***
「そろそろハーマイオニーに謝っとけよハリー。もう十日も口訊いてねえだろ」
ハリーは必要の部屋で、ザビニにそうせっつかれた。
ハリーとハーマイオニーの『喧嘩』から十日経過した。『喧嘩』は必要の部屋で行われたので、その内容を知るのはロンとアズラエルだけだ。大喧嘩の後からハリーはあまり積極的にハーマイオニーに話しかけなくなった。気まずかったからだ。
「……そうは言うけどね。ハーマイオニーにも間違ってるところはあるんだ」
ハリー自身、自分でももう少し言い方があったんじゃないかと思わなくもない。しかし、ハリーはハーマイオニーのためにもハーマイオニーのやり方は否定しておかなければならないと思っていたのだ。ハリーがハーマイオニーと一緒に行動しなくなったため、ハーマイオニーは必然的にロンと過ごす時間が増えた。しかし、元々ハーマイオニーはハリーと一緒に行動するよりロンと一緒に行動することが多かったので、何かが変わったという訳でもなかった。強いて言えば、ロンとハーマイオニーが決闘クラブの最中でも息のあった漫才を繰り広げるようになったくらいか。
しかしながら、ハリーとハーマイオニーの冷戦は確実に周囲の友人達にとってストレスとなっていた。
「ま、僕は無理に謝れとは言いません。謝るかどうかの判断はハリーが決めるべきことですからね」
アズラエルはハリーの意思を尊重した上でこう付け加えた。
「君と彼女との友情が終わっても、僕らと彼女との友誼は続きますので。きみは一人でそれを見続ければいいんですよ。ねぇロン」
「ああ。……えぇ!?」
ロンは反射的に頷いてから、まじまじとアズラエルを見た。
(……こいつ……)
「……なぁファルカス。アズラエルのやつ、仲間内でハリーだけハブるって言ってないか?」
ロンの言葉に、ファルカスも頷いた。
「これくらいは序の口だよ。素直にハーマイオニーに謝った方がいいと思うけどな、僕も。……ハリーとハーマイオニーの喧嘩の原因についてはアズラエルから聞いたよ。SPEWはハーマイオニーの作った団体なんだから、あれこれと口を出すのは良くないよ」
「ファルカスに賛成だな。こういう喧嘩は長引かせない方がいいんだぜハリー。じゃないと、ハーマイオニーも引っ込みがつかなくなる。一年の時のハロウィンとか、二年の秘密の部屋の時のことを覚えてるだろ?」
(……それを言われるとな……)
ロンの言葉にハリーは顔をしかめた。自分の言い方に問題があるのは分かっていたからだ。しかし、それで事態が解決する訳ではないことはハリーも分かっていた。
「……僕の言い方とかデリカシーのなさについて謝るのは、僕に非があるからいいけど。……ハーマイオニーがSPEWのやり方を変えてくれると思うかい?」
ハリーが聞くと、四人はうーんと唸った。ザビニが言った。
「今考えるべきはそこじゃねえだろ。ぶっちゃけハーマイオニーのしたいことはハーマイオニーに好きにさせてやりゃいいじゃねえか?」
ザビニは女子からの人気がある。当然、ある程度女子の気持ちに配慮することは出来る。意図的に配慮せず無視するだけで、やろうと思えば気を回すことは出来るのだ。
「ザビニはSPEWに賛同してる訳じゃないだろ?」
ハリーが聞くと、おう、とザビニは頷いた。
「ハッキリ言えば、政治っぽい話には一切興味がねえ。そういうのはもういいよ」
「一般教養として知っておいても損はありませんよ?」
アズラエルが茶々を入れると、ザビニは肩をすくめて首を横にふった。
「……ま、俺はハーマイオニーに協力はしねえけどよ。ハリーも協力はしねえけど否定もしねえってスタンスでいいんじゃねえか?ハーマイオニーがやりたいようにやって満足したら、その活動も止めるんじゃねえの?」
「一理はあるね」
ザビニの言葉にハリーがそう言うと、ロンがあからさまにほっとした表情を見せた。
「けれどハリーも変わっているね」
と、ファルカスが言った。
「どうしてハウスエルフのことに拘ったのさ。君はハウスエルフに興味があるわけでもないだろ?」
「……それは」
ハリーは少し言いよどんだが、隠すことでもないと思い、言った。
「……ハウスエルフのためにも、ハーマイオニーのためにも彼女のやり方は逆効果だって感じたんだ」
「でもよハリー、それはハーマイオニーの考えとは相容れないんだろ?」
ザビニの言葉にハリーは頷いた。
「ならよ、無理にハーマイオニーのやり方を変えさせようってのは良くねえんじゃねえの?誰だってやろうとしてることを否定されたら腹立つだろ」
ザビニは頭をぼりぼりと掻きながら言った。彼は端正な顔立ちで、ハリーに鋭い視線を投げつけたまま続けた。
「ハーマイオニーはハウスエルフのためにやってるのか?違うだろ。あいつはとにかく自分のやりたいように色々首を突っ込みたがるだけだ。別にハウスエルフのためを思ってやってる訳じゃねえよ。ハウスエルフのことまで気にして抱え込むな。他人事なんだし気にすんなって」
(……いや、それは違う)
ザビニの言葉は前半は正しかったが、後半は失言だった。ハリーが何か言うより先にロンとアズラエルが即座に否定したからだ。
「ハーマイオニーはそんな子じゃねえよ!」
「いや、それは違いますよザビニ。彼女は本気ですよ」
「……!?ロンはまだしもお前もかよアズラエル?……わ、悪かったって。そ、そんなにキレんなよ……何だよ、ハーマイオニーはお姫様か?」
たじろくザビニにハリーは頷いた。
「少なくとも、僕たちの間ではそうかもね」
「冗談きついぜ」
弛緩した雰囲気がハリー達の間に流れる。ファルカスは、無言でハリー達のことを観察していた。
(……思ったより皆ハーマイオニーのことを大切に思ってたんだなぁ)
ファルカスは内心でそう思う。ファルカスにとってはハーマイオニーは同年代の友人の一人で決闘クラブでしのぎを削るライバルだが、ロンは勿論アズラエルやザビニ、ハリーは友人以上の感情を持っているように見えた。
ファルカスがハーマイオニーに入れ込まなかったのは、よくも悪くもファルカスが純血主義よりの、一般的なスリザリン生に近い考え方だったからだ。ハリー達四人組のなかではハーマイオニーと打ち解けるまでに若干時間がかった。今でも、二人同士で会話することはさほどない。だから、ハリーがハーマイオニーと仲直りすべきだとか、ハウスエルフのために活動をするという考え方には違和感があった。
(……でも、ハリー達はそれでいいんだよね、きっと)
今のグループはファルカスにとっても心地よかった。ハーマイオニーがマグル生まれであるとか、ロンがウィーズリー家だとかを意識せず雰囲気よく駄弁ったりじゃれついたり出来る人間関係は何者にも替えがたかったのである。
「……まずはハーマイオニーに謝るべきだってのはその通りだよね」
ハリーは覚悟を決めたように立ち上がった。
「分かってくれたか。まぁ、ロンもキレてたけどよ。ハリーはもうちょっと、相手のことを考えて喋ってもいいんじゃねえの」
ザビニはほっと息を吐いた。ロンは不満そうにしていたが、反論はしなかった。ハリーがこう言ったからだ。
「善処するよ。けれど、ハーマイオニーの機嫌が直らなかったら……そのときは、ロンに取りなして貰うよ」
ハリーは必要の部屋の出口まで来ると、後ろを振り返って四人を見回した。
「今日は集まってくれてありがとう。じゃあまた月曜日にね」
***
ハリーとハーマイオニーはまったく完璧に仲直りできた訳ではなかった。
「ハーマイオニー、僕はきみに、僕の意見を押し付けすぎた。それは本当に悪かったと思ってる。ごめん」
ハリーの謝罪をハーマイオニーは受け入れたが、彼女には彼女の思惑があるようだった。
「……それはいいのよ、ハリー。私が意地をはってあなたのことを避けていたの。……それでね、アズラエルとも話してみて考えたんだけど、私、まずはSPEWの賛同者を集めるつもりなの」
ハーマイオニーが、ハウスエルフの厨房を訪れることになるのはまだ先の話だった。ハーマイオニーは、魔法族自体の体質を変えていくべきだとハリーに訴えた。
「ハウスエルフの人たちとも話したわ。彼らは魔法族のことを神様か何かだって思っているの。けれど、ウインキーの姿を見たらそうではないことは明らかでしょう?魔法族の側が、彼らのことをもう少しだけ尊重すべきだって思うの。時間はかかるけれど、必ず出来るわ」
「……じゃあ、グリフィンドール寮に洋服を置き続けるのかい?」
ハリーが聞くと、ハーマイオニーは「……それはしないわ」
と、非常に無念そうに言った。
「けれど、マクゴナガル教授に申請を出して同好会として成立はさせたの。魔法族のみんなに、そういう問題があるということを分かって貰いたいから」
「……オーケー、ハーマイオニー。SPEWのバッジ、僕も貰っていいかな」
ハリーはハーマイオニー作ったバッジを受け取った。
「君のやり方がダメだと思ったら、僕はすぐにこれを君に返すよ。でも、苦しむハウスエルフを見たくないっていう君の気持ちとか……そういう行動力は凄く眩しく思う。だから、これからもよろしく」
「ハリー、ええ、もちろんよ!」
ハーマイオニーは感激のあまり目に涙を滲ませた。ハリーはハーマイオニーのそんな純粋なところを好ましく思ったが、少し大袈裟すぎはしないかと心配になった。
実際のところ、ハーマイオニーは少し心細くなっていた。SPEWの理解者は増えず、バッジを受け取ったのは友人達を除けば数えるほどだった。
ハウスエルフのために始めた活動ではあるが、当のハウスエルフからもそれを望まれていないという現実はハーマイオニーの理想と乖離し、彼女に疑問を抱かせていた。
(……今のままでは駄目だってわかってる。でも……)
現状を変えるためにすべきことは何か。それを考えるのはハーマイオニーがすべきことなのだ。しかし、凝り固まった固定観念を変えられるような、世界の仕組みを変えられるような何かが今の彼女に思い付く筈もない。
ハーマイオニーは、自分自身に知見を広めるための何かが必要だと感じていた。それは、自分一人で考えているだけでは思い浮かばない。グリフィンドールの友人であるロンだけでは足りない。もっと大勢の人から意見を聞かなければならないのだ。
「それでね、ハリー」
「うん?」
「……あの……私、やっぱりSPEWについてやっていきたいと思うの」
「……うん。」
ハーマイオニーは栗色の髪を揺らしながら言った。
「私がさっき『できるわ!』って言ったこと。……無責任だと思う?私は何か間違ったことを言ったかしら?」
(ハーマイオニーは正しかった)
(でもやり方が間違ってた)
ハリーは唇を噛んだ。どう答えるのが正しいのか、ハリーには分からなかったのだ。ハーマイオニーの側についた方が彼女のためになるのか、それとも逆なのか?
(でも……ハーマイオニーが何か変わりたがってるのは分かった)
だからハリーはこう答えた。
「僕らは……特にスリザリン生は、ハウスエルフのことは対等だとは思ってない。彼らが都合のいい生き物だって思ってて、そもそも気にも留めていない、って方が正しいかもしれない」
ハリーは残酷な真実を告げることにした。ハーマイオニーの瞳には怒りと、使命感の炎が燃え上がった。それは、力あるものに理不尽を押し付けられた人の持つ痛みであり、弱きものたちへの迫害を止めなければならないという使命感だった。
「……けど、彼らに何をしてもいいって思ってる訳じゃない。僕らにも良心はあるんだ」
「……その良心に訴えていけば、ハウスエルフを残酷に扱う人の数は減ると思う。きみは間違ってないよ、ハーマイオニー」
ハリー自身の立場とハーマイオニーの立場を天秤に載せる時が来たとして、それでも自分はハーマイオニーを選ぶだろうか、とハリーは思った。その答えを出したとき、ハリー達の友情は終わりを迎えるか、続くかが決まるのだ。
***
ハリーはホグズミードの飛行場でダフネやアズラエルを翻弄していた。飛行場にあった貸し出し制の旧式のコメットを使う二人に対して、ハリーは何にも乗っていない。
「わあっ!」
ハリーは飛行魔法で二人から逃走していたが、くるりと宙返りすると、反転して二人に急接近した。加速していた二人は急に近づいてくるハリーに対応できず急ブレーキをかける。二人の驚く顔を見届けたあと、ハリーの体はぐんぐん高く上がり、二人から遠ざかっていった。
「あっはっは」
ハリーは得意気に笑った。ダフネとアズラエルが口惜しそうに見上げているのを見てまた笑うと、ハリーは飛行場の上空を飛び立った。二人はもう追ってこなかったが、まだ悔しそうな表情だった。
発端は、飛行場にあった箒が順番待ちで使えなくなっていたことだった。ダフネに箒を譲ったハリーは自分もと古びた『銀の槍』、シルバーアローの前にあった骨董品の箒を手に取ろうとしたが、そこでアズラエルと鉢合わせたのだ。
お先にどうぞ、というアズラエルに対して、ハリーは箒を譲った。
「ちょっと面白いことを思い付いたんだ」
箒を相手に飛行魔法で逃げ切る。それがハリーの考えたお遊びだった。箒なしでどこまで食い下がれるか、というハリーの試みは思ったより上手くいった。
「ハリー、貴方には才能があるようね。この私を負かすなんて……」
ダフネの操縦はお世辞にも上手いとは言えなかったが、ダフネは己のプライドを守るためにハリーを持ち上げることにしたようだった。
「これは悔しいですねえ。わが社のニンバスがあれば敗けはしませんでしたが……」
「バカほど高いところが好きって言うからね。君たちも飛行魔法を覚えてみたら?旧型の箒より高い場所も飛べるよ」
勝負は二人の完敗だった。ハリーは二人の悔しがる様子を見て上機嫌で宙に浮かび上がった。
そんな様子を見ていた周囲の大人の何人かは、箒なしで自在に飛び回るハリーの姿を見て顔を歪めた。その中には、ドロホフやシトレによって操られた被害者達の姿もあった。
「……あれは……まるで……」
「止しましょう、変な邪推は。『生き残った男の子』がそうである筈がない……」
大人達がハリーを見る目には、およそ子供に向けられるものではない感情が籠っていた。
***
月曜日、セドリック·ディゴリーは決闘クラブでフィリウス·フリットウィック教授の指導を受けていた。無言呪文によって大小様々な破片の速度を調整しながら、一粒一粒の速度を変え思いどおりに動かすという訓練である。ロコモータ(移動)を複数化かつ、より複雑に操作させるこの技術の難易度はNEWT クラスを越えており、習得は容易ではない。
「……!」
しかし、セドリックは不断の集中力でよく破片を操作していた。大きく動かしにくい筈の破片を繊細に、空中に配置された目標物へ当てないよう精密操作する一方、細かく砕け散った小石が地上に落ちないよう高速で上空へと上昇させ、一ヵ所に固めていく。
「……それまで!見事、実に見事!!ハッフルパフに五十点!!」
セドリックはこの日、見事にこの魔法を習得して見せた。セドリックの成長を見届けたフリットウィック教授は、小躍りしてセドリックを褒めそやした。
「見事ですディゴリー!!ポモーナもきみを誇りに思うでしょう!」
「ありがとうございます。これも全部、教授が熱心に指導してくださったお陰です」
セドリックは額の汗を袖で拭いながら、謙虚に答えた。セドリックは珍しく、フリットウィック教授の称賛に対して満更でもなさそうに喜んでいた。
「いやはや、私がこの術を習得したのは三十年以上前、ホグワーツを卒業してからです!こんなに優秀な生徒はホグワーツの歴史にも滅多にいません……」
実際のところ、パーシー·ウィーズリーも七年生の時点でこの魔法を習得していた。パーシーは六年生の時点でNEWT レベルを大きく超える怪物に遭遇してしまったことから、七年生が覚えるには過剰な魔法を習得せざるを得なくなったのだ。セドリック自身、それほどまでに高度な魔法をわざわざ習得しようと思ったのも学外での経験があってのことだった。
「前学期も、ワールドカップでも救助活動で力及ばないことは多々ありました。これで少しでも傷つく人を減らせると思います」
セドリックは謙虚にそう言ったが、フリットウィック教授はセドリックの言葉を謙遜と捉えた。
NEWTレベルの授業を、OWLまでの延長線上と捉えて六年生をモラトリアム期間だと思い込む学生は実は多い。燃え付き症候群を発症して停滞したり、堕落したりする生徒も多い。そんな中、セドリックは今までと変わらないどころか、今までよりも熱心に魔法の鍛練に励み、その素養を磨いていた。
セドリックはフリットウィック教授に言った。
「OWLの試験でいい成績が取れたのは教授のご指導あってのことですから。これからも、教授に教えていただいたことは決して忘れません」
「いやはや……きみの謙虚さには感服しますぞ…レイブンクローでなかったことが惜しいくらいです…」
フリットウィック教授は感極まったようにそう繰り返した。セドリックはさらに、フリットウィック教授に言った。
「先生。僕に飛行魔法を教えていただけないでしょうか?」
「飛行魔法ですか。ポッターが使っているように、君も使えていると思いますが……」
セドリックの言葉に、フリットウィック教授は微かに動揺した。優秀な生徒に飛行魔法を教えるべきか否か迷っているようだった。
「……実は僕は、OWLの試験で飛行魔法を使ってOを取りました。ハリーの使っていたものを参考に、自分なりに改良した魔法を見せたんです」
「おお、OWLの試験でですか!」
フリットウィック教授は感心したように言った。
「はい。ただ、あれは高度な魔法でしたので、僕の力だけでは不十分です。まだまだ発展の余地があると思うんです。……専門家である先生から改めて指導を仰ぎたいのです」
セドリックは謙遜して言ったが、それでも謙遜が過ぎたと言わざるを得なかった。フリットウィック教授は教えるべきかどうか迷いに迷っていたが、これだけ優秀な生徒に呪文学の教授として自分の技術を叩き込みたいという欲求を抑えきれないでいるようだった。
「……しかし、なぜ飛行魔法を?きみはプロテゴも、パトロナスも使えたと思います。それを使ってもよかったと思いますが……」
「……ホグズミードでデスイーターを見たからです」
セドリックは声を潜めて言った。
「あの日、僕は箒に乗って操られた人々や後輩の救助にあたりました。けれど、箒に乗っている時、僕の片手は塞がっています。動ける範囲も制限されていました。自由に空を飛び回るデスイーターや、優れた箒を持つ闇祓いの戦闘に割り込むことはできなかった…」
「……」
フリットウィック教授は何も言わずにセドリックの話を聞いていた。セドリックが遭遇したシオニー·シトレは、『死喰い人』だった。それはヴォルデモートを熱狂的に崇拝し、ヴォルデモートが偉大であると証明するためならどんな残虐な行いも辞さない集団だ。シトレという生徒が善良なハッフルパフ生だった時期を知っているフリットウィックは、やるせなさを感じていた。
「飛行魔法の精度を上げれば、杖を持たない片手で負傷者の救護活動をすることも、箒の死角をなくすこともできます。万が一箒が焼けても生き延びれる。呪文学の権威である教授なら、デスイーターのそれより優れた飛行術を所持されている筈です。どうかお願いします」
「分かりました。いいでしょう」
フリットウィック教授は重々しく頷いた。そして、その次の瞬間にはニッコリと笑ってセドリックの肩を叩いた。
「実は私も箒なし飛行魔法は研究途中なのですが、生徒が興味を持ってくれるとは!嬉しい限りですぞ!」
二人はそれからフリットウィックの研究室に行き、一時間ほど飛行術の理論について話し合っていた。理論だけに留まらず実践的なコツまで教授していたフリットウィックの熱意にセドリックは目を白黒させながらも礼を言った。
「ありがとうございます、教授。……一つ、疑問があるのですがいいですか?」
「ええ、どうしました、セドリック?」
「どうして飛行魔法の習得は必須ではないのですか?ディセンドやフィニートで落とせない飛行魔術の理論はもう出来ているのに」
それは純粋な疑問だった。飛行魔術は使用そのものに、膨大な集中力と呪文学に対する多大なセンスを必要とする。飛行そのものにも必ずリスクはつきまとう。しかしそれでも、屋外で、相手が飛行不可能であれば、安全マージンを確保しながら戦うことが出来るのだ。習得しない手はない筈だった。
「……そうですね。確かに、基礎魔法で落とされないのであれば飛行魔法は必須とも言えるでしょう」
フリットウィック教授はそう言いながらも、理由を淡々と述べた。それは内に秘める感情に極力触れないようにするためにも見えた。
「しかし、それでも。飛行魔法で高高度に上昇した魔法使いは、それが途切れたときが命の切れ目となります。まだ未成年や学校を卒業していない魔法族に教えるには早すぎるというのが、一つ」
「まだ理由があるんですね?」
尋ねるセドリックに対して、フリットウィックは重々しく頷いた。
そして、その理由をゆっくりと話し出した。
「もう一つは、恐怖心です」
セドリックはフリットウィック教授の言葉に首を傾げた。
「恐怖心ですか?」
「飛行魔法が危険であることは勿論です。しかし、それ以上に危険なものがあります」
「……はい」
セドリックは頷いたが、それ以上の危険について理解できず再び首を傾げた。その顔を見てフリットウィック教授は言った。
「私はね、セドリック。誰よりも高く飛ぶことを恐れているんです。そう、飛んだ瞬間に、例のあの人に落とされるのが怖くて仕方ないのです……」
瞬間、部屋の温度が2℃は下がった。
「そんな……ッ」
セドリックは驚愕した。これほど尊敬されている教授が、そんなことを言うなんて全く考えもしなかったからだ。しかし、フリットウィック教授はどこまでも真剣な顔をして首を横にふった。その表情に恐怖の感情を見て、セドリックは静かに息を呑み込んで尋ねた。
「教授ほどの方が、そこまで『例のあの人』を評価されておられるのですか…?」
「いえ」
「あの人の行為は、たとえあの人が歴史に名を残す偉人であろうと許されるものではありません。どんな理由があれ、人を殺し人から奪う人間を評価することはありません。あの人は、自分の才能の使い方を間違えたのです」
そしてフリットウィック教授は、飛行魔法の発展の歴史について話をしてくれた。
「古来より我々魔法族には箒がありました。レヴィオーソ(浮遊)、ロコモータ(移動)といった魔法はあれど、箒があるのにわざわざ飛行魔法を覚えようという魔法使いは希でした」
「必要がないからですね。杖より先に箒に乗るって子供の方がほとんどなんですから」
セドリックはそう言った。制度上では、十一歳の誕生日に与えられることになっている魔法の杖よりも先に、魔法族の子供は箒に乗ることを教わる。箒に年齢制限を設ける法律はない。セドリック自身、物心つくかつかないかの時にはもう箒に乗ってフレッドやジョージとクィディッチもどきに興じていた。
「そうです。箒は平等に魔法を扱えるようになる良い機会でした。しかし、飛行魔法は違う。呪文学を理解していることと箒が使えるかどうかは、全く別問題なのです」
フリットウィック教授はゆっくりとした口調で説明を続けた。
「教育水準が上がれば上がるほど、この傾向は強くなっていきました。魔法族の子供は幼い頃から教育を受けますし、マグル生まれの魔法使いでも学習の環境さえ整えれば魔法族と同じ程度の教養と素養を身につけることはできます。しかし、そこから危険な飛行魔法を覚えようというものは珍しい。命の危険があるような魔法よりも、もっと安全で快適な箒がありますからね」
「なるほど……箒に乗れても、飛行魔法を覚える意欲のある魔法使いが少なかったのですね……」
「その通りです。しかし、やがて箒以外の選択肢を考えるようになりました。それは素晴らしいことです。間違いなく進歩です」
フリットウィック教授はどこか誇らしそうに言った。
「そうして生まれていったのが、君やポッターが使っている簡易的飛行魔法。レヴィオーソとロコモータを組み合わせた魔法です。しかし、これで満足しなかった魔法使いがいました」
フリットウィック教授は、その魔法使いの名前を囁いた。セドリックはその人物の名前に禍々しさを感じて身震いした。
「ゲラート·グリンデルバルド。魔法史でも、頻繁にその名前が出てきます……」
フリットウィック教授はそんなセドリックを見て複雑な感情を抱いた表情を見せたが、静かに言葉を続けた。
「彼は闇の魔法使いとして、正規の闇祓い達を相手取るには上空からの攻撃が有効だと思っていたのでしょう。自分や自分の腹心の優秀な魔法使い達が使えるよう、飛行魔術を高度化させました。これによって、飛行魔法の難易度は上昇しましたが発動後の運動性、安定性は格段に向上しました」
フリットウィック教授はそこで一旦言葉を切った。セドリックは逸る気持ちを抑えて尋ねた。
「でも、普及はしなかったんですね。どうしてですか?」
「彼の飛行魔法は、グリンデルバルドの名前とともに広く知られるようになりました。しかし、まだまだ未完成。それまで箒で飛んでいた魔法使い達が、こぞって飛行用の箒の開発に力を入れ始めたのです。風や重力に左右されずに安定して飛行し続けることができる箒が発明されると同時に、それまで箒に乗りたくても乗れなかった多くの魔法族が念願の箒を手に入れました」
「グリンデルバルドによる飛行魔法の発展が、箒の性能を向上させたんですね」
「その通り。箒の性能向上によって、グリンデルバルドの時代は終わろうとしていました。しかし……」
フリットウィック教授はそこで言い淀んだ。セドリックは黙って話の先を待った。フリットウィック教授はしばらく黙ったあと、言った。
「グリンデルバルドの失墜のあと、暫くの平和を経て……例のあの人が現れました。彼はグリンデルバルドとは比べ物にならないほど強大な魔力を持っていた」
セドリックは頷いた。ゲラート·グリンデルバルドがどれほどの魔法使いだったのかは分からない。しかし、例のあの人……ヴォルデモートの脅威は今も魔法界を蝕んでいることは確かだった。
(……僕は正直なところ、赤ん坊に負けた魔法使いなんてとどこか舐めていた部分もあった)
セドリックは内心でそう思っていた自分自身を戒めながら、フリットウィック教授の言葉に聞き入った。
(……けれど。その脅威を正しく知っておくことは重要だ。自分の進路を決めるのなら……)
フリットウィック教授は深く息を吸い込むと、ヴォルデモートの飛行魔術について話した。
「例のあの人は、ゲラート·グリンデルバルドなど比較にならないほどの魔法の発明家でした。彼はセストラルすら凌ぐ速さで宙を自在に動き回ることが出来ました」
「まさかそんな……ッ!」
セドリックは絶句した。それがどれほど驚異的なことかセドリックにも容易に想像がついたからだ。同じ土俵でグリンデルバルドとヴォルデモートが決闘したとしても、その二人の強さには天と地ほどの開きがあるだろう。セドリックもクィディッチの選手をしているから分かる。空を自由自在に駆ける爽快感というものは唯一無二だ。そして、空の上で速さで劣り、運動性で劣ることがどれだけの不利をもたらすかをセドリックは肌で感じていた。
セストラルは、魔法界で観測されている中で最速で飛行可能な生物である。その時速は、世界最速の箒であるファイアボルトすら上回る。
つまりは、空の上でヴォルデモートを超えることは魔法族には出来ないのだ。
「それほどの魔法使いなのに、闇の魔法使いなんかになってしまったんですね」
セドリックの言葉には軽蔑と、そしてもったいないという思いが含まれていた。
「そうです。そして、多くの犠牲を出しました。……呪文学の歴史にとって不幸なことに、飛行魔法は例のあの人の象徴になってしまったのです」
「死の……飛翔。それを連想してしまうからですか……」
フリットウィック教授は答えなかった。それが何よりの答えだった。フリットウィック教授は、暫く魔を開けてからセドリックに言った。
「きみは飛行魔法を正しいことに使ってくれると信じています。私は……呪文学は人のためにあるものだと信じたい。そう、信じたいのです」
フリットウィック教授はそこで言葉を句切った。セドリックは優等生らしく、教授の意に沿うよう言葉を選んだ。
「僕は飛行魔法を使うなら、人を助けるために使いたいと思っています。そう、箒を持たなくてもよくなったもう片方の手で、誰かを支えられるように」
セドリックの言葉に、フリットウィック教授は満足げに微笑んだ。多くのホグワーツ教授にとってセドリックは信頼に値する優等生だった。それは彼が優秀だからというだけではない。セドリックが、ホグワーツ生にしては珍しいほどに善良であろうとしている生徒だからこそ、教授達は彼を信頼するのだ。
***
「いよいよ来るね。二校からの留学生が。ザビニは美人の生徒がいるかどうか楽しみかい?」
10月30日、ハリー達は緊張の面持ちで玄関ホールに集まり、留学生の到着を今か今かと待ちわびていた。ハリーはザビニに冗談交じりに訊ねた。
「ああ、楽しみさ!年上のすげぇ美人な魔女がいたら声をかけてぇな」
ザビニは軽口を叩いた。しかし、どこか上の空なのがハリーには分かった。ダームストラングとボーバトンという二校から来る生徒達は全員が17歳以上だ。中学生のハリー達を相手にしてくれるとは到底思えなかった。
「ハリーはダームストラングの生徒に興味があるの?それともボーバトン?」
ハリーの後ろにいたハーマイオニーが聞いた。ハーマイオニーも普段通りに振舞おうと努力しているのがハリーには痛いほど分かった。
「僕としてはダームストラングよりはボーバトンに興味があるかな。アズラエルによると、ボーバトンは錬金術師を多く排出しているらしいし」
「えっそうなのか?」
ロンが驚いたように言うと、アズラエルが解説した。
「三年前の話になりますけど、あの賢者の石を作り上げた天才錬金術師、ニコラス・フラメルの出身校なんですよ。カリキュラムも豊富で、錬金術を学びたいならボーバトンって手もあるみたいですよ」
「マジかぁ……ホグワーツみたいに12科目取らなくていいのか?」
「厳正な試験と適性検査を経た上でですけど、ホグワーツよりは学べる環境でしょうね。うちはもう何年も錬金術を取った人は居ないようですし」
そんなやり取りをしていると、ファルカスが声をあげた。
「……!みんな、来たよ!」
ファルカスが指差したのは森の上空だった。ハリー達が息を飲んでいる間に、森の上に広がる影はこちらへと近づいてくる。
「ペガサス……だけど、でかすぎる!みんな、僕の後ろに!プロテゴ(護れ)!」
「ええい!皆私の側に集え!プロテゴマキシマ(全力の護り)!」
それが近づいてくるのを確認したハリーは真っ先にプロテゴを唱えた。マクギリスをはじめとした監督生達は既に魔法を発動させていたが、生徒が魔法の範囲から出ないよう必死に呼び掛けている。そうこうしている間に、それはホグワーツへと降り立った。
それは、あまりにも大きすぎた。
大きな館を引いた馬車がホグワーツに近づいてくる。その馬車は、通常とは異なり12頭ものペガサスに牽引されていた。金銀に輝くパロミノの容姿はセストラルとは違う陽性の明るさを見るものにもたらしてくれたが……問題は、そのペガサスの一頭一頭が象ほども大きいということだ。
着地の衝撃だけで大地が震え、巻き起こった豪風でプロテゴが割れかける。それでも、監督生や教授陣の防壁は生徒達を護りきった(着地の轟音に驚いたネビル·ロングボトムは、スリザリンの五年生にぶつかって申し訳なさそうに謝っていた)。
そして出てきたボーバトン校長、オリンペ·マクシームはまずダンブルドアの、次いでホグワーツの生徒達の拍手で迎えられた。マクシームは、黒い数珠やオパールといった装飾でこの歴史的な場所に相応しい威容を備えようとしていたが、彼女にそんなものは必要なかった。普通ならば過剰な装飾として嫌悪感を覚える輝くオパールや数珠など、なんの印象にも残らない。何せ、マクシームは常人の倍ほどの身長を持った魔女だったからだ。
「すげぇな、ボーバトンって……なぁハリー」
「うん。あの人はハグリッドの親戚なのかな……?」
ザビニとそんなやり取りをしていたハリーは、一瞬ぞわりとした殺気を感じた。何事かと思い後ろを振り返ると、ダフネが死んだ魚のような目でハリーを見ていた。ダフネの隣にいたパンジーもミリセントも、恐れをなしてダフネから少し距離を置いていた。
(……一体何が……!?何で!?どうして君がそんな殺気を!?)
ハリーが異常な殺気に困惑を隠せないでいると、ロンとファルカスをはじめとした男子達の歓声が上がった。
「うわあああぁ……っ!!!」
「あの人、ヴィーラだ!すっげえ!!」
ハリーは反射的に自分の左手の掌を杖で刺した。杖先に血が滲む。
あまり意味はない愚行だった。単に、掌の痛みが、ヴィーラへの誘惑に打ち勝てるような気がしたというだけのことだった。魅了され、自分の意思を奪われるということはそれだけハリーにとって屈辱的な経験だった。必死で耐えている男子はハリーだけではなかった。ドラコやセオドールは屈辱的な顔をしていた。恐らくは、ヴィーラに魅了されてしまったのだろうとハリーは思った。
ホグワーツの男子達を魅了したヴィーラのような魔女は、プラチナブロンドの長い髪と長身、そして魔女としての高い技量を有していた。ハリー自身は童話にはとんと縁がなかったが、マグルの世界のおとぎ話に出てくる魔女とは、人を魅了し、誘惑し、時には破滅へと導く存在でもあるのだから。その魔女、フルール・ドゥラクゥールはそうした才能を備えていた。あまりの美しさゆえに望まぬままに人に好かれ、そして望まぬままに人から嫌われるという才能を持つギフテッドだった。
一方、もう一つの招待客達もまたハリー達の度肝を抜いた。次も空からやって来るのだろうか、それとも地中からか、と噂しあっていたハリー達をよそに、彼らはホグワーツの湖からその姿を見せたのだ。
湖の一部が割れるように黒く濁る。それは濁りではなく、水中に潜む何かが現れる予兆だ。気がついた時には、水飛沫を上げて幽霊船が顔を出した。
「……来やがったぜ、闇の魔術の総本山が……!」
「い、いかにも骸骨とかが乗ってそうな雰囲気だね……!」
「ザビニ、ファルカス。ダームストラングに失礼だよそれは……」
ハリーがそう窘めている間にも、来賓達は姿を見せ始めた。ダームストラング校長のイゴール·カルカロフは銀髪を短く切り揃え、豊かな髭を蓄えた魔法使いだったが、どこか悪くしているのではないかというほど痩せていた。彼はダンブルドアと親しげに握手をかわす間も、ほとんど本音を見せていないようにハリーには見えた。
そして、カルカロフの次に姿を見せたダームストラング生はホグワーツの男子も、そして女子達も歓声の渦へと包んだ。彼は、数多くのプロクィディッチ選手や歴史的な名プレイヤーを見続けたクィディッチ狂や、プレイヤー、監督達から天才と称されるスターだった。ダームストラングの悪名も、彼の前には霞んで消えてしまうようだった。
育ちすぎた猛禽類のように無駄のないその魔法使いの姿を見て、金輪際現れないかもしれない一番星を目の当たりにしたロンは笑ってハリーに抱きついた。
「ハリーっ!すげえょ、凄い人が来ちまった!……クラムだ!!」
***
それからのホグワーツは、代表選手が誰になるかというトトカルチョで持ちきりだった。
「カシウスにエイドリアン、カロー先輩にバナナージ先輩。グリフィンドールはジョンソン、レイブンクローはパッとしないけどクリアウォーターが名乗りをあげてるね」
ハリーが候補者をあげると、ロンが訂正した。
「フレジョは試したけど無理だったぜ。年齢制限があるから。……でも、七年生はNEWTがあるのに、立候補していいのかよ」
「それだけ注目されてる大会なんだろうね。カロー先輩は『これのために就職浪人したとしても私は構わない。いまを逃せば機会はないのだから』って言ってたから」
「はは、スゲーな浪人してでもって。そこまでするか普通」
ハリーの言葉にロンは笑った。ゲラゲラと笑いながら賭けに興じていたハリー達は、賭けに加わることなく深刻な表情で悩んでいるファルカスにあえて気づかないふりをしていた。
ファルカスは、言うべきか言わないべきか悩んでいた。
(……もしもあのタロットカードがこれを暗示していたとしたら……いや、僕は預言者じゃない。あれは単なる占いの筈だ。余計なことを言って当たったら縁起が悪い……)
ファルカスは沈黙を選んだ。自分の占いなんて当たる筈がないし、トライウィザードトーナメントに関わる筈もないと思い込んだ。
しかし、ハリーもアズラエルも何かあるのではないかと勘ぐっていた。ハリーの周辺に起きる厄介ごとを思えば、ハリーが巻き込まれる可能性は連想せざるをえない。ザビニはハリーなら出場できれば優勝できるなどと茶化したが、そう言うことで不安を紛らわしている節はあった。ハリーは不安を解消するために決闘クラブで魔法の訓練に興じた。
そしてそんなハリー達の姿は、周囲のハッフルパフ生やレイブンクロー生、グリフィンドール生から少なくない反感を買っていた。今回ばかりは、余計なことはしないでくれと皆が願っていた。ボーバトンやダームストラングの生徒達を、ハリーの周囲に発生する闇の魔法使いに巻き込まないでくれと祈っていた。
そして、代表が発表される当日となった。
ビクトール・クラム、フルール・ドゥラクゥール、そしてセドリック・ディゴリーの名前が読み上げられる。ハリーはピュシーでなかったことを悔しがりながらも、セドリックのために心の底から喜んで拍手した。
(ああ、良かった……!)
これでハリーは今年、安心して勉強に専念できると思った。
「……四人目は……ハリー·ポッター」
自分の名が、ダンブルドアによって告げられるまでは。
アズラエル「でしょうね」
ザビニ「……ハリーには同情する。マジで」
ファルカス「嘘……だろ……」