蛇寮の獅子   作:捨独楽

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半純血の分際でスリザリンの代表面するなんて許されると思いますか?


傲慢なポッター

***

 

「……何でだ?」

 

 大広間を出てから、ハリーは何も考えられずにいた。ロンとの関係は壊れてしまった。

 

(……アーニー達も怒っている筈だ。……ドラコはどうしてあんなことをしたんだ?あんな馬鹿なことを……)

 

 セドリックを応援するはずのバッジがグリフィンドール生達を誹謗中傷しては元も子もない。そんなことは分かりきっているはずなのに、ドラコは一体なぜあんなことをしたのかハリーには理解できなかった。

 

 塔の上で黄昏ていたハリーに声をかけてきた者がいた。

 

「……いい様だな、ポッター!」

 

 スリザリン生のセオドールだった。隣にビンセントもいる。

 

「……」

ハリーはセオドールを無視して視線をホグワーツの情景へと戻した。いつものように雲に覆われた空の中に、手紙を首にかけた梟が飛び交う。ホグワーツ城の天辺に止まる梟がハリーの視界に映った。

 

「……聞けよ。ポッター」

ハリーの前にクラブが立ちふさがる。

「何か用かい、ビンセント?」

 

「そいつにはないさ。だけど、僕にはある。お前が目障りだ」

 

 セオドール達の手には杖が握られていた。ハリーは攻撃的な意思に満ちたビンセントとセオドールを睨み付けながらローブに手を突っ込む。

 

「理由を聞いてもいいかな。僕は君に恨まれる覚えがない」

 

 ハリーが聞くと、セオドールは醜悪にハリーを嘲笑った。

 

「嘘をつくなよ。君は半純血の分際で僕らに偉そうな口利いてるがな、本当は穢れた血を継いでいるくせに。自分がどれだけ目障りなのか自覚があるのかい?」

 

「……スリザリンの代表?お笑い草だ。君は僕ら純血の下でいるべき存在なんだよ」

 

 

 蛇のようにねちっこくセオドールはハリーを責め立てた。まるでスネイプ教授のように、セオドールはハリーに憎しみをぶつけてきた。

 

「聖28一族を作ったのは僕の祖先だ。その枠組みを作って、慈悲深くウィーズリー家も加えてやった。寛大だろう?あのいたちどもがグリフィンドールの家系だろうと、純血なら仲間に加えようと言うんだから」

 

「……それで?」

 

 ハリーは冷めていた。セオドールに対する興味も関心も、急速に失せていた。

 

(何で僕が君の家の都合を気にしなきゃいけないんだ?)

 

 スリザリンの同期でも、セオドールとはほとんど交流がない。ハリーにとってセオドールは、ドラコやロンどころかコリンよりも優先度が低い相手だった。

 

「一人ぼっちのお前が、純血の僕らに指図するなんておこがましいんだよ。身の程を知れ、傲慢なポッターめ」

 

 ……もちろん、だからといって不快さが軽減される訳ではなかった。

 

 ハリーは思わず笑いそうになった。

 

 どうやら人の人生は、自分にとって辛いときに限って嫌なことが起きるよう出来ているらしい。

 

「……君はそんなに話せたんだね、セオドール。いつも寡黙で、理知的なやつだと思ってた。でも違ったみたいだ。……真っ当に人を思いやるような言葉を話す知能がなかっただけだったとはね」

 

 ハリーの心の中は嵐のように荒れ狂っていた。

 

(……僕は二人の友達を失ったんだ!それなのにこいつ等は他人を傷つけて何とも思わないんだ!!)

ハリーはセオドールはともかく、ビンセントまでがそう思っていることはショックだった。三年生の時、ビンセントはボガートを撃退してくれたからだ。

 

「何だと……。お前なんて、親がいなければ何にもできやしない癖に。本当の友人なんて一人も居ないだろう!」

「僕がいなければシリウスはアズカバンのままだった!」

 

「僕に言わせれば、お前は骨の髄まで役立たずだ。お前の養父もな。……お前の存在が、ブラック家にとってどれだけ目障りか考えたことがあるのかい?」

ハリーは目の前が真っ暗になった。交流のない実の両親を侮辱されるよりも、シリウスとマリーダを侮辱されたことが許せなかった。

「ノット。君は最低なやつだよ!よくも僕の両親を!」

ハリーは杖を抜いた。セオドールもそれに続き、杖を抜いた。ハリーより早くから魔法に触れて育っただけはある。しかしハリーの方が一瞬速かった。

先手必勝、無言呪文でハリーは魔法を放った。

セオドールの杖が、セオドールの手を離れハリーの左手に吸い寄せられる。セオドールは衝撃で目を見開いていた。

 

 一方ビンセントはとっさにハリーから距離を取っていた。ハリーはその反射神経に舌を巻いた。

 

 

(でも遅い!)

 

ビンセントもセオドールと同じように、ハリーの無言武装解除によって杖を奪われた。

二人は驚いたようにハリーを見ていた。ハリーは二人から奪い取った杖を地面へと放り投げて言った。杖は禁じられた森へと吸い込まれていった。

 

「……名門なのに、君は大したことないんだね」

 

 ハリーはそう言い捨てて、足早にそこから去った。ハリーはもう二度と二人と口をきくつもりはなかった。

 

(……本当の友人……?)

 

 ハリーはセオドールの吐いた毒を頭から追い出そうとした。しかし、その毒はハリーの心を蝕んだ。

 

 

 ロンも、ドラコも、ハリーの気持ちなど考えてはくれなかった。ロンとはあれだけ長く冒険を重ねた。ドラコもクィディッチのチームメイトとして、一緒に空を飛び回った。だというのに……。

 

 

「……ここに居たのかよ、ハリー!何やってんだ。遅ぇぞ!」

 

「!」

 

 どこに向かうべきかも分からず寮に戻ろうとしたハリーに、ザビニが声をかけた。

 

「……ったく。ルナのやつがお前がこっちに来たって言うから来たけどよ。本当に居やがったよ」

 

 ハリーの前に現れたのはザビニだった。

 

「……」

ハリーはザビニを睨み付け、無言で踵を返した。苛立ちと安堵を悟られたくなかった。

「ハリー?何してんだ?」

「君と話すことはないよ」

「お前、なんか変だぞ。……どうかしたか?」

「……なんでもない!」

ザビニはハリーの後をついて来た。ハリーは足を速めたが、ザビニはしつこくついてくる。ハリーは業を煮やし立ち止まった。

 

「ついて来るなよ!」

「あぁ?アホか!次の授業が何か分かってんのか!スネイプの魔法薬だぞ!遅れると大減点と嫌味をくらうんだよ!インカーセラス(縛れ)!」

 

「……おい!?」

 

 ハリーはザビニの手で拘束され、強引に薬学の地下室へと連行された。連行の途中、ザビニはハリーに言った。

 

「……とにかく、余計なことは考えんなよ。ロンもマルフォイも今は放っとけ。ハリー。お前は今は、自分のことだけ考えりゃいいんだ。」

 

「……心配してくれてるのかい。君らしくもないね」

 

(なんで僕はこんなことを……)

 

 ハリーはしまったと思った。苛立ちや怒りをドラコやロンではなく、無関係のザビニにぶつけてしまった。自己嫌悪でハリーは口を覆い隠したかったが、零れた言葉は元に戻ることはなかった。

 

 

しかし、ザビニはハリーの言葉を聞いて笑った。

 

「何だよ、ちゃんと言えるじゃねえか。俺にはそういうこと言えねえのかと思ってたぜ」

 

 そのあとすっと真顔になり、ハリーの拘束を解いた。もう地下室は目の前だった。

 

 

「自意識過剰も大概にしろよ。俺は女子ならまだしも男に優しくする趣味はねえ」

 

「知ってるよ。あったら僕は君と絶縁するところだ」

 

 ハリーとザビニは少しの間、耐えきれずに笑った。それからザビニは言った。

 

「……まぁ、なんだ。スネイプに目ぇつけられたら厄介なんだよ。お前も俺があいつに目ぇつけられてることは分かってるよな?」

 

 ハリーは答えなかった。ザビニはため息をついたが、それ以上ハリーには何も言わなかった。

 

 ハリーは本当は一人になりたかった。一人になって、あれこれ考えたかったのだ。しかしそれは叶わなかった。授業の間中、ザビニはずっとハリーの側にいたからだ。スネイプ教授が遅れてきたノットとクラブに嫌味を言う中、ハリーはザビニと共に胃腸薬を調合し、その日の授業を乗り切ることが出来た。

 

***

 

「……それで……一体何が原因なんでしょう?どうして、ロンはハリーにあんなことを言ったんですか?」

 

 

 次の日の放課後、ハグリッドの小屋には、アズラエル、ルナ、コリン、そしてハーマイオニーが集まっていた。ルナとコリンがスクリュートの餌を用意するなか、アズラエルとハーマイオニーはハグリッドの差し出したタンポポ珈琲を飲みながら向かい合っていた。

 

「ハリーは大変だったようじゃな。マルフォイとも、ロンとも喧嘩するとは」

 

「そうなんです。今、ハリーはちょっと荒れてますね。魔法使いとして強くなってはいますけど」

 

 ハリーは決闘クラブでマクギリスを相手に十戦して七勝を修めるまでになっていた。ストレスを与えれば与えるほど強くなるのではないか、とアズラエルが錯覚するほどだ。

 

「……うーむ」

 

(……むかしを思い出すのう。そういえばリリーも、むかし……)

 

 ハグリッドは遠い昔、ハリーの母親がスリザリンとグリフィンドールの生徒の間で揺れていたのを思い出した。

 

(これも血かのう。……いや、いかんいかん。余計なことを言っちゃあならん)

 

 ハグリッドは口が軽いという自覚はなかったが、酒を飲んでいない素面の状態ならば、同僚の過去に関わることを言うべきではないという理性はあった。うっかり変なことを口走らないために、ハグリッドは異空間に入りコリンとルナの監督に回った。

 

「……アズラエルに言っていいのかどうか分からないけれど……」

ハーマイオニーはルナとコリンがスクリュートの住む異空間の中に入ったことを確認すると、迷いながら話し始めた。

 

「ロンは、その……ハリーのことが羨ましいの」

 

「……はい?何ですって?」

 

 アズラエルは首をかしげた。何故ハーマイオニーがそんなことを言うのか分からなかったのだ。

 

「……信じられないと思うでしょうけど、本当なの」

 

「……ロンは……今までずっと、ハリーの側で頑張ってきたわ。グリフィンドールではロンはロンとして頑張ってきたけれど、大きな活躍をするときは、いつもハリーが側に居た。分かるわよね?」

 

「ええ。君たちはほとんどいつも、大切な時はずっと側で戦っていました」

 

 アズラエルはハーマイオニーの言葉に頷きながらも、迷わず切り込んだ。

 

「だからこそ分からないんですよ。僕は直接側で見ていた訳じゃあありませんが、あれだけの苦楽を共にしたなら、ハリーがやったとは思わない筈です。ロンはハリーの力量を過不足なく把握してるでしょう。ハリーにはゴブレットを騙すことは出来ないってことも知ってますよね?」

 

「そうね。ハリーが感情的なことも、ハリーがやったこともロンは知っているし見てきた。そして、ハリーと一緒に困難を乗り越えてきた」

 

 ちくちくと時計の秒針が進む。アズラエルは口を差し挟まない。

 

「そうして困難を乗り越える度に、グリフィンドールやハッフルパフの、ロンの回りの色んな人が言うのよ。『ハリーは何をしたんだ』って。……皆が……ロンのことを見てくれないの」

 

 ハーマイオニーが言葉を選びながらゆっくりと説明すると、アズラエルは腕を組んで考えながら言った。

 

(……嫉妬ですって?いや、そう考えること自体は分からなくもないですけど……)

 

 

「僕らもそうでしたよ。最初のうちはね。ハリーのことを、何かよく分からないけれど英雄扱いされてるいけすかないやつだと思ってる子も多かったです」

 

「……そんな」

 

 ハーマイオニーはハリーを思ってか、気の毒そうに表情を歪めた。

 

 アズラエルは、ハリーの周囲で色んなスリザリン生から話を聞いている。親友のファルカスから、軽く純血主義的な思想を持つ人間まで幅広く話を聞けば、ハリーの境遇や蛇語という才能、そして実績を羡む声も聞かないわけではなかった。

 

「けどね。すぐ皆気がつきましたよ。ああ、ハリーの立場って割に合わないってね」

 

 最初のうちは。

 

「割に合わない……?」

 

「だってそうでしょう。何が悲しくて学校生活で死にかけなきゃいけないんですか。ハリーだって内心うんざりしてますよ」

 

 周囲のハリーを見る目に転機が訪れたのはハリーが二年生のときに、秘密の部屋の事件を解決したあとだった。スリザリンの象徴であるバジリスクをどういうわけかハリーが殺害し、ハリーもまたバジリスクに殺されそうになったという話を聞いたとき、周囲のスリザリン生は誰もがこう考えた。

 

(あんな目に遭わなくて良かった)

 

 と。

 

(嫉妬…いや。ハリーの養父とか金銭面に嫉妬するまでは分かりますけど、死ぬよりはマシでしょう……)

 

 アズラエルは自分自身の命は当然惜しいし、大切にしたいと思っている。だからハリーに降りかかる災いが明らかに限度を越えていると思った。それは客観的に見て正しかった。

 

 アズラエルはタンポポ珈琲を飲み干すと、ハーマイオニーへ尋ねた。

 

「……だからロンが、そんな理由であんなことを言ったなんて僕にはちょっと信じられませんね。それはハーマイオニーの想像ですよね?」

 

「ええ。そうよ」

ハーマイオニーは認めた。彼女は栗色の髪を少し触りながら、憂いを帯びた顔で言った。

 

「……ロンは、誰より勇敢に命をかけてきたの。けれどいつもハリーより下という扱いだった。この間、闇の魔法使いに殺されかけた時も……」

 

「……なるほど。…そう言われると……」

 

(……ハリーだけじゃなく、ロンの立場もきついですねぇ)

 

 アズラエルは想像してみた。勇敢にいのちを懸けているのは自分も同じなのに、いつもハリーだけがもっと誉められるところを。

 

(口だけの僕と違って、ロンはいつも最前線で命を張ってますもんねぇ……)

 

 ハリーのことを友達だと思っていても、ちょっと嫌になることはあるかもしれない、とアズラエルは思った。

 

「だから、思わず心にもないことを言ってしまったのよ」

 

 

「ロンと私が喧嘩したのもそれが原因なの。ちょっと冷静になって、って言ったんだけど。……だけど、私も言いすぎたわ。もっとロンに寄り添ってあげていたら……」

 

「謝るなら早いうちがいいと思いますね。ハリーは……今ちょっと難しいですが……」

 

 アズラエルの言葉にハーマイオニーは少し嬉しそうに頷いた。それから、思い出したように聞いた。

 

「ハリーはロンのことを嫌いになってはいないのね?」

 

「そうなんですよ。まるでフラれた彼女とよりを戻そうとするかのようにおろおろと狼狽えていました」

 

「……ダフネがいるのに?」

 

「そうなんです。ぼくも驚きましたね」

「まぁ……」

いやまったく、とアズラエルは思ったが素直に頷いた。ハーマイオニーがほっとしたような顔を見せたので、アズラエルは続けた。

 

多少は、ハーマイオニーをからかいたい気持ちもあった。

何しろアズラエルは、ハリーを嫌ったロンの本心を聞き出すという一仕事を終えているのだ。ちょっとぐらいの意地悪は許して欲しかった。

 

 その時、スクリュートの世話を終えたルナとコリンに付き添ったハグリッドが異空間から小屋へと戻ってきた。三人は満面の笑みでスクリュートの成長を喜んでいた。

 

「お帰りなさい、三人とも。その様子だとうまく行ったようですね?」

 

 アズラエルは初めてスクリュートを目にしたコリンがカメラを掲げて怪獣を見たと語るのを聞き流しながら、ハリーにどうやってロンのことを伝えようか、と頭を悩ませていた。

 

***

 

 

「ロン、話があるんだ」

 

 ファルカスが真剣な顔でロンを呼び出止めたのは、決闘クラブが終わってすぐのことだった。ロンは黒人の少年と、黄土色の髪の毛の少年と行動を共にしていた。

 

 決闘クラブでは、ハリーは荒れていた。ところ構わず上級生に決闘を挑み、負け、敗因に対して対策して勝つという荒業を繰り返していた。

 

 ファルカスはあまり良い傾向ではないのではないかと思い苦言を呈したが、ザビニはハリーの好きにやらせた方がいいと言ってハリーを止めなかった。ハリーは己のストレスを力に変えようとしているかのようだった。強くなれば、ロンが戻ってくるのだと言うかのように。

 

 しかし、それより前に話をすべきだとファルカスは思った。だからこそ、ファルカスはロンに声をかけたのだ。元々ファルカスはロンの真意を聞くつもりだったが、急いだ方がいいと思った。マルフォイのやらかしの後、周囲のホグワーツ生がスリザリン生を、見る目に軽蔑が加わったからだ。

 

「……何だよ、ファルカス。話って」

 

 ロンは内心の苛つきを抑えながら、ファルカスの方を向いた。ロンはシェーマスとディーンには先に行くように手で合図をしていた。

 

「スリザリンのことで怒ってるだろ?……マルフォイがあんなことをしてきたんだ。そう思うのも無理はないよね」

 

 ファルカスはロンに聞いた。ロンは鼻で笑った。

 

「そんなもん慣れてるよ。あんなの、いつものことだ。そうだろ?」

(嘘だ……)

 

ファルカスはそう思ったが口には出さなかった。二人は肩をならべて、暗い廊下へ足を向けた。ファルカスは周囲に誰もいないのを確認しながらロンに囁いた。

「……慣れなくていいんだよ。ロンは悪くないんだ。マルフォイにあんなことをされたら誰だって腹が立つし、スリザリンのことが嫌いにもなるよ」

 

(……クソッ。余計なことしやがって、マルフォイのやつ……)

 

 ファルカスは本心からロンに言った。

 

「そんなこと言っていいのか?あいつはスリザリンのシーカーだろ?」

 

「関係ないよ。スリザリンの皆だってそう思ってる。あいつを好きなやつなんてハリーくらいさ。……それに僕、マルフォイには怒ってるんだ。ロンもそうなんじゃないかと思って」

 

 

 ファルカスはロンの目を見て言った。オーバーなほどに怒りを表現するのは占い学の応用の詐術で、あまり多用すべきものではない。ただ、心の底からマルフォイを嫌悪しているファルカスにとっては大袈裟でも何でもなかった。

 

「なら、DADAの授業でマルフォイに突っかかって行ったのは……」

 

「勿論あいつを困らせてやりたかったからだよ」

 

「……いい性格してるよな、ファルカスも」

 

 元々、ファルカスはロンと打ち解けていた。ファルカスはあまり多弁ではなかったが、闇祓いという夢を持ち、家は裕福でもなく、ドラコ達を嫌悪していることをロンに明かしていた。だからこそ、この状況下でロンの心を動かすことが出来た。

 

「ハリーも少し悪いんだよね」

 

 と、ファルカスは言った。

 

「……同じチームだからって、マルフォイみたいな口だけの奴と仲良くして、君みたいに命をかけてくれた人を蔑ろにするなんて。僕なら考えられないよ」

 

 ファルカスは、マルフォイへの嫌悪感とハリーへの微かな怒りをロンに明かした。ロンの心は多いに揺れた。

 

「だから、ハリーが不正したって思ったんだろう?ハリーもさ、もっとマルフォイと距離を置いていれば」

 

「違うんだ、俺は……」

 

 ロンはファルカスに本音を打ち明けた。

 

「……俺、不安だったんだよ。今のままじゃ、どんどんハリーに置いてかれるんじゃないかって」

 

「置いていく?ハリーが?君を?」

 

 ファルカスはロンの目をまじまじと見て、信じられない思いでいた。

 

「俺、ハリーが羨ましかった。いつもいつも、フレジョですらハリーのことしか聞いてくれねえし……」

 

「……うん。分かるよ…」

 

 ファルカスは心の底から頷いた。ハリーに嫉妬しているのはファルカスも同じだったからだ。

 

「けど、俺がいくらそう思ったってハリーになれる訳じゃない。そうだろ?だから俺だって、決闘クラブに入って、パーシーやビルに魔法を教えてもらって……結構やれるだけのことはやってきたと思う」

 

 でも、とロンは拳を握りしめた。

 

「……トライウィザードなんて、どうやってって追い付けねえよ。……ハリーは。ハリーだけで手の届かないところに行っちまって……そう思ったら俺、変なこと言っちまって……」

 

 ロンが泥のような思いを吐き出すのと同じように、ファルカスも言った。

 

「ロンは悪くないよ。だって、そうだろ?ハリーは何もしてないのにトライウィザードに出て、先生達の指導を受けてますます魔法を覚えられるんだ。それはハリーのせいじゃないけど、不公平だよ」

 

 ファルカスはハリーではなく、ロンに寄り添った。

 

 人が嫉妬する原因のひとつに、不公平感がある。ハリー自身が努力していることは、二人ともよく理解している。しかし、問題はハリー自身ではない。

 

 ハリー自身の努力や行動とは無関係に、ハリーの周囲に与えられる状況そのもの。それら全てが、持たざるものにとっては堪らなく不公平に映る。これは感覚的なもので。頭で理解しても割りきることは難しいのだ。

 

「……これは僕の想像なんだけど。ロンはハリーの後ろじゃなくて、隣を歩きたいんじゃないかな」

 

「……!」

 

 ロンはファルカスの言葉に目を見開いた。どうすればいいのか分からなかったロンに、光が差し込むような気がした。

 

 

 ファルカスは、ロンにある提案をした。それからすぐにロンとファルカスは別れてそれぞれの談話室に脚を運んだが、二人とも足取りは軽やかで、これからへの期待に満ち溢れていた。

 

 




グリフィンドール生とスリザリン生どちらとも仲良くなろうとするハリーの姿。
ハグリッドからはリリーとそっくりに見えるよ。

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