黒十字の大鷲は、名も亡き桜と夢を見る   作:千年帝國ノ禍鴉

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個 体 名 :ラウラ・ボーデヴィッヒ
個体番号:088
型  式:新兵教導 兼 兵装実験型
所  属:仮称【第666SS妖精旅団】,武装親衛隊直属特殊兵士育成機関『黄昏機関』
教導対象:特殊任務遂行部隊『黒ウサギ隊』及び『【総統(特秘)命令ノタメ削除済ミ】』
軍 用 機(軍事運用機) :超重駆逐爆撃機「アース」,「アングルボザⅡ(ラグナロク計画)」,
汎 用 機(通常運用機) :急降下爆撃機「Ju87(Junkers Ju 87) シュトゥーカ(Stuka)
担 当 者 :三静寂ヴェローニカ



Noch 5840 Tage【残り5840日】
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 ___令和2X年某月

 

「(私・・・いや、()は確かにあの時、太平洋上空で死んだはずだった。)」

 

 ドイツ第四帝国の某所にある軍施設のとある部屋で、女性…否、少女は今までの出来事を振り返っていた。

 

「(別の史実を歩んだ大日本帝国に転生し、軍学校卒業後海軍に入った。しかし閉所恐怖症のため飛行機乗りに。軍学校で真面目に取り組んだおかげで教官たちからの好感度は高かったため融通が通った。開戦後は空母赤城に乗艦し、真珠湾攻撃に参加。その後は……うぐっ…落ち着け、ゆっくりと思い出していけばいい。)」

 

 幾度目かの世界への誕生ゆえか、旧い記憶が曖昧になり頭痛を起こす。

 深呼吸を数回。痛みは引いてゆく。

 

 この少女は、前世で大日本帝国に孤児として転生。それもただの帝国ではなく、別の史実を歩む所謂「別世界」の大日本帝国に転生した。

 その世界では、クーデターで南条政権を崩壊させ新政府を樹立。新首相による新政権のもと陸海軍の相互協力体制を整えた。中国を進行している陸軍を早期撤退させ陸上戦力を備えたうえで、全世界支配を掲げる米帝への宣戦布告を事前に通達した上での「ハワイ攻略作戦」を実施。味方への被害も最小限で済んだだけでなく、大量の重油や資材、大型艦の鹵獲まで、作戦は大成功。

 その後、帝国はドイツ第三帝国・イタリア帝国と手を結び三国同盟を締結。物量と武力を振るってアジアを好き勝手にしてきた米英への批判が高まり『打倒鬼畜米英』の動きが同盟国やその周辺国で増大した。

 

 大規模・小規模な作戦を多数にわたり成功させ、勝利を続ける枢軸国軍。英国はデンマーク海峡海戦による敗北、マレー沖海戦での東洋艦隊壊滅による海軍の弱体化とドイツ軍と真正面から対峙したのもあり、早期に降伏。ソ連は日独伊と相互不可侵条約を締結。対米戦への舵を切っていた。

 

 反対に、敗戦続きの米政府は冷静さを欠いていた。東からはドイツ第三帝国の悪魔の手が、西からは己を喰らい尽くさんかという勢いで迫りくる大日本帝国と赤き鉄の槌で星屑(アメリカ)を砕かんとするソヴィエト連邦が。世論だけでなく軍内部の一部からも「講和に臨むべきでは」との声が出始めていた。

 

 冷静さを欠いた者は何をしでかすかわからない。故に、冷静さを欠き支持率の低下で後のない米大統領「ヘンリー・ルーズベルト*1」は大博打に出た。

 陸海空軍の総力を用いてハワイの日本軍を攻撃。航空隊による絨毯爆撃に始まり、戦艦による砲撃。潜水艦による艦艇狩り。隙をついての陸軍・海兵隊の上陸。鬼気迫る米軍の攻撃により日本軍は壊滅。初めての敗北であった。

 

「(米帝の屑どもは物量に任せてハワイを蹂躙。施設・滑走路を整えたのち、帝国の天敵(日本国民のトラウマ)でもあるB(ボーイング)の新型を使い帝都に、罪なき帝国国民を、神の子であらせられる皇族の方々を世界から抹消するためにあの忌々しい原子力爆弾を落そうとしてきた。)」

 

 米帝は中国米軍航空基地など多方面から本土爆撃を仕掛け、それに日本軍の目と迎撃機が行っている隙を突き『ボーイング』の新型爆撃機『B-36 フライング・バトルシップ』を使い、超高高度高速力で帝都に侵入。その腹に抱えている原子力爆弾を落し、帝都を灰燼に帰そうとしていた。

 

 そうはさせまいと現れたのは局地戦闘機「震電」の生まれ変わりである「蒼萊」__その噴式改良型である「蒼萊改」に乗る『彼等』だった。B-36(シロナガスクジラ)に群がる敵戦闘機(コバンザメ)を「蒼萊改」の圧倒的性能とパイロットの技能で粉砕。だが、絶対必殺の57mm機関砲をもってしても空飛ぶ戦艦__原子力爆弾などという終末兵器を抱える一際(ひときわ)特別な超戦艦__に決定的なダメージを与えることはできなかった。

 

 そこで『彼』は一つの決断をした。共に出撃していた『彼等』を弾薬・燃料補給と言う名目で一時撤退させ、自分は偵察として超戦艦を追った。しかし『彼』は『彼等』を戦線へ戻す気はなかった。

 『彼等』が目からも電探からも消えた途端、『彼』は機首を敵機へと向けB-36と向き合う形をとった。『相棒』は弾切れ、燃料も極僅か。翼に穴も開いている。飛んでいるのがやっとの状態だ。そんな状態で何ができるのか。できるとするのならそれは【体当たり】のみである。

 

 そう。『彼』は超戦艦に対し真正面から『特攻』を仕掛けるつもりであった。

 それに感づいた敵は機銃を掃射。二基四門の少ない機銃とはいえ、恐ろしい連射力による弾幕で『彼』の視界は埋められた。しかし、『彼』の操縦桿を固定する腕はピクリとも動かない。覚悟はもう決めている。

 ロケットブースター点火用のスイッチに手を掛ける。今の『自分』は射手だ。スイッチは『引き金』。弾丸は『自分』と『相棒』。

 『相棒』に「すまない」と心の内で謝罪する。『相棒』はもう一人の『自分』とも呼べる存在だ。その存在を『自分』だけの我儘で心中しようとしているのだ。

 

 照準は合わせた。そしてついにスイッチを押した。

 ロケットブースターは唸り声を響かせ、「蒼萊」を弾丸へと変える。しかし、敵の弾幕により防風硝子が砕け、左翼が折れてしまった。視線の先では敵機の搭乗員たちが歓喜している。落せたと確信したのだろう。『彼』は「ここまでなのか」と絶望し、『奴等』に憎悪の目で睨みつける。

 

時間がゆっくりとなる。

 

 不思議なことが起こった。

 『相棒』は翼が折れてもなお堕ちようともしなかった。敵の弾は確かに当たっている。しかし、穴が開こうとも今にも右翼が折れそうなのに『相棒』は敵機に向かい進んでいっている。

 

 「蒼萊」は受け入れたのだ。『相棒』として『彼』との最期を。もう一人の『彼』として最期を共にすることを。

 

 『彼』は涙を流した。そして、絶望を振り切り敵を真っすぐに捉える。

 

 『彼』は叫んだ。「もっと!もっと速く!」と。

 

 「蒼萊」は『彼』の想いに応えるかのようにさらに加速する。 

                         ___1137km/h 最高時速到達

 一心同体と化した「弾丸」はさらに加速する。

                         ___1300km/h マッハ1到達

 

 『彼』は歓喜していた。「蒼萊改」は、『相棒』は限界を超えたんだと。不可能を可能にしたんだと。『相棒』は無機質だ。しかし【心】が【意思】が確かに在るのだと喜んだ。

 

 敵空中戦艦の搭乗員たちは、みなその顔に絶望を浮かばせていた。『彼』は「ざまぁみろ。」と笑った。

 『相棒』がわずかに上下に揺れた。きっと『相棒』も同じく笑ったのだろう。『彼』はさらに嬉しくなった。

 

 ついに「蒼萊改」と「B-36」の影が重なった。

 「B-36」の操縦席を貫通した「蒼萊改」は胴体を喰らい、雑魚を血祭に挙げながら「原子力爆弾」の前に姿を現した。

 

弾丸(「蒼萊」)心臓(「原子力爆弾」)を貫いた。

 

 そして、『自分達』の視界は純白色に染まり、意識は漆黒の闇へと堕ちていった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 そして遥かなる歳月が過ぎ、ドイツのとある施設で新たな生命が造られた(生まれた)

 

「(そう確かにあの時死んだ。自分でも死んでいくのも己の身体が消えていくのも分かった。しかし、私が…おれ…いや、もういいか。__私が目覚めたのは培養液であろう黄緑色の液体で満たされた硝子筒の中。しかも時の流れが100年も進んだ世界だった。それも絶世の美女と言っていいほどの女性の身体で、だ。)」

 

「(差異があるとはいえこの体は「ラウラ・ボーデヴィッヒ」そのもの……また別世界かと思ったが)」

 

 「ラウラ・ボーデヴィッヒ」とは、ライトノベル『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』に登場するキャラクターである。本来ならば現実にいるはずのない人物。

 『彼女』はこの世界を『IS世界』と仮定し、他のキャラクターの現在を調べた。

 『ラウラ・ボーデヴィッヒ』というキャラクターは、生体兵器で所謂「試験管ベビー」である。その設定故か誕生日不明、年齢も不明だった。当作では高校一年生という設定だったが、『ラウラ・ボーデヴィッヒ』は兵器。生まれた当初の容姿は不明だが知能は高水準のはずなので例え小学生の容姿でも飛び級と言う形で入学もできる。

 

 『彼女』は軍や「政府」の伝手を使いイギリス・フランス・中国・日本にいるであろうとある人物たちを探した。調べ終えた末、彼女は『IS』の「ア」の字すら始まっていないことが分かった。

 『オルコット』『デュノア』『凰』『篠ノ之』『更識』の存在は確認できた。しかし『ラウラ・ボーデヴィッヒ』と同じメインキャラクターである『セシリア』『シャルロット』『鈴音』『箒』『簪』『刀奈』が確認できなかった。だが『束』と『千冬』のチートキャラは確認できた。8歳であった。

 原作では『篠ノ之束』は24歳。『織斑千冬』も同年齢だ。この二人が8歳の時点で今現在は原作16年前。己が生まれたのが12年前、単純計算で原作開始直後には『彼女』は28歳である。 ___『私』の同年齢はイタリアの『アリーシャ・ジョセスターフ』か。たしか、【第2回モンド・グロッソ】の決勝戦まで上り詰めるほどの実力者だったはず。軍に引き込めないかな。ついでに専用機の「テンペスタ」も。

 

 それよりも、『一夏』が見つからないのは未だ研究所内で秘匿にされているからか。もしくは未だ造ら(生ま)れていないのか。どちらにせよ、よくもまぁ世界陸軍序列第三位の『陸さん(日本陸軍)』から逃げられるものだ。__もちろん序列一位は我がドイツ陸軍だ。

 

「(しかし、まさかこの世界、『多重クロスオーバー』だとは。)」

 

 覚醒後、下着の上から白衣を着用している女性_『三静寂ヴェローニカ*2』博士から世界情勢を説明された。

 

 なんとこの世界、前世の延長線上の世界。つまり【未来】であった。

 『彼』の特攻後、日独伊は戦争に無関係な一般市民を虐殺しようとした米国を非難。アジア圏各国だけでなく英国、さらには米国民まで政府を強く非難。陸軍に至っては政府に対しクーデターを決行。

 

 ドイツ軍は「同盟国に対する殲滅攻撃の報復」と称し大西洋側から「パナマ運河」含む米国の重要拠点及び大西洋側の軍施設を過剰なまでに徹底攻撃し更地にした。しまいには秘匿兵器を用いてホワイトハウスへ遠隔起動式の超質量爆弾を投下。脅迫まがいのビラも国中にばら撒き、国民を恐怖によって動かしさらに反政府の動きを活発化させた。

 

 数々の要因によりルーズベルトは衰弱死。臨時大統領に就任した『ビル・トルーマン*3』は枢軸国に対し無条件降伏。枢軸国の大勝利で世界大戦は幕を閉じた。そのため戦勝国であるドイツは今でも【NSDAP】が健在。現在は【ドイツ第四帝国】となっており、総統は『アドルフ・ヒトラー』。次期総統に愛娘の『アドルファ・ヒトラー』を推している。__なお総統はアドルファを溺愛しているので、国民からは「親バ閣下」のあだ名で親しまれているとか。

 

 大日本帝国は日本国に改名。米国の降伏後、核兵器禁止条約を発案。案は採決され、全世界で原子力系統の情報は軍と政府の極一部のみが管理。原子力発電も軍が徹底して管理をするようになった。___日本については後日話すことにしよう。

 

「(この世界が原作通りに進むのだとしたら、非常に厄介であり最悪だ。)」

 

白騎士事件(最悪の始まり)】【女尊男卑(悪夢)】【女権団体(愚者共の巣窟)】【アラスカ条約(その場しのぎ)】【モンド・グロッソ(世界最強(笑)決定戦)】【IS学園(警備ガバガバ)】【ゴーレム襲撃(主人公の成長確認)】【VTシステム(踏み台)】【福音事件(またやらかす米国+イスラエル)】【亡国機業(戦争屋)】【名も無き兵たち(こりない米国)】【天災(バグスペックした狂人)】【ワールド・パージ(歪な恋の叶え方)】【織斑計画(究極兵製造計画)】……あれ、挙げだしたらきりがないぞ?

 

「(あぁ、あとアレだ。影の政府*4の『海の目(U・マック)』もある。亡霊(亡国機業)と手を組んでそうだしなぁ。)」

 

 組んでないといいなぁ…。でもあの戦争しか脳にない寄生虫(影の政府)だしなぁ…。あの腐肉に群がる蠅(亡国機業)だしなぁ…。

 亡国機業に関しては、蜘蛛(オータム)は兎も角太陽(スコール)は結構優秀だし味方にしときたい。そしたら恋人の蜘蛛もおまけで付いてくるし。でもミューゼル家ってずっと亡国機業の幹部の一柱だった気がするし難しいか? しょうがない、米軍に所属している時に何度かしつこく勧誘してみるか。

 

「んあ~~~~…ふぅ」

 

 書類仕事に区切りがついた。凝りをほぐし一服(コーヒーを一杯)。前世日本で『大石蔵良』司令長官直々にお勧めされた珈琲豆から挽いたものだ。水はアルプス山脈の天然水を使っている。総統閣下や上官、同僚、部下にも振舞い絶賛されたほどだ。当たり前である。司令長官のお墨付きだからな。アドルファちゃんには甘めのコーヒー牛乳だ。大人ぶっているとはいえまだ子供だからな。

 

 __うむ。美味い。

 

 窓の外を眺めると、航空隊の新兵たちが飛行訓練から帰投したところだった。『彼女』がいる執務室は防音加工されているため外の声は聞こえないが、きっと担当教官にしこたま扱かれた新兵たちの悲鳴が響いているのだろう。聞けないのが非常に残念だ。

 

珈琲をもう一口。まだ熱い。

 

 そして『彼女』は再び【IS(世界)】について、今後どう行動すべきかを考える。

 

「(出来るなら過去改変はしたい……が)」

 

 下手に手を出していいものかと考える。

 

「(いや、『俺』が『ラウラ・ボーデヴィッヒ』になり、『インフィニット・ストラトス(原作)』の過去が『紺碧の艦隊(別世界)』な時点で世界は狂っているようなもの。)」

 

「(それに、救える命があるのに見捨てれば『彼等』に会わす顔がない)」

 

 「救える命」。例えば【オルコット】や【デュノア】だ。

 オルコット夫妻は列車事故で。シャルロット・デュノアの実母__『レティシア・ミィシェーレ』は病気が原因*5だったか? これらは対策をしていれば防げたかもしれない出来事だ。

 

 むろん、別世界故の事象でこれらが起こる事はないのかもしれない。しかし、【物語】という世界の特性上【修正力】なるものが存在しないとも言い切れない。

 

 【過去】を改変したせいで本来起こるはずだった【結果】が起こらなくなった。

 しかし、【修正力】はその【結果】を実現しようとし、如何なる【過程】を使っても成そうとするだろう。

 

 オルコット夫婦で表すのなら、「夫婦旅行で列車に乗る」が【過程】、「事故で死亡」が【結果】だろう。

 

 「(もしや、【世界(インフィニット・ストラトス)】にとって「事故によるオルコット夫妻の死亡」が【過程】で「セシリア・オルコットの孤立」が【結果】なのか?)」

 

 ___そうなのだとしたら、【世界】は随分と非道だ。まだ精神的にも肉体的にも未熟な子供にそのような仕打ちをするとは……。もし仮にこれが神の仕業なら『私』直々にムッコロ!!してやる。

 

「(いっそ、今からでもオルコット家に投資するか?)」

 

 『私』は【物語】にとって異端な存在だ。これまでの経験上、【世界(修正力)】は異端(イレギュラー)な存在には干渉力が小さい。

 それに【物語】と言うモノは『異端』という【害悪】にとことん弱い。原作を知る『部外者(転生者)』が本来死ぬべきキャラを助けると、どうもそれ以降助けられたキャラに修正力は効果が発揮されないことは確認済みだ*6

 これは恐らく、「助けられたキャラの存在の()が【世界】の枠から外れている【害悪】側に呑まれるため【世界】の修正力が正しく働かないのでは。」というのが自論だ。

 

 ならば、『オルコット』や『レティシア』に起こるであろう【結果】を意味無き物にするために、【害悪(異端)】側に吞み込めばよいという結論を出した。

 

 オルコット家はOberklasse(上流階級)だ。政府への発言権も強く。色んな企業に顔が利く。もし取り込むことが出来たら英国政府への具申のさい援護してくれるのではないだろうか。もし実現すれば英国軍との協力体制を更に強化することもできる。よし取り込もう。絶対に呑み込もう。

 

 『レティシア』は時期的に妊娠中のはず、彼女の行きつけの病院内部に部下を回しておこう。言い方は悪いが、『アルベール』『レティシア』そして正妻の『ロゼンダ』の両者に恩を売っておけば、『IS』が世に放たれたとき強力な手駒になってくれるだろう。それにこちら(ドイツ)に取り込むことが出来れば、『シャルロット』を狙う馬鹿どもは手を出せなくなるだろう。

 軍としても将来彼の会社が生み出す『ラファール・リヴァイヴ』の汎用性は実に興味深い。ぶっちゃけ言うと欲しい。もちろん実験機としてだが。

 

「(今度菓子折り多めに持って両大使館に行って、大使経由で取り合えないか聞いてみるか。お世話になるし、お世話になってるし。)」

 

 ___フランス大使は和菓子が好きだったな。揚げ饅頭でいいかな? いや、詰め合わせにしておこう。

 ___イギリス大使は寿司が好きだったな。特大サイズの持ってって家族と食べてもらおう。ついでに店も紹介しとこ。

 

「(一応はこんなもんか。)」

 

 今後についての区切りをつけ、今度は砂糖マシマシのコーヒー牛乳で一服。堅苦しい思考は甘ったるい劇物で流し落すに限る。

 

 16年後には世界が狂ってしまうことが起きて、面倒ごとの波が押し寄せる。だが、昔より緩くなったとはいえ今尚独裁国家である『ドイツ』と『ソ連』はさほど【女尊男卑】の影響はないだろう。それに、馬鹿がやらかしたら【秘密警察(ゲシュタポ)】が出動するんだし。軍としても『私』としても『決められた人しか動かせない道具』なんて無用の長物に興味はない。良くて技術面での模倣と使い潰し。悪くて実験兵装の的だ。

 

「(的だなんて、制作者(篠ノ之束)が聞いたら殺しに来そうだな。)」

 

 他人には興味を一切持たない細胞レベルでチートのあの人格破綻者のことだ、まるで綺麗好きの主婦が台所でGの死体を見るような眼で睨みつつ罵詈雑言を浴びせながら嬲り殺してくるだろう。または「死ね」と一言放ってから首をもぎ取りに来るか。

 

 『彼女』は「おおー恐い恐い」と嗤う(笑う)。『彼女』は自分の命が危険が迫ろうが嗤う(笑う)嗤い(笑い)続ける。嗤い(笑い)続けるのをやめることはない。

 

「(さて、さっさとこの無駄に多い書類軍を片付けるとするか。)」

 

 ___チビ達と遊んでやらなきゃいけないからな。

 

 チビ達との交流は、軍生活で『私』を襲う頭痛や胃痛を和らげてくれる癒しの一つだ。

 体調不良の原因……害虫駆除(レジスタンスの弾圧)、上官方のお相手、新兵たちの教育、技術部の変態兵装の実験役、各部署代表との会議、総統閣下の愚痴の聞き相手、アドルファちゃんの遊び相手……。あれ?後半あたり__総統関連仕事関係ねぇじゃねぇかっ!!

 アドルファちゃんと遊ぶのは楽しいがな。料理作ってあげたら美味しそうに食べるし、お菓子あげたら口いっぱいに入れて食べるし、寝顔は可愛いし、寝言も可愛いし___あ、やばい、母性ならぬ父性がというか保護欲が…。

 

「相変わらず、『世界』は退屈させてくれない。」

 

 中身を飲み干したマグカップを置き、書類に向き合う。

 これを片付ければ今日の仕事は全部終わりだ。訓練終わりで疲れ切った新兵たちを労ったらあとは癒しの時間。

 癒しを考えれば書類仕事も苦じゃないのだ。

 

 

 

 ___ところで新兵諸君、その教官は【魔王の子供】という【魔王】に近しいパイロットたちを輩出してきたかなりのやり手だ。そのまま鍛え続けられたら、『魔王』に近い存在になれるだろう。かの英雄に近づきたくば、更なる悲鳴を響かせ私の耳と心を癒してくれたまえ。フッフッフ。

 

 部下の悲鳴や人の絶望_特に米軍の物は『彼女()』にとって極上の癒しの一つである。

 

 

 

 

 

 

 ___しかし、総統閣下と奥様? アドルファちゃんが『私』になついているからと言って許嫁にしようと外堀埋めてくるのやめてくれませんかねぇっ!!

 

 

『彼女』の奮闘は、始まったばかりである。

 

*1
史実におけるフランクリン・ルーズベルト

*2
スマホゲーム「感染少女」に登場するキャラクター

*3
史実におけるハリー・S・トルーマン

*4
枢軸国に敗北するまでアメリカを裏で操っていた米国の闇。【ブラックハウス】とも呼ばれている。現在は海底深くに潜みながら各国で紛争を操っている

*5
諸説あり

*6
ご都合主義のことである




 ごきげんよう。読者諸君。
 ラウラ・ボーデヴィッヒだ。……と言っても中身が偽物だが。

 シャルロットの母親については名前が不明だったのでオリジナルとして勝手に名付けさせてもらった。もし本人の名前を知っている方がいればどうか教えていただければ幸いです。


【ドイツ軍裏話】
 『遺伝子強化試験体』が生まれた施設の裏庭では度々、猫たちと戯れる子供(試験体)たちとボーデヴィッヒが見れる。

【第二次世界大戦秘話】
 太平洋上空で謎の光の爆発を観測する直前、浜辺で遊んでいた子供たちが遠くの空に「桜吹雪」を見たらしい。

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