期限付きの偽婚約者ですがなぜか国王陛下(代理)に懐かれてます。   作:咲吉

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08: お仕事の相談

 

 片手をアレックスに取られたまま顔を赤くして心臓を抑えて悶絶しているルナリアにアレクがけらけらと笑い出した。

 

 「マルクス、君の妹面白いね。ルナリア嬢、ちゃんと息してね」

 

 知らず知らずのうちに呼吸をとめていたルナリアは慌てて息を吸い込んだ。

 ひっひっふー、ひっひふー、とちょっと違う呼吸法にアレックスはまた肩を揺らして笑う。いつまでもルナリアの手をとったままの彼を兄が咎めた。

 

 「アレク」

 「いいじゃないか減るもんでもないし」

 

 アレックスがやれやれと肩を竦めた。小首をかしげるまでセットだ。ただそれだけなのにキラキラが飛んでいる。

 シャラララララ〜と効果音まで聞こえてきた。ルナリアは思わず両手で口元を塞ぐ。

 

 「ルナリア嬢は面白いね。退屈しなさそうだ」

 「妹は箱入りだったんだよ。だから免疫がないだけだ」

 「そのようだね。それにルチア様に似ているね。髪の色はラフロイ様か。マルクスには似ていない」

 「そっくりだろうが」

 

 ルナリアは自身の髪を一房取った。元々の銀髪を隠して父と似た色にしている。本当の姿の色は誰にも似ていない。この国で瞳の色も髪の色も違う場合、両親の子どもではない、と疑われる可能性もある。もちろんルナリアは正真正銘ふたりの子どもだ。ただ先祖の血が濃かっただけである。

 

 _______ルナちゃんは特別なの。決してこの色を見せてはダメよ。

 

 そういえば母も銀色に近いグレイヘアーだった。ルナリアの方が金色に近かったので母はいつも心配していた。

 

 「どうしたんだい?」

 

 少しぼんやりとしてしまったルナリアにアレックスが声をかけた

 

 「…あ、アレックス様がかっこよすぎて直視できません」

 「ハハハ。素直でよろしい」

 

 いい子だね、とヨシヨシと頭を撫でられる。寝起きで櫛を通しただけの髪を触られて「ひゃい!」と飛び跳ねてしまったのは色々と慣れていないからだ。

 

 父と兄には慣れたが、それでも心のどこかで前世の記憶がよみがえり恥ずかしくなる。家族の欲目もあるがふたりは普通にイケメンだ。それ以上のイケメンがこの御人である。

 

 「マルクス、この面白い妹、俺にちょうだい」

 「駄目に決まってるだろうが!!」

 

 ルナリアは未だ頭を撫でらるがままにされている。耳も顔も真っ赤で「イケメンに撫でられてる。なんて至福」と片言で呟くルナリアに兄が白い目を向けた。もちろん妹がイケメンに弱いことをちゃんと知っている。ただしルナリアの行動範囲には自分や父以上のイケメンを見かけたことがない。

 

 (眼福至福イケメン万歳!イケメンは正義!)

 

 思わずよだれを垂らしそうになったルナリアだが何とか唇をしっかり閉じた。危ない危ない。このままではただの変態になってしまう。

 

 「それで、話を戻すがルナリア嬢が仕事を探しているのかい?」

 

 メイドの「紅茶が入りました」という声で我に返ったルナリアは淑女の嗜みを思い出したようにそそくさとソファーに座った。その切り替えの早さにまたアレクが笑う。いちいち反応されても恥ずかしいので、ルナリアは気にしないふりして紅茶を一口飲んだ。

 

 「俺は許さないからな」

 「……貴族の女性ならあまり歓迎されたことではないことはわかっています」

 

 領地では決して仕事をさせてもらえない。だからはるばる王都まできたのだ。兄に言った通り兄の仕事中に受けるつもりだ。「今日何をしていたの?」と聞かれた時に嘘を吐くのも心苦しいし、兄なら安全なアルバイト先を紹介してくれるのではないか、という下心もある。そして訊ねてみたのだが、兄から答えを聞く前にアレクックスがやってきて今だ。

 

 「…ふむ。つまり、マルクスが許せるような安全なアルバイトならいいか?」

 「そんな場所あるのですか?!」

 「うん」

 

 にっこりと微笑まれてルナリアはその笑顔の眩しさに目をぎゅっと閉じる。ルナリアの新鮮なリアクションにアレクッスはまたケタケタと笑い始めた。

 

 「アレク」

 「ふふふ。ごめんごめん。実は今週末パーティーがあるんだよね。その時に同伴してくれるパートナーを探しているんだ。そのパーティーに私と出てもらえないか?」

 

 アレクは「もちろんアルバイト代は払うよ」と笑った。

 

 「なあに、そんな堅苦しいものではないさ。ちょっと喋って、ダンスして帰ってくればいい」

 

 今週末は王城の小広間でダンスパーティーがある。不定期で開催されるそれは主に出逢いの目的だったり、情報交換の場だったり人ぞれぞれ出席する理由は異なる。今回の主催はメディルック公爵家が主催であり、ルーウェン侯爵家と親戚筋に当たるため、強制参加だと肩を落とした。

 

 「あの、私はデビュタントも」

 「うんうん、聞いているよ。でも別に出たくなかった訳ではないでしょ?」

 「…マナーとか」

 「大丈夫、大丈夫」

 

 アレクは気軽に「平気平気」というが、そういう問題ではない。そもそもパーティーなどに出たことがないのだ。どんな粗相をするかも分からない。

 それにそもそもの大前提でパーティーに着ていけるドレスや装飾品なども持っていない。

 

 

 

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