憲兵の俺は今日も鎮守府で勤務する   作:とある組織の生体兵器

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2話

〜街〜

 

「痛いっすよ〜。」

 

「誰のせいだ!誰の!」

 

早速、カフェでサボっていた佐々木を見つけて、外の裏路地に引っ張ってぶん殴った。

 

「お前のせいで危うく、隊長に背骨折られるところだったんだぞ!」

 

「それはマジっすか!?あっぶねぇ…。でも、自分も悪くないっすよね!?先輩が無線の電源切っちゃうからじゃないっすか!」

 

「あぁん!?テメェが隊長を最後まで挑発したからだろ!隊長の鬼の形相見たか!?女の子がする顔じゃねぇぞ!」

 

俺と佐々木が街を歩く。一応仕事のため、制服を着ているから浮いている。

 

「はぁ…。もう…。俺も提督ならこんな苦労しねぇのに…。」

 

「提督になればいいじゃないっすか。」

 

「なれれば苦労しねぇよ…。」

 

俺と佐々木は歩きながら、愚痴を言い合う。

 

「提督試験むずいっすもんね。先輩の頭じゃ無理っすね。」

 

「うんうん。なるほど。後で鎮守府に戻ったら覚えてろ。」

 

俺は大人だから、こんなガキンチョの煽りなんて気にしない。てか、提督試験は受けようと思って受けられない。年功序列のこの組織。俺にチャンスはない。佐々木なんてもってのほかだ。…いや、今までで俺は一度だけあった。第一試験も第二試験も、第三試験も合格した。あとは身体検査と特殊だけだった。…その時合格したのは二人だけ。俺は最後の最後で落ちた。身体検査の日、俺と後の二人は余裕の表情だった。もう、受かったも同然だったからだ。その通り、身体検査はなんの異常もなく平常。どこの鎮守府になるか話で盛り上がっていたのに、最後の最後の試験。そこで落ちた。最後の最後の試験。それは、妖精さんが見えるかどうかだった。最初の二人は、妖精とやらが見れたようだけど、俺だけ…。俺だけ、妖精さんが見えなかった。それだけで落ちた。なんとまあ、理不尽極まりない。

 

「はぁ…。」

 

「そんなシケた顔してちゃモテないっすよ。」

 

「うるせえ。コイツうるせえ。ってか、お前もモテたことないだろ。」

 

「自分は、彼女いますよ。」

 

「は?マジ?」

 

「はい。」

 

「ほーん。どんな子?」

 

「えっとですね。まず、全長が9メートルくらいで…。」

 

「あ、もうええわ。」

 

「なんでっすか!」

 

「うるせえ!こんな街中で戦闘機の話したかねぇんだよ!」

 

俺と佐々木は街を歩く。

 

「もう…提督のシンプル任務だったか?雑用じゃねぇか。噂なんて、スマホで調べりゃ十分だろ…。あとは?艦娘のストレス緩和のため食料?俺のストレス緩和のこと考えてほしいわ。」

 

「そうは言いながらも、ちゃんと食料買ってってあげるんすね。」

 

「出来る大人だからな。」

 

俺は、買い出しリストを見ながら買い物をする。

 

「おっ、公安職のストレスチェックきてんじゃん。えーっと?名前と所属を記名?そして、質問に答えるだけか…。瀬戸で、横須賀鎮所属と…。番号まで記名かよ…。ポチポチと。仕事にやりがいを感じますか?いいえと。」

 

俺は出来る大人だからね。政府に嘘はつけないね。

 

「職場で嫌なことはありますか?あります。仕事を押し付けられている気がしますか?雑用押し付けられてるんで、はいと。同僚に嫌なことされますか?佐々木にされてるんで、はいと。上司に不満はありますか?大いにあります。理由は、特にあきつ丸が…。よし、完了。送信と。」

 

俺は正直者だから。

 

「先輩って、意外と真面目っすよね。」

 

「当たり前だろ。公務員なんだからよ。てか、お前も書けよ。」

 

「えぇ〜、面倒っす。」

 

「そうやって…。本当、優秀じゃなかったらいいところなしだな。」

 

俺は佐々木と共に歩く。艦娘の食糧となれば、まあたくさん必要なわけだ。業者に適当に発注。そして、試食して検討。佐々木は食べているだけだがな。

 

「さてと、次は…。」

 

「先輩先輩!」

 

「今度は何だよ?」

 

「あれ!あの人、超可愛いくないっすか!?」

 

佐々木が指差した先には、一人の少女がいた。その少女は、俺達と同じ制服を着ていた。長い黒髪の少女。制服の上からでも分かるスタイルの良さ。胸は大きく、腰はくびれていて、足が長い。まるでモデルのような体型をしていた。

 

「確かに…でも待てよ。戦闘機が彼女とかほざいていたお前が言うんだ。絶対に何かある。俺は行かんぞ。」

 

「チキン野郎…。」

 

「お前…もういいや。もう、かける言葉すら見つからん。」

 

俺は、もう色々疲れたからカフェで休む。仕事だけど、息抜きも必要なんでね。

 

「先輩はどうするんすか?」

 

「少し休んでから行く。先に行っててくれ。」

 

「了解っす!」

 

佐々木は走って行った。…元気だねぇ。あんなに走り回れるのなら、もっと体力つけてほしいものだ。いや、ついてるな。あきつ丸の本気ダッシュから逃げられるほどだからな…。

 

「さてと…。」

 

「副隊長…こんなところで何をしているでありますか…?」

 

後ろを振り向くと、そこには笑顔のあきつ丸がいた。しかし、目は笑っていない。

 

「た、隊長…?な、なぜここに…?」

 

あきつ丸はジリジリと寄ってくる。俺は後ずさりする。

 

「い、いやね!このカフェのメニューを知って、艦娘のストレス緩和に役立つものを調べて休日に紹介するためにいただけで…。」

 

「そうでありますか…。ならば、その役は自分がやる故、さっさと仕事に戻るであります。」

 

「でも…。」

 

「そ・と・だから優しく言っているだけでありまして…。…ここの出禁にされたいでありますか?」

 

「それって隊長も出禁になるんじゃ…。てか、どうしてここに…?」

 

「今佐々木中尉から連絡が来たでありますからねぇ…。サボってるって。」

 

「あのクソ野郎!」

 

「それで?もちろん、ここは海軍が払うのではなく、瀬戸大尉の自腹でありますよなぁ?」

 

「はい…。」

 

「よろしい。」

 

艦娘は誰もが知ってるように大食漢…。畜生、俺の財布の中身がどんどん減っていく。ぜってぇ許さねぇ…。美人だからって許されると思ってんのかこのクソアマ…。

 

「…その反抗的な目は一体なんでありましょうな?美人だからって許されると思ってんのか?このクソアマ…と?」

 

「ギクゥッ!そ、そんなことはあ、あははは…。」

 

「ふむ、やはりそう思っていたでありますか…。これは軍法会議ものでありますね…。」

 

「は?やってみろよ。」

 

俺は、この後めちゃくちゃ説教された。

 

「はぁ…。やっと終わった…。」

 

俺は、ぐったりしながら街を歩く。隣を歩くのは我らが隊長、あきつ丸。

 

「…どうしたでありますか?そこまで、落ち込んでいるでありますか?」

 

こいつ、ニヤニヤしながら聞きやがる…。嫌な野郎だぜ…。…だが、コイツくらいしか…同期であり、もう一人の親友と同じことを言えるのがコイツくらいしかいないからな。

 

「…俺は、憲兵より提督になりたかったなってさ。」

 

「瀬戸大尉が提督?寝言は寝てから言うであります。」

 

「うるせえ!…でも、俺は本当に提督になりたかったぞ…。憲兵のどこがいいんだ。鎮守府の外で、毎日のようにチヤホヤしているところを見せつけられて、極め付けは鎮守府の中に入れることさえ、招集のみじゃねえか。提督になれば、チヤホヤしてくれるんだろうな…。」

 

「はっ!チヤホヤ?提督とは人間性を見られているのであります。提督試験すら受けられない大尉にはこの職がお似合いでありますなぁ。」

 

「ウザっ!こう言うところは、女の子は慰めるところだぞ!」

 

「自分は女の子でありますが、憲兵を束ねる隊長でありますからな。のう?副隊長?隊長の言うことは絶対でありますからな?」

 

「クソアマが。」

 

「なんだと…?」

 

そして、またあきつ丸と喧嘩をする。

 

「そもそも、提督試験は受けたことはあるんでね!1番最後に落ちたのみだからな!受かっていれば、アゴで使えたことを忘れるな!」

 

「はっ!受かってもないやつがほざきやがるであります。大尉は大人しく外から恨めしそうに見るのが役目でありますからな!」

 

「テメェは艦娘だから鎮守府の中に出入り自由だからな!あー、うぜぇ!うぜぇぜ畜生!陸軍出身のクセして!」

 

「おやおや?そんな罵倒しか言えないのだから、大尉止まりでありますな!」

 

「「ガルルルル!」」

 

そんなことを言い合う。ふと気がつけば、見物人が少ない。夕焼けだった。

 

「はぁ…もう、言い争うのも疲れた。」

 

「逃げましたな大尉!自分の勝ちであります!やりますな!生涯大尉止まりの男!」

 

「チッ…。…ま、俺は大人なんでね。ガキの戯言など放っておくんで。」

 

そう言い争っても、一緒に帰るのだから、艦娘に「仲良いねー」などと言われるんだ。そして、あきつ丸が否定して、どれくらい嫌いかで俺をボコボコにしやがるからな。ほんとタチ悪いぜ。

 

「…自分は…。」

 

「あん?」

 

なんだよ。終わったと思ってたのにまだ続けるか。これからボコられる俺の気持ちにもなれってんだ。

 

「…自分は、憲兵が性に合うでありますよ。」

 

「うるせえ!」

 

「…提督なんて、いいもんじゃないであります。書類仕事に追われ、今では過労死もあるであります。今は特に、働き方改革の時代でありますから、外ではチヤホヤでも、中は鬼気迫る勢いでやっているのでありますよ。」

 

「…そうなん?」

 

「嘘であります。」

 

「死ね!」

 

「はっはっは。冗談でありますよ。」

 

「チッ…。」

 

「でも、自分は…瀬戸大尉が副隊長で良かったと思うでありますよ。優秀でありますし。」

 

「あん?」

 

急に、あきつ丸が言い出す。頭でも打ったか?さっきの喧嘩でおかしくなったか?プッツン行ったか?

 

「まあ、憲兵も意外と悪いものでもないでありますよ。」

 

「どうでもいい甘ったるい言葉をどうも。高カロリーで倒れそうだよ。」

 

あきつ丸が…隊長が久しぶりに無垢な笑顔になる。その笑顔は、まるで少女のように純粋なものだった。

 

「まあ、大尉の貴様は永遠にわからぬものでありましょうが。」

 

うん、いつものあきつ丸だ。

 

「うるせえ。俺は提督に…あっ。提督に、俺はなる!」

 

「くだらないことを言う暇があるのなら、さっさと走って帰れであります。」

 

「あぁん!?テメエ隊長だからっつって調子乗んなよクソアマ!」

 

「はっ!副隊長がほざこうが権限はこっちにあるのでありますよ。言葉を慎みたまえ。」

 

「Die。」

 

「Nein。」

 

そんなやり取りをしながら、俺たちは歩いていく。

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