【第一章完】四国?五国で良いんじゃね?   作:阿弥陀乃トンマージ

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第2話(2)南西の森

「……って、勢いよく走り出してみたはいいけれどよ……」

 

 タイヘイが周囲を見回す。似たような森が続いている。

 

「南西の森……本当にこっちで良いのか?」

 

 タイヘイは地図を広げて確認する。地図には『この辺!』とだけ書かれている。タイヘイはため息をついて地図を閉じる。

 

「はあ……あの爺さんも結構アバウトな性格なんだな……まあ、ろくに確認もしないで出てきた俺も俺だけどよ……うん⁉ なんだ⁉」

 

 なにか物音がした為、タイヘイは周囲の様子を伺う。

 

「…………」

 

「風で木の葉が揺れたのか……って、そんなわけねえだろう!」

 

 タイヘイが拾った石を投げる。

 

「痛てっ!」

 

 人の姿をした翼を生やした者が姿を現す。タイヘイが驚く。

 

「!」

 

「ちっ、なかなか鋭いじゃねえか……」

 

「て、適当に投げてみたら当たった……」

 

「適当かよ!」

 

「なんだお前……『鳥人』って奴か?」

 

「違えよ!」

 

「違うのかよ! ごめん!」

 

「あ、ああ、分かれば良いんだよ……」

 

 タイヘイが素直に謝ってきた為、翼を生やした者は面食らう。

 

「じゃあ……」

 

「ちょ、待てよ!」

 

 自然にその場を立ち去ろうとするタイヘイを、翼を生やした者が呼び止める。

 

「なんだよ?」

 

「なんだよじゃねえ! 俺らの縄張りに入り込んできてタダで帰れると思うなよ⁉」

 

「お前らの縄張り?」

 

「そうだ!」

 

「ここはお前ら鳥人の縄張りか?」

 

「だから違えって言ってんだろう!」

 

「? でも、鳥みたいな翼生やしてんじゃねえか」

 

「顔や体は人間だろうが!」

 

「ああ、まあ、それはそうだな……」

 

「なんだよ、その反応は?」

 

「正直、いまいちよく分かってねえんだ……」

 

 タイヘイが首を傾げる。翼を生やした者が不思議そうに見つめる。

 

「お前、知らねえのか? 俺らは人と獣のハーフ、『人獣』だよ」

 

「人獣……」

 

「厳密に言えば、人鳥か」

 

「ふ~ん、亜人連合とやらとは違うのか?」

 

「あんな野蛮な奴らと一緒にするな!」

 

「そうか、悪かった、すまん」

 

「わ、分かれば良いんだよ……」

 

「それじゃあ……」

 

「いや、だから待てよ!」

 

「……なんだよ?」

 

 タイヘイがウンザリしたような顔になる。

 

「俺らの縄張りに入ってきて、タダで済むと思うなよって言ってんだよ!」

 

「ああん?」

 

「石をぶつけられた仕返しだ! 痛めつけてやるよ!」

 

「どこが野蛮な奴らと違うんだか……?」

 

 タイヘイが首を傾げる。

 

「そらっ!」

 

「む!」

 

 翼を生やした者がその翼を思い切りはためかせ、砂や小石、折れた木の枝をタイヘイに向かって飛ばす。タイヘイはそれを防ぐのに精一杯になる。

 

「ははっ、手も足も出ねえな!」

 

「……そんなもんか?」

 

「あ?」

 

「お前の巻き起こす風はそんなもんかって聞いているんだよ」

 

「じょ、上等じゃねえか! 体ごと吹き飛ばしてやるよ!」

 

「おっと!」

 

 翼を生やした者がさらに強く翼をはためかせる。タイヘイの体が浮き上がり、大木に向かって飛んでいく。

 

「ははっ! ぶつかって終わりだ!」

 

「……そうはいかねえよ!」

 

 タイヘイが大木を蹴り飛ばし、その反動で翼を生やした者との距離を一瞬で詰める。

 

「なっ⁉」

 

「おらっ!」

 

「がはっ⁉」

 

 タイヘイの頭突きを喰らい、翼を生やした者がその場に崩れ落ちる。

 

「ふう……」

 

「サ、サブローがやられた⁉」

 

「ん?」

 

 翼を生やした者があらたに姿を現す。

 

「て、てめえ! 許さねえぞ! よくも弟を!」

 

「弟って……」

 

「俺はそのサブローの兄貴、ジローだ!」

 

「そうか。許さねえって、どうするんだい?」

 

「こうするんだよ!」

 

「うおっ!」

 

 ジローがタイヘイに接近し、顔面を連続で突き出してくる。

 

「そらっ! そらっ!」

 

「な、なんだ、顔を近づけてきやがって⁉」

 

「鳥がくちばしで相手をつつくあれだよ! 俺にはくちばしはねえが、あの速さなら真似出来るってわけだ! そらっ! 喰らえ!」

 

「く、唇突き出してきて、不気味なんだ……よ!」

 

「ぐはっ⁉」

 

 タイヘイの頭突きカウンターが綺麗に決まり、ジローがその場に崩れ落ちる。

 

「な、なんなんだよ……」

 

「ジ、ジローまで⁉ よくも弟だちを……て、てめえ、許さん!」

 

「どわっ⁉」

 

 あらたに現れた翼を生やした者が空中からタイヘイを蹴りつける。

 

「サ、サブロージローときたら……今度はイチローか⁉」

 

「シローだ!」

 

「なんでだよ!」

 

「家庭の事情だ!」

 

「ちっ!」

 

 タイヘイがジャンプし、シローと同じ高さまで飛び上がる。シローが驚く。

 

「な、なんだ、そのジャンプ力は⁉」

 

「うらっ!」

 

「ごはっ!」

 

 タイヘイの頭突きを喰らい、シローは地面に落下する。

 

「……片付いたか?」

 

「三兄弟を簡単に退けるとは……なかなかやるじゃないの」

 

「⁉」

 

 タイヘイが声のした方に目を向けると、木の枝に逆さまにぶら下がった女の姿があった。

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