蛇寮の獅子   作:捨独楽

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驚くべきことに、われわれは自分を愛するように隣人を愛する。自分自身にすることを他人に対して行う。われわれは自分自身を憎むとき、他人も憎む。自分に寛大なとき、他人にも寛大になる。自分を許すとき、他人も許す。自分を犠牲にする覚悟があるとき、他人を犠牲にしがちである。
エリック・ホッファー


公平のボーン

 

「アズラエル……貴方一体何を言っているの?」

 

「おやお気に召しませんでしたかか?『ブーステッドマン計画』です。ハリーと僕たちの間の力量差を埋めるいい案だと思うんですがねぇ」

 

 

 ハーマイオニー・グレンジャーは、前々から考えていたことをロンやザビニだけではなくアズラエルにも相談した。四人はロンに貸し出された部屋に集まって、ある計画について話し合った。

 

 相談の内容は、ホグワーツに戻ってからハリーを教師役にして自分達を鍛えて貰おうというもの。言うなれば、自主的な決闘クラブである。

 

 決闘クラブのレギュレーションでは、生徒の安全を確保するためにある程度の制限が設けられている。闇の魔術はもちろん、カースクラスの魔法も基本的には非推奨である。

 

 これからデスイーター達との抗争に巻き込まれる恐れがあるハーマイオニー達にとって、決闘クラブでの修練は勿論必要なことだ。ただそれだけでは生き残れるかどうか、怪しい。ロンに次ぐ腕を持っていた(というか勝率換算すると勝ち越していた)ファルカスですら死んでしまった今、ハーマイオニーは自分達が新たなステップに進むべきであると判断し、自主鍛練の計画についてハリーを除く友人達と相談していた。

 

 ハーマイオニーが自分の計画を打ち明けたとき、アズラエルはノリノリでハーマイオニーの計画に乗った。ロンは決闘クラブを戦争に巻き込みたくないと強く反対したものの、アズラエルは自分も似たようなことを考えていた、とハーマイオニーに言った。

 

 そして明かされた計画とは。

 

 合法的な強化薬によって、自分達の身体能力を底上げして闘おう、というものである。アズラエルはこれを『ブーステッドマン計画』と呼称した。

 

「僕やハーマイオニーや下級生達にとって一番のネックは、クィディッチ選手達についていけるアジリティがないことです。一対一の決闘ならなんとかなったとしても、人数が増えた状態では処理能力に反射神経が追い付かずにやられてしまうでしょう。……そこを、薬物による強化で補填するんです」

 

「副作用については心配ありませんよ。用法と用量は守って服用することを徹底すればいいんですから」

 

「そこまで言うのなら、薬物のリストは出来ているの?」

 

「ええ。これをどうぞ」

 

 アズラエルが見せたのは、なんと羊皮紙十枚にもなる薬品のリストだった。この夏期休暇のあいだ、owlの勉強と並行してこんなものを作っていたというのだからアズラエルの執念の深さをうかがい知ることが出来た。

 

 ハーマイオニーはたっぷり三十分かけて薬品を一つ一つ精査し、リストをチェックしていった。

 

 そしてそれからたっぷり一時間半、壮絶な議論が繰り広げられることになる。

 

「アズラエル?私の目がおかしくなったのかしら。ポリジュース薬やフェリックスフェシリスはいいと思うわ。貴重すぎて使えはしないけれど、前提知識を共有しておく分にはね」

 

 ロンはハーマイオニーが本気で焦っていると感じとり、紅茶を用意する。

 

「何やってんだ?」

 

「この後絶対長くなるからな。一回落ち着くためのきっかけは必要だろ」

 

 ザビニとそんなやり取りを繰り広げている間にも、ハーマイオニーとアズラエルの舌戦は続いた。

「けど、『Βフェグリプタン』はダメ。違法ドラッグに値する薬物が混じっているのはどういうこと?」

 

 ザビニとロンは目配せしあった。二人ともその薬品の名前に聞き覚えはなかった。ロンは勉強の甲斐あってかようやく四年生にしてはじめて魔法薬学でOを取ったが、四年生までの範囲にその薬物の名前はなかった。

 

「いやいやいやいや。それを止めますか?法規制されていない薬物ですよ?合法も合法、クリーンな代物です。しかも安価。ベターな選択じゃありません?」

 

「あの薬品は臨床試験がなされていないわ。学会でもまだ認められていない薬よ。そんなのを皆に使うわけにはいかない。何があってもこれは譲れないわ」

 

「何があってもって言いますけどねぇ。勝てない闘いに勝算なしで送り込むよりも、勝てる算段つけて戦力を整える方が先だと思いますよ、僕はね。正論だけで勝てるほどビジネスの世界も甘くないんですよ?」

 

「過剰な薬物の投与は中長期的に見て戦力をダウンさせるわ。それだけではなく、皆の士気を下げることにも繋がる。戦術的な優位性を確保できたとしても、それでは逆効果よ。もっと広い視野を持たないと……」

 

 ロンもザビニも議題になっている薬品について知らなかった。ザビニは机の上に置かれた資料に目を通した。Βフェグリプタンには強い興奮作用があり、使用者の心肺を活性化させる薬効がある。服用した場合は身体能力の著しい向上が見られる、とある。

 

 

(……明らかにヤバイな、これ。マグルの基準で言うなら覚醒剤か?魔法族の倫理的にはグレーだが、副作用がわかってねえ薬なんざ論外だろ……)

 

 そんなものを使うわけにはいかない。何があっても。ロンとザビニの思惑が一致した。ふたりは祈るような気持ちでハーマイオニーとアズラエルを見た。

 

(……アズラエル、お前なんでそんなもんを……)

 

 ザビニはハーマイオニーを応援しながらアズラエルが引くことを望んだ。アズラエルはたっぷり一時間もの間ハーマイオニーの説教を受けた後、ついにこう言った。

 

「……君がそう言うのであれば、僕も従いましょう。その薬はやめておきます。わざわざリスクを取る意味はありませんしね」

 

 アズラエルは諸手を挙げて降参する。ハーマイオニーははぁ、とため息をつくと、腕を組んでアズラエルを叱った。アズラエルの顔に反省の色がまるで感じられなかったからだ。

 

「友達なんだから私を試すような真似はやめてよ。たとえ冗談だとしても笑えないわ」

 

「ジョークでこんなものを使おうとは思いませんよ。本気でしたよ、僕はね」

 

 君たちはどうですか?とアズラエルは聞いた。

 

「今後、ハリーを取り巻く状況は悪化するばかりなわけですけど。現状を改善するための何かいいアイデアとか、持ってます?」

 

「俺はハリーが来たときに言うわ」

 

「あー……決闘クラブのメニューを考えてみたんだ。ツーオンツーの決闘」

 

「二体二?どうしてですか?」

 

「……三年生の時にいきなり大勢に囲まれてわかったんだよ。決闘クラブでやってたことは無駄じゃなかったけど、複数人での戦闘だと使えなくなる技も多いって。敏速使って逃げ回るにしても、俺が邪魔になって動けなくなるとか、逆に他の誰かがいて動けなくなるみたいなケースが起きそうだろ?」

 

 

 ロンの言葉に、アズラエルとザビニはなるほどと頷く。

 

「いざってときにそういうことにならないためにも、二人対二人ってケースで練習しておくのはいいと思うんだよ」

 

「いい考えだとは思うわ。……あとはフリットウィック教授を説得できるかどうかね」

 

「双子を見て、複数でのバトルも面白いんじゃないかと思ったって言ってみるよ。フリットウィック教授は決闘に関しては厳格だけど、もしかしたら聞いてくれるかもしれねぇし」

 

 ロンの提案は意外にも好評だった。これにはロン自身が驚いたくらいだった。

 

 議論が少しずつ盛り上がってきたところで、アズラエルは第二の矢を放り込んできた。

 

「……実は僕、まだ別のプランがあるんです」

 

「あれで終わりじゃないのかよ?」

 

「ええ。終わりませんよ、人の夢は。その名も、『エクステンデッド計画』です」

 

 そしてドン引きするザビニをよそに、アズラエルから第二の矢が放たれた。

 

 アズラエルの計画はなんと、この夏期休暇の間に屋敷を訪れる闇祓いからインペリオをかけて貰い、抵抗訓練をするというものだった。

 

「……おお……いや、でも。いけるか………?」

 

「…………」

 

「今僕らがすべきことは、まずはダンブルドア先生からの信頼を取り戻すことだと思うんですよ」

 

「薬物使用は充分信頼を損なう行為なんじゃねぇかな」

 

 ロンの突っ込みを聞き流してアズラエルは持論を展開した。

 

「……ハリーが何も教えて貰っていないのは、恐らくは僕たち二人を含めたスリザリン組のやらかしが原因です。僕らがファルカスがインペリオにかけられていたことに気がついていれば、あの事件は防ぐことが出来ましたからね」

 

「いやそれは違うだろ」

 

「ちょっと待ってアズラエル。貴方達のせいじゃないわ!」

 

 ロンとハーマイオニーは慌てて否定するが、ザビニは何も言わず聞き入れた。

 

(……俺のせいって部分に関しては正直返す言葉もねぇな)

 

 ザビニ自身、その事とは別にしても火消しライターの管理を雑にしていたことを恥じていた。アズラエルの言葉は自分達の油断や慢心を戒めるためのものでもあるのだと、ザビニは冷静に己に言い聞かせる。

 

「ここであれやこれやと盛り上っていても、僕らがホグズミードなりダイアゴンなりでインペリオにかけられて情報が抜かれたら最悪です。敵に利用されるって最悪のケースを防ぐためにも、今出来ることはしておくべきだと思うんですよ」

 

 ロンはぐっと掌を握りしめた。

 

(インペリオへの抵抗訓練……いつかやらなきゃいけねぇことだ。去年クラウチから受けたあれは、本気のインペリオとどう違うのか判断がつかねえし……)

 

「わかった、頼んでみようぜ。……トンクス達がかけてくれるかどうかが問題だけどな」

 

「人相手のインペリオは違法なのよ。……トンクス達が許可するとは思えないわ」

 

「それに関しても、考えがあるんです」

 

 アズラエルはスリザリン生らしく、非常に小賢しく言った。

 

「訓練後に、騎士団メンバーの顔や名前の記憶を消して貰うんですよ。そうすればオーダーの誰からインペリオをかけて貰ったのかはわからなくなりますから、騎士団メンバーが罪に問われることはありません」

 

「……」

 

(……闇の魔術をかけて貰う。……訓練のために。……その発想はなかった。というよりは、無意識のうちに除外していたわ)

 

 ハーマイオニーは腕を組んで何かを考えているようだった。その瞳には、何か思い付きそうな雰囲気があるとロンは感じ取った。

 

「ハーマイオニー、どうかしたのか?」

 

「いや、待てザビニ。今たぶん考え中だ。アイデアが纏まるまで話しかけるのはやめとこうぜ」

 

 ロンがそういい終わる前に、ハーマイオニーの脳裏にはある発想が思い浮かんだ。そしてそれはとても罪深く、ハーマイオニー達の戦力を向上させる上では非常にためになる訓練であることは確かだった。

 

 ハーマイオニーは思い付いた考えを口に出すことはできなかった。それは親友に対する侮辱であり、親友の心を傷つけてしまう考え方だったからだ。

 

 

 ハーマイオニー・グレンジャーはその明晰な頭脳で、ある考えを導き出した。

 

 ハリー・ポッターと。

 

 闇の魔術を使うハリーと、決闘の訓練を行う。

 

 

 それはとても効果的であることは確かだった。ハリーは空を自在に飛行し、無言呪文を操り闇の魔術を使いこなすことが出来る。訓練しさえすれば、インペリオもクルシオすらも使いこなしてしまうかもしれない。

 

 セブルス・スネイプを除けば、仮想デスイーターとしてハリー以上の存在はいない。そう考えてしまったハーマイオニーは、この考えを己の中に封じ込めた。間違っても、親友と同一だとは思いたくなかったからだ。

 

 

 ……ただ、闇の魔術を使わなかったとしても。

 

 ハリーが学生として最高戦力であることは、ハーマイオニー達のなかで共通認識として出来上がっていた。

 

 

***

 

「……ヤバ……マジで?」

 

 ジニー・ウィーズリーは、唯一残った伸び耳によってアズラエル達の会話を盗聴していた。

 

 

 ジニーたちが所持していた伸び耳は、ハリーたちも含めた全員で会議の様子を盗聴していたことがばれた結果全て没収された。ジニーが今持っているのはフレッドとジョージが耳栓に変化させて残しておいた最後の伸び耳である。

 

 ジニーは最近調子に乗って兄を気取ってくるロンが自分より成績で上をいったことが気にくわなかった。あわよくばその勉強法を盗聴してやろうと思ってロンの部屋に伸び耳をセットしたところ、ロンの部屋に集まっていたハーマイオニー達の会話を聞いてしまったのである。

 

 

 危険人物であるアズラエルが危険なことを考えていたことについては、ジニーは驚きつつも覚悟はしていた。問題は、なにかとジニーの相談に乗ってくれたハーマイオニーや気さくなザビニもアズラエルの言葉をところどころ否定しつつも、肯定していたところである。

 

(……もしかして……あの一行って全員がヤバいんじゃ……)

 

 ジニーはその身をもって闇の魔術の恐ろしさを体感したこともあり、危険性に関する警戒心は人一倍強くなってしまった。ロンがこのままアズラエルに関わり続けて、いつしか闇の魔法使いになるのではないかと思うとぞっとした。

 

 さらにタチが悪いことは、あの一行は闇の魔術に対する対策もガチガチである、ということだった。何ならフレッドやジョージよりもその決意に関しては先を行っているだろう。

 

 並大抵の決意では、闇陣営に立ち向かうと決めたからといっても、自分から闇の魔術を受ける決心まではできはしない。騎士団の中核であり主力であるメンバーも、インペリオに対する抵抗訓練を受けた闇祓いが中心だ。

 

 だから闇の魔術をあえて受けて、操られないよう訓練するというのは合理的で、必要なことで。

 

 そして、闇の魔術にトラウマを持つジニーには出来ないことでもあった。

 

(……どうなるんだろ、あいつ……)

 

 ジニーはロンが本当にハリー達についていけるのだろうかと心配した。インペリオに対する訓練をつけて貰えるかどうかすら未知数で、よしんば本気のインペリオに対する訓練など、闇祓いになれるような人間でもなければクリアできる筈がないのに。

 

 つい昨日まで近くにいた筈のひとつ上の兄や頼れる同寮の先輩が底の見えない闇に沈んでいくような気がして、ジニーは伸び耳を放り投げて机に突っ伏した。まだ手をつけていない夏休みの宿題が、音を立てて机からはみ出した。

 

***

 

 

 

 ハリーは当初、簡易裁判を受ける予定だった。ハリーのくしゃくしゃに跳ねた髪の毛はマリーダの手でストレートに整えられ、シリウスが見繕ったジーンズを着たハリーは魔法使いというよりはどこにでもいるマグルの出で立ちだった。魔法使いであることを示すローブとマグルの少年らしい格好のどちらが裁判官の心証を良くするかは議論の余地があったが、ハリーにとってはマグルらしい格好の方が動きやすく、心理的な負担も少ないことは確かだった。

 

 魔法省の通知に従って向かった先で、ハリーはシリウス共々急遽予定が変更されたとアーサー氏から連絡を受けた。

 

「最高裁判所だ!ウィゼンガモットなど本来あり得ないことだが……間違いなくファッジの差し金だ!ファック!」

 

「急げばまだ間に合う!ハリー、俺の手を取れ!テレポートする!」

 

「頼む、シリウス!」

 

 そしてハリーはシリウスの手で、ウィゼンガモット大法廷正面の入り口までテレポートさせられた。

 

「シリウス、ありがとう……!」

 

「後は打ち合わせの通りに話せ。いいかハリー、何を言われても感情的になるな。冷静に受け答えすれば問題はない!」

 

 ハリーが訪れた裁判所には、既にウィゼンガモットに所属する五十名のメンバー全てが待ち構えていた。つい先日までこの中に顔を並べていたアルバス・ダンブルドアは、デイリープロフィットに記載された根も葉もない中傷を理由にこの大法廷を追放され、今はファッジの派閥の人間がこの中に顔を並べていた。

 

 法廷にいた人間のうち、何人かには見覚えがあった。燃えるような赤毛のパーシー・ウィーズリーは魔法省大臣の左の席でハリーを一瞥することもなく、書記官として法廷のやり取りを全て残すための準備を整えている。大臣の右手には、見知ったスリザリンのOGがいた。

 

 一目でわかったパーシーとはことなり、ハリーは最初、その人物がドロレス・アンブリッジだとは気がつかなかった。

 

 年齢にそぐわないピンク色のローブに身を包んでいることは同じでも、四年前ホグワーツに来たときよりもずっとアンブリッジは肥えていたし、甘ったるく不愉快な笑みを顔に貼り付けていた。

 

 これはハリー自身の心境の変化と、アンブリッジ自身の変化の両方が原因だった。

 

 まずハリーは当時、スリザリンのOGであるアンブリッジに敵意を持っていなかった。つまらなく退屈な授業も理論を理解しきっていないハリーにとっては天恵であったし、ハリーが聞きに行けば快く役に立つ書物を出して貰うなどの出来事もあって終始ハリー側からの好感度は高かったのだ。

 

 しかし今は、ハリーに身内以外の他人を気遣う余裕などなかった。ハリーの心証は荒みきっていて、人の顔、人相で好悪を判断する傾向には拍車がかかっていた。

 

 アンブリッジは、四年前とは異なり心に余裕というものが全くなかった。唯一パーシーだけが頼れる部下ではあったものの、現在のアンブリッジはDADA教授への就任を打診され、破滅への道を突き進む崖っぷちにあると言ってよい。ファッジのご機嫌取りのためにこの場を整えたものの、内心は不満たらたらだった。

 

(……あー……この時間無駄ですわー。本当に無駄ですわー。……あー、まーたデスマーチが待ってますわ~。眠りたーい。眠れねぇけど)

 

 ハリーを陥れたことまでは自分が撒いた種である。しかし、わざわざ大法廷に変更してハリーの弁護人をスカさせるという嫌がらせを決めたのはファッジだった。パーシー共々、その手続きのために睡眠時間を磨り減らしたことで、アンブリッジは自分の行いを後悔していた。なんで悪いことをしたのだろう、と。

 

 ウィゼンガモット大法廷は、英国魔法界の司法と立法の機能を有する。マグルの世界で成立している三権分立は存在しないが、魔法使いとマグルとでは行政や司法に対するそもそもの感覚が異なる。アンブリッジやパーシーのように権威や権力を重視する人間の方が少数派で、マグルのように整える必要などあるまいというのが一般的魔法族の総意なのである。

 

 そしてハリーは最後に、トライウィザードで出会った魔女の姿を目にした。

 

 

 

 片眼鏡をかけた白髪の魔女は、高位であることを示す紫色のローブに身を包んでいた。魔法省の執行部部長であり、それにふさわしいだけの威厳と冷徹さが感じられた。

 

 アメリア・ボーンは興味深そうにハリーを観察していた。ファッジやアンブリッジとも異なる、ハリーを値踏みするような視線を感じ取りながら、ハリーは薄暗く濁った瞳をアメリア・ボーンへと返した。

 

 

***

 

 アメリア・ボーンにとってもウィゼンガモットのほぼすべてのメンバーにとっても、この案件は寝耳に水だった。

 

 魔法使いの子供がマグル相手に何かしらの問題を起こすケースは数多くある。その全てにいちいち大法廷が対応してなどいられないし、今回のケースも大法廷での審議をすることなどあり得なかった。

 

 貴重な時間を割いてまで未成年の審議に駆り出されたアメリアが目にしたのは、あまりにも変わり果てた生き残った男の子の姿だった。

 

 

(この少年は……?)

 

 そんな顔をする人間を、かつてアメリアは嫌というほど目にしてきた。

 

 暗黒時代の最中、闇に巻き込まれ運命を翻弄されてきた人間のかお。それが、わずか十五歳の少年に貼り付いていたのである。

 

 一年前のワールドカップの折に目にした、将来への夢と希望に満ち溢れた少年とは、まるで別人だった。




アメリア・ボーン。
スクリンジャーと並ぶ魔法省の良心。
しかしダンブルドアに対してはフラット。

アズラエルの言った本気のインペリオに対する抵抗訓練とかヤバイ記憶の消去くらいは書かれてないだけで原作でもやってたと思います。
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