高校日常伝タフ   作:イッチー団長

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私の大好きな漫画、タフシリーズのSSを書き始めてみました
稚拙な文、謎展開、キャラ愚弄がありますのでご注意を

しかしタイトルが高校鉄拳伝のもじりなのに、時系列がいきなり龍継ぐなんスけど……いいんスかこれで……


花粉症を超えた花粉症

「しゃあっ!」

 静まり返った道場に、カコンカコンと乾いた音だけが響いている。

 一人の男が木人を叩いていた。身長は一般的な成人男性とそう変わらないが、その隆々とした筋肉が、彼が只者ではないことを知らしめている。

 宮沢熹一。その界隈では知らぬ者のいない、世界最高峰の武道家である。

 その評判通り、一挙一動に『箔』がある。筋肉の動きにも、床を踏みしめる音にも、そしてくしゃみにも。

「ぐしゃっ!」

 そう、くしゃみにも。

 

「はぁ~……何や、鼻水が止まらへんなぁ……風邪か?」

「たるんどるぞ熹一。自分の体調管理を徹底するのは武道家として当然のことや」

 その言葉に振り返る。そこにいたのは熹一の父、宮沢静虎であった。

「しゃあけど親父(おとん)……って、親父!」

 熹一が驚いたのは、静虎の太い顎から、ポタポタと濁った液体が滴っていたからだ。

 

「親父、凄い鼻水やで! 親父も風邪か?」

「気のせいや……くちっ!」

「んなわけあるかい!」(何やその可愛らしいくしゃみは……)

 そんな言い合いをしている二人を背後から見ている青年がいた。坊主頭で眼帯をした青年、長岡龍星である。

「あの……二人とも花粉症じゃないですか」

 

 

 

「花粉症かぁ~。しゃあけど今まで発症したこと無かったで」

「今年は花粉の飛散量が特に多いらしいですよ。今まで発症したことが無い人も要注意だとか」

「そうか……ぐしっ!」

「熹一さんは特に酷いですね」

「あぁ……ちょっと薬局で薬買いに行ってくるわ」

 そう言って道場を出ようとする熹一の肩に、大きくて分厚い手が置かれた。

 

「待て熹一。クスリを反対から読むとリスク……ワシは余程のことが無い限り、薬は飲まない主義や」

「ならどないすんねん!」

「殺法すなわち活法なり! お前は灘神影流の極意を忘れたか?」

 

 灘神影流。熹一の先祖達が代々受け継いできた古武術である。いや、もっと踏み込んだ言い方をすれば”暗殺技術”である。

 迅速に、効率的に人体を破壊するにはどうすれば良いのか。そう言った最適化された暗殺術を伝えてきた武術である。イメージ的には古武術というより軍隊格闘術に近い。

 しかし、”殺し方を知っているからこそ活かすことも出来る”。これこそが静虎の信念であった。

 

「総身退毒印!」

「おぉっ! 熹一さんと静虎さんの身体から毒が抜けていく! これでアレルギーの元である花粉を体外に出すんですね!」

 

 そして数十分後。

「ダメだったよ……」

「ダメでしたか……」

 

 

 

────

 一方その頃。

「貴様っ! 手を上げろ! 上げなければ撃……ごぁぁっ!」

 東京は千代田区、首相官邸。普段は閑静なこの場所が、その日は物々しい空気に包まれていた。

 完全武装した警官隊が数十人集結している。その標的は、たった一人の男だった。

「随分と手厚い歓迎だな」

 白髪混じりの黒髪をオールバックに揃えた、中年の男だった。しかし、その巨体、その身体の厚みは一般的な中年男性とは一線を画している。何より、纏う空気が違う。

 鋭利なナイフのような、人を近寄らせぬオーラ。それでいて、その巨体とは裏腹に、どこか繊細で、思春期の少年のような空気感のある男だった。

 ──宮沢鬼龍。”悪魔を超えた悪魔”と呼ばれた男だ。

 

「なぁ、田岸よ」

 両手を目一杯広げてもまだ余るような大きな机に、日本国旗が飾られている。鬼龍はその上に尻を置き、初老の男性を鋭い目付きで見下ろした。

「お前の権力を持ってすれば簡単なことだろう? なぁ?」

「し、しかし……」

 初老の男は怯え切っていた。それもそのはず、周囲には虫の息になった警察隊が数十人転がっていたのだから。いかに彼が日本国の首相だろうと、この状況でその権力に何の意味があろうか。

 

「さ、流石にその要求はあんまりです……」

 鬼龍の要求とは。

「田岸! この国のスギの木を全て伐採しろ! ぐしゅっ! ……所詮花粉をまき散らすだけの植物……切ってもさほど罪悪感は湧かないはずだ」

 

 

 

「む、無理です……その行為は自然への冒涜……地球温暖化や水害にも影響が……」

「欺瞞だ……全てが欺瞞に満ちている」

 冗談のような話であるが、鬼龍は本気であった。

 彼はこの世にある道徳に背反して恬然としている不羈奔放の武人。俗世の人間とは倫理観も何もかもが異なっている。

 

「ぶぁっくしょん! ごっ……ぐっ!」

「だ、大丈夫ですか?」

「はぁ……はぁ……げほっ!」

 苦しみながらも、鬼龍はバックルにしまってある針を取り出し、自らの身体に突き刺した。

「はぁーっ! 完全復活……ではない。この世にスギ花粉がある限り、俺のこの症状は続くのだ」

 鬼龍の強面に憂いの表情が浮かぶ。

 

「俺も花粉症なんだ」

「いや、見れば分かりますよ」

 と、その時、

「鬼龍!」

「なにっ! はぅ……!」

 強烈な蹴りが鬼龍の後頭部に直撃する。その蹴りを放ったのは、白髪を長く伸ばした初老の男だった。

「我が名は尊鷹」

「み、見れば分かる……」

 

 鬼龍は悶えていた。如何に超人的なタフさを誇る鬼龍でも、鳳脚(ファルコン・フット)と呼ばれる尊鷹の蹴りを受けてはひとたまりもない。

「お、お前どうして俺がここにいると分かったんだ……?」

「SNS で拡散されてるぞ。私のフォロワーが教えてくれたんだ」

「お前SNS とかやってるんだな……」

「最近Twitterのフォロワーが1万人超えたんだ」

「……」

 

 

 

「というわけで首相、ご迷惑をお掛けしました。(これ)は私が責任を持って連れて帰ります」

「は、はぁ……」

「お詫びの印にこれを」

 尊鷹が懐から取り出したのは、以前彼も着けていたバトル・キングのマスクであった。

「マスクを着けてる方が花粉症を防げるんです」

(このマスクじゃ防げないだろうが……)

 

 何はともあれ、尊鷹と鬼龍は去っていった、まるで嵐のように。

 首相は残されたマスクを見つめると、そっと自分の顔に被せてみた。

「案外悪くないな……なんだあっ!?」

 首相が何かに取り憑かれたかのように悶え始める。全身の関節がバキバキと音を立てていく。

 

「うわああああ」

 奇声を上げてうずくまる首相。数秒の沈黙の後、顔を上げた彼の姿は……

「我が名はバトル・キング」

 今のこの瞬間、日本の首相田岸は死に、”誇り高き戦士”バトル・キングが生まれたのだ!

 

 

 

────

 その後、日本全国でバトル・キング・マスクの配布が行われた。

 日本国民は強靭な肉体と気高さ、そして花粉への抵抗力を得たが、それと同時に何か大事なものを失ったり失わなかったりしたという……。




これじゃ鬼龍が馬鹿みたいじゃないですか
これじゃ鷹兄が人外みたいじゃないですか……

しかし最近エロばかり書いてたから、ギャグものの書き方が思い出せないぞ……

ここまで読んで頂き、ありがとうございました
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