蛇寮の獅子   作:捨独楽

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獅子寮の蛇

***

 

「おおファルカス。良かった、辞めた訳じゃなかったんだな」

 

「バナナージ先輩。ロンも来てますよ」

 

「ん、そうか。丁度いいな。……よし。お前らちょっと来い。ダームストラングとボーバトンの生徒相手に実演を兼ねて説明するから」

 

 

 決闘クラブを訪れていたファルカスは、バナナージ·ビストに声をかけられた。ファルカスは最近ロンと行動を共にしていたが、二人が一緒にいることをバナナージは特に咎めなかった。スリザリン生とグリフィンドール生が喧嘩以外で交流を持つことは珍しいが、ハリーの周囲ではそういうことはよく起きるからだ。

 

「……えー、では。クラブを訪れて頂いた皆さんのために、本日はプロテゴの実演をさせていただきます。プロテゴを行なうのは、こちらのウィーズリー」

 

「……へぇ。プロテゴを使えるのか?」

 

 ダームストラング生達は感心した様子でロンに視線を向けた。忘れがちだが、プロテゴは本来六年生で習得する魔法なのだ。

 

「それに対して攻撃魔法を使うのは、こちらのファルカス。ファルカスには、カース未満の適当な魔法を使って貰います」

 

「頑張ってねー」

 

 ボーバトン生の女子がファルカスとロンを囃し立てた。ファルカスは笑顔でお辞儀をして返した。ロンは心なしか嬉しそうだった。

 

「あ、応援ありがとうございます」

 

「見てよー。ホグワーツの子って礼儀正しいわー。フルールも見習えばいいのにねー」

 

「ねー」

 

(……うわぁ。ボーバトンの人間関係が怖い……)

 

 フルール·ドゥラクゥールはボーバトンの代表選手ではあるが、ボーバトンの女子達からはあまり好かれてはいないようだった。尤も、当のフルールはそんなことは気にしていないようだった。決闘クラブでも、フルールはホグワーツやダームストラングの男子生徒からダンスの誘いを申し込まれていた。

 

「では互いに向かい合い、礼!距離を取って……3、2、1、はじめ!!」

 

「プロテゴ(護れ)!」

 

「エクスペリアームス(武装解除)!」

 

 決闘の開始が告げられた瞬間、ロンの周囲に白い障壁が展開される。カースクラスでさえなければ大抵の魔法を防いでしまうプロテゴは、ファルカスの杖から放たれた赤い閃光を阻み、跳ね返してしまう。

 

「プロテゴ!」

 

「オパグノ(襲え)!インカーセラス(縛れ!)アグアメンティ(水よ)!」

 

「プロテゴ!!」

 

 ファルカスの攻撃を、ロンは見事に防ぎきり明後日の方向に魔法を跳ね返す。跳ね返された閃光や魔法が観客に当たらないようバナナージの無言プロテゴが調整し、ダームストラングやボーバトンの生徒達は口笛を吹いたり面白がりながら手をたたく。

 

「……よし、それまで!互いに向かい合って礼!……以上が、プロテゴになります。カースクラスの魔法には通用しないんで後回しにしよっかな、って人も多いんじゃないですか?でも、覚えといて損はないって意味で使える魔法ではあります。よかったらこの機会に練習していって下さい」

 

「いやー、いい腕だったなぁ。流石ホグワーツの生徒だ、レベルがたけぇ。なぁクラム?」

 

「そうだな。ちょっと驚いた。君らは……背格好からして五年生か?」

 

「いえ。僕もロンも、四年生です」

 

「四年生でこれか。決闘歴は?」

 

「二年です」

 

「やるじゃん。スゲーじゃんホグワーツ。俺最近までプロテゴとか無理だったべ?」

 

 クラムの隣にいた生徒はさかんにホグワーツや決闘クラブを褒めた。

 

「教師もいいんだろうが……君たちもよく練習したんだな」

 

「こいつらはうちの将来を担う人材なんだよ。割りと俺も期待しているんだ」

 

 友人達と模擬戦を観戦していたクラムは、ロンとファルカスを褒めた。ファルカスもロンもリップサービスと分かってはいたが、あのクラムから褒められて悪い気はしなかった。そんなファルカス達を後押しするように、バナナージはロンとファルカスの肩に手を置いて、自慢するようにクラムたちに話した。

 

「後輩が育ってるのは羨ましいな。うちでは決闘なんて古くさいからとあんまりやりたがらないんだ」

 

(クラムを基準にしたら、誰だって育ってなく見えると思う……)

 

 ファルカスは内心でそう思ったが口には出さず愛想笑いを浮かべる。クラムとバナナージは和やかに談笑していた。

 

「いやいや、クラブに人が集まったのも君やフルール目当てさ。普段ここに来るのはせいぜい十人にも満たないよ」

 

「……じゃあ、黄色いスカーフを巻いた生徒達は?」

 

「あれはセドリック目当てで集まったうちの寮の生徒達さ。まぁ、大目に見てやってくれ」

 

 バナナージとクラムがやり取りをしていると、フルールが割り込んできた。

 

「このクラブでは基本的にプロテゴを学ぶと言いましたね。他に学ぶ魔法はないのですか?エネルベート(蘇生)やエビスキー(治癒)を教えたりは?」

 

「……知らないのか?」

 

 クラムが探るようにフルールに聞くと、フルールは澄ました顔で言った。

 

「私は当然習得しています。問題は、ここでバランスよく広範な魔法を学べるか、ということよ。ホグワーツの実戦的なカリキュラムが私たちボーバトンより優れているのかどうか、興味があったもの」

 

(……うわ、そうか。そうだよなぁ。代表選手だものなぁ……)

 

 ファルカスはフルールの容姿に魅了されていたが、ふと我に返って恐ろしくなった。クラムもフルールも、ホグワーツに来たのは代表選手として結果を出すためでもあるが、一番の目的は留学なのだ。これまでの自分達がやってこなかったなにかを学ぶためにここに来た人達で、留学生として選ばれた上澄みなのだということを認識せざるをえなかった。

 

「うちは教える魔法は生徒の希望に沿ったものを教えるようにはしている。ただ、希望する魔法の反対呪文を習得させることにしているよ。毎年一人は覚えたての魔法を使って暴走するやつが必ず出るからな」

 

「合理的だな」「愚かね」

 

 クラムとフルールは対照的なコメントを残した。フルールはこのホグワーツでは真新しい魔法は学べないのか、と肩を落としていた。

 

 そんなフルールに声をかけた人物がいた。ロンだ。代表選手二人と部長が会話をしている中に割り込むのは、相当な勇気を必要とする行為だ。しかしロンはグリフィンドール生として、あえて空気を読まずに勇気を出して言った。

 

「……あ、あの。」

 

「実用性はないんですけど……バナナージ先輩もお得意ですし。エクスペクト パトローナムとか、どうですか?」

 

 その言葉に、フルールもクラムも面白そうな顔をした。二人がパトロナスを習得していなかったことが、ファルカスには不思議だった。

 

***

 

 

「ハリー、今日はダメみたいです。先客がいました」

 

 放課後に必要の部屋に向かったハリーは、部屋の入り口にいたコリンにそう呼び止められた。

 

「他の皆は?」

 

「ファルカス先輩は決闘クラブに行くそうです。ルナはスクリュートの世話で、ハーマイオニーとアズラエル先輩は用事があるとか……」

 

(ん、そうか。ザビニはデートだろうし……アズラエルとハーマイオニーの二人はあそこに行ったのかな)

 

 必要の部屋は早い者勝ちのシステムだ。入室した人間が鍵をかけてしまえば、部屋への入り口は閉ざされる。ハリーは気持ちを切り替えてコリンに言った。

 

「うーん。じゃあ仕方ないね。図書館に行くか、コリン」

 

「はい!お供します!」

 

 コリンは快活に笑うと、ぴったりとハリーの後ろについてきた。

 

「……ちょっと離れてくれ。近いよ」

 

「三歩くらいですか?」

 

「そうそう。それくらい。……っていうか。コリンは力入りすぎだよ。普通にしてよ」

 

 コリンはハリーへの尊敬心を隠さなかった。コリンの姿はハリーを先輩として立てるものではあったが、はっきり言えば悪目立ちしていた。

 

 ハリーとコリンが図書館へ向かって歩いていると、すれ違う生徒達は避けるように道を開けていく。ハリーと関わりたくないと思っているのだ。

 

「コリン。僕についてきたことを後悔してるかい?」

 

「してます!……あっ嘘ですしてません」

 

 コリンの本音をハリーは聞き漏らさなかった。

 

「もう遅いよバカヤロー。僕と歩いてる時点で人の視線を気にしても手遅れさ。この名誉スリザリン生め」

 

「……ええ。ザビニ先輩にも言いましたけど、やっぱりそれは嫌です。僕はグリフィンドール生ですよ。そもそもスリザリンに名誉ってあるんですか?」

 

「本当に失礼なやつだね君は」

 

「グリフィンドール生らしく、物怖じしない勇気が僕の取り柄ですから!」

 

「胸を張るなよそこは慎みを持ってくれ……」

 

 軽口を叩きながら図書館へ入ると、ハリーたちに気付いた生徒達は一斉に逃げるように離れていった。図書館の奥の方ではピーブズがふわふわと飛び回り、生徒たちにちょっかいを出していた。ピーブズは男爵の舎弟でもあるので、スリザリン生であるハリーが警戒する必要はなかった。

 

(……うん。マダム ピンスはあっちだね。)

 

「コリン。こっちだ。ついてきて」

 

「は……」

 

 ハリーは目敏くマダム·ピンスがいることに気付き、周囲を見回した。ピンスが一人の生徒が食べ物を持ち込んでいることに気付いてそちらに向かったのを見計らい、目的の本棚へと急ぐ。コリンが大声で頷く前に、無言シレンシオ(沈黙魔法)でコリンを黙らせ先へ進む。

 

「ねぇ、ハリー。今日はどんな魔法を教えて頂けるんですか?」

 

 沈黙魔法が解けたコリンは息も絶え絶えにハリーに尋ねた。沈黙魔法は呼吸を封じる魔法ではないが、魔法をかけられた状態で無理して話そうとすると息苦しくなるのである。

 

「ちょっと待て。出てくるまでのお楽しみさ」

 

 ハリーは無人の本棚を見つけると杖を取り出し、必要な本を思い浮かべて無言アクシオを使う。すると目の前に比較的新しい本が一冊現れたのでキャッチする。エドガー・ボーン著の、『パトロナスの基礎と動物から読み取れる個人のパーソナリティについて』という書物だ。パトロナスの入門書としては適切な本だった。

 

「君にもそろそろエクスペクトパトローナム(パトロナス召喚)を教えておこうと思う。基礎魔法は一通りこなしたし、僕に向けた魔法の速度も威力も、精度も充分だったからね」

 

「うわぁ、パトロナスって凄く難しいんですよね」

 

 コリンは目を輝かせてパトロナスの書物を読み込んだ。

 

「僕、パトロナスを出せるんでしょうか?読み込んでみると、これが出来るかどうか不安になってきたんですが」

 

 分からない部分はハリーが補足説明し、成功体験をイメージするようにアドバイスしたものの、コリンは習得できるかどうか不安なようだった。

 

「すごく難しいってことは、ものすごく難しい訓練をすれば使えるかもしれないってことだ。出来るか出来ないかは君次第だよ。じゃあ図書室を出ようか。もうここに用はないしね」

 

***

 

 図書室を出たハリーは、コリンを連れて目的地まで歩いた。コリンは浮き浮きとした足取りでハリーについてきたものの、目的地まで到着すると一気に顔を曇らせた。

 

「……あのう。僕、ちょっとここに入るのは遠慮したいって言うか……」

 

 そこはマートル·ワレンの住処である女子トイレだった。そう、女子トイレ。男子禁制の聖域である。

 

「僕を信頼できないなら、それでもいいよ」

 

 ハリーは冷たく言った。コリンはハリーの声色が変わったのを見て、生唾を飲み込んで言った。

 

「や、やっぱりお供します……」

 

(……よし。コリンは信頼できる……)

 

 ハリーは内心で、コリンに合格点を与えた。仲間として友達として、コリンに自分の秘密をひとつおしえようと思った。

 

 女子トイレにはマートルは居なかった。彼女は別の女子トイレに移動していたのか、普段ならば水溜まりが出来ている筈の空間も清潔なままだ。ハリーは蛇のレリーフを見つけると、意識してパーセルタングを話した。

 

『開け』

 

「え、……あ、ここって……!?」

 

 コリンの目が驚愕で見開かれる。ハリーは微笑みながら言った。

 

「言ったろ、名誉スリザリン生だって。さ、入るよコリン。秘密の部屋へ」

 

 混血のスリザリンの継承者は、また一人、マグル生まれの魔法使いを秘密の部屋へと引き入れた。それはスリザリンにとって冒涜的な行為であると同時に、ただ訓練する場所を提供するという行為に付加価値を持たせ、コリンの士気を上げるというスリザリンらしい行動でもあった。

 

***

 

 秘密の部屋へと続く道を探検するコリンは、グリフィンドールらしい興奮と高揚感に包まれていた。ハリーはコリンの様子を観察しながら、頃合いを見計らって言った。

 

(……うん。ここら辺でいいか)

 

「コリン。何か幸せを思い浮かべてみて。具体的な体験をね」

 

 パトロナス召喚に必要なものは、本人の体験した幸福な記憶と幸福な感情である。ハリーは、コリンにある程度の幸福感を与えることでモチベーションを上げ、パトロナスを召喚しやすくする工夫をしていた。

 

「えーと……弟が赤ちゃんだったとき、僕の書いた絵を見て笑ってくれた時のことを思い浮かべてみます……」

 

「その時君は三歳だろう。自我はないだろ」

 

 ハリーは突っ込みながらも、コリンの杖の振り方を見守った。コリンはなかなか正しく杖を振らなかったが、十回目にしてはじめて正確に杖を振った。

 

「よし、いいぞ。筋がいい。その調子でやってみて、コリン。」

 

「エクスペクトパトローナム!」

 

コリンが杖を振り上げると、銀色の霞のようなものが杖の先から飛び出した。ハリーは思わず拍手した。

 

 

「……こんなかんじです。これ、すっごい疲れますね。座っていいですか?」

 

「上出来だよ。始めたてなのに、もうここまで出来るなんてね。君を見くびっていたかもしれない」

 

 ハリーはコリンに水筒の茶を渡し、ついで壁を杖でコツコツと二回叩いた。

 

 壁からは、返事のようにコツコツと二回音がした。

 

(……うん。そろそろだな)

 

 

「……ハリー。ちょっと寒い気がする……」

 

「……気のせいじゃないか?」

 

 コリンの気のせいではない。先ほどまでとはうってかわって、真冬並みの冷気がハリー達の周囲を覆っていた。コリンは怯えた目でハリーを見る。

 

 コリンの気のせいではない。先ほどまでとはうってかわって、真冬並みの冷気がハリー達の周囲を覆っていた。コリンは怯えた目でハリーを見る。

 

 と、その時。ハリーの周囲に禍々しいローブを身に纏った死体が出現した。それは凍りついたような体を持ち、見るものから幸福感を奪い取ってしまいそうな邪悪な魔法生物だった。

 

「うわあっ!」

 

「コリン!ディメンターだ!自分で撃退しろ!パトロナムを使え!」

 

「……君なら出来る!」

 

 コリンはパニックを起こしかけたものの、ハリーの言葉を聞いて必死に呪文を唱えた。

 

「エクスペクト·パトローナム! 」

 

 すると、コリンの杖から銀色の霞が杖の先から飛び出した。ハリーは内心ガッツポーズをした。

 

「オーケー!よくやった、コリン!」

 

 ハリーが杖を一振すると、ディメンターは宙に浮いて消えていく。

 

「本当によくやった。君は強くなっているよ、コリン」

 

「僕、無我夢中で」

 

「最初は皆そんなものさ。今の感覚を忘れるなよ。その調子で行けば、僕よりずっと早くに有体のパトロナスを出せるようになるさ」

 

(……これで、コリンに成功体験一つ追加、かな)

 

 ハリーは暫くの間、コリンの体力が回復するのを待ちながらコリンを褒めた。コリンはすぐに調子に乗るので褒めすぎないよう気を付けなければならなかったが。

 

 そして、コリンの前にはアズラエルとハーマイオニーが現れる。アズラエルとハーマイオニーが秘密の部屋を訪れたことに、コリンは目を見開いて驚いていた。

 

「……あ、あれ。お二人とも、どうされたんですか?」

 

「必要の部屋が使えないならここに来るようにってハリーから言われていたの。今来たところだけれど……コリン。あなたどうかしたの?短距離の全力疾走したような顔よ?」

 

「ハーマイオニー。コリンはパトロナスを使ったんだ。まだ無形だけど、ディメンターを撃退した」

 

 ハリーは棒読みで言った。勿論これは台本通りである。

 

「すごいわ、コリン!」

 

 ハーマイオニーはコリンを抱き寄せた。これも打ち合わせのとおりだった。もっとも、コリンがうまく無形のパトロナスを出せたからこそこういう形になったのではあるが。

 

 ハリーはやれやれと肩をすくめるアズラエルを見て笑いを堪えるのに必死だった。コリンが撃退したのは、アズラエルの作り上げた偽物のディメンターなのだから。

 

 パトロナスを出すのに必要なものは幸福な経験とその記憶、そして、幸福だったときの感情そのものだ。コリンはこれまで、ハリーたちと共になにかを成し遂げたことはなかった。ハリーは例え仮初であったとしても、コリンに自信を植え付けたかったのだ。

 

「この調子で頑張ろう、コリン。あ、でも無理は禁物だからね。僕はハーマイオニーとアズラエルに訓練して貰うから、そこで見てて」

 

 ハリーは杖を一振りして偽りのディメンターによって散乱した瓦礫を片付け、アズラエルとハーマイオニーにディセンドをかけて貰いながら訓練に励んだ。

 

「しかし、君も面倒見がいいですねえ。クリービーを育てるなんて。ガーフィール先輩やバナナージ先輩の真似ですか?」

 

 訓練が終わり、寮に戻る途中でハリーはコリンやハーマイオニーと別れた。ハリーはアズラエルの言葉をいいやと否定した。

 

「……違うよ。僕はあの二人みたいな善人じゃない。……うん、違った。コリンは違ったんだ」

 

「……クリービーは?何と違うって言うんですか」

 

 アズラエルはハリーの様子を注意深く観察しながら言った。ハリーはどこか遠くを見るように言った。

 

「……コリンはグリフィンドール生だし、まぁ勇気はあるし。…コリンを育てたら…ロンみたいになってくれないかなって思ったんだ。……でも、あいつじゃロンにはなれない」

 

 分かりきったことだった。ハリーはコリンを通してロンを見ようとしていた。しかし、同じグリフィンドール生でもコリンはハリーを追いかけてくる後輩で、ロンはハリーの隣を歩く戦友だった。コリンとロンとは違うのだと、実感せざるをえなかった。

 

「……聞かなかったことにしておきます」

 

 アズラエルの声には微かに怒気が滲んでいた。

 

「……まぁ確かに?クリービーはウザイ奴ではあります。初対面からストーカー仕掛けてきた時は顔面にナメクジを喰らわせようかと思いましたし、今でも時々そうしたくなる時はありますが」

 

「君もなかなか酷いことを言ってないかい、アズラエル」

 

「……それでも、君を慕って着いてきてるんですよ、彼は。君を信じているんです。ホグワーツの半分以上が敵に回ったこの状況でもね」

 

 その思いは尊重すべきです、と言ったアズラエルの言葉にハリーは深く頷いた。

 

「……コリンがパトロナスを使えたのは、正直言って嬉しかったよ」

 

「まぁ本物のディメンター相手でもありませんしねえ」

 

「うん、難易度はそこまで上がってはないんだけどさ。コリンが僕といることが苦痛じゃないっていう部分だけは、有り難いと思ってる」

 

 そこまで聞くと、アズラエルはでしょうね、と頷いた。スリザリンの蛇たちは、見知らぬ相手にはどこまでも排他的になる。しかし一度懐に受け入れれば、相手を蛇に変えてしまいたくなるほどに情を注ぐのである。




事情を知らない生徒→ハリーってやつは後輩のグリフィンドール生を周囲から孤立させてから優しくして依存させているんだな。
コリンやハリーの人となりを知っている生徒→ハリーのやつあんなに面倒見よかったっけ?
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