このSSはフィクションであり、実在の団体・人物とは一切関係ありませんのでご注意下さい。
「なにっ! ワシらが24時間テレビに出演やて!?」
宮沢一家はテレビ局に集結していた。彼らを待っていたのは、有名なチャリティー番組“24時間テレビ”を制作している敏腕プロデューサーと、漫画家の猿〇哲也氏であった。
「プロデューサーからキー坊達に是非、とお声掛けがあってね」
「灘の方々とコラボすることで新たなる客層が見出だせると思ってるんです」
その言葉に、熹一は顔を赤らめ、恥ずかしそうに後ろ髪を掻き始める。
「いやぁ……ワシ……ボクらの力が必要ってことなら幾らでも貸しますけど」
「今回も人気アイドル“サニーズ”が出演しますからね。灘とアイドルの相乗効果で視聴率は激増……こいつはウケるぜェ! “チャリティー”とか“ボランティア”って言葉に善意を感じるバカがいるんだよ!」
「欺瞞だ……欺瞞に満ちむぐぐ!?」
文句を言おうとした鬼龍の口を、熹一は大慌てで塞いだ。
「と、ところで“サニーズ”って何です?」
「知らないのかい? あの“サニー北川”が社長を努める、国民的アイドル事務所だよ」
「ふうん。サニーだかソニーだかジャニーだが知りませんけど、そんな凄い人なんスね」
サニーの名を聞いた途端、龍星は顔をしかめたのだった。
その夜。
「龍星クン、24時間テレビに出演すると聞いたが本当かね?」
龍星はサニー北川の自宅に招かれていた。
「はい」
「そうか。あの番組は世界平和を願うものだからね。一緒に良い番組にしていこう」
そう言うと、サニーは嬉々として自分の功績を語り始めるのだった。
「これはT国の大統領が来日した際に撮影したもの。慈善活動が認められ、名誉国民として勲章も頂いたんだ」
そんなサニーに対して、龍星はポツリと呟いた。
「中身のない奴ほど肩書きを欲しがるものですね」
その言葉に、部屋の空気はシンと静まり返る。饒舌に語っていたサニーも、顔に怖いものを貼り付かせ、サングラスの底から龍星を睨んでいる。
「今なんか言ったか、龍星クン?」
「人面獣心のクソ野郎と言ったんですよ、サニーさん。アイドルを育成する立場でありながら、少年アイドルの処女を奪って愛人にしたと聞いた時にはさすがにビックリしましたよ」
サニー北川には、悪びれる様子も慌てる様子も無かった。その唇の端には、ニヤリと不適な笑みが浮かび上がる。
「はっはぁーっ! 英雄色を好むと言うじゃないか! コレ(プロデュース力)が強い奴はコッチ(性欲)も強いものよ!」
「タチ悪いよなぁミーも。ショタコン趣味の変態だが……社会的地位もあり権力もある。その癖滅茶苦茶喧嘩が強いんだからなぁ!」
老人とは思えないサニーの拳を、龍星はしかし一つ一つ見切り、いなす。そして、
「ぷにっ……」
ブチャッと、卵の潰れるような気味の悪い音が響いた。龍星の蹴りが、サニーの両足の間、男にとって最大の急所にめり込んでいた。
「サニーさん、あんたに教わったことは社会の欺瞞……大人の卑劣さ欲深さ、そしてアイドル業界の闇を教わった。それだけだ」
悶絶するサニーを尻目に、龍星はその場を後にしたのだった。
────
「(アイドル出られなくなったみたいやけど)どないする?」
「まぁ(ワシらで繋げば)ええやろ」
そんなこんなで、前代未聞の24時間テレビが始まるのだった。
『24時間テレビは、
涅槃創生会
金貸し道元
学集連合会
悪名高いIT企業オーナー尾崎健太郎
アメリカ合衆国影の大統領 ドン・ガンビーノ
の提供でお送り致します』
「あの……録なスポンサーがいないんスけど……いいんスかこれで」
「24時間テレビはルール無用だろ」
『こちら募金会場には……何とプロレスラーの和田アキ男さんが来てくださいました!』
「どうも」
著名なプロレスラーが来たことで、会場は大盛り上がり、アキ男を一目見ようと大勢の人々が押し掛けてくる。
「あの……自分、募金しに来たんスよ。握手して貰ってもいいスか?」
握手を求めて来たのは、大柄な若い男だった。発達した大胸筋や上腕二頭筋がTシャツをパンパンに押し上げている。素人ではないのは明らかであった。無論、プロレスラーのファンならば格闘技経験者でも何ら不思議ではないのだが……
「しょうがねぇな、プライベートでボランティアしてる時に……」
言葉とは裏腹に、微笑みながら右手を差し出すアキ男。
「あざース」
口元をニヤつかせながら、男の大きな手がアキ男の手と交わる。その瞬間、
「なにっ!」
「しゃあっ!」
『和田アキ男屈辱! 大学生に失神KO! ネットに動画を晒される』
何やかんや賑わう募金会場。その影で、
「オマタちょっと触るだけだから……ぼ、募金するし、ねっ……ねっ?」
ボランティアの幼女が男に連れていかれ、スカートの裾に手を掛けていた。これも募金のためと、幼女が意を決してスカートを捲ろうとした、その時、
「なにをやっているんです」
巨体の男が立っていた。身長は190cmを超え、首も腕も太い。筋肉の鎧を纏ったような男だった。
静かなる虎、宮沢静虎である。
「なにをやっている!」
静虎によって、男は幻魔を植え付けられ、幼女の性被害は未然で防がれたのだった。
しかしまた別の場所では、
「おじさんの言うことを聞いてくれたら募金するよ」
人気アイドル事務所の社長、サニー北川であった。
「オチンチン見せて」
「なにをやっているんです、サニーさん」
サニーの後ろにはいつの間にか龍星が立っていた。そして、
「ぷにっ……!」
龍星のつま先が、先日潰し損なったもう片方の睾丸を破壊したのだった。
────
『特別企画 ケンゴの24時間耐久セックス』
「なんやその下品な企画はあーっ!」
「現場の“蛆虫”と中継を繋ごう。おい、蛆虫」
鬼龍の呼び掛けで巨大モニターの電源がつき、レポーターの姿が映し出された。
『はい。こちら“人差し指のゲン”こと琉球唐手苫篠源内でございます』
「そうじゃないだろう? お前は何だ?」
鬼龍の問いに、ゲンの毛穴という毛穴から冷たい汗が噴き出す。
『わ、私は……悪臭を放つ糞にたかりこ……この世で最も汚く蔑まれる……蛆虫でございます』
「蛆虫、レポートをしろ」
『は、はい! こちらではあの“セックス・マシンガンズ”のケンゴが24時間耐久セックス……では温いので、240時間耐久セックスに臨んでいます』
「240時間!? タフ過ぎるやろ!」
『既に216時間が経過したケンゴの様子が……こちらになります』
映像が切り替わる。白いベッドのみがある簡素な部屋で、ケンゴが30人程の全裸の女に囲まれていた。その様子を一歩離れて見ているのは、兄のケンゾーである。
『うーっ、流石に疲れてきたぞアニキ……』
『頑張れケンゴ! あと24時間だ!』
『何か……アニキ大分元気じゃないか? 俺に付き合って240時間寝ないんじゃなかったか……?』
『……』
『あーっ! てめぇ寝たな! 俺が頑張って女と寝てる時に寝たな!』
「寝るとか寝るとかややこしい話やな……」
『今後も定期的に様子を中継していきます。現場からは以上です』
「あの……これ全国ネットなんスけど……いいんスかこれで」
「24時間テレビはルール無用だろ」
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『特別ドラマ 武闘派ヒーロー清丸』
「俺は我龍院清丸。古武術である灘神陽流を受け継ぐ武道家だ。そして、武道家とは強いだけじゃダメなんだ。心も健全でなければ……」
「いやっ! やめてっ!」
女性の叫び声だ。助けを求める声に、清丸はすぐさま現場に急行した。
「お前ら何しとるんや」
「何って……見ての通りレイプしてるんやん」
こういった輩が、最近はやたらと多い。こういう心の汚い連中を叩きのめせるのは、心身ともに強靭な武道家の他にいない。つまり、今この女性を助けられるのは清丸だけなのだ。
清丸は強烈なハイキックを放った。何度も何度も道場で練習した蹴りである。普通の人間であれば、骨の何本かは逝ってもおかしくはない蹴りである。しかし、
「いきなりハイキックって、軸足駆られたらすぐ転がされるで! タックルに入るタイミングも取りやすいんや!」
清丸の蹴りは容易にガードされてしまった。それだけではない。男のタックルで転がされ、後頭部を強打してしまう。
怯む清丸に、男は容赦なく背後に回り、チョーク・スリーパーを極める。ここまでガッチリ極まったら、抜けだすのは不可能であった。
「俺たちタチ悪いよなぁ。根っからの不良のくせにMMAだけは真面目にやってるからメンタルもフィジカルも鍛えまくってるし……女好きだし……男もいけるしなっ!」
「やめろォォ!」
「なんやこのドラマはあーっ!!」
────
『カズ婆の恋愛相談コーナー』
「あの人のことが気になってきたんだろ」
「聞いて下さいカズ婆さん。前の主人は有名なプロレスラーだったんですが、常に私に母親を求めてくる並みの男でがっかりしました。次の旦那選びには失敗したくないのですが、どうすればいいでしょうか?」
「なるほど……そういうあなたに特別ゲストが来てるよ」
「ゲスト……?」
アイアン木場が墓から甦る!!
「なめるなっ! メスブタァッ!」
甦った木場の強烈な一撃に、女は数m離れた壁まで吹っ飛ばされるのだった。
────
『障害児童支援企画』
「は、初めてまともな企画が……」
『さて本日は心臓に障害のある子供達に集まって貰いました』
「心臓に病ってま、まさか……」
途端に鬼龍の頬に冷や汗が伝った。
『この子達は突然心臓が停止する可能性があり……その明確な治療法は未だ見つかっておりません』
「バースト・ハートやないかあーっ!」
「俺は父親としてお前達のことを……」
鬼龍が目を輝かせながら子供達に近付いた、その時。
「武術の真髄は闘いをおさめることにあるッ! 全ての元凶は
静虎の太い腕が、鬼龍の首にきつく絡みついた。スリーパー・ホールドである。
「ったくこのおっさんは……無差別に種ばら撒くのもいい加減にせぇよ!」
「この人が父親であることが恥ずかしいですね……」
(ククク……酷い言われようだな。まぁ事実だからしょうがないけど)
薄れゆく意識の中、熹一達に罵倒され続ける鬼龍であった。
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「(そろそろやること無くなってきたけど)どないする?」
「まぁ(そろそろ締めで)ええやろ」
『というわけで、240時間耐久セックスも終盤に入ってきました!』
「うーっ……うーっ……」
ケンゴは既に虫の息であった。腰をへなへなと動かすも、そこにはいつもの激しさ力強さはない。
「負けるなケンゴ! もう少しだ! 最後まで走り抜けるんだ! どんなに離れてても心はそばにいるぞケンゴ!」
「うーっ……うっ!」
ケンゴの身体が小刻みに震える。絶頂を迎えたのだ。同時に、240時間経過を知らせるブザーが鳴り響いた。
「タフって言葉はケンゴのためにある」
「よくやったぞケンゴ! ……ケンゴ?」
ケンゴの身体を抱き寄せるケンゾーだったが、ケンゴは目を閉じたまま一向に動く気配がない。
二人の周りを、一匹の蝶がひらひらと滑らかに飛び回っている。ケンゾーは昔のことを思い出した。
『蝶は繊細で臆病なんだ。生きてる人間には止まらないんだぞケンゴ!』
やがてその蝶は、ケンゴの頭の上に、柔らかく止まったのだった。
「ケンゴォォォォ!!!」
────
「ふぅ……取り敢えず、24時間テレビお疲れ様やで」
「素人なりに精一杯頑張りましたから、反響が大きければ嬉しいですね」
「あぁ。さて、視聴率は……っと」
熹一はPCを開き、24時間テレビの視聴率を調べ始めた。
24時間テレビ 視聴率2%
「なんでやー!!」
べ、別に愚弄の意図は無いんです。本当です。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました