DVされても尽くす彼女みたい。
「アンブリッジ先生から君への罰則をするよう言われてる。で、君に対する罰則なんだけど……これまで通り、ホグワーツに通ってくれ」
ハリーは5時を告げる鐘の音が鳴るや否や、空き教室に入ってきたネビル・ロングボトムにそう告げた。ネビルはしかめ面のまま表情を変えない。
尋問官親衛隊に任じられたハリーはネビルに対して名目上の罰を課すことになった。ドロレス・アンブリッジはハリーをこき使えることに喜びを見出だしたらしい。ハリーは己の裁量で、ネビルへの罰をこの一回限りとし、温室への出入りも自由とすることに決めた。
(僕は何を言ってるんだ。何をやってるんだ)
尋問官親衛隊のバッジや権力など欲しくもなかった。しかし、これがあることによってロングボトムへの罰は軽減できる。そう考えてハリーは尋問官親衛隊のバッジを受け取った。
そのバッジは銀色に鈍く輝いてはいたが、監督生のバッジと異なり何の権威も重みもないただの張りぼてのバッジだった。監督生達とハリーとで決定的に異なるものがあった。それは寮監からの評価を聞き入れた校長自らが任命したという箔であり、生徒達からのハリー個人に対する信頼の差でもあった。
ハリーはそもそも自分を悪人だと自覚している。闇の魔術に手を染めた分際でネビルを罰するなど烏滸がましいことだ、と思っている。
だからネビルには、今まで通りの日常に戻ってほしかった。それがハリーの心の底からの願いであり、エゴだった。
「一応『罰則を課した』っていう名目は必要だから、ここで時間を潰そうか。三十分だけ。それで終わりだ。君は今まで通り温室に出入りできる」
「何でポッターがここにいるんだい?アンブリッジ先生は?」
「僕は先生の代理だよ。尋問官親衛隊は先生の代わりに罰則をすることになってる」
「……ロングボトムは飲みたい紅茶とかあるかい?用意したので気に入るのがあれば言ってくれ」
ハリーはなるべく友好的に見えるようにネビルへと話しかけた。緑色のローブを着たスリザリン生と、深紅のローブに身を包んだグリフィンドール生との間にある溝は深い。
ネビルは最初、はっきりとハリーの提案を拒絶した。
「ポッター、君に一つだけ言っておくけど」
ネビルの返答を聞かず、自分の好きな紅茶を淹れようとするハリーに対して、ネビルは紅茶を用意する前に切り出した。
「僕はマルフォイを殴ったことは後悔してない。けど、罰はきちんと受けるよ。それがルールだから」
ネビルの瞳には嫌悪感と怒りが煮えたぎっていた。が、それでも規則を守ろうという意思と、規則を破ったことに対する罰は受けようという気概は感じられた。
ネビル自身、マルフォイに抱いた嫌悪感や憎悪を他のスリザリン生であるハリーへぶつけないために必死で耐えているのだろう。
(……真面目だな、ロングボトムは。そう言えば、一年生の時もロン達に歯向かったことがあったな……)
「君は立派な人だね、ロングボトム」
今回のハリーの提案は、マルフォイの言動やその罪を忘れて、無かったことにして、曖昧にしてくれと言っているようなものだ。ネビルが受け入れられる筈もないことはわかっていた。
だが、ハリーはネビルに理解させることにした。ネビルがこれから受けようとしている罰がどれだけ理不尽なものかを。
ハリーはドロレス・アンブリッジから直々に彼女のお気に入りの魔法について伝授された。ハリーはいわば直弟子のような立場になっていた。
『どんなに聞き分けのない生徒でも、二度と受けたくはないという罰を与える。それが教育と言うものですわ』
そうドロレスはハリーに語ったが、どう見ても体罰でしかなかった。
ドロレスがハリーへ伝授したその魔法は、腐りきった性根がそのまま形になっていた。
「これを見てもそんなことが言えるかい?」
ハリーは杖を振ってもう一枚の羊皮紙を出現させた。
「これはアンブリッジ先生の用意した羊皮紙だ。インクを垂らしてここに書く」
ハリーは『僕は暴力をふるってはいけない』と記入した。羽ペンで羊皮紙に書いた文字が、ハリーの左手の甲に刻まれる。
「これは契約魔法の一種で、用意した羊皮紙に、その人が文字を刻むことで契約したことになる。予め羊皮紙にプログラムされていた内容は、『自分の書いた文字を左手の甲に刻む』ことだ」
「なんて……悪趣味な魔法なんだ……」
ハリーの掌から滲む血を見て驚きと嫌悪感を剥き出しにするネビルに対して、ハリーはどこまでも冷めていた。
「技術に罪はないよ。書物によると、この手の魔法は古美術品の警備でよく使われるそうだ。犯人にそうと分かる痕を残して追跡しやすくするためにね」
闇の魔術を習得したハリーの倫理観はやや壊れていた。技術は技術だと割り切っている。
「もちろん、これは君に……いや、君だけじゃなくてホグワーツの生徒に使っていいような魔法じゃない」
「三十分経過したら擬装のために、君の掌に軽く文字を刻む。アンブリッジの目には一見すると罰を受けたようにしか見えないはずだ。いいね?」
ネビルはしかし、頷きはしなかった。
「……何で僕のためにここまでしてくれるんだい?」
ネビルはハリーを疑い、直接疑問をぶつけてきた。
「ロングボトムのためじゃない。スリザリンの後輩のためだ」
「後輩……?」
ハリーははっきりとロングボトムへ釘を刺した。
「ロングボトムにはオルガやミカエルが世話になっている。僕が紹介した後輩たちの面倒を見てくれてありがとう」
「……ああ。でも、それはあの子達が熱心だったからだよ。本当に嬉しそうに作業するし、分からないところは聞いてくれるし……」
「あの二人はロングボトムが温室に出入りできなくなることを残念がっていたよ。君の薬草栽培の手際は神業だって言っていた」
オルガとミカエルの名前を出して褒めると、ロングボトムは笑いを浮かべそうになるのを堪えていた。彼が誇らしく、嬉しさを顔に出さないよう必死で堪えていることは明白だった。
(ロングボトムは褒められなれていないんだな……)
ハリーは更に強引に押しきろうとした。ハリーがマルフォイの行動を鎮火するためにアンブリッジに談判したのは事実だったが、それを言ったとしても事態がややこしくなるだけだったからだ。
うまくネビル・ロングボトムを煽てて気持ちよく帰って貰おうとハリーは言葉を重ねる。
「君が罰を受けずに済むのは君自身に人望があったからだ」
ハリーの称賛は打算からのものではあったが、本心でもあった。
ホグワーツで他所の寮の生徒から慕われるような人間はなかなかいない。大抵の生徒は他所の寮の生徒より、同じ寮の友達や仲間を優先するからだ。
それこそバナナージ・ビストやセドリック・ディゴリーのように、偏見や隔意を持たないか、うまく隠して公平に接するような人間でもなければ、ここまで慕われることはあり得ないとハリーは思った。だからこそ、ハリーはネビルを称賛したのだ。
「気にくわない寮の連中に貸しを作りたくないっていう気持ちは分かる。だから今日のことは忘れて、これまで通りの日常を歩んでくれ。僕が言えるのはそれだけだ」
「……いや……このままじゃ引き下がれない」
「え?」
事態を解決にしようとするハリーに対して、ネビルは納得しなかった。
これはハリーにとっては意外なことだったが、ネビルにとっては当然の反応でもあった。
相手にとって都合のいい条件を提示すれば満足するだろう、という驕り。本心をさらけ出さずになあなぁで済ませようという甘え。最近のハリー達が慣れきっていたその甘えは、ネビル・ロングボトムには通用しない。
「ポッターがスリザリンの後輩のために僕を助けてくれたのはわかったよ。……だけど、君は何を考えてるんだ?」
そもそもネビルとハリーは友人の友人であって、友人関係ではない。ネビルからすれば、ハリーに対して話しても失うものなど何もないからだ。
「……君は……ユーノーフーが復活したってダンブルドアが言うのに。君自身がそれを目撃したのに。それを否定する魔法省のアンブリッジや、あのマルフォイと仲良くやってる。……それなのに、DAに参加している。君はロンやハーマイオニーに何をさせるつもりなんだ……?」
「ロングボトムはなかなか勇気があるね。グリフィンドール生らしいよ」
ハリーは表情を隠すために紅茶を淹れたカップに口をつけてため息をついた。
「DAの誰も彼もが、同級生が死んであの人が甦ったことについて触れもしない。内心では、聞きたがっているくせにね」
ハリーはネビル・ロングボトムのことを見直した。しかし、その場で全てを明かす気にはなれなかった。
ハリーはロンやハーマイオニーをはじめとした、『身内』と呼べる七人を除いたホグワーツ生を、心の底の底では信用していない。
仲間を増やさなければいけないと頭ではわかっているし、そのためのDAだとも思っている。だが、他の生徒達にはそれぞれで大切にすべきものを持っているのだ。
本当に追い詰められたとき、闇陣営に屈することなく戦うことができるか。その覚悟があるのか。ハリーには確信が持てない。
だから試す。愛を知らない子供が愛を試そうとするように。ハリーはネビル・ロングボトムをふるい落とそうとした。
「だけど。僕が本当にダンブルドアを裏切って闇陣営についていたとしたらどうするんだい?仲が良いわけでもない人間にいきなりそんなことを聞くのは不用心だよ、ロングボトム」
「……話をはぐらかさないでくれ。そんなこと、外から分かるわけないじゃないか」
ネビル・ロングボトムは葛藤をかなぐり捨てて踏み込んできた。ドラコ・マルフォイを殴ったことでもう失うものなんてないと自暴自棄になっていたのか、それとも、壁を超えてグリフィンドール生らしい勇気を獲得したのか。ネビルは止まらなかった。
「寮が違ったら1日の間で会うのなんてほんの数回だ。会話して人となりを知ってっていう関係でもない。だから、ポッターの表面以外の部分なんて僕には分からないんだ。だから教えて欲しいんだ」
ネビル・ロングボトムは冷や汗をかきながらも真っ直ぐにハリーに話しかけてきた。いっそ小気味良いほどに。
「僕は君が……ポッターは闇の魔術を使っているとか。……いろんな良くない噂をいろんな人達から聞くよ。ハーマイオニーやロンを信用させてから騙して、何か良くないことに付き合わせているって言ってる人もいる」
「良くないことか」
(本当にその通りだよ、ロングボトム)
ハリーはネビルの言葉を否定せず、薄く笑った。
禁断の森を探索してアクロマンチュラや転入生を相手に殺されかけた。これだけでも許される範囲はとうに超えているという自覚はあった。
優秀な闇祓いや役人達が束になっても敵わなかったヴォルデモートを殺すために、あらゆる手を尽くそうとしている。そう言って信じて貰えるのかどうか、ハリーはネビル・ロングボトムを見極めようとしていた。
「だけど、君が闇の魔法使い達に対抗するために陰で闘っているって噂してるやつもいる。ミカエル君とか、オルガ君なんかはそうだった」
「まだ僕を信じようとしてくれる子が居るんだね。嬉しいよ」
ネビルが明かした言葉はハリーにとっては嬉しい誤算だった。思わず漏らした本音をネビルは聞き漏らさなかった。
「……じゃあ、君は本当に……闘おうとしているのかい?『例のあの人』と?」
そのネビルの問いに答える前に、ハリーは時計を見た。長針は既に真下を通り過ぎている。
ハリーはネビルと視線を合わせると、強い口調でこう言った。
「ロングボトム。もしも君が僕を信じようと言うのなら、水曜日のDAが終わった後、『三階の女子トイレ』に来てくれ」
「えっ……それってどういう……?」
「……いや、まさか……」
ハリーの言葉に、ネビルは最初意味が分からないという顔をした。馬鹿にしてるのか、と椅子から立ち上がる。
しかし、ネビルはハリーにすぐ殴りかかるほど短慮ではなかった。忘れっぽいと評価されているネビルではあるが、これまでの記憶を総動員してハリーの言葉の意味を考えた。
やがてハリーの言葉の意味を理解したとき、ネビルは恐怖で眼を見開いた。ハリーはスリザリン生らしいうっすらとした笑みを顔に貼り付けた。
その日、ネビルはハリーのでっち上げた隠蔽用の刻印を左手の掌に受けた。次の日にネビル・ロングボトムの掌を確認したドロレス・アンブリッジは、満面の笑みでハリーの仕事ぶりを讃えるとスリザリンに五点を加えた。
***
「あ゛あ゛~っ、疲れた~」
「だろうな」
ハリーは寮の部屋で課題と復習、そしてowlに向けての模擬試験の問題を終えると倒れ込んだ。今日はスリザリンクィディッチチームの練習もありザビニもハリーと共に訓練をしていたわけだが、ザビニはハリーほど熱心にはやらず早々に切り上げていた。
「……十二科目、クィディッチ。そして、尋問官親衛隊ですか。そろそろどれか犠牲にしませんか?」
アズラエルはにやけ顔でもなくかなり真剣にそう言った。アズラエルの手にもコンジュレーションの課題レポートが握られている。試験の年なだけはあり、どの教授達も課題には一切手を抜かず、学友達のレポートをコピーしたような雑なレポートには容赦なくP評定を出してくる。ハリーもコンジュレーションと天文学でPを取っていた。
「いや、まだまだ余裕はあるよ。尋問官になったことでミカエルは事なきを得たわけだしね」
ハリーはシャープペンを握っていた手をマッサージしつつ、笑った。
「尋問官になったことで君に対する評価は地の底ですね。事情を知らない一般ホグワーツ生徒はまだしも、事情を知ってるDAメンバーすら便乗しているのはどうかと思いますが」
アズラエルはそう言う。ハリーは軽く頷きつつ、DAメンバーを嘲笑った。
「……この間、マリエッタ・エッジコムが僕に泣きついて来たよ。『チョウに誘われて来ただけでアンブリッジに逆らう気はなかったの』ってね。……セドリックに話して落ち着かさせたけどね……」
ハリーが尋問官親衛隊になったことは様々な波紋をもたらした。DAメンバーの中には友達に誘われて仕方なく参加したという人間もいて、マリエッタ・エッジコムはその一人だった。
「……本当の目的である仲間集めの前に選別ができたと前向きに捉えましょう。実際のところ、『あの人』に立ち向かう気概のない人がいくらいても無駄ですし」
「決闘クラブの理念には反すっけど、しゃあねぇな」
マリエッタは必死になってハリーに近づいてきた。魔法省に勤める親族が左遷されるかもしれないと必死に訴え、どうにかアンブリッジに取り次いで貰えないかとハリーに訴えた。
ハリーはマリエッタのことをどうとも思わなかった。そういう『普通』の人間に対して構ってあげられる余裕はなかったから、怒りすら沸かなかった。
ハリーは『DAに不安がありついていく気がないのならハリーを理由にフェードアウトすればよい』と助言し、マリエッタはセドリックから慰められてDAを休むことにした。マリエッタの他にも何人かの生徒はDAを去ったが、カロー姉妹やマクネア、ウィーズリーの双子、アーニー達監督生といった主なメンバーは揃っていた。
DAのことを公にするわけにはいかないので、メンバー達が世間の風潮に乗って学校でハリーを貶めるのは仕方のないことだった。ハリーはそう割りきったが、不快であることは確かだった。
ハリーにとって救いなのは、ハリーの周囲の友人達はハリーの真意を理解してくれているということだった。ルナ・ラブグッドやコリン・クリービーの存在を心強く思ったのは何度目だろうとハリーは思った。
「DAはうまく回ってはいるけれど。仲間を増やすのは簡単じゃないね。僕のせいだけど」
DAメンバーのアンソニー・ゴールドスタインはハリーから距離を取ってセドリックにすり寄っていったが、シノはそのままハリーに話を聞きに来た。
シノが闇陣営に対してどんな考えでいるのかはハリーにも分からない。厄介なのは、ハリー自身が闇陣営に通じているのではないかと疑われていることだ。
闇陣営に対抗する気概がある人間も、ハリーを警戒してハリーと距離を取りたがるという事態になっていた。
「端から見たら、双子に喧嘩売ったあとアンブリッジに媚売って取り入ったようにしか見えねーしな。ま、スリザリン生が嫌われんのはいつものことだがよ」
「誰かを罰したり減点したり、加点してはいないんだけどなぁ」
ザビニが言うように、ハリーの行動を周囲から見ればそうなるのは仕方ないことだった。
グリフィンドール生には『ルーピン先生にあれこれ贔屓してもらっておいてアンブリッジに取り入った人間のクズ』にしか見えない。
監督生からは『クソ教師に贔屓されて勝手な特権を手に入れたやつ』でしかない。ミカエルとオルガ二人のために、ハリーは多くのものを失う結果となった。
周囲からの視線は痛かったものの、後輩たちが元気に温室に出入りしているのは喜ばしいことだった。スリザリンの美点は、後輩や身内に対して優しいことだ。ハリーだってその優しさに助けられて生きてこれたのだ。先輩達から受け継いだ優しさを、次の後輩に託せたのならば尋問官親衛隊の肩書きにも意味はあったとハリーは自分に言い聞かせた。
アズラエルはここは前向きに考えましょう、とハリーに言った。
「他の生徒達はともかく。ミカエルやオルガは君に借りを感じています。……あと、ロングボトムもね。彼らは押せば落とせますよ。僕が勧誘してもいいですか?」
「うん。今週の金曜に例の場所に集めてくれ。……集まった子達には仲間になってくれないか頼んでみるよ。話せることは話すつもりだ」
「ビビって降りたり、裏切ったらどーするよ?」
ザビニは笑わず深刻な顔で聞く。ハリーも真顔で返した。
「そのときは彼らの意志を尊重するよ。裏切りは許さないけどね」
敵になった場合は叩き潰す。暗にその意志を込めて言うと、ハリーはノートを畳み終えた。ザビニとアズラエルは顔を見合わせた。
「……許さないっつーか。裏切れなくなりそうだけどな。俺らみたいによ」
「ですねぇ……」
親友二人の言葉は魔法のような意志を持っていた。その言葉は単なる願望で、預言のような強制力はない。しかし、そうあれと願う希望があった。
***
ネビル・ロングボトムが秘密の部屋に招待されたとき、秘密の部屋には何人もの魔法使いがいた。
ハリーが蛇語を使い秘密の部屋への道を開くとき、ネビルの心には恐ろしさがあった。自分は闇の魔術に通じているかもしれない道を潜ってしまったのではないかと錯覚しそうになった。
蛇語は、ハリーが秘密の部屋の事件を解決してもなお魔法使いにとっては恐ろしいものだった。例のあの人がスリザリンとの繋がりを示すためにその力を誇示していたと、ネビルも祖母から聞かされていたからだ。
「蛇語が怖いかい?グリフィンドール生なのに?」
「……まさか、そんなことないよ」
ハリーが挑発するように言葉を投げ掛けると、ネビルは虚勢を張った。ネビルは自分でも認めるほど臆病者だが、グリフィンドールに入った人間として、臆病さを揶揄されることは許せなかった。
「無理しなくてもいいよ。君たちがそういう反応をする度に、僕はスリザリンに入って正解だったと思えるからね」
ハリーの案内で、秘密の部屋への道を進んでいくネビルは、驚くべき光景を目にした。
固い大理石でできた道を進み、蛇と林檎の意匠が施された扉を開くと、柔らかなマットが敷き詰められた大きな部屋にたどり着いた。
その部屋には、ロンとハーマイオニーが。ザビニとアズラエルが。そして、クリーピーやルナといった、やや周囲から浮きがちな生徒が待っていた。更にネビルを驚かせたのは、そこに見知った顔を発見したからだ。
「……!?ハナさん!?ミカエル君にオルガ君!?どうしてここに!?」
秘密の部屋には、ネビルやハリーの友人達の他にも意外な人物が招かれていた。
アーニー・マクラミン、ハナ・アボット。セドリック・ディゴリー。そしてスーザン・ボーンというネビルが憧れてやまないハッフルパフ寮の生徒が四名。
ミカエル・オーガスタ、オルガ・ザルバッグ、シュラーク・サーペンタリウスというスリザリンの四年生三名の側には、ハリーと親しく話をしていたシノの姿もあった。
全員の姿を見渡すと、ハリーは皆を椅子に座らせ、立ったまま語り出した。
「集まってくれてありがとう。……約束通り、皆には、これから真実を話す。その上で、自分の意志で決めて欲しいんだ。『ヴォルデモート』を殺すために戦うか、関わらないように逃げるかを」
ハリー・ポッターの語った真実は、その場に集まったホグワーツ生達を呑み込んだ。まるで毒蛇の井の中に丸飲みされてしまったかのように、ネビルはハリーが語り終えるまで一言も発することができなかった。