蛇寮の獅子   作:捨独楽

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永遠の炎

 ダイアゴン横丁の一角には、風変わりな喫茶店がある。

 

 時間にいい加減な魔法族の性か、それとも凝り性の店主のせいか。開店時間も休日も不定期な喫茶店の片隅で、一人の若い青年が熱心に女性へと語りかけていた。

 

 喫茶店を訪れたヘスチア・ジョーンズが彼らの会話に興味を持ったのは、青年が相手の女性を口説いていた……からではなかった。話しかけられている女性の姿に見覚えがあったのだ。

 

(……あれはリタ・スキータ?)

 

 

 ヘスチアは相手の女性に見覚えがあった。近所の魔法使いが危険な魔法生物を許可なく飼育していたとしてしつこく取材された時、記者の顔を覚えたのだ。

 

 髪の毛は白髪が目立ち、やや痩せこけていたものの、魔女はリタ・スキータに違いなかった。サンドイッチとレモネードを注文すると、レモネードを楽しむふりをしながら二人の会話に耳をそばだてる。

 

(……あの女……何か危険な香りがする)

 

 ヘスチアは騎士団員として活動する間、犯罪に手を染めた人間を見てきた。闇祓い達の尽力によって魔法省に勾留され、有罪判決を受けてアズカバン送りとなった人間も見てきた。

 

 アズカバンに入り釈放された魔法使いのうち、改心した人間と懲りていない人間を見分けることは難しい。が、ヘスチアは経験上何となく改心した人間とそうではない人間にあたりをつけられるようになっていた。

 

 心折れた元犯罪者は、反省して己の過ちを認め、二度とアズカバンに入らないことを心に誓う。が、リタ・スキータの瞳に真人間たろう、という輝きは見出だせなかった。

 

 それどころか、何かに燃えているような強い熱を持っている、とヘスチアは思った。

 

「……ですから、先輩!今こそ!先輩のペンの御力が必要なときなんです!」

 

 熱心にスキータを口説いていた若い魔法使いは口髭を生やしていたが、年齢としては二十代前半かそこらだろう。おそらく三十路には至るまい、とヘスチアは思った。若く見られることを嫌うが故に髭を伸ばしたのだろうが、漏れ出る若さは取り繕えるものではなかった。

 

「これを見て下さい。先輩の作った『流れ』に乗って、我が社はまずまずの売り上げを維持しています。しかし、読者の皆様はより刺激的で、心に残るような記事を求めているのです!」

 

(……拝金主義の似非ジャーナリストが。ダンブルドアが何のために戦っていると思っているのか。貴方達のためでもあるというのに……!……あの男も、十年ほども昔はホグワーツにいたであろうに……)

 

 若い魔法使いの手にはデイリー・プロフィットが握られている。ヘスチア・ジョーンズは心の中で記者に唾を吐いた。記事の内容は見なくてもよくわかる。デイリー・プロフィットによるダンブルドアに対する誹謗中傷はこのところ度を超えていた。

 

 ヘスチアには騎士団員として自らの上司に対する忠誠心と、魔法界を護らんとする気概がある。だからこそ、無理解なマスメディアに対する憤りは強い。

 

 ヘスチアが憤っている間にも、魔法使いは強く右手を握りしめて力説しようとしていた。が、その機先を制するようにリタは毅然とした態度で言葉を放つ。

 

「アズカバンに入った私のことをそこまで買ってくれるのは嬉しいわ。けれど、ニュートン。貴方は昔、『私のやり方には賛同できない』と陰口を叩いていたわね?」

 

 ニュートン、と呼ばれた魔法使いは凍りついたように固まった。

 

「僕はかつては貴女のことを誤解していました。『強引な取材や誇張ある記事は報道の本質に反する』と口にしたこともあります。ですが、先輩。僕が間違っていました。新聞は、読んで貰えてはじめて価値があるんです!」

 

 堂々と言い放つ魔法使いを見ながら、ヘスチアはジャーナリズムというものについて考えさせられた。

 

(……どうやら……出世レースに乗るためにデスクの方針に従った、といったところか……)

 

 どんな世界においても、上司の意向を無視することはできない。ヘスチアも会社勤めをしている魔女であるから出世のため、あるいは売上のために建前を投げ捨てる人間というものは目にしてきた。

 

 

 狭い世界の蹴落とし合いのためにダンブルドアという魔法界を支える柱が折られようとしている。

 

 リタ・スキータが強引な取材を批判されながらもデイリープロフィットに起用され続けたのは、大衆が読みやすく、それでいておもしろいと考えるような記事を書く能力に長けていたからだ。

 

(不味い)

 

「まずっ」

 

 と、ヘスチアは思いながらサンドイッチを齧った。た。キュウリとアーモンドのサンドイッチは、キュウリの瑞々しさをアーモンドの香りが台無しにしていた。

 

 今のデイリープロフィットにリタが復帰したとき、大衆がアルバス・ダンブルドアを見限らない保証はない。

 

 そう認識したヘスチアの心に悪魔が囁きかけた。

 

 リタと魔法使いの後をつけて、オブリビエイトで彼らの接点を絶つ。アルバス・ダンブルドアの名誉と尊厳を護るためには必要なことではないか。

 

 そう思い立つヘスチアであったが、リタ・スキータの言葉を聞き、思いとどまった。

 

「ニュートンが私の持論に賛同してくれたこと、嬉しく思うわ。けれど私は、デイリー・プロフィットに戻る気はありません」

 

 そう言い放つリタの表情は嬉しがっているようには見えなかった。

 

「……な、なぜです。貴女の帰還をデスクは心待ちにしています……」

 

 泣き落としのようにすがり付く魔法使いをリタは相手にしていなかった。

 

(……相当思うところがあったようね……)

 

 ヘスチアはリタの中にはさまざまな葛藤があるはずだと思った。

 

 デイリー・プロフィットの記者に戻れるという栄光の道。かつて失った地位への執着、未練。もう一度、前と同じ人生を歩むことが出来るという安堵。

 

 それを投げ棄ててなお、リタ・スキータは違う道を進もうとしている。

 

「人は変わるものでね、ニュートン。あなたがかつての私のように変わったように。私も変わったのよ。『信念』のないジャーナリズムに価値は無いと考えるようになったの」

 

「………………フリーの元犯罪者を取ってくれる出版社なんて居るはずがないでしょうが!」

 

 

「心当たりはあるわ。私は後輩の世話になるほど落ちぶれては居なくてよ」

 

 そう言い放ち、自分の払いを済ませたリタ・スキータは颯爽と喫茶店を出ていった。後に残された魔法使いは、雷に撃たれたように固まったまま動けないでいた。

 

 

***

 

 リタ・スキータはアズカバンの中で、自分のジャーナリズムを取り戻した。今のデイリー・プロフィットに、リタは魅力を感じていなかった。

 

 リタの信念は、『一割の真実と九割の誇張』である。

 

 誰それが何かをした、という『事実』だけをそのまま記すだけならば、1000字も使う必要はないのだ。ひとつの事実を掴むために、記者はリスクを犯して駆け回らなければならない。そしてその真実を知った読者が新聞を読もうと思えるように誇張することが、記者の腕の見せ所なのだ。

 

 出所してからデイリー・プロフィットの記事には目を通した。その記事や、ニュートンの態度を見て、リタは確信した。

 

(あの阿呆ども。自分の足を使うことを怠ってる。私を使ってネタを仕入れようとしか考えていない。……なんでこうなった?デスクが代わったせいか。……つまり私のせいか……)

 

 リタが獲得した、一割の真実。それは一割の真実が正しいと思えるような裏付けである。

 

 今のデイリープロフィットは、リタがいたころよりも劣化している。結論ありきでネタを集めることはリタもやっていたことだが、その裏を取る努力を怠っていることが記事の端々から読み取れる。

 

 

 リタと反目していた前のデスクは、ジャーナリストとして裏取りを徹底しろと口を煩くしていた。

 

 リタが逮捕されたことで比較的まともだったジャーナリストは死に、劣化リタとでも言うべき人間がデスクとなった。

 

 リタはそんなデイリー・プロフィットに未練はなかった。

 

(……まぁ私の記事のせいでそういう記事に読者が慣れたのは確かだが。私が辞めた後もそういう記事を書き続けたのはアイツらだからな……)

 

 

 リタは頭を切り替えると、自分の取材用ノートを取り出した。

 

 ネタを集めようと考えていた著名な魔法使いの写真がノートには貼り付けられていた。その中には、アルバス・ダンブルドアやハリー・ポッターの顔もあった。

 

 アニメーガスの資格を取得したリタにとって、恐れるものはなにもない。

 

 売れる記事を書く。

 

 一割の真実は己の手で掴み取り、九割の誇張もまた、己の責任でもって行なう。

 

 ジャーナリストとしての矜持と信念を抱えながら、リタはプリベット通りにテレポートした。住民達から面白そうな情報を仕入れるために。

 

 

***

 

「ダンブルドア先生。俺の監督不足です。ハリー達を危うく死なせるところでした」

 

「森に立ち入ることを許可したのは私だよ、ハグリッド。ウィルヘルミーナにも話はしてあった」

 

 

「………………アラゴグが弱っとります。寿命なんです」

 

「私が思うに、ハグリッド。アラゴグは君に弱った自分の姿を見せたくはなかったのだと思う。ホグワーツを出立する君が憂いなく旅を終えて、再びここに戻ることをアラゴグは望んでいたのだ」

 

「おお、アラゴグ……!」

 

 ハグリッドの胸に暖かい心が広がり、瞳からはアラゴグのための大粒の涙が流れた。

 

 ダンブルドアがハグリッドを見る目もまた暖かい。暫くの間感傷に浸っていたハグリッドは、ハンカチで鼻をすするとダンブルドアへと言う。

 

「……い、いえ校長先生。俺は……教師を辞めるべきだと思います。プランクの方が俺よりも評判がいいし、俺と違って……生徒を危険に巻き込むことはねえ」

 

「ウィルヘルミーナは君が戻るまでの間、という条件でホグワーツに来た。その意味が分かるかね、ハグリッド」

 

 ダンブルドアの声に、はじめて厳しさの色が乗った。

 

「彼女は君とのやり取りで、前学期までの君の授業内容と進展を把握した。そして、君が必要なことを教えられていると判断したから引き受けたのだ。君は、ウィルヘルミーナより二年も多く生徒達を指導してきたのだ」

 

「……ハリー達も、君の帰りを待っていた」

 

 アルバス・ダンブルドアの蒼い瞳は、ハグリッドの瞳を射貫いた。

 

「その信頼に応えようとするのが教師であり、大人がすべきことだと私は思う」

 

 ルビウス・ハグリッドは鼻をすすった後、深くダンブルドアに一礼した。そして校長室を出る間際になって、ダンブルドアに一つだけ質問をした。

 

「ダンブルドア先生。……先生はハリー達が森に立ち入ることを黙認していたと、プランクが言っておりました。……ハリー達のことが心配ではなかったのですか?」

 

「私は心配していなかった」

 

 ダンブルドアはこともなげに言った。

 

「ハリーは既に、禁じられた森より恐ろしい脅威に何度も立ち向かってきた。他の生徒達も、ミス・グレンジャーやミスタ・ウィーズリーのように勇敢で経験豊富なもの達がいた。彼らが命を落とすことはないと、私は確信していたよ」

 

 恐れ入って校長室を去るハグリッドの足音が遠ざかっていくのを確認すると、フィニアス・ナイジェラスはまったく、と呟いた。

 

「ホグワーツの問題児はアクロマンチュラを殺害する決まりにでもなっているのかね?」

 

「そんな規則ができた日には、ホグワーツは生徒の九割を森に追い出さなくてはいかなくなるよ」

 

 親しげにやり取りをするアルバスとフィニアスの肖像画の間に、フォークスが入り込んで美しく啼いた。

 

***

 

「………………」

 

 ハリーは行き詰まっていた。

 

「……難しい顔をしても問題は解決しないぞ?」

 

「ロンのように気楽に考えられたらいいんだけどね……」

 

 ハリーの悩み。それは、例のあの人ことヴォルデモート殺害のための手段が見つからないことだった。

 

 DAやその裏で行われる会合によってハリー達の基礎は着実に向上している。それは重要なことだし、シノやアーニーをはじめとした途中加入組が戦えるレベルまで鍛えなければならないのは当然だ。

 

 だからこそ、ハリーはヴォルデモートに対抗するための術を本気で考えたかった。

 

 アーニー・マクラミンは真面目が人の形をしたような存在で、融通がきかず嘘も得意ではない。それでも、最終的にハリーを支持すると決めてくれた人間だった。ハリーは彼らを護るためにも、ヴォルデモートに対抗できると確信できる魔法を身に付けたかった。

 

 ハリーはスキルアップをしたかったのである。

 

 ハーマイオニーの目論見は半分は当たった。スリザリンの特性か、身内だと認識するまでは大変だが一度身内と認識してしまえば、仲間として護りたいという責任が生まれる。ハリーはヴォルデモートを殺害する案について皆に相談すると、アーニーやシノは若干引いた目でハリーを見ていた。

 

「えっと……ほら。この間ハグリッドが言ってたじゃん?『グブレイシアン(永遠の炎)』とかどう?ハリーは炎が得意だよね?」

 

「そんなもん使えるのダンブルドアだけだろ?」

 そうロンが口走る。そしてしまったという顔をした。

 

 ダンブルドアに対して対抗心があるハリーには、火の扱いでは負けたくないという思いがあるようで不服そうに唇を噛み締めていた。

 

「あの~、グブレイシアンってどんな魔法なんですか?」

 

 コリンが手を挙げて問う。ハリーは優しく応えた。

 

「簡単に言うと、消えない炎さ。何があろうとどんなことをしても消せない。その対象を燃やし続ける。そういう高度な魔法も存在するんだ」

 

「俺が不勉強なだけかもしれませんが。それって闇の魔術じゃないですか?」

 

 オルガも言うように、永遠の炎というのはあまりに物騒で恐ろしいものだった。どうしてと思っているのはオルガだけではないようで、ダフネも含めて皆が興味津々でハリーを見る。

 

「どうぞ、ハーマイオニー」

 

 ……が、ハリーはハーマイオニーへと投げた。

 

「グブレイシアンは闇の魔術には指定されていないわ。簡単に言えば、『永遠に消えない』という魔法の連続性を保つための構築式があまりに複雑な上、未解明の証明も残されているの。永遠に消えない炎を維持するために膨大な魔力の出力が必要なの。だから歴史上でもその火を出せた魔法使いは数人しかいないと言われていて、闇の魔術にも指定されていないの」

 

 ハリーは空中にグブレイシアンの火の構築式を書き出していく。つらつらと浮かび上がる炎の文字は六行、七行と増えていき、天井に向けて浮かび上がり行数が増えていってもなお終わることはない。

 

「……ちなみにこれはグブレイシアンの火の前提理論の前提理論」

 

「あっ、俺もういいっす。グブレイシアン?インセンディオで充分っす」

 

「はやっ」

 

「いや、いい判断だよ。グブレイシアンの証明は何人もの魔法族の人生を終わらせた墓場だって言われてるから」

 

 シノは真っ先に投げ出した。おもわず突っ込みを入れるルナに対して、それは賢明な判断だとハリーは褒めた。

 

 

「そもそも理論を理解できずに使えねーし、使うのに必要な魔力が足りねー。使えないものを規制したって仕方ない。だから闇の魔術として指定もされない。オーケー?」

 

「世界は広いっすねぇ。こんな魔法があったなんて……」

 

 ロンが言うと、オルガはこくこくと頷いた。皆が自分の訓練に戻るなか、ハリーは難しい顔のままだった。

 

(……グブレイシアンの火は極端にしてもだ。例のあの人を倒すための、具体的なピースが足りない気がする。連携もいい。個人の力を磨きつつ、複数人で叩くのもいい)

 

(……だけど、あの怪物を殺せる具体的なイメージがあれば……)

 

 そう考えて訓練をしていたハリーはこの日敗北した。

 

 ネビル・ロングボトムと組んでザビニとスーザンのカップル相手に死闘を演じたハリーは物足りなさを感じていた。ネビルはザビニのスピードについていけず早々に一対二となり、ハリーはスーザンの不意打ちに注意しながらの不利な闘いを強いられた。個人の力があった上で、マイナスにならない立ち回りを覚えなければ話にならないのだ。

 

 ザビニの対応に気を取られた一瞬の隙に、ハリーはスーザンのエクスペリアームスを受けて負けた。

 

「よーし!はじめてハリーに勝ったぜ!」

「狭い空間だと飛び回れないから、私達に有利だったわね」

 

「いや。君達が強かったんだよ。ネビルの強みを生かせなかった僕のミスだ」

 

「えっと……僕の強みって何?」

 

「アジリティと咄嗟の場面での行動力だよ。最初にザビニに向かっていったのは、先手を取られたら不味いと思ったからだろう?あれでいいんだ。ネビルの判断は正しいよ」

 

「……そ、そうとは思えないよ。皆強いし……」

 

 戦闘後の反省会では、ネビルは少し敗けが込んでいた。

 

 ネビルはハリーの見るところ、薬草学の訓練で培った身体能力のお陰か筋はいい。しかし、経験不足と自信の無さ、そして何よりも優しさからくる迷いがあった。

 

 それに加えて、ここに居るメンバーはダフネも含めて皆それなりに腕を上げているのだ。迷い無く魔法を撃ち込める人間達の間で、迷いと優しさがある人間の対応が遅れるのは当たり前だった。

 

「そう思うなら、DAの決闘でエクスペリアームスを試してみるといいよ。君は強いって分かるはずさ」

 

 ハリーはネビルは特に褒めて伸ばすことにした。ネビルもまた、状況に対する判断能力を磨き、様々な場面で対応できるように訓練をしている。知識と行動とを結びつける自信を与えるのは簡単ではないだろうが、出来ないわけではないとハリーは思っていた。

 

(……ロングボトムは動機がある。闇の魔法使いを止めたいっていう確かな動機が)

 

 ハリーのそんな信頼が通じたのか、ネビルはDAの集会で二連勝をもぎ取っていた。エクスペリアームスを駆使した基本戦術は汎用性に長け、時にはコンジュレーションで化かした物体も奪い取ることが可能である。ネビル・ロングボトムもまた、少しずつではあるが着実に魔法が使えるようになっていた。

 

 

 ***

 

 ある時、ネビルはハリーに自分の友人を紹介してくれた。

 

 以外にもネビルの友人であるザムザ・ベオルブはハリーに対して好意的だった。線が細く痩せぎみな茶髪グリフィンドール男子は、ネビルのルームメイトだった。ネビルはハリーの悪評を吹き込むといったことはしなかったらしい。

 

「面と向かって会話するのは初めてだね。ザムザ」

 

「こちらこそ、ポッター。僕も一度、君と話してみたいと思っていたんだ。ロンやネビルから君に関する噂話は耳にしていたから。学術的な話相手が欲しかったんだ。……力になれるかな?」

 

「僕で良ければ喜んで。……分野によっては、僕の友人も紹介できるよ」

 

「本当かい!……ありがとう!……グリフィンドールではなかなか話し相手が居なくて、困ってたんだ……!」

 

 グリフィンドール寮には、ハーマイオニーやパーシーのように勉強熱心な生徒も棲む。では、文武両道を行く寮かと言えば、そうではない。

 

 グリフィンドール寮の大多数は、成績について興味や関心があったとしてもそこまで熱心には勉強しない。というよりは、わざわざ勉強について話さない。研究熱心なレイブンクローや学業重視のスリザリンほどにはグリフィンドールは勉強が尊ばれる風潮ではなかった。

 

 周囲と比べてやや浮いている生徒、それがザムザ・ベオルブだった。

 

***

 

 ブルーム・アズラエルは遠目にハリーを見ながらザムザを見て、こう評した。

 

「ハリーって、それぞれの寮の例外的な存在と仲良くなってませんかねぇ?」

 

「例外か?ロンが?」

 

「ロンは典型的なグリフィンドール生ですので除外しますけどね。まずルナでしょう?次にハーマイオニーに、セドリック。その寮におけるはみ出し者が寄ってくるフェロモンでも出てるんでしょうか」

 

 

「そりゃあ……おまえ」

 

 ブレーズ・ザビニは一瞬真面目な顔になり、すぐに笑って言った。

 

「ハリーが一番はみ出しものだからな。似た者同士、惹かれるものがあるんだろうぜ」




リタ・スキータはきっちり服役して罪を償った後試験を受けてアニメーガスの資格を手にしました。立派です。
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