミケーネ文明は確かに高度なものだった。

 影響下にあった国々の出土品から知れたことだが、ヒッタイトに先んじて鉄器文明に突入し、ごく初歩的ながら蒸気機関を、機械式計算機を生み出すことさえ出来たのだ。

 火薬、花火、ガラス製品を使っていたと推測できる記録も発見されている。

 だがしかし、その程度でサイボーグや巨大ロボットが造れるだろうか?

 ────答えは否だ。

 科学はそんなに甘くはない。

 拒絶反応無く人体と共存できる人工義肢、人工臓器の素材が、動力源が、十数メートルもの巨体を支えうる構造体が、そう簡単に実用化できて堪るか!

 闇の帝王が地上で権勢を奮っていたのが、奴が元々人間だったことから考えてもミケーネが表向き滅亡するまでの百年未満だろうことを考えれば尚更だ。

 事実、バードス島の遺跡も周辺地域の遺跡と時代的には大差なかった。

 どんな天才でも、知識もない状態から一代でそこまで発展させるなんて不可能だ。

 ましてや人間の肉体を精神エネルギーへ置き換えるなんて!!

 それをやれるとしたら、既に発明の答えを知っている者しかいない。

 過去にベガ星人が地球へやって来て、遺跡を残していた事があったので、ミケーネ文明ももしかしたら奴らの手が入っていたのかと思っていたが、闇の帝王に超科学力を与えたのはこのアルバトロスだったのか……!!

 

「なるほど……お前が()()()()()に入れ知恵したのがすべての始まりだったのか!!」

 グレートの機体を軋ませながら、闘志を燃やして立ち上がる鉄也の言葉に、闇の帝王(ギャラハン)たちの纏っていた空気が変わる。

 

「剣鉄也……貴様、何故その名を知っている……?」

「成程成程……喜びなさいギャラハン、こ奴らは時を越えそして戻ってきたようだ」

 格好の獲物を見つけたようなアルバトロスの歓喜の声。

 これだけでその答えに行き着くとは流石の頭脳だ。

 あるいはこれまでの動きから予測していたのかもしれない。

 

 ――――闇の帝王の真の目的は、時を越える手段を手に入れて、繁栄の絶頂にあった過去のミケーネへ戻り、その栄華を永遠のものとすること。

 

「フハハハハハハ……それは良いことを聞いた。それではさっそくあやつに命じて研究所の連中を捕らえさせるとしよう」

 闇の帝王――――ギャラハン皇帝が炎の身体を膨れ上がらせて笑う。

「光子力研究所か科学要塞研究所か早乙女研究所か、あるいは外部に居る知り合いか……そのいずれかに時を越える秘密を発見した科学者が居るはずだ」

 

 一転、凍り付くような冷酷な声が逆に甲児たちの心に火を点けた。

 

「――――たとえ勢い余って秘密を知るこ奴らを殺してしまっても、子供を人質に弓さやかや研究所の連中に吐かせるか、あるいは脳髄に直接訊けば済むことだ」

 

 全身の血が煮えたぎる中、思考だけはひどく冷静な鉄也はためらうことなくコンソールの保護カバーを叩き割り、切り札のスイッチを入れた。

 

「――――反陽子エネルギー・オン!!」

 

 命を燃やす時が来た、立ち上がれ勇者マジンガー!!

 

 エネルギー物質変換器の回路が切り替わり、CP対称性の破れが是正(反物質と正物質が対生成)された。

 普段はミサイルの生成に転用されているのが目立つが、本来のエネルギー物質変換器の役目は光子力エンジンの余剰エネルギーを光子力燃料に還元することだ。

 相対性理論に基づいてエネルギーを物質に変えるこの装置は、本来反物質も同時に生成されるところを正物質だけ生成するよう調整されている。

 それを無理やり変更し、対消滅によって生まれた純粋エネルギー……余り、蓄積されるはずだったエネルギーをフル活用できればどうなるか……?

 このシステムの確立こそ、政界に打って出る前に遺された弓教授の置き土産なのだ。

 

 ――――グレート・マジンガーが光となった。

 

 全身に膨大なエネルギーを溢れかえらせた偉大な勇者が、アルバトロスへと突っ込んだ。

 その場から一歩も動かずにロボット軍団を圧倒していたアルバトロスが翼を広げ、泡を喰って飛び退いた。

 ――――刹那、巻き起こった衝撃波が闇の帝王の炎を吹き消さんばかりに叩く。

「このエネルギー量は……まさか対消滅か? 無茶をするものだ……!」

 スウォームペッカーが迎撃に出るが、五指それぞれから放たれたサンダーブレークに薙ぎ払われ、一瞬で消滅する。

 

「ドリルプレッシャーパンチ!!」

 

 刃を繰り出し回転する左拳が、火を噴きながらアルバトロスの片翼を貫くと、返す刀でもう片方も穴を開け、役目を終えて砕け散った。

 

「う……おお!?」

「アルバトロス公爵!!」

 公爵の声から初めて余裕がなくなった。ギャラハンの悲鳴が上がる。

 だが今なら遮蔽物となるゴッドマジンガーは居ないし、グレートを構成する超合金ニューZの固有振動数は既にわかっている。

 再びソリトンブラスターの発射体勢に移るが、それはグレートにまんまと読まれていた。

 

「マイナス回路作動! ブレストバーン!!」

 

 熱線が冷凍光線に切り替わる。

 反陽子エネルギーを供給され絶対零度に達した極低温の奔流が、今まさに滅びの咆哮を上げんとしていたアルバトロスの嘴を一瞬で凍てつかせた。

 このチャンスを逃すわけにはいかない……!!

 狙うは真ゲッターが付けた胸の傷だ!!

 リミッターが解除され、自爆覚悟のフル回転でブースターが唸りを上げる。

 最高速度を突破し、限界を超えた反動で異常振動が始まった。

 

「グレェェェェェェト! ブゥゥゥゥゥゥスタァァァァァァ!!」

 

「うおおおおおお!?」

 

 発射され、炎の鳥となって狙い過たず胸のへこみに着弾したブースターは、光子力エンジンを自爆させアルバトロスを爆炎に飲み込んだ。

未来世界で猛威を振るった浮遊要塞、髑髏の形をしており光子力エンジンで稼働する。




ご存じの方もいると思いますが、アルバトロス公爵というのは没企画版ゴッドマジンガーから登場する予定だったミケーネの新幹部の名前で、反陽子エネルギーもそこから持ってきたネタです。
シグマ文明云々は桜多版とINFINITISM版。

中身や設定はオリジナルですが、外見は東映版グレート序盤で闇の帝王が通信入れてくるときにモニターへ表示されている謎の鳥をメカっぽくした感じです。
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