第二次小説スーパーロボット大戦   作:L田深愚

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桜多版のキャラが出ます。


第三話「宇宙の王者/地球の愚者」

 ――――地球から遠く離れたフリード星。

 かつて宇宙の悪魔・恐星大王ベガ率いるベガ星連合軍の侵略を受け一度は滅ぼされたものの、離散していた住民たちとベガ星に虐げられていた各惑星の住民、そしてベガ大王を見事討ち取った王子、王女たちの不断の努力によって見事によみがえった希望の星である。

 地球で宇門大介と名乗り甲児たちと共に戦い、故郷へ帰還してフリード王として即位したデューク・フリードは、執務の最中に騒がしく駈け込んで来た妹のマリアに眉をひそめた。

「兄さん! 大変よ!!」

「いったいどうしたんだ騒々しい……」

「のんきに仕事してる場合じゃないわ! 地球から通信が届いたのよ!!」

「なんだって!?」

 そうと聞いては落ち着いていられない。

 デュークは執務を切り上げると、急いで通信室へ走った。

 

 モニターに映る懐かしい養父宇門源蔵とたくましく育った牧葉吾郎、そして愛しい牧葉ひかるの姿と声に自然と頬が緩む――未だ地球の技術は未熟なため、恒星間通信はできても動画を送ったりリアルタイムの通話は出来ない――が、続いて映し出された静止画像と、スピーカーから聞こえた聞き捨てならない言葉が気を引き締める。

 

『――――地球にダムドム星人が再び現れた。甲児君たちの力で撃退は出来たがそちらにも手出ししてくるかもしれないから注意してくれ』

『これは()()()()()()()グレンダイザーだ。吾郎君に乗ってもらっているが、いろいろ事情があってね……詳しいことはいつか直接会えた時に話したいと思う』

 

「ダムドム星人が……」

 過去にはベガ星だけでなく、フリード星とも交戦した記録が残っている強敵の名を耳にして、デュークの頭脳は軍備の再建状況はどうなっていたか探り始める。

「でも驚きね。いくらおじさまがすごい科学者でも、まさかグレンダイザーを造ってしまうなんて……」

「そこまで不思議なことでもないさ。グレンダイザーの修理には地球の超合金ニューZがグレン合金の代わりに使われていたし、光量子エンジンだって父さんは再現できた」

 マリアたちが乗り込み、共にベガ星の円盤獣やベガ獣と戦い抜いた地球製スペイザーの雄姿を思い浮かべながらデュークは語る。

「それに地球には甲児君たちのマジンガーのような素晴らしいロボットだってあるんだ。見た目や機能を似せて作るくらいどうにでもなるさ」

「それもそうね」

 

 ――――警報が鳴り響いた。

 周辺宙域を警戒する宇宙レーダーが異変をキャッチしたのだ。

 

「報告します! 星系外より円盤群接近、数は大型一、小型円盤がおよそ三千!!」

「なんだって!?」

 スクリーンに映し出されたのは、まぎれもなくダムドム星人の軍勢だった。

 

「ミニフォー、ミディフォー部隊発進!」

 白黒に赤の差し色が入ったフリード軍カラーに塗りなおされた防衛軍の鹵獲円盤部隊がスクランブル発進した。

 円盤群が次々と大気圏を突破し、星系外部のガス惑星を見下ろしつつ接敵する。

 ミニフォー、ミディフォーのベガトロンビームが、ダムドム円盤のレーザー光線と交差し、爆発が暗黒の宇宙に瞬いた。

 

「わが軍が押されています」

「そうか……」

 防衛軍司令官の言葉に、デュークは眉を寄せる。

 あちこちの星で戦火をかいくぐり、さらにこの数年環境改善用として使い倒されてきた円盤たちは、製造元のベガ星勢力亡き今交換部品も代用品で賄うありさまで、その性能を完全には発揮できないほど疲弊している。

 そのうえこちらは二千機と数でも負けているのだ、まともに勝てるはずがない。

「陛下、なりませんぞ」

「司令官……!」

 デュークの行動に先んじ、司令官が釘を刺す。

「貴方様はこの星の希望なのです。かの恐星大王を打ち倒し、故郷を取り戻してくださった英雄にして新たな王……御身に何かあれば我らは、再び無様に王族を失い生きる支えをなくすことになります」

 

 かつてフリード星はベガの奇襲――――ベガトロン液を注入された動物核爆弾によって重要施設を狙い撃ちにされ、目と耳をふさがれ手足を縛られた状態で大軍勢を相手取る羽目になった。

 なすすべなく軍は壊滅、先代フリード王も王妃も命を奪われ、頼みのグレンダイザーも初陣同然なデュークの不慣れな操縦では、強者ぞろいのベガ大王親衛隊に敵うはずもなく、時間稼ぎと逃亡が精一杯だったほどだ。

 

 今はもうあの時とは違うとはいえ、苦楽を共にした兵たちが一人、また一人と散ってゆく光景に、デュークは歯がゆさに身をよじらんばかりだ。

 ――――ああ、せめて彼らに使い古しでなく新品の円盤があったなら……!

 

「母艦の発進準備、完了しました!」

「よろしい、クインバーン発進!!」

 先発隊が稼いでくれた時間で準備を整えた大型円盤が飛び立った。

 これも鹵獲兵器で、恐星大王ベガ――――ベガール・ベガの父であるヤーバン・ベガ大王の時代に使われていた母艦である。

 正直に言って性能は当然次世代型のマザーバーンに劣るのだが、十分実用範囲内だし主砲の威力も負けていないため、二線級の辺境惑星侵略部隊に回されていたものの中から無事だったものを引っ張ってきたのだ。

 

 程なくして戦闘宙域に到達したクインバーンは、先発隊救援のため三機の中型円盤を発艦させる。

 三機はそれぞれ変形し、人型や鳥獣型など様々な戦闘ロボットが姿を現す――――防衛軍虎の子の円盤獣部隊だ。

 

「陛下が出るまでもない! 侵略者共は俺たちが蹴散らしてやる!!」

「俺たちがいる限り!!」

「フリード星は渡さん!!」

 

 円盤獣のビームが、ミサイルが、爪が、牙が、体当たりが、次々にダムドム円盤を粉砕し、不利だった戦況を一気に好転させてゆく。

 その光景を見る兵士たちすべての胸に熱いものがこみ上げる。

 

 かつてのフリード星陥落の折り、まともに戦うことさえできなかった無力さに血の涙を流した者。

 捕らわれの身となり、止む無く仇敵の膝下に屈した者。

 ただ怯えるしかできなかった子供だった者。

 

 祖国を滅ぼした仇敵の兵器こそ使っていても、それでも今自分たちは侵略者に立ち向かえているのだ。

 侵略者を蹴散らしているのだ。

 侵略者から故郷を守れているのだという事実が、決して消えない勇気の灯を皆の心に点している。

 

「バカナッ! マサカキュウシキノエンバンジュウガコレホドツヨイトハ……!?」

 

 小型円盤は全滅し、残るはダムドムの母艦のみだ。

 

「よし! トドメは我が艦が刺す!! エネルギー充填開始!!」

「イカン! カイジュウヲシュツゲキサセ……」

 

 クインバーンの主砲にエネルギーが満たされてゆく。

 世代を超えてなお通用するその武器の名は――――

 

「ヤーバン熱線ミサイル発射ぁ!!」

 

 ベガニウム合金だろうが宇宙合金グレンだろうが一撃で破壊可能な高収束熱線ビームが解き放たれ、宇宙怪獣を出撃させる暇も与えずにダムドム母艦を射抜いた。

 

 爆散――――周囲に敵影無し。

 フリード星防衛軍の勝利だ。

 

 艦内で、司令部で、大歓声が巻き起こり、兵士たちは同胞たちと勝利に酔いしれた。

 

「ああ……見事だ……皆よくやってくれた!!」

「ええ! 防衛軍の大勝利よ!!」

 

 グレンダイザーに頼らずに勝利を収めた防衛軍をデュークとマリアは称え、凱旋するクインバーンと円盤獣を出迎えるべく支度をするのだった。

 

「エルマー・スミス艦長、ジョン・カーター、バローズ・バルスーム、ミットン・フューチャー。君たち四人にフリード十字勲章を授ける」

 

 デュークは英雄となった四人を始めとするこの戦いで活躍した兵士たち全員の叙勲と、散っていった者たちの葬儀を済ませると、決意に満ちた表情でマリアに告げた。

「これならグレンダイザーが居なくても、フリード星は大丈夫だ。マリア、僕は地球へ行くよ」

「ひかるさんを迎えに行くのね?」

「ああ……」

 故郷に緑は戻った。

 故郷を守る戦士達は立派に育った。

 宇宙合金の製鋼所も、光量子エンジンの工場も再稼働を始め、新型の戦闘円盤が量産されつつある。

 ────フリード星の復興が終わったら必ず迎えに来る。

 そう約束した最愛の女性と結ばれる日がついにやって来たのだ。

「兄さんの留守はあたしがしっかりと守るわ」

「……甲児によろしくね」

 どこか寂しげな笑顔で、マリアは兄を送り出す。

 

 グレンダイザーはフリード星から飛び立ち、まっしぐらに地球を目指す。

 胸に燃える愛の星を輝かせ、心でちいさな愛の歌を紡ぎながら────

 

□□□□

 

 日本近海の奥深く、密かに蠢くものがあった。

 撃墜された母艦から生き延びた四ツ首のギルギルガンである。

 過去幾度となく攻め寄せてきた侵略者たち、ドクターヘルやミケーネ、恐竜帝国、百鬼帝国、ベガ星連合軍の攻撃で沈んだ船は数多い。

 海で倒され、残骸を回収されることなく放置された侵略ロボットや移動要塞も数多い。

 ギルギルガンは、そんな犠牲者たちの墓標をこれ幸いと思うまま貪っていた。

 たらふく喰えば当然その分成長する。

 彼は脱皮し、背中から鬼のような上半身を生やした第二形態への変態を遂げた。

 

 足りない……もっと食べたい……

 

 海底をすっかりキレイにしたギルギルガンは、それでも足りぬと飽くなき食欲に突き動かされるままに陸地を目指して歩き出す。

 その先には奇しくも初代ギルギルガンが襲撃した京浜工業地帯が、そして日本有数の大企業、新住日重工の一大工場群が鎮座していた。

 

「もう役立たずの戦車や砲弾、ミサイルばかり造らされるのはうんざりだ! 我が社は一丸となり、今こそ憎っくき神重工業に目にもの見せてやらねばならん!!」

 幕で覆われた二十メートルはあろうかという巨大な建造物をバックに、屋外朝礼で社長の藤獰がその凶悪なご面相に違わぬドラ声で社員たちに檄を飛ばす。

 新住日重工は国防軍が使用する兵器の主な供給元だが、ドクターヘルが使っていたスーパー鋼鉄の再現に真っ先に成功した企業で、それを利用した砲弾やミサイル、戦車や各種装甲板などを国防軍へ納入している。

 しかし侵略者に対抗する主力であるロボット兵器のシェアをライバルの神重工業が握っているのが社長には我慢ならないのだ。

 

「見よ! 奴がゲッターならこっちはマジンガーの量産化を目指す!!」

 

 幕が取り払われると、そこにはなるほどマジンガーによく似た赤いロボットが姿を現した。

「このGMFA1(ジーエムエフエーワン)はスーパー鋼鉄製のプロトタイプで武器も少ないが、いずれ超合金と光子力が使えるようになればゲッターMにも負けないロボット軍団が完成するのだ!!」

「操縦も電子頭脳による完全自動制御で訓練いらず! 厳しい訓練の必要な有人ロボットなど駆逐してくれるわ!!」

 ワッハッハ!! と酔いしれる藤獰の耳に、破砕音、爆発音が飛び込んだ。

 何だと思っているうちに、連絡を受けた部下がギルギルガン襲来を告げ、その場はパニックとなる。

 

「狼狽えるな! おい、GMFA1を発進させろ!!」

「しかし社長! あの怪獣は本物のマジンガーでも手こずる相手で……」

「時間稼ぎでいいんだ! 本物が来るまで粘っていれば売り込むアピールにもなる!! それに何もしなけりゃうちの工場は全滅だぞ!?」

「わかりました……」

 社長の命令に、担当技術者はコンソールに向かい攻撃目標と行動パターンをインプットした。

 

「GMFA1発進!」

 火の手が上がる工場区画に、魂なき真紅の巨人が歩を進める。

 炎に照らされるのは、下手人たる半獣半人の宇宙怪獣。

 威嚇の咆哮を上げたギルギルガンへ、GMFA1は臆することなく胸のミサイルを撃ち込んだ。

 当然通用しない。

 お返しとばかりにギルギルガン下半身の目から光線が放たれる。

 電子頭脳が予兆を察知し、ヒラリと躱しざまに両手の指からレーザーを撃つ。

 

 一進一退の攻防に、推移を見守っていた一同が希望を抱く……

 だが悪魔が一枚上手だった。

 痺れを切らせたギルギルガンが、下半身の口から溶解液を吐き出したのだ。

 躱したものの、関節に付着した飛沫が右脚の自由を奪う。

 超合金ニューZさえ溶かしてしまう代物に、スーパー鋼鉄が耐えられるわけがない。

 ギルギルガンはトドメとばかりに突進し、四ツ首全てがGMFA1に喰らいつく。

 

「ああっ……!」

 

 哀れGMFA1は、奮戦むなしく噛み砕かれ、バリバリと音を立てて怪物の胃の中に収まってしまった。

 

「もうダメだ……おしまいだあ……」

 絶望に打ちひしがれる社員一同。

 そんな時、面白やかましい救世主が駆け付けた。

 

「ジャンジャジャーン! ボスボロット参上ぉ~~~~!!」

 

 赤いボディに黄色い手足、ダルマのようにずんぐりむっくりなコミカルなロボット、ボスボロットがガソリンエンジンの音色高らかに、羽ばたき飛行機の如き翼、ボロットスクランダーを背負い颯爽と駆け付けたのだ。

 

「鉄くずは引っ込んでろ! ……いや、精々餌になって怪物を遠くにやってくれ!!」

 ひどい言われようだが操縦するボス、ヌケ、ムチャたちは気にしない。

「ボロット砲用意! ――――いくわよぉ~~~~!!」

 胸の装甲が左右に開き、砲門が顔を出す。

 放たれた砲弾を、ギルギルガンは餌を投げられた犬のように次々とパクついた。

 

「ボス~砲弾は撃ちつくしたぜ~!」

「よしきた今度は爆撃の準備を……」

「だめだボシュ、スクランダーの燃料が切れちまったよ」

「あらいやだ! ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 羽ばたきが停止し、真っ逆さまに墜落するボロット。

 羽根は墜落の衝撃で千切れとんだ。

 ギルギルガンはまたごちそうがやって来たと舌なめずりして襲い掛かろうとする。

 こんなのは餌をやっているだけじゃないか、はやくどこかへ連れていけと憤慨する観客たちだったが、どうもギルギルガンの様子がおかしい。

 苦悶の表情を浮かべながら両手で腹を押さえ、下半身の口が溶解液を所かまわず吐き出そうとしている。

 しかも鉄など一瞬で溶かしてしまうはずのそれが、ようやく吐き出されたにもかかわらず掛かった鉄骨が原形をとどめているなど、やけに効き目が鈍い。

「どうだ見たか! お前の溶解液を中和するのに苛性ソーダをしこたま用意して詰めといたのよ」

 

 ――――すなわち、ギルギルガンは消化不良の胃もたれに襲われているのだ。

 

 ボスはかつてのギルギルガンとの戦いでボロットの手足を食われた恨みがある。

 そのためダムドム星人が再びギルギルガンを連れてきたと知って、奴との再戦に備えて準備を進めていたのだ。

 苛立つギルギルガンが破壊光線をやたらめったら撃ちまくり、ボロットは慌てて尻をまくって逃げ出す。

 GMFA1よりよっぽど活躍しているボロットと、誘われて工場から遠ざかってゆくギルギルガンの姿に、散々ボロットを馬鹿にしていた藤獰社長は拠って立つものを失ったような顔で傍らの開発主任に問いかけた。

 

「なあ主任……わしらの技術はあんな鉄くずにも負けるような代物だったのか……?」

「いいえ、社長……心です。人間の心と頭脳が無ければ、どんな高性能な機体もその力を発揮できないんです……」

 

 西の空からグレート・マジンガー率いるスクランブル騎士団と、応援要請を受けて合流したゲッターチームが駆け付ける姿が見える。

 彼らは皆、若い命と熱い血潮を燃やして困難を跳ねのけ、勝利を掴んできた勇者たちだと誰もが知っている。

 

 操縦を融通の利かない電子頭脳だけに任せっきりにしてしまったのが今回の敗因だと、その場にいた一同は悟った。




割ときれいな新住日重工。多分新住日重工(東映版)
艦長はオリキャラで、バローズ、ミットンのファミリーネームは元ネタから引っ張ってきました。
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