蛇寮の獅子   作:捨独楽

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暗黒時代でマグル生まれのリリーと交流があったセブルスはスリザリンの内部で突き上げくらってたということにします(この二次創作の中での独自設定です。原作のスリザリンは身内には寛容なはず)。


スリザリンの背信者

 

 ホグワーツ校長のアルバス・ダンブルドアは、一人の生徒の保護者からのクレームに頭を悩ませていた。その一人の生徒とは、スリザリンの新入生であるハリー・ポッターであり、保護者とはシリウス・ブラックである。ダンブルドアとシリウスは、ホッグズ・ヘッドという寂れた酒場で会っていた。バーの店主は、二人の注文を聞かず黙って皿を磨いていた。周囲に客の姿はなく、店主が皿を磨く音だけが店内に響いていた。

 

 シリウスはハリーの両親の依頼で、ハリーのゴッドファーザーとなった。ハリーの両親に万が一の事態があったとき、神に代わりハリーの後見人となる役目がシリウスにはあった。彼は出所直後の骸骨のような容貌から、少しずつではあるがかつての容貌を取り戻そうとしていたが、未だに目の下には大量の隈があった。

 

 

「今……ハリーは何歳なんですか、ダンブルドア?」

 

 シリウスは、裁判で無罪を勝ち取った後で真っ先にハリーとの面談を求めた。しかし、魔法省はシリウスの精神状態を鑑みて、それを許可しなかった。シリウスは戦争と十年にわたる監獄生活で、マッドアイ・ムーディですら比較にならないほど精神を壊されていた。子供の前で親を演じる精神的な余裕は、今のシリウスにはない。

 

 シリウスは焦燥感に駆られながら、ダンブルドアにハリーの年齢について問いかけた。アズカバンでの生活は、シリウスに年月の認識を曖昧にさせていた。

 

「11歳だ。入学したばかりだよ、シリウス」

 

 ダンブルドアは表面上は冷静に、何でもないことのように言った。しかしその胸中は、シリウスに対する罪悪感で満たされていた。

 

「入ったばかりではありませんか!!なら良かった。今ならまだ間に合う。スリザリンからハリーを転寮させてあげてください!」

 

 シリウスは、裁判が終わり無罪を勝ち取った後でダンブルドアからハリーがスリザリンに組分けされたことを聞いた。シリウスの動揺と衝撃は凄まじく、何かの間違いであってくれと願い、次に、スリザリンに組分けされたハリーの境遇を思って悲嘆にくれた。何より、ダンブルドアの頼みとはいえ後見人としての役割を放棄した己自身を深く責めていた。

 

 シリウスの頼みは、今世紀で最も偉大な魔法使いと呼ばれるダンブルドアでも到底承諾できるものではなかった。組分けの儀式は、魔法契約によってホグワーツと生徒の間に結ばれた誓いであり、誰に変更できるものでもなかった。

 

 

「……シリウス。君には、心の休息が必要だ。ハリーが心配な君の胸中は察するに余りあるが、今の君の頼みを聞くことは出来ん」

 

 ダンブルドアはシリウスの動揺が見るに堪えず、そっと目を閉じた。シリウスは半狂乱になって取り乱していた。シリウスを落ち着かせるために、ダンブルドアはあらゆる言葉を尽くしてシリウスを説得せねばならなかった。

 

 アズカバンの中で過ごしたシリウスにとって、スリザリンには暗黒時代の思い出しかない。闇の魔法を探求する一部のスリザリン生が寮内で力を持ち、マグル生まれの学生に悪質な呪いをかけまわっていた。死食い人の子弟が気に入らない学生と揉めた後、その学生の親族の家に闇の印が浮かび上がったことさえあった。スリザリンは唾棄すべき差別主義者と犯罪者を生む土壌に成り下がり、自浄作用など働いていなかった。

 

 よく他人から誤解されるが、ダンブルドアはスリザリン寮を憎んではいない。彼はスリザリン出身の魔女や魔法使いが、時に愛するもののために信じられないような力を発揮することを知っていたし、それに対して敬意を抱いていた。

 

「今のスリザリンは、暗黒時代のそれとは違う。闇の魔法使いが犯罪者であることは広く知れわたっている。闇の魔法を賛美する傾向も弱い。今のスリザリンは、権力あるものを望む野心家の集う寮だ」

 

「ハリーが純血主義に染められたらどうします!デスイーターのガキどもがうろつく中で、あの子が無事でいられると?!まだ十一歳の子供が!!」

 

 

 シリウスの言葉は差別的だった。シリウスの名誉のために言えば、このときのシリウスはアズカバンの影響が色濃く残っている。あの戦争の悲惨な記憶がフラッシュバックし、スリザリンの卒業者たちが大勢の罪なき人々を殺して回った記憶の怒りが、シリウスにスリザリンに対して頑なにさせていた。

 シリウスの反応は、ほとんどの魔法使いたちの本音でもあった。ただ、十年という歳月における平和が、その怒りと恐怖を薄れさせ、あるいは忘れたふりをする処世術をシリウス以外の人々に与えていた。

 

 

「君が親に反発して家を出たように、子供は大人が思うよりも常識と倫理を備えている。スリザリンの子供たちはハリーに手を出すほど愚かではないよ。ハリーも、他人に影響されて純血主義に染まるような子供ではない」

 

 

「……ダンブルドア。それは貴方らしくない楽観主義です。七年間、毎朝毎晩寝食を共にして、家族のように育つ。それで影響を受けないほうがおかしい。貴方ならご存知のはずだ」

 

 シリウスは、いくらか落ち着きを取り戻してそう言った。その表情には苦渋の色があった。

 

「私はかつて、グリフィンドールではじめて人間になることができました。ジェームズから闇に立ち向かう勇敢さを、リーマスから他人への敬意を、リリーから弱者への優しさを学びました。ピーターからは……」

 

 シリウスが言い淀んだのを見て、ダンブルドアは

 

「言わずともよい」

 

 と言った。シリウスは、ピーターのことについては言及しなかった。

 

「だが、授業で毎日顔を合わせていたスリザリン生から人として学べることは一つもなかった。彼らにあったのは、ただ弱者をいたぶって欲を満たしたいという軽蔑すべき性根だけだ」

 

 それはまぎれもなくシリウスの時代のスリザリン生の実態だった。ダンブルドアはシリウスのためにそれを否定しなかった。代わりに、ダンブルドアは現在のスリザリン生について話をした。

 

「……今の時代のスリザリン生たちは、先の時代の犠牲者だ。今の三年生や二年生、一年生には、暗黒時代の記憶すらない。それなのに、スリザリンの子供たちは自分達の両親を、親族を世間から責められているのだ、シリウス。

 

君なら彼らの痛みが分かるはずだ。

 

世間からの視線を受けたスリザリンの子供たちは、自分達がなぜ責められねばならないのかと怯え、怒り、その気持ちが彼らを頑なにさせている。

……私にもどうにもできなかった。ただ、誉めるべきを誉め、罰するべきを罰したかったが……」

 

 そして、ダンブルドアは口を濁した。罰せられるべき男を救った代償として、救われた男はスリザリンの生徒を贔屓し、他の寮生を不当に扱った。それが、スリザリンと他の寮生との禍根となっている。

 

「スリザリン生もまた、今の時代で平和に生きたいと願っている。彼らは、君やジェームズたちが守った新しい世代なのだよ」

 

 シリウスは高潔な男である。決して弱者や子供に残酷な男ではない。たとえスリザリンの生徒でも子供だと己に言い聞かせて、シリウスは今のスリザリン生を知ろうとした。それは紛れもなく、シリウスの人としての成長だった。

 

「……今のスリザリンで、ハリーはどうしていますか?」

 

 シリウスは静かに、ダンブルドアにそう尋ねた。ダンブルドアは、ハリーがスリザリンに入りたいと思い入ったことを組分け帽子から聞いていたので、ハリーが入学してからの出来事を順を追って説明した。

 

 ハリーがスリザリンに望んで入学したことを知ったときのシリウスの動揺は凄まじかった。ダンブルドアがレジリメンスで垣間見たシリウスの心の中には、自分自身に対して向けられる悔恨と怒りに満ちていた。

 

(俺を罰してくれ、ジェームズ、リリー!!一瞬でも、ハリーに対して怒りを向けてしまった!!子供は親の思いどおりにならないと俺が一番知っているのに!!子供が大人の操り人形になることを、誰より嫌っていたのに!)

 

 シリウスの動揺を垣間見ながら、ダンブルドアはシリウスにハリーのハロウィンまでの行動を話して聞かせた。それは、スネイプがダンブルドアにスネイプの主観を交えて報告したものも含まれていた。

 

 ハロウィンでハリーがグリフィンドール生と協力してマグル生まれの生徒を助けたと告げたとき、シリウスは驚いて椅子から転げ落ちた。

 

 

***

 

 

 ハロウィンの騒動以降、ダフネ・グリーングラスのような他の寮生たちとの融和を望むスリザリン生は、つかの間の幸せを享受した。しかし残念ながら、素晴らしい魔法が効力を失ってしまうように、それは一週間と続かなかった。

 

 ハリーはスリザリンの外を出ると、それなりに好意的な視線で迎えられた。規則を破ったことについてはそれ以上に批判的な意見があり、ハリーはそれを受け止めて、なるべく規則違反をしないよう気をつけなければならなかったが、フィルチをはじめとした多くの人々からは冗談交じりに次はどんな校則を破るのかと弄くられた。

 

 ハリーが行動したことで、特に好意的になったのはハッフルパフ生だった。ハッフルパフ生はハリーや、ハリーの周囲にいるザビニなどのスリザリン生に積極的に話しかけるようになった。ブロンドのアーニー・マクラミンは、元々ハリーたちを周囲と区別して話していたわけではなかったので、そんなハッフルパフ生たちをたしなめていた。

 

「みんな騒ぎすぎだよ。授業に集中しよう!!」

 

 アーニーはマグルの学級にも一人はいたような真面目な生徒で、ハッフルパフ生であることを誇りに思い、真のハッフルパフ生らしく誠実で、勤勉であろうとしていた。ザビニやマルフォイはハッフルパフを見下していたが、ハリーはそんなアーニーやハッフルパフの生徒たちを羨ましく思いながら、呪文学の授業で浮遊魔法の復習をした。

 

 

***

 

 幸せは、長くは続かないものだ。ハーマイオニーを助けられたグリフィンドール生たちは、ハーマイオニーを寮の仲間として受け入れた。ハーマイオニーが自分の非を周囲に謝罪し、彼女はロンとよく行動を共にするようになった。ハーマイオニーとロンは相性最高であると同時に最悪なようで、軽い冗談や言い争いの仲裁に、日によってネビルだったり黒人の少年だったり、黄土色の髪の毛の少年が駆り出されていた。今日は誰が真ん中に居るのかはスリザリンで賭けの対象になった。

 

 スリザリン生であるハリーが、グリフィンドール生であるハーマイオニーを助けたことで二つの寮の軋轢が収まるかといえばそんなことはなかった。これはハリーにも分からないことだったが、実はこのとき、ハーマイオニーはスリザリンの女子たちから陰湿で分かりにくい嫌がらせを受けていた。スリザリンの女子たちはハリーのいないところで、ハーマイオニーに嫌がらせをしていたことをハリーは後になって知り、その原因が自分だと暗に言われたことでハーマイオニーとは距離を置いた。そうするのが彼女のためだった。

 

 ハーマイオニーによれば、虐めの主犯は聖28一族の女子、パンジー・パーキンソンだった。彼女はハリーに特別な好意を持っているわけではなかった。ただ、有名人に命の危機を救われるというコミックのような体験をしたハーマイオニーに嫉妬していた、らしい。ハーマイオニーいわく、気に入らないというだけの理由で虐めを受けたグリフィンドールの女子たちは、一致団結して虐めに立ち向かった。結果として、二つの寮に和解が訪れることはなかった。

 

***

 

 外から戻り、家……スリザリンの寮の中に戻ると、ハリーは非常に危うい立場にあった。ドラコはある時、スリザリンの談話室でハリーを激しく非難した。

 

 

「汚いぞポッター!君はマグルが嫌いだって言っていたのに。この僕を騙したのか!スリザリンの裏切り者め!」

 

 

「いや違うよドラコ。そんなつもりはない。僕はマグルが嫌いだよ」

 

 ハリーはドラコの目を見て、しっかりと本音で向き合わなければならなかった。ハロウィンでハリーがハーマイオニーを助けてから、ドラコはハリーがクィディッチを誘っても誘いに乗らなくなった。それでハリーもドラコとは距離を置いていたが、そんな日が4日ほど続き、ついにドラコの怒りが爆発した。

 

 

「どう違うんだ!!グレンジャーは、薄汚い低俗なマグル生まれだろう!」

 

 ドラコはハリーがマグル生まれの生徒を助けたことを、自分に対する裏切りだと思っていた。これはスリザリンの価値観に照らし合わせると正しく、異端児はハリーだった。スリザリンは、マグル生まれの生徒は入学させるべきではないとしていた。

 

 実際のところ、スリザリンにマグル出身の魔法使いや魔女が所属することはあった。例えばハリーがそうで、完全な純血でなくても、組分け帽子がスリザリンに相応しいと判断されれば見逃されていた。初日に監督生の女子が話をしたように、身内に対しては甘く、融通をきかせるのがスリザリンの寛容さだった。

 

 しかしそれは、マグル出身者がスリザリンの秩序を守り、序列に敬意を払っていればの話だ。ハリーはドラコと度々対立し、スリザリン生の中では浮いていた。ハーマイオニーを助けにいったのも、ザビニによればスリザリン生らしくはなかった。堂々とマグル生まれの女子を助けるよりは、完璧に助けられるようにこっそりとばれないように先生を呼ぶのがスリザリン生らしい利口さだった。

 

「ドラコ。君がそう思ってるのは認めるけど、だからって放置すればよかったとは思わないよ。そんなことをすれば、僕は彼女に勉強で勝てなかったまま彼女の勝ち逃げで終わるじゃないか。高貴なスリザリンの生徒がマグル生まれに負けたまま終わっていいの?」

 

 ハリーは自分がドラコの厚意を無下にしてきたことは謝った。だが、見捨ててしまえとは思わない。最後に付け加えた言葉は、ハリーなりのスリザリン生らしい皮肉だ。これは、ハリーの完全な失言であった。

 

 ドラコはハリーの皮肉に怒りをたぎらせた。ドラコにとっての友情とは自分への追従であり、自分の意見、つまり尊敬する父から教わった純血主義の全肯定だ。

 ドラコのあり方は、スリザリン生としては実は対応が楽だった。適当に寮の中にいないマグル生まれを見下す言動をしていれば、ドラコのターゲットになることはないからだ。ハリーの態度はドラコに、友人が必ずしも自分の意見に賛同するわけではないことを教えていた。ハリーに対して少なからず友情は感じていたが、それを認めてハリーの意見を肯定することはドラコのプライドが許さなかった。

 

「じゃあ君はマグル生まれのあいつを魔女だというのか?君を虐めていたマグルたちと同じ血なのに!」

 

 ドラコはハリーが、マグルに虐待されていたことを談話室で暴露した。授業を終えたスリザリン生たちの多くは談話室に集まっていて、一年生を含めた大勢のスリザリン生がハリーがマグルに虐待されていたという事実を知った。ハリーの自尊心はこのとき一度死んだ。

 

 ハリーは自分がマグルから虐待されていたことを、同じ部屋のザビニたちと、ドラコにしか明かしていない。これが寮のほぼ全員に明かされたことは、ハリーに大きな衝撃を与えた。

 

「……だったらなんだって言うんだ?死にそうなグレンジャーに向かって憎いマグルにしたようにボンバーダをぶちこんで、そのままトロルに殺させれば良かったのか?それとも、ディフィンドで頸動脈を切って殺せば良かったのか?」

 

 ドラコの暴露は、ハリーの11歳の少年としての尊厳を破壊し、攻撃的にさせた。労働者階級のダーズリーに罵倒され育った経験を生かしたハリーの言葉に、ドラコははじめて本気で動揺した顔を見せた。

 

「マグルは最低なんだよ!魔法使いを人だと思ってない!あいつらは僕らを化け物だと思ってる!!だから平気で傷をつけられる!!痛め付けて言葉の暴力で傷をつけてもなんとも思わない!!僕はそんな連中と同じやつになりたくないからスリザリンに来たんだよ!!」

 

 ドラコは本気で親の言葉を信じて純血主義をやっていたが、本気でマグルを殺したいと思ったことなどなかった。マグルなどドラコにとっては究極的にはどうでも良く、結論としてはドラコはファッションでスリザリン生と、純血主義をやっていた。

 

 だから、はじめて見せたハリーの本気の憎悪にはたじろいだ。それはハリーを遠目から見ていた他のスリザリン生も同じで、アズラエルはハリーのことを恐れた目で見ていた。その姿を見て、ハリーは感情に流されたことをひどく後悔した。

 

 

(……ああ、言っちゃったよ)

 

 もう、ドラコとの友情は望めそうもなかった。もしかしたら、他のスリザリン生とも。

 

 周囲のスリザリン生からの、腫れ物に触るような、哀れむような視線に耐えられず、ハリーは口をつぐんだ。

 

「ごめん、言いすぎたよ、ドラコ。それじゃ……」

 

 

 ハリーはふらふらと寮の自室に行き、その日は長く愛蛇のアスクレピオスと話をした。アスクレピオスは脱皮の時期を迎えており、ハリーの話を聞き流して相槌をうっていた。ザビニは、マグルが嫌いであると明かしたハリーに対して、その日は一言も皮肉を言わなかった。

 ファルカスは不安そうな目でハリーを見ており、普段は率先してハリーに話しかけるアズラエルはハリーのほうを見ようともしなかった。

 

***

 

 スリザリンの女子寮で、ダフネは思索に耽っていた。ハリーの行動と言葉についてだった。

 

 端から見ると、ハリーの行動は完全に破綻している。マグル嫌いでありながらマグル出身者を助けるのは理屈に合わない。マグル生まれを生んだのは、ハリーが嫌いなそのマグルなのだ。

 

 ただ、マグルと同じになりたくないという一点だけで、ハリーはハーマイオニーを助けにいったのだという。これは紛れもなく、ハリーの本心に違いないとダフネは確信していた。

 

 ダフネは思案する。マグル生まれを助けたハリーはスリザリンに相応しくないのだろうか。

 行動だけを見れば、ハリーはグリフィンドールとなにも違わないように見える。ウィーズリー家と同じように、穢れた血(ダフネは実家の両親だけでなく、寮の上級生すらマグル生まれをこう言っているので、いつの間にか頭のなかですらそう思うことに抵抗がなくなっていた)を助けたのは、スリザリンに対する背信行為に他ならない。

 

 しかしハリーは、最低なマグルと同じ行為をしたくないと主張し続けている。マグルが穢れて卑しいものであると暗に言い、魔法使いたちをそれよりも高尚なものであるとする主張は、ある意味ではハリーは、マグルを自分達魔法使いと同じ存在だとは認めていない。ウィーズリーと噛み合っているように見えるのは、ウィーズリーがハリーの一面しか知らないからだ。ハリーがマグルを嫌いだと知ってもなお、ウィーズリーはハリーと友達で居ようとするだろうか。しないだろう。ハリーの本質は蛇に違いないと、ダフネは喜んだ。

 

 ダフネのこの推測は間違っていた。程度の大小こそあれ、マグル蔑視の風潮があるのは、スリザリンに限った話ではなかった。ダフネはウィーズリー家や、マグルと結婚した魔法使いたちと積極的に話をしたことがなかったので、そのウィーズリー家やマグルと結婚した魔法使いたちですらいつでもマグルの味方というわけではないことを知らない。ウィーズリー家だって、マグルが不当に子供を虐待していると知れば、そのマグルに嫌悪感を抱くということをダフネは知らない。彼女は家と寮で培養された姫であり、無知であることを強要されていた。それはスリザリンに集う多くの純血一族の生徒も似たようなものだった。

 

(彼は、辛うじて善の側に立っているだけの蛇だわ)

 

 と、ダフネは思った。この推測はある意味正しかった。ハリーの境遇とスリザリンの環境は、シリウスのような大人から見れば、闇の魔法使いを誕生させようとしているようにしか見えなかったからだ。

 

 ダフネはこの時、ハリーが誰よりもスリザリン生であることを確信した。彼女はハリーがスリザリンに相応しい蛇であり、自分達の同類だと認め、ハリーを見守ることにした。もっとも見守るだけでハリーが辛いときになにもしなかったので、ハリーがその存在に気がつくことはなかった。大多数のスリザリン生は、ハリーに対して何もせず、沈黙することを選んだ。

 

 しかし、その沈黙は長くは続かなかった。スリザリン生らしくないハリーに対して、誰かが鉄槌を下さんと計画したのだろう。ハリーは、ハーマイオニー・グレンジャーのような窮地に立たされることになった。

 

 ハリーの教科書やノートが、誰かに盗まれはじめた。

 





ハリーの言ってることは某海賊漫画の海賊フィッシャー·タイガーと似たようなものだと思ってください。
ある意味では誰よりも魔法使いに夢を見ていてマグルを自分と同じものだとは認めたくない高潔な差別主義者、それが現時点でのハリーです。
これから壊します。
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