────グレート・マジンガーが切り札の反陽子エネルギーを使用し、アルバトロス公爵を鬼神の如き戦いぶりで圧倒した時、闇の帝王は決して手をこまねいて見ていたわけではなかった。
「ああっ! アルバトロス!? おのれ剣鉄也!! ぬおおおおおおおお!!」
怒りに燃える闇の帝王のサイコパワーが周囲を闇に包み込み、過去に倒された機械獣の、戦闘獣の、メカザウルス、百鬼ロボット、円盤獣、ベガ獣の幻影を作り出し、グレートとロボット軍団へ差し向ける。
だが幻影と侮るなかれ、闇の帝王によって呼び出された怨念は、実際に物理的なダメージを与えることができるのだ。
その猛攻は、たとえスーパーロボットの超パワーでも跳ね返しきれはしない。
襲い来る雲霞の如き大軍団に、傷付いた身体を奮い立たせて立ちはだかるゴッドマジンガーの勇姿。
「────ゴッドスパーク!!」
振り上げた剣から迸る眩い稲妻が、闇を照らし悪の影を全て消し去ってしまう。
怒りを恨みを憎しみを力に変えるデビルマジンガーを倒すために生まれたゴッドマジンガーに、超能力を始めとする精神エネルギー攻撃は通じないのだ。
救援軍を一瞬で無に帰された闇の帝王が、天地も裂けよと吠え猛る。
「七大将軍んんんんんんんんんん!!」
地下基地のそこかしこの格納庫から七つの軍団を率いる七種の戦闘獣、ミケーネ七大将軍が飛び出した。
無論本物ではなく、地上で真ゲッターを相手にした戦闘獣と同じくボディーのみを複製し、人工知能で駆動するコピーロボットだ。
ミケーネ人の頭脳が搭載されていないとはいえ、その戦闘力には僅かの翳りもないし、実体のあるこいつらならたとえサイコパワーを失っても消されたりはしない。
その爪が、牙が、アルバトロス公爵を救わんと振るわれる────
「光子力ビーム!」
ビューナスAの撃ち放ったビームに射抜かれ、猛獣将軍ライガーンが、魔魚将軍アンゴラスが爆散した。
「ダブルハーケン!!」
怪鳥将軍バーダラーが、投げつけられたハーケンに真っ二つにされて散った。
「ゲッタービームッ!!」
悪霊将軍ハーディアスがゲッタービームの奔流に飲み込まれ消し飛んだ。
「ソードトマホーク!!」
G鋼剣にプラズマを奔らせ、背中のブースターを全開にして突っ込むスーパーゲッター號が、縦横無尽にソードトマホークを振るい、妖爬虫将軍ドレイドウを、大昆虫将軍スカラベスを、超人将軍ユリシーザーを立て続けに真っ二つにぶった斬ってゆく。
残された手駒が、窮地に陥ったアルバトロスを救う手立てが、あっという間に失われたのと、当のアルバトロスがグレートブースターの直撃を受け、地表に叩きつけられたのはほぼ同時であった。
絶対零度のマイナスブレストバーンで周囲の空気ごと凍りつき、低温脆性でその分子構造をガタガタにされていた頭部は、落下の衝撃で粉々に砕け散る。
「こんな……こんなことが有っていいのか!?」
頼みの綱の七大将軍たちが秒殺され、恩師であり、育ての親と言ってもいいアルバトロスの晒した惨状に、闇の帝王は慟哭した。
だが彼の不幸は終わらない。帝王を三方から取り囲んだグレンダイザーが、スーパーゲッター號が、グレートが、一気に畳みかけようと一斉に電撃を浴びせかけてきたのだ。
「スペースサンダー!!」
「マグフォースサンダー!!」
「サンダーブレーク!!」
ゲッター號のマグフォースサンダーが仲立ちとなり、ダイザー、グレートの放つ高圧電流が電磁結界となって闇の帝王の動きを封じる。
「うおおおおおおおお!?」
「コイツでトドメだ!!」
ゴッドマジンガーがブレードの切っ先を結界に捕らわれた闇の帝王へ向け、感情エネルギーの最大出力でゴッドスパークを放った。
サイコパワーを相殺するゴッドの力が、精神エネルギーで構成された闇の帝王の身体をみるみるうちに削ってゆく。
この荒れ狂い鳴り響く電光雷鳴の四重奏が、ギャラハンへの鎮魂歌だ。
「我が身が! 我が身が!!」
燃料を失い勢いを落としてゆく焚火のように、小さくなってゆく闇の帝王の炎。
消えゆく彼の脳裏には、かつてのミケーネ帝国での栄光の日々が、天変地異で追われた地下生活での苦難の日々が走馬灯のように駆け巡ってゆく。
そこにはいつもアルバトロスが居てくれた。
人間に火を授けたプロメテウスの如く、国を栄えさせる知恵を授け、敵を圧倒する力を与えてくれた星の賢者。
闇の帝王ギャラハンは、そんな大恩ある彼の姿を旗印とし、誇らしく掲げたのだった。
――――ギャラハン……ギャラハンよ……!!
頭に響く彼の声は、死に際の幻聴か……否!!
破壊された機体の最奥で辛うじて無事だった中枢ユニットが、ギャラハンへ通信を送っているのだ。
――――私はもうじき死ぬ。だが可愛い君の命だけは何としても救ってみせるぞ……
――――悲しむことはない。どうせこの怪我が無くともあと百年も経たぬうちに寿命が来ていたのだ。別れが多少遅いか早いかでしかないよ。
――――私からの最後のプレゼントだ。ジャパニウム資源を用い、私の持てるシグマ科学の粋を結集して建造したスーパーロボット、
コイツが必ずや君を救ってくれるだろう……
だが唯一の心残りは、これを操る君の雄姿が見れぬこと。
――――達者でな、ギャラハン坊や……
ぷつり、と切れた繋がりが否応なくアルバトロスの死をギャラハンに自覚させた。
自らを縛る雷の結界を打ち破らんと、悲しみと怒りをないまぜにして、囚われの炎の巨人は死に物狂いで荒れ狂った。
その全てが徒労と化し、生命の火が燃え尽きようとする寸前、床が突如としてぽっかりと口を開け、内部から鬣のように金髪を生やした巨大なロボットがせり上がる。
赤と黒、緑に染められた、騎士鎧にも似たデザインの、五十メートルは有ろうかという巨体はどこもかしこも分厚く、逞しい。
――――まるで聳え立つ城塞のようだ。
「なんだこいつは!?」
「きっと神聖騎士よ! まさかこんなに早く完成するなんて!!」
グレートたちが攻撃に集中する中、伏兵を警戒していた真ゲッターとビューナスは即座に攻撃に移ったが、怪ロボットは片手であっさりと二機のビームをいなすと、雷撃に晒されているギャラハンへ視線を向けその両目からレーザー光線を放った。
途端に掻き消える電磁結界。
甲児たちは驚愕し、ハヤトはランドウとの戦いで使われた電磁作用の天敵、アンチフレミングレーザーを思い出す。
間一髪命を拾ったギャラハンは、人間大と成り果てたちっぽけな炎のまま飛び出し、神聖騎士の頭部に開いた空洞へ収まった。
風防が下りる。鋭い双眸がギラリと剣呑な光を放つ。威嚇するように両腕を振り上げて吼えれば、光子力エネルギーが全身に漲り、光芒が迸る。
死に瀕していた先程とは打って変わって、ギャラハンの身体はたちまち活力を取り戻し赤々と燃えあがった。
――――この太く逞しい鋼鉄の四肢がギャラハンの手足だ。
――――この不滅の身体がギャラハンの新たな身体だ。
――――彼の頭脳が、心が加わったこの瞬間、ギャラハンは神聖騎士になったのだ!!
遥か悠久の時を越えて宇宙の頭脳が生み出した、マジンガーのネガ像とでもいうべき邪悪の魔神が産声を上げた。
「往生際が悪いぜ! スペースサンダー!!」
吾郎が叫び、グレンダイザーの角からギャラハンめがけて電撃が放たれる。
神聖騎士……髪の毛……エネルギー兵器……
ぞわり、とそれを見た甲児が既視感を覚えた。
「駄目だ吾郎! そいつにエネルギーを与えちゃあ――――!!」
ギャラハンがその鬣を歌舞伎の連獅子のように振り回す。
スペースサンダーは、避雷針に引き寄せられるように金髪に絡めとられ吸収されてしまった。
「ああっ!?」
やはりそうだ。エネルギー変換装置――――未来世界でも見た光子力テクノロジーのバリエーション……!
かつてマジンガーZが苦戦させられた、同じく長い金髪を振り回してこちらの攻撃を吸収する、スピード自慢の神聖騎士ザクスンの姿を甲児は思い出した。
「散々調子に乗ってくれた礼だ……今までのお返しをたっぷりとくれてやる……!!」
神聖騎士ギャラハンの胸の装甲の隙間から、何かが回転するような甲高い音と眩い光が漏れ、勢いよく胸板が観音開きに開いた。
姿を現したのは高速回転する巨大なディスクと、反射板じみた輝く装甲の裏面だ。
それはどこかマジンガーの放熱板を思わせる。
「受けてみろ――――ダークネスファイヤー!!」
辛うじて回避には成功した。だが発射された超熱線が掠めただけで、翼の一部は抉れたように蒸発し、流れ弾が地下空間の壁を貫いて水蒸気爆発が轟いた。
一拍遅れて鉄砲水のように海水が噴き出してくる。
余波だけでさえ、操縦席内部にまで耐えがたい熱気が伝わってきたほどだ。
「フハハハハハハ……! 雑魚どもめ、何と無様な姿よ!!」
形勢逆転とばかりにギャラハンの哄笑が響く。
「アルバトロスの仇をとってやる! 暗黒大将軍も七大将軍も!! アルゴスもヤヌスのも……ミケーネすべての敵討ちだ!!」
両目のレーザー光線が、指先からの電撃放射が、腹部ハッチからの鳥型ミサイル――――小型のスウォームペッカーが、鉄風雷火の嵐となってロボット軍団を襲った。
躱しきれずに翼がへし折れ、装甲が弾けとんだ。
片足や片腕を失うものも居た。
それでも致命傷だけは負うまいと、スーパーロボットの操縦者たちは歯を食いしばり、死に物狂いで操縦桿を握りペダルを踏む。
「スーパーノヴァ!!」
隙を突いてゴッドマジンガーが足元から上方へ振り上げるように白熱光線を放つ。
壁の破孔から流れ込んできて、こちらの地面まで達していた海水が水蒸気爆発を起こし、爆煙で目くらましされたままスーパーノヴァの直撃を受けるギャラハンだったが、何事もなかったかのようにその姿を現し、見るものに絶望の影を落とす。
「うぬらの攻撃など効くものか!」
だが勇者は最後まで諦めない。咄嗟にグレートタイフーンで海水をこれでもかと浴びせかけた鉄也は、そのままマイナス回路に入れたままのブレストバーンを限界まで食らわせた。
「悪足掻きを……」
意図を察して攻撃をゴッドハリケーンに切り替え、ゴッドマジンガーも凍結作業に加勢したことで、氷塊の中に閉じ込められたギャラハンだったが、光子力エンジンの大馬力が相手ではそう長くは持つまい。
奴がどれほどの完成度の合金で造られているかは甲児たちも知らないが、ジャパニウム合金は基本熱にも強ければ低温にも強い。
加熱からの急冷がどれほどのダメージになるかは未知数だったが、一つだけダメージになり得る要素があった。
――――氷だ。
水は他の液体と違い、固体になるときに体積が増える。
水中でも問題なく活動できるメカニックでも、奴にはミサイルハッチや胸の装甲などの開口部はある。
そこから入り込んだ水が膨張したり、内部空間の空気が凍結し機構に影響を与えてくれれば……
正直、何の保証もない博打に等しい。自然界に、罅から入り込んだ水が凍って石を割る現象があるとはいえ、それが超合金に通じるかはわからない。
せめて時間稼ぎにでもなればと祈りながら、鉄也はブレストバーンのスイッチを切った。
――――流石にグレートも、長時間の放射でオーバーヒート気味だ。
ただでさえ反陽子エネルギーを持て余しているのに、これ以上無茶をすれば機体が吹き飛んでしまう。
タイフーンと冷凍光線の放射を止めた鉄也は体勢を立て直した仲間たちに、ギャラハンが動き出し次第一斉攻撃するよう指示を出した。
「――――今だ!!」
氷塊を打ち砕き、姿を現したギャラハンにギガントミサイル、ネーブルミサイル、光子力ミサイルの連射が、スクリュークラッシャーパンチが、チェンジしたゲッターの千本ノックが、Gハンマーが襲い掛かる。
「これしきの小細工で我を阻めると思うなぁ!!」
シグマ文明の科学によって作られた、同じジャパニウムを使いながらも超合金ニューZよりも強固な合金……されどこれだけの集中攻撃を受け、ついに歪みが生じた。
ダークネスファイヤーの放熱板が開けなくなったのだ。
異音を発しながら痙攣する胸部装甲に業を煮やしたギャラハンは、ならばとレーザー、電撃、ミサイルの一斉射撃を再開する――――
「――――ダイナマイトアーム!!」
――――これは所長の分!!
スクランブルダッシュをへし折られ、残った基部スラスターの全力噴射で懐へ飛び込んだグレートが、撃ち出される寸前のミサイル発射口へ右腕を突き入れた。
全体重を乗せた貫き手が、自らを半ば自壊させながら肘まで刺さり、切り離して飛び退けばエネルギーの過剰供給でオーバーロードを起こした光子力ロケットが大爆発を起こす。
「うおお!?」
流石のギャラハンでも内部への直接攻撃は堪えたようで、動揺を隠せない。
「サイクロンカッター!!」
両腕を失ったグレートを庇うように、すかさずチェンジした真ゲッター1が腕を振りぬけば、切り離されたゲッターレザーが勢いよく飛んだ。
――――これはクローンにされたムサシの分!!
放たれた刃はブーメランのように襲い掛かり、ギャラハンの鬣をズタズタに刈り散らす。
これでもうエネルギーを吸収される心配はない。
「もう一つおまけだ! ――――ソードトマホーク!!」
破損し、本来の出力を維持できなくなったGアームライザー。なれどゲッター號は本体のエネルギーを犠牲にし、ここで力尽きても構わないとGハンマーを、G鋼剣を生み出し続けていた。
投げ放たれたソードトマホークが、黒煙を吐き出す発射口へ突き刺さる。
――――これは悪の手先にされたゲッターの分!!
ゴッドマジンガーは装甲の砕けた右肩から火花を散らしながら、その腕を猛然と高速回転させていた。
大車輪ロケットパンチの構えだ。それに加え、前腕部もターボスマッシャーパンチの横回転で唸りを上げている。
「大車輪! ターボスマッシャーパァァァァンチ!!」
――――お前に運命を歪められ、利用されてきたゼファ・ジタンヌの分!!
限界を迎えたゴッドの右肩が砕け散るのと、パンチの発射は同時だった。
どうせ壊れてまともに動かないのなら、トコトン使い潰した方がいいとばかりに解き放たれた鉄拳は、突き刺さったソードトマホークの柄頭を激しく叩き、その切っ先を奥深くまで打ち込んだ。
「――――ジュン! 合わせるぞ!!」
「良いわ鉄也! サンダーブレーク!!」
――――戦闘獣にされた信一郎さんの分!!
「俺たちもやるぞぉ! スペースサンダー!!」
「サイクロンビーム!!」
――――グレンダイザーを奪われたシオン・フリードの分!!
片足となり翼も折れたビューナスは、腕無きグレートと肩を寄せ合いながらマジンガーブレードの切っ先をギャラハンの腹部へ刺さったソードトマホークへ向ける。
雷鳴が轟いた。グレートの角から放たれた雷撃がビューナスのブレードを通じて襲い掛かり、こちらも左側の手脚と翼を失って腹這いとなっていたグレンダイザーのスペースサンダー、サイクロンビーム共々ギャラハンの内部メカを焼いた。
「こんなバカな……うぬら雑魚どもごときにこの我が……アルバトロスの造った身体が……!!」
遂に満足に動けなくなったギャラハンは、黒煙立ち上る各部から異音を発しながらギクシャクとよろめく。
――――勝負は今だ!
真ゲッター1の操縦席で、ゲッターチームが
ゲッター炉がフル回転し、解放された膨大なゲッターエネルギーが迸った。
前駆動作のゲッターシャインだ。
出力が天井知らずに上がり、桜色から黄色、黄色から白へと輝きを変えてゆくゲッター線は、臨界状態の真ゲッター線に変わる。
『真ッ! シャァイィィィィンスパァァァァァァァァァァァァク!!』
白い闇――――全てを塗りつぶすほど輝く真ゲッター線の光に包まれた真ゲッターは、ギャラハンめがけて突進してゆく。
だがバトルウイングを失っているため速度が上がらない――――咄嗟にハヤトの操作で、分散せずにゲットマシンへ変形する。
恐竜帝国との最終決戦で三段式ロケット弾を撃ち込むはずだった、合体ゲットマシンだ。
轟く真イーグルと真ベアーのスラスターが、ゲッターバトルウイングと遜色ない速度を与え、電光石火の一撃が鋼の暴君へ迫る。
ストナーサンシャインをも上回る真ゲッター最大の切り札、真シャインスパーク。
そしてゴッドマジンガーも――――
「マジンッ! パワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
光子力エネルギーを振り絞り、折れた翼に代わり背部スラスターと脚部ロケットを全開に、兜甲児の勇気を燃やして光となった隻腕のゴッドマジンガーは、拳を振り上げ真ゲッターと共にギャラハンを地下空間から叩き出した。
外壁を破り、海底の岩盤を突き抜け、一気に海面を抜けた二大スーパーロボットは、満身創痍のギャラハンを宇宙空間まで運び去る。
大気圏を突破し、装甲の破片を撒き散らしながらゲッターの放った真シャインスパークのエネルギー球と共に飛んで行くギャラハンへと、ゴッドマジンガーはトドメの一撃を放った。
「今度こそトドメだ!――――ゴッドスパーク・スマッシャー!!」
「これがお前らに苦しめられてきた、人類皆の分だああああああああああああ!!」
「ぬああああああああああ!? 勝てぬというのか……? この我が死ぬ……? この帝王ギャラハンがああああああああああ!?」
マジンガーブレードを手にし、電撃を纏ったまま放たれたターボスマッシャーパンチ。
真シャインスパークで装甲を打ち砕かれ崩壊を始めたギャラハンの機体は、剝き出しの内部メカをズタズタにされながら電撃を浴びせられ、とうとう操縦席を粉砕された。
そして遂に光子力エンジンが爆発し、三千年以上もの間闇の帝王として君臨し続けてきたギャラハンは、その野望に満ちた生涯に幕を下ろした。
「終わったよ……おじいさん……お父さん……!!」
「ムサシ……!!」
重力に引かれ、落ちてゆく真ゲッターとゴッドマジンガー。
動力炉はかろうじて止まっていないが、機体はボロボロで操縦者の気力体力も限界に達していた。
大気圏に突入し、二機は真っ赤に燃え上がる。万全な状態でなら余裕で耐えられる高熱でも、この損傷では命に係わるかもしれない。
しかしもはや四人には、指一本動かす力も残されてはいないのだ――――
「研究所も子供たちもさやかさんも無事で、あしゅらもおっ死んだってのに! こんなところでくたばってんじゃねーよ馬鹿兄貴!!」
紅の翼を輝かせ、鉄の城マジンガーZと兜シローが兄たちの救援に駆け付けたのだ。
長年の技術革新で、既にジェットスクランダーは宇宙でも活動可能になっている。
冷凍光線が二機の温度を冷却し、そのままヒラリと方向と相対速度を合わせたマジンガーZは、二機を引っ掴むと減速をかけながらコスモフリーダムの下へ降りてゆく。
そして海底でも――――
□□□□
ギャラハンが開けた穴とゴッドマジンガーたちが開けた穴、二か所から噴き出す海水が広大な地下空間を満たし始めている。
すでに水位は五mに達し、左側の手足を失って倒れ伏していたグレンダイザーは少しでも操縦席が浸水する時間を稼ごうと上体を起こしていた。
右脚の無いビューナスはまだエネルギーに余裕があったが、両腕の無いグレートは遂に回路が焼き切れ、機能を停止してしまっている。
ローターを失い、プロテクターもボロボロになったうえ、あちこち脱落しているゲッター號のエネルギーも底をつき、もはや多少手足を動かすのがやっとだ。
「畜生……ボロボロの上にこの深さで身動きが取れないんじゃ、俺たちそのうち水圧でペシャンコじゃねーかよー」
「わかり切ったことを言うな號!」
「助けが来るって信じましょうよ……」
「ああー! ウルトラサブマリンさえあったらなぁー!!」
「コスモフリーダムに載せられなかったんだからしょうがないだろ!!」
残された面々は口々に心情を吐露したり、持ち込めなかった装備を悔やんだりと、刻一刻と迫る水没圧壊の危機に不安を隠せない。
落ち着いているのは鉄也たちくらいのものだ。
甲児とゲッターチームの勝利は疑っていないが、果たして助けは間に合うのか……
水位が十mを越えた頃、不意に破孔が砕け散りながら拡がり、回転するドリルが地下空間へ顔を出す。
「ああー!? 待ってました!! これぞ天祐!!」
小型の潜水艦か、巨大ロボット用水中バイクといった風情の紅白の機体がザブリと着水するや、白波蹴立ててロボット軍団の下へやってきた、これぞグレンダイザーの深海潜水アタッチメント、吾郎が欲してやまなかったウルトラサブマリンだ。
「レスキュー隊の到着ですよ皆さん!!」
サブマリンの後ろから現れたのは、早乙女元気の操るゲッターポセイドン!!
パリアッチョのターゲットが光子力研究所だと知った早乙女研究所の面々は、超特急でゲッターGを宇宙科学研究所へ向かわせ、改造の済んだウルトラサブマリンを空輸させたのだった。
ゲッターポセイドンは、サブマリンの後部に客車のように鈴生りになった耐圧カプセルへ動けないロボットたちを詰め込むと、最後にダブルスペイザーを引っぺがされたグレンダイザーを操縦席へ放り込んだ。
「ゲッター操縦しながら遠隔操作するの大変でさ、そっちは任せるよ」
「よしきた! サブマリン・ダッシュ!!」
「おいおい、動かすのは俺だろ吾郎? ――――ウルトラサブマリン発進!!」
グレンダイザーに片手で操縦桿を握らせ、元気よく声を上げる吾郎だったが、実際操縦するのはダブルスペイザーから乗り換えた新一だ。
地下空間を海水が満たすのを待ち、ウルトラサブマリンとゲッターポセイドンは海上を目指して脱出した。
着水し、口を開けて待ち構えるコスモフリーダムへ、傷ついたロボットたちをカプセルごと収容すると、チェンジしたゲッタードラゴンとマジンガーZは一足先に帰還する。
「じゃあ俺たちはお先に失礼」
「研究所につくまでひと眠りするといいさ」
しかしはいそうですかとはいかないのがダイザーチーム。
ウルトラサブマリンを積み込むスペースはコスモフリーダムにはもう無いのだ。
鉄也とジュンが笑顔で断りを入れる。
「悪いな新一君、コスモフリーダムはもう満員なんだ」
「若者は年長者に譲ってくれると助かるわ」
「それじゃあ新一、俺は休ませてもらうから頑張れよ!」
「おいコラ」
しれっと自分だけコスモフリーダムでひと眠りしようとする吾郎を笑顔で引き留め、クルージングの道連れにしようとする新一は、寝かせてなどたまるかと蛇行運転で吾郎の操縦席をガクガク揺すりながら帰路に就いた。
――――闇の帝王は、ミケーネ帝国は今度こそ完全に滅んだ。
誰もが待ち望んだ平和が遂にやって来たのだ。
傷ついた戦士たちよ眠れ。
いつの日か訪れる、科学の発展が争いと無縁である時代を夢見て――――
第二次小説スーパーロボット大戦・完