【第一章完】四国?五国で良いんじゃね?   作:阿弥陀乃トンマージ

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第3話(3)糸を巻きつけてからのキック

「お、お前は……!」

 

「パイスーのあねご!」

 

「姉御が来てくれた!」

 

「アネゴ……これで勝てる!」

 

「……こいつらの親分ってことか」

 

「親分とかなんかダサいからボスって言ってよ~」

 

 パイスーと呼ばれた女が指で髪をくるくるとさせる。その指先から少し飛び出した白い糸がわずかに揺れる。タイヘイが目を細める。

 

「……蜘蛛の糸か?」

 

「そう」

 

「お前さん、人と蜘蛛を受け継ぐ『人虫』か?」

 

「は? 全然違うんだけど」

 

 笑みを浮かべていたパイスーの顔つきが変わる。

 

「そ、その女は、人と蜘蛛の妖怪のハーフ、『人妖』です……」

 

「知っているのか、モリコ⁉」

 

「う、噂レベルですが……」

 

「蜘蛛……」

 

「油断しました……『オニグモ団』のボスが蜘蛛の流れを受け継ぐ者で、こうして蜘蛛の糸を自由自在に使えるとは……」

 

「……オニグモ団からある程度推測できないか?」

 

 蜘蛛の巣でもがくモリコをタイヘイはやや呆れた視線で見上げる。パイスーが呟く。

 

「アホコウモリはとりあえず放っておいて……」

 

「だ、誰がアホコウモリよ!」

 

 パイスーはモリコの声を無視し、タイヘイを見つめる。

 

「うちのかわいい鬼たちを随分とかわいがってくれたみたいじゃないの?」

 

「いきなり向かってきたからな、自己防衛をしたまでだ」

 

「ふん、いずれにせよ、お礼はさせてもらうよ……」

 

「む……」

 

 パイスーが身構えたため、タイヘイも身構える。パイスーがぶつぶつと呟く。

 

「見た感じ、石頭の超人であり……かまいたちの斬撃も使える……ってことは、超人と妖のハーフ? あまり聞いたことがないんだけど……」

 

「?」

 

「接近するのは愚策だし、距離を取ってもヤバい……」

 

「さっきから何をぶつぶつと言っている?」

 

「……となると、やっぱりこれっしょ!」

 

「うおっ⁉」

 

 パイスーが両手で銃の形を作り、その指先から大量の糸が吐き出される。大量の白い糸はあっという間にタイヘイの頭部を覆ってしまう。パイスーが笑う。

 

「ふふっ、うまくいった!」

 

「くっ、視界が……」

 

 タイヘイが糸をほどこうとする。

 

「その糸はなかなかほどけないよ!」

 

「なに?」

 

「むしろほどこうとしたら余計に絡まる感じかな?」

 

 タイヘイの頭部を覆っていた糸がさらにこんがらがる。

 

「~~ぐっ!」

 

「あ~あ、言わんこっちゃない」

 

 パイスーがクスリと笑う。

 

「ならば!」

 

「え⁉」

 

 タイヘイが両腕を鋭く尖らせて糸を切ろうとする。

 

「これなら!」

 

「させるかっての!」

 

「ぬおっ⁉」

 

 パイスーが右手を横に振り、タイヘイの両腕と二本の大木を糸で縛り、タイヘイは両手を磔にされたようになる。パイスーが呆れ気味に苦笑する。

 

「かまいたちの力をハサミ扱いする奴は初めて見たわ……」

 

「う、腕が動かん!」

 

「これで、アンタは視界も奪われ、石頭も斬撃も使えない……アンタの力は抑えたよ」

 

「……」

 

「そこで黙る? 嫌な感じだね……一応、念の為……!」

 

「ぬ!」

 

 パイスーは先ほどと同じ要領でタイヘイの両足を二本の大木と糸で縛りつける。タイヘイは立ったまま、大の字状態になる。

 

「足の自由もこれで奪った……」

 

「ど、どうするつもりだ⁉」

 

「こうするつもり!」

 

 パイスーは自らの真後ろにそびえる大木の太い枝に糸を巻き付け、上に勢いよく舞い上がる。そのまま太い枝を支点にして何回か回転し、さらに糸を伸ばして、勢いに乗った状態でタイヘイに向かって飛び込む。モリコが声を上げる。

 

「タイヘイ殿!」

 

「な、なんだ⁉」

 

「パイスーキック‼」

 

「ぐほっ⁉」

 

 パイスーのキックがタイヘイの腹にめり込む。

 

「ふふっ、勝負ありでしょ?」

 

「くっ……な、なんの!」

 

「あらまだ元気があるの? そんじゃあ、もう一丁!」

 

 パイスーが糸を伸ばして高い木の枝に結び付け、飛び立つ。

 

「糸の伸縮が自在とは……!」

 

「それくらい出来ないとね!」

 

 パイスーがモリコの言葉に応える余裕を見せつつ、また何回か回転する。素早い回転で、その音がタイヘイにも聞こえる。

 

「な、なんだ、このビュンビュンとした音は⁉」

 

「それを知る必要はないよ!」

 

 パイスーが再び、回転の勢いを利用した鋭いキックを繰り出す。強烈なキックがタイヘイの腹に当たる。モリコが叫ぶ。

 

「タイヘイ殿‼」

 

「ふっ……」

 

「効かん!」

 

 タイヘイがパイスーの蹴りをはね返す。パイスーが驚きながら、着地する。

 

「なっ……⁉」

 

「来ると分かっていれば、耐えられる!」

 

 タイヘイが腹を突き出す。パイスーが首を傾げながら呟く。

 

「頭だけでなく、体も硬いってこと? いや、そんなことはまずありえない……全身が強化されているなんて、そんなの超人でも滅多にいないはず……」

 

「ぶつぶつ言っている暇があるなら、遠慮なく反撃するぞ! うおおおおっ!」

 

「はっ⁉」

 

 パイスーが驚く。タイヘイが糸に結ばれたまま、両腕を動かし、大木を引き抜こうとしたからである。タイヘイがさらに声を上げる。

 

「うおおおおっ!」

 

「た、大木を引き抜く⁉ なんていう怪力よ! 一旦離れる!」

 

 パイスーが糸を伸ばして、上方に逃れる。モリコが告げる。

 

「タイヘイ殿! 蜘蛛女は上に逃れました!」

 

「何時の方向だ⁉」

 

「えっと……2時の方向です!」

 

「そうか! ……って、聞いてはみたが、よく分からん……斜め上ら辺にいるんだな!」

 

 タイヘイがニヤリと笑う。

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