蛇寮の獅子   作:捨独楽

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オリキャラの分際で原作キャラに生意気な口をきく場面があります。ハーマイオニーファンの方は申し訳ありません。


正解のない戦い

 

「一つ宜しいですか、グレンジャー先輩」

 

「ええ、構わないわよ。何かしらサーペンタリウス君」

 

 シュラーク・サーペンタリウスがハーマイオニーに話しかけてきたことに対して、ハーマイオニーは驚きを覚えた。

 

 スリザリンに所属する生徒にマグルへの反感、ないし差別感情があることは事実だ。

 

 ダフネ・グリーングラスとの交流を通して、ハーマイオニーはスリザリン生に対して過度な期待を持つことは危ういという結論に至っていた。誰もがアズラエルのように柔軟なわけでも、ハリーやザビニのように変わろうと努力できる訳でもない。幼い頃からそういう教育を受けてきた人間が、マグル生まれのことをどう考えているか理解させられていた。

 

 ハーマイオニーに対してオルガやミカエルは一定の敬意を払っていたが、それはハリーの友人だからであってマグルへの差別意識がないわけではないのだろうとハーマイオニーは割り切っていた。だからDAの後の秘密の部屋での訓練でシュラーク・サーペンタリウスというスリザリンの四年生に対して若干の警戒心を抱きつつ、表面上はつとめて愛想良く応じた。

 

「ポッター先輩についてです。あの人は、グブレイシアンを習得するつもりですね?」

 

「まさか。そんな筈はないわ」

 

 ハーマイオニーは即座にシュラークの言葉を否定しようとした。

 

 グブレイシアンは永遠に消えない炎を任意の対象に灯し続ける。インセンディオから始まる火属性魔法の頂点にして最高の魔法である。が、その難易度は既存のあらゆる魔法を凌駕していて、はっきり言って桁が違う。

 

 今世紀最高の善の魔法使いであるアルバス・ダンブルドアでなければ不可能な大魔法なのだ。ハーマイオニーも知識としてそれの存在は知っていたが、習得しようとは思わなかった。

 

「ポッター先輩は本気です。でなければ、高度な証明問題に手をつけている筈はありません」

 

「今のハリーにそんなことをしている余裕はないわよ。OWLが迫っていてシノやネビルみたいな子達の指導もしている。そんな中で自分の勉強もクィディッチもこなさなければならないのよ?」

 

(まさか。いえ……でも……)

 

 口では否定しながらも、ハーマイオニーの心に沸き上がったのは嫌な予感だった。

 

 ハーマイオニーの脳裏を過るのは、二年生の時にあっさりとカース、そして闇の魔術を習得して見せたハリーの姿だ。

 

(ハリーは……死なないために。ううん、私や皆を含めた友達を護るために違法な闇の魔術にすら手を染めてきた。そんなハリーが、闇の魔術ではないグブレイシアンを習得することを躊躇うかしら?)

 

「いえ。余裕がないからこそ手を出すのですよ」

 

 妙に確信を持った様子のシュラークの態度がハーマイオニーは気になった。

 

「ポッター先輩は情に厚い人です。それは大して接点のないミカエルのために尋問官親衛隊などという汚れ役を引き受けたことからも分かりますよ」

 

「……!!」

 

 まるで自分の内心を言い当てたかのようなシュラークの言葉に、ハーマイオニーは驚きを隠せなかった。

 

「あの人は、親しい友人を護るために力を得ることを躊躇わない」

 

 ハーマイオニーの心を見透かしたようにシュラークはハーマイオニーの目を見て断言する。

 

 実際に高度なレジリメンスによって、ハーマイオニーは自分の考えを掬い上げられていた。

 

(……ハリーはスリザリン生から見ても、そう思われているのね……)

 

 

 通常、レジリメンスは心を知られた側もどんな情報を知られたかや、相手に心を覗かれたことが感覚で分かる。心を読まれたとすら気付かせないのは生粋のレジリメンス使いだけなのである。

 

 なまじ知識としてレジリメンスを知っていたハーマイオニーには、シュラークがレジリメンスの熟練者であるとは思いもしなかった。人並み以上に優れた秀才であるからこそ、ハーマイオニーは思考の落とし穴に嵌まったのである。

 

 

 

「ハリーは手段を選ぶ人よ、サーペンタリウス君」

 

 ハーマイオニーはこれまでのハリーをよく知っている。内心ではあり得ると思いながら、彼女はノートに杖を走らせた。ネビル・ロングボトムが自分にインペディメンタのやり方を教わりに来たからだ。

 

 杖から黒いインクを放ち、古代ルーン語を使いノートに、『ここではまずいから後で話しましょう』と書いてシュラークへと渡した。その後、ハーマイオニーは逃げるようにネビルへと向き直った。

 

***

 

 スリザリンの若い蛇は、古代ルーン語にも通じていた。

 

 次の日、シュラークはしっかりと古代ルーン文字でハーマイオニーへと返信してきた。

 

『例の話ですが、お話ししたい私見があるのです。本日図書館のCー4席で待ちます。宜しければ、Cー4までお越しください』

 

 優秀だという噂は本当らしく、古代ルーン文字も履修していたらしい。ハーマイオニーは行くべきかどうか迷ったが、足を運ぶことに決めた。

 

(……ロンは自分のことで手一杯だし、スリザリンの子には私がしっかりと気を配らないと……)

 

 幼少期から魔法教育を受けてきたスリザリン生は優秀ではある。基礎を叩き込まれたがゆえに高度なコンジュレーションをこなすだけの器用さも備わっている。慣れているのだ。

 

 しかしその優秀さゆえにか、どこか危ういのだ。闇の魔術を学ぶべきだとすら嘯く人材を放置するのは得策ではないと、ハーマイオニーは思った。

 

(DAやその裏の集会を壊す劇薬にもなりかねない。……でも……私一人で大丈夫かしら……)

 

 ハーマイオニーの内心に少しの不安が過る。こっそりとロンに後をつけて貰った方が気が楽だと思った。

 

 が、ロンを見てハーマイオニーは考えを改めた。ロンは今週末クィディッチの試合を控えていて、今日は練習の予定だったのだ。ベーコンエッグを胃の中に流し込んでいるロンに、ハーマイオニーはそっと自分の分のベーコンを差し出した。

 

「今日の練習頑張ってね、ロン。ちょっと予定が入って見学には行けないけど応援してるわ」

 

「ああ、サンキューハーマイオニー。……ま、やるべきことは山積みなんだけどな。一つ一つ解決していくしかねぇよ……」

 

 スリザリン戦の醜態を経て、グリフィンドール内にもロンを降ろすべきではないかという声が沸き上がっていたし、ハーマイオニーもロンもそれを知っていた。それでもチームに残る決断をしたのはロンで、キャプテンのアンジェリーナはロンをチームに残し、チームを再建する方向に舵を切っていた。

 

 『ロンはウィーズリーだし、才能があるかもしれない』というのがアンジェリーナの弁だ。

 

 フレッドやジョージという双子のロンの身内に気を遣った情の混じった人事なのではないか。

 

 オリバーが抜けただけでこうなるなら、チームはオリバーが常々口にだしていた戦術や戦略を何一つ理解していなかったのではないか。

 

 さっさとロンを降ろして代わりのキーパーを据えるべきだ。

 

 そう陰口を叩く人間はグリフィンドールの中にも居る。それでも、ハーマイオニーはロンならば乗り越えられると信じていた。信じるのが正しい友達の在り方だと思った。

 

 

(ロンが頑張っているんだもの。私も出来ることをやらないといけないわ)

 

 グリフィンドール生らしく勇気で己を奮い立たせながら、ハーマイオニーはバジルの香りが漂うスープでトーストを胃の中に流し込んだ。そして、ハーマイオニーはハリーの前に座っていたダフネへと魔法で手紙を送った。

 

***

 

「ねぇ、ハリー?グリフィンドール生の男子と何を交換していたの?」

 

「試験対策だよ。彼は勉強が得意らしくてね。最近仲良くなったから色々と教えて貰っているんだ」

 

 ハリーは昼休みにグリフィンドール生のザムザ・ベオルブとノートを交換すると、自分のトランクにノートをしまいこんでOWLの試験対策をしていた。試験対策の内容は呪文学。実際に日常生活で魔法を使用したときの事故を起こしうるケースについての記載と、その対処法についてだった。

 

「そう……私も見てもいいかしら?」

 

「いや、約束があるからミスタ・ベオルブのノートは見せられないよ。済まないね」

 

「……教えてくれても良いじゃない……」

 

 

 少し拗ねたような顔のダフネに対して、ハリーは困ったように笑う。

 

(……うーん、本当に見せられるような内容じゃあないしね……)

 

 基礎の基礎の基礎をやり直しているようなもので、ダフネの成長や試験の成績には寄与しないだろうことは分かりきっていた。ハリーはならばと、鞄の中から一冊のノートを取り出した。

 

 マグルのメーカーによって造られた、なんの変哲もないノートだ。羊皮紙より触り心地はよい。

 

「まだ他人に見せられるような内容でもないんだよ、本当にね」

  

 ダフネは数十秒間もハリーを見続けた。

 

「信じてないね……そうだな……DADAや呪文学の参考になる資料ならあるんだ。君に隠し事をしたい訳じゃないから、僕がまとめた秘蔵のノートを渡すよ」

 

 そのノートは復習のためにハリーも何度も見返していた。よく使う部分には付箋が貼られる一方、全く読み返されていないであろう部分もあった。

 

「え……これって本当に私が見ても構わないの?」

 

 ダフネは少し畏れ多いという風にハリーを見る。

 

「先輩たちの使っていた戦術をメモしただけなんだけど、今のダフネなら有効に使えると思う」

 

 ポールペンによって記載しながら、ハリーはダフネに向き直る。ダフネはDAの集会の影響か、やや覇気のある顔つきになっていた。DAで上達していく生徒たちに負けまいと、最近のダフネはヘックスやジンクスの扱いがうまくなっていた。

 

 段階を踏んでレベルアップしていくことは人に自信を与えていく。その分慢心にも繋がり易いのだが、幸いダフネの周囲にはダフネより強い人材で溢れていた。

 

 DAや決闘クラブによって人を集めたメリットは、さまざまな分野で優れた秀才や一点特化の天才を集め、研鑽した技術を吸い上げて競うことができることにある。ダフネは己より高い身体能力を持つ魔法使いや魔女と対峙するときの立ち回りを考える必要があった。

 

「君はスリザリン生らしい合理的な手を使ってスーザン・ボーンを相手に勝っていた。なんで飛ぼうと思ったんだい?」

 

「動き回られて魔法を当てられないから……私が魔法を当てやすいように相手より高い位置に陣取って、相手の魔法をかわせないかと思って……」

 

 ダフネは咄嗟に解答する。

 

「それが考えて戦術を自分の物にするってことだ。ある程度の相手まではそれで充分勝負できる」

 

「このノートを見ても大丈夫だと思うよ」

 

 ダフネは自分の弱点である機動力を補うため、浮かせた瓦礫の上に乗って逃げながら戦ってみた。自分なりの戦術を考えられるようになっていたのだ。ダフネの戦術は、初見のスーザン・ボーンなどにはとても効果的だった。そして格上のロンには通じず叩きのめされ、必要なときに瓦礫に飛び乗るという戦術に変えていた。

 

「……分かったわ。私なりにこのノートを使いこなしてみる」

 

「うん。期待してる」

 

 ハリーはダフネににこりと笑いかけた。

 

 

 

「……でも、ハリー。これってミス・グレンジャーたちにも見せておくべきではなくて?」

 

「ハーマイオニーやロンは見せなくてもだいたい分かってる。ザビニは見なくていいって拒否したよ。あとね、ダフネ。そのノートを見せることには、弱点もあるんだ。何か分かる?」

 

 ハリーはダフネに即答したあと、質問した。

 

「質問に質問で返さないで。ハリー。早く教えて頂戴」

 

 ハリーが戦術ノートを見せる人間を限定していたのには理由があった。

 

 戦術ノートには、その戦術を使った先輩たちのどこが強いのか記載している。が、ある程度自在に魔法を操れるという前提でなければ意味がない。戦術とは、個人のレベルに合わせて実行するものであって出来もしない高度な戦術など意味がないからだ。

 

「そのノートの上っ面だけを鵜呑みにして自分の頭で考えなくなる。特にコリン辺りは危ういよ」

 

「ミスタ・クリービー?彼は貴方から教われるのであれば喜んで技術を吸収すると思うわ」

 

「コリンの強みは鋭い洞察力と咄嗟の行動力なんだ。洞察力っていうのは、自分なりに思考を回して考えて身に付くものだ。下手に知識があると動くべき時に動けなくなることもある。僕から戦術を教えてしまうと、舞い上がってコリンの強みが活かされなくなる」

 

(……かなりクリービーのことを買っているのね。……でも、私は……?)

 

 ダフネは頷きながらも、内心ではハリーがコリンのことを可愛がっていることに驚いた。そして自分はどうなのかという思いが沸き上がる。

 

「あら、私は構わないの?」

 

「君は充分な知識があるからね。ある程度は自分で取捨選択できるし、無理な戦術には手を出さない。頭がいいから」

 

 ハリーはダフネを褒めた。頭がいい、というのは本音である。よくも悪くも、ダフネはスリザリンの魔女であると長い付き合いでハリーも見抜いていた。

 

(……複雑で面倒な魔法には手を出さないだろう。ダフネの発想は、どれだけ自分が傷つかず安全に、楽に勝つかって部分だから)

 

 瓦礫の上に乗り、相手の魔法を機動力でもってかわし安全を確保した上で叩く。ダフネのその戦法の利点は、自分の体を浮かせるより体力の消耗を抑えられるところだとハリーは見抜いていた。

 

 プロテゴによる防御と身体能力の差を埋めるための飛行。それは、ダフネには長時間にわたって動き回るだけの体力がないという欠点から生まれたものだ。だから、ノートの内容も自然と吟味して自分にあった魔法や戦術を覚えるだろうとハリーは読んでいた。

 

 

「…だから、君もノートを見終わったら僕に返してね。それは参考程度にしてくれると嬉しいよ」

 

「……分かったわ。ありがとう、ハリー」

 

 その後ハリーはダフネと共に変身呪文の教室へと入った。アズラエルやザビニにからかわれ少し赤面しながら、ハリーは着席した。

 

***

 

「マフリアート(防音)。……こんにちは、サーペンタリウス君と……ミカエル君」

 

 自分達の声が周囲に漏れないよう気を配りながら、ハーマイオニーはシュラーク・サーペンタリウスの前に座った。手にはダフネから受け取ったメモが握られていた。シュラークの隣にはミカエルもいて、彼は薬草学の書物にかじりついていた。

 

「ああ、ミカも僕と同じ疑問を持っているので来て貰いましたよ。少し話し合っておくべき事柄がありましたからね」

 

「ハリーが『永遠の炎』を習得しようとしていることについてかしら」

 

 ハーマイオニーはポーカーフェイスのままシュラークと視線を合わせた。まるで作り物のように端正なプラチナブロンドの魔法使いの少年は、ええ、とハーマイオニーに問う。

 

「ポッター先輩がもしもグブレイシアン(永遠の炎)を習得しようとしているなら。それを止めるべきではないでしょうか」

 

 ハーマイオニーはダフネから受け取った用紙をチラリと見た。ダフネが確認したノートは、ハリー個人のノートが一冊。しかしそれ以外にも、グリフィンドールの男子と交換している研究ノートがあるという。

 

 ハーマイオニーの勘は、ハリーは危険な魔法を学ぼうとしている、と囁いていた。

 

 ザムザ・ベオルブの父親、ザボエラ・ベオルブは五十年ほど前に名を上げたスリザリン出身の魔法使いだった。彼はその才覚の素晴らしさを持て囃されたものの、それ以上の性格の悪さから瞬く間に研究者達の間で干され、学会から疎まれていた。

 

 ザボエラ・ベオルブは薬学、変身術、錬金術などの様々な分野の学問に通じたし、ハーマイオニーも幾つか論文に目を通したことがある。

 

 若かりし頃のザボエラ・ベオルブが発表した論文の中には、グブレイシアンの証明もあった。

 

「……サーペンタリウス君。ハリーがグブレイシアンを学ぼうとしているというのは、あくまでもあなたの推測よね?」

 

「そもそも止める意味、あるの?」

 

 ミカエルは意味が分からないという風にを見た。

 

「よく分からないけど、そのグブレイシアンは強い魔法なんだろう?先輩がそれを習得したいならすればいいじゃないか。どうして口を出すんだ?」

 

「グブレイシアンが習得困難な魔法だからだよ」

 

 シュラークはミカエルに対して見せつけるように魔法のランクを示す。

 

「チャーム、ジンクス、ヘックス、そしてカースに位置する闇の魔術。高度で複雑で危険度を増す魔法のどれにもグブレイシアンは位置しない。なぜなら難しすぎて使い手がいないからだ」

 

「ふーん。でも、ポッター先輩がグブレイシアンを習得出来ないと決まった訳じゃないんだろう?」

 

 シュラークは憐れむような目でミカエルを見た。ハーマイオニーは返す言葉もない。

 

「グブレイシアンの証明を突破できた人間はアルバス・ダンブルドアを除くとこの百年いない。闇の魔術を使う方がまだ簡単な魔法なのだ」

 

(……そう。それに挑むなんて、預言者でもないのに占い学を学ぶことと同じくらい無駄なこと……)

 

 シュラークと視線を合わせるとき、ハーマイオニーは少し嫌な気分になった。整った顔立ちの男子は嫌いではないが、シュラークにはどこか危険な雰囲気が感じられたからだ。

 

「ポッター先輩がグブレイシアンを習得しようというのは、おそらくは闇の魔術の代替品としてでしょう、グレンジャー先輩?」

 

 シュラークの言葉はハーマイオニーの心に強く突き刺さる。

 

「僕は思うのですよ。ポッター先輩の才能が闇の魔術の分野にあるのであれば、わざわざ達成困難な分野に挑むのは愚かだと」

 

「どうしてそう言いきれるのかしら?」

 

 ハーマイオニーの虚勢を見抜くように、シュラークは整った顔に確信を乗せて笑った。

 

「時間は有限なのですよ、先輩。それはハーマイオニー先輩が一番御存知の筈です。ポッター先輩の戦闘能力も、闇の魔術の才能も、この先我々やポッター先輩が生き残るために用いるべき才能の筈です。わざわざ遠回りな魔法の習得に時間を費やすのは、世間体や貴女達グリフィンドールの人々に配慮してのことでしょうが……」

 

「……それで死んでは元も子もない。人の才能は、より効率良く適した分野に用いられるべきです。ルナ・ラブグッドが魔法生物の研究に適しているようにね。貴女達は、ポッター先輩の才能を無駄にしている」

 

「いいえ。それは違うわ。ハリーは勝つために必要なことをやろうとしているのよ、シュラーク」

 

 ハーマイオニーは強い口調で反論した。ハーマイオニーの脳裏には、アクロマンチュラ相手にハリーのアバダ・ケタブラで生き残った時の光景が頭を過る。

 

「……例のあの人には、ハリーと同じ血の守りが働いているわ。闇の魔術に対して抵抗力を持つ可能性が高く、例のあの人を倒すためには闇の魔術では不可能になる可能性があるのよ。ハリーが自分の頭で考えてなにか新しい魔法を習得しようと言うのなら……それがグブレイシアンであったとしても、私たちはそれを支持するべきよ」

 

 ハーマイオニーは内心の不安を圧し殺し、毅然とした態度でシュラークの瞳を見返した。

 

 欺瞞であることも、これが正しいと言いきれないこともハーマイオニーには分かっていた。

 

 しかしそれでも、ここでシュラーク相手に闇の魔術を肯定するわけにはいかなかった。ハーマイオニーには、闇の魔術を運用するためのノウハウがないのだ。シュラーク達が闇の魔術を習得しようとしたとき事故を起こしても、止められるだけのノウハウがハーマイオニーにはない。

 

 それだけではなく、シュラークが闇の魔術を習得すべきだと吹聴すればネビルやアーニー達との摩擦を生み、亀裂に繋がりかねない。内部崩壊のきっかけを作るわけにはいかないのだ。

 

「ほう。……どうやら、先輩は賢明な方のようですね」

 

 ハーマイオニーの毅然とした対応に、シュラークは感銘を受けたように笑った。その後、こう付け加えることも忘れなかった。

 

「その賢明さが生き残ることに繋がるとは限りませんが」

 

「……戦いに絶対の正解なんてないわ。けれど、安易に闇の魔術に手を出すことだけは認められない」

 

 ハーマイオニーは自分で噛み締めるように言葉を口に出した。そうしなければ、ハリーを守るために闇の魔術を制限すべきだと口に出したのに、結局ハリーに闇の魔術を使わせてしまっている現状との矛盾に耐えられなかった。

 




オリキャラのザボエラはまぁ……技術力のあるアンブリッジのような存在です。
元ネタはドラクエ漫画の敵幹部です。
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