蛇寮の獅子   作:捨独楽

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ハーマイオニーはグノーシアで言うとあれですね……
ラキオ+コメットです。
ロジカルにスパッとものを言うし直感も悪くないから正しいけどだからこそ嫌われちゃうタイプ。
ハリー一行にせめてイルカのオトメくらい頭使える人が居ればこんなことには……


神秘部の戦い

 

 ハリー達はセストラルの背に乗り、その速度を身体で覚えていた。

 

「……もっと上空に!マグル達から見えない高さで飛べ!!」

 

 ハリーが乗る大きなセストラルが高度を上げると、それに附随して七頭のセストラル達も高度を上げる。最高飛行速度においては魔法界最速の異名を持つセストラルは、嘶きをあげるとさらに速度を上げた。まるで空を駆け回れることを喜んでいるかのようだ。

 

「……ありがとう」

 

 ハリーにとって嬉しい誤算であったのは、セストラル達がハリー達の命令に従ってくれたことだった。ホグワーツ城に飼われているセストラルの世話をハリー達はしたことがない。ルナにはその経験があったかもしれないが、ハリー達にはない。鐙と鞍を着けても、セストラルが拒否すればハリー達の作戦は成立しなかったのだ。

 

 着いてきてくれた仲間達の姿をハリーは見た。ハーマイオニーはセストラルの飛行速度に目を回していたし、ザビニは見えないセストラルのどこにしがみつくべきか解らずにパニックになるスーザンに対して冗談を言って落ち着かせようとしていた。

 

「ヘイハニー!気分転換に下でも見てみなよ!人がゴミみたいだぜ!?」

 

「私は!全然!気持ちよくなんて無いーっ!!!」

 

 ハリーは何も見なかったし聞かなかったことにした。

 

(……皆も僕を信じて着いてきてくれた。……必ずシリウスを助け出して見せる……!)

 

 

 魔法省へ向けて翼を羽ばたかせるセストラルは、ハリーの意思に呼応するかのように速度を上げる。ハリー達にとっても驚くべきことに、ホグワーツから魔法省に辿り着くまでには一時間もかからなかった。

 

 セストラルの最高飛行速度は、この時代最速の箒、ファイアボルトの時速240キロすら遥かに上回る。個体差や体調差によって変化するとはいえ、この時代にあって最速のセストラルが出した速度はアズラエルの出した見立てすら大きく上回ったのである。

 

「……いいぞ、最高だ」

 

「打ち合わせ通り、スーザンとザムザは上空で待機。僕たちがシリウスを連れて脱出してきたら全員を乗せて離脱だ」

 

 ハリーはザムザに入り口での待機を命じた。逃走手段を確保しておくのは当たり前だった。待機を命じられたザムザは残念そうに口をすぼめたが、自分の役割を果たすとハリーに誓った。

 

「……わ、解った。オレもオレのすべきことをするよ。ハリー、ありきたりな言葉しか贈れないけどくれぐれも気を付けてくれ」

 

「……勿論だよ。ザムザもパクられないように気を付けてくれ」

 

「職質されないようにセストラル達はトランクの中に入れて待機しておくよ」

 

 スーザンとザビニが情熱的なキスを交わす裏で、ハリーとザムザはしっかりとこぶしを交わす。そうしている間にも、公衆ボックスの中からダフネが出てきた。

 

「許可が降りたわ。神秘部まではチェック無しで入れるわよ」

 

「本当にありがとう、ダフネ。……よし。皆、自分達のすべきことは理解しているね。透明化薬は持ったかい?」

 

 突入組以外の面々がこくりと頷いた。透明薬を提供したのはアズラエルだった。透明化薬はなかなかに高価かつ希少だ。ロンが出所を問い詰め、アズラエルが転入生のことを仄めかせてネビルに困惑されるという一幕もあったが、ここでは割愛する。

 

***

 

「……オレだって、あの中に……」

 

「コラ」

 

 スーザン・ボーンは魔法省へと入っていくハリー達を見送りながら、未練がましく入り口を見つめるザムザの頭をペシッと叩いた。

 

「『役割を果たす』って言ったのはあんたでしょう。中に突入するのも、ここで皆を待つのも本質的には同じことなんだ。」

 

「……そうだ。そうだが。……皆が命を懸けている時に、ただ待つっていうのは、分かっていても辛い」

 

 仲間達は傷つく可能性がある場所に行くのに、自分は安全なところに居るという罪悪感もあるのだろうとスーザンは思った。それが分かった上で、止めなければならないのであえてきつくザムザを制する。

 

「真っ先に名乗り出て危険を買って出るのがグリフィンドールの良いところだ。……だけど、目先の勇敢さに囚われるのがグリフィンドールの悪いところだ。私たちはやるべきことをしっかりとこなせばいい」

 

「……解った。じゃあ、待機している間……どちらが兄か姉かで設定を作っておこう。万が一職質されたときに困るし……」

 

「えっ設定?……そ、それなら、私が姉だろう。ザムザは兄って感じでもないし……」

 

「……やっぱりそうなるか……いや、オレもその方がやり易いからそうしよう」

 

 魔法省の外で待機することになったザムザとスーザンは、ハリー達がシリウスを連れて帰ってくることを信じた。

 

 結果的に、その信頼が報われることはなかった。

 

***

 

「こっちよ。着いてきてね、皆」

 

「悪趣味な銅像があるわね」

 

 ハーマイオニーはダフネのバッグの中から透視魔法で外を覗き見し、魔法省入り口にあったものに嫌悪感を示した。それは、魔法使いに傅いて従うケンタウロスとハウスエルフ、ゴブリンの銅像だった。

 

 知性を持ち、魔法使い以上の治金術を持つゴブリンや、占いに関しては並の魔法使いを凌駕するケンタウロス。そしてところ構わずテレボートが可能なハウスエルフ。いずれも魔法使いの個を遥かに凌ぐ能力を有していたものの、魔法族として覇権を掴むには至らなかった。

 

 ケンタウロスやハウスエルフはその無欲さゆえに自分自身の環境以外への勢力争いというものに関心を示さず、ゴブリンはその強欲さと数の少なさゆえに、数で勝るヒトに対して有効な手立てがなかった。

 

 英国魔法界の魔法大臣は選挙によって選ばれる。しかし、その選挙においてケンタウロスやハウスエルフ、ゴブリンが立候補したことはない。

 

「そんなもの大したこと無いわ。神秘部にあるのは人類の業よ」

 

 バッグの中に居るハリー達にダフネの声が響く。バッグの中にいたハリーはダフネの言葉に頷きながら言った。

 

 

「神秘部は魔法界のあらゆる知識と伝承を研究し、記録してきた危険物の宝庫だ。……警戒のルーンがまともに機能しない可能性は極めて高い。だからコンジュレーションで作り出した魔法生物による嗅覚や視覚による探知が頼りになる。いいね?」

 

 十九世紀に魔法大臣、ラドルファス・レストレンジの手で廃止・解体が提唱され、議会の反発を受けて存続してきた神秘部。

 

 闇祓い局が魔法省の歴史が集積して研鑽した武力の要とするならば、神秘部は魔法省の歴史において蓄積された遺物の集積場であった。

 

「対処不能だけど排除も出来ず、保管するしかないっていう遺物も数多くあるだろう。迂闊に触らないように」

 

「壊したら何千ガリオンじゃきかねぇ品もあったりするんすよね……」

 

「ああ。だけど僕にとっては君の命の方が大切だよ」

 

 シノはごくりと唾を飲み込みながらハリーに頷いた。ハリー一行の会話は外に聞こえないよう、バッグにかけられたマフリアートによって消音されている。

 

 ダフネ以外の面々はバッグの中にる。つまり、今、端から見ればダフネ一人で魔法省を歩いていた。

 

「……なんか……めちゃくちゃ慣れてんな」

 

 ロンがダフネの姿を見て呟いた。

 

「あれもダフネの味なんだよ」

 

「出たな、惚気」

 

 ダフネは魔法省の役人がすれ違っても意に介さず傲慢さすら滲ませながら歩みを進める。あれもまたダフネが作った仮面なのだ。

 

「……すみません。さっき思い付いておくべきだったんですけど今思い付いてしまいました。エレベータで下に降りるって話だったけど。人数制限とか重量制限とか大丈夫ですか?」

 

 ミカエルがそう懸念をこぼす。ハリーは問題ないと言った。

 

「魔法のバッグの中身は重さに反映されないよ、ミカエル」

 

「荷物を調査されたら?」

 

「魔法省にそんな防犯意識はないね」

 

 ミカエルの懸念は幸いにして杞憂に終わった。魔法省は特別待遇のダフネに対して検閲するという防犯措置は取らなかった。

 

「……着いたわ。……いよいよね。皆、出すわね」

 

 

 ハリー達はダフネの手でバッグから出た。出た瞬間、ハリー達は通常の大きさへと戻る。

 

「……ここが、神秘部……!」

 

「エレベータは閉じてしまったの。……シリウスさんを見つけるまでは、引き返せないわ」

 

 

 誰かがごくりと唾を飲み込んだ。ハリーの予想通り、全員が身に付けている警戒のルーンは今、最大限の警鐘を与えている。この場所そのものに危険が多すぎてまともに探知できないというわけだ。

 

 おまけに、神秘部には同じような形の円形の扉が十二も並んでいる。この中の一つ一つを探して、シリウスを見つけるのは至難の技だ。

 

「……どうするんだ、ハリー?どこから探せばいい?」

 

 ハリーは分からない、と言いかけてやめた。士気を削ぐのは得策ではない。

 

「レベリオ。レベリオで隠し扉を見つけてみよう。まずはそこだ。探索の基本を忘れちゃいけない」

 

 

 ハリー達は全員でレベリオを使ってみた。アパレシウムなどの類似魔法も試したが、隠し扉はなかった。

 

「……良し。夢では入って突き当たりの扉をくぐった。……この扉だ」

 

 ハリーは正面の扉を指差した。

 

「……敵がいるかどうか感知しよう。コンジュレーションを出すよ」

 

 ハーマイオニー、ロン、セドリックは羽虫や猫をコンジュレーションによって造りだし、偵察に用いようとする。

 

 が、扉の前でコンジュレーションは消された。

 

「『変化防止の魔法』。すっげ。地味だけどめちゃくちゃ高度なもの見れたー」

 

 ルナはそう呟く。変化防止と一口に言うが、それをかけられるのは魔法使いの中でも一握りの精鋭だけだ。使われている魔法だけは、精鋭達が集う魔法省だけはあった。

 

(……魔法にばかり頼るから、かえってセキュリティがザルになるのかな……)

 

 ハリーはそんなことを考えながら迷うと、オルガが提案してきた。

 

「……言ってる場合か?この場合、どうすればいいんですか先輩。……俺とミカエルで先行しましょうか?」

 

「……いや。コンジュレーションが無理でも、僕らにはもう一つ手段がある。セドリック、パトロナスを」

 

「任せてくれ。……エクスペクト・パトローナム!!」

 

 ハリーはセドリックに指示を出した。セドリックの出したパトロナスは雄々しいドーベルマンの姿となったが、直ぐに形を霧に変えた。

 

 うっすらとした霧は扉を通り抜け、部屋の中に吸い込まれるように消えていく。2分ほどたったのち、セドリックの元に実体化したパトロナスが帰ってきた。

 

「本当にすごいですね、パトロナスって……」

 

「いや……本来こんな使い方しねえんだけど……なんか意思を持ってて言葉を伝えられるのはまだしも実体と幽体の切り替えまで出来るのはおかしくね?」

 

 ロンがうんうんと唸っている中、ハリーはセドリックに話を聞いた。

 

「……どうでしたか?」

 

「……この先に赤い扉があった。……それと……いや、触らなければ問題はないだろう」

 

 そしてハリー達は、ホルマリン漬けにされた脳みそと、いくつもの巨大なフラスコにふよふよと浮かぶクラゲのような何かが保管された部屋に入った。セドリックは脳みそを見るたび顔をしかめた。

 

「……正気を疑うぜ。何だってこんな研究をしてやがったんだ」

 

「……ねぇ、一体何だろう?このフラスコ……」

 

 ルナが興味深そうにフラスコに触れようとするのを、コリンが止め、シノがルナとフラスコとの間に割って入った。

 

「そりゃ迂闊だろルナ」

 

「シノの言う通りだな」

 

 シュラークはこれまでにないほどの怒気を見せていた。

 

「今は時間が惜しい時なのだ。自分の知的探求心を満たすのは後にして貰おうか」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「分かったならいいよ。シュラも落ち着け。そんなに引き摺るな。先を急ごう」

 

 ハリー達は身が凍るような思いをしながら次の部屋へと進んだ。セドリックの出したパトロナスはハリー達の意を汲んで長持ちしてくれたが、ある時、ベールのある部屋でベールの中に突っ込ませてみたところ消息を絶った。

 

「あのベール、何だったんだ?」

 

「分からない。……神秘部案件なんだ。迂闊に触らない方がいい」

 

「……死……」

 

 ダフネが何かを恐れるように、そっと呟いた。

 

「……一度だけ、お父様から聞いたことがあるわ。神秘部には『死』を研究している部署があると。あのベールが、それなのかもしれない……」

 

「だとしたら今の僕らには価値がないね。僕らが知りたいのは生きる術だ」

 

 ハリーはその後、ダフネを安心させるかのようにしばらく付き添った。そんな姿を見ながらザビニは内心でだけ呟いた。

 

(……ここにスーザンを連れてこなくて良かったぜ。うっかりで死んだら目もあてられねえ……)

 

***

 

 そこからのハリー達の作業は、半ばしらみつぶしに近かった。調べた部屋の入り口に焼き印を入れ、レベリオでくまなく道を探した。そしてある時、青い蝶々が羽ばたく部屋を見つけた。

 

 セドリックのパトロナスからの報告も白に近い。ハリー達は、いざ決戦という思いで部屋へと突入した。

 

「……入るよ。皆杖を構えて」

 

 入ってみると、ハリーが夢でみた光景がそこにあった。いくつもの棚が鎮座する大理石の間。魔法によって拡張された空間に違いなかった。

 

「……九十七番目の棚!」

 

 

 ハリーを先頭に、セドリックとロンが左右を固める。ハリーは心臓が凍るような思いだった。

 

 

 

(プロテゴ・ホリビリス)

 

 九十七番目の棚に近づいたとき、無言プロテゴ・ホリビリスによってハリーはみんなへ防護魔法をかけた。しかし、出会い頭にアバダ・ケダブラが来たらプロテゴに価値はない。左右の棚を壊して身を護るしかないが、シリウスが死ぬ恐れもある。

 

(もしシリウスが居なかったら-?)

 

 すると、棚の前でうつ伏せになって倒れている黒髪の男の姿があった。

 

「……シリウス!」

 

 

 ハリーはこれまでの慎重さを棄てて、思わずシリウスのもとに駆け寄った。

 

「……ハ……ハリー……頼む……」

 

 シリウスは衰弱しきっていた。こんな弱々しいシリウスをハリーは見たことがない。拷問の壮絶さを想像して、ハリーは思わず顔をしかめた。

 

「これを……これを取れ……取ってくれ……頼む……」

 

 シリウスが指差すのは、夢でみた謎の光球だ。

 

(……待て)

 

 ハリーの中にわずかに残った、ほんの冷静な部分が警鐘を鳴らした。

 

(シリウスだぞ?あのシリウスが、敵に与しろと言うわけがないだろう?)

 

 どくんとハリーの心臓が高鳴る。

 

 怒りによってだった。

 

「スペリアリス・レベリオ!!!!」

 

「!!」

 

 シリウスは、否、シリウスに擬態していた男は咄嗟に右腕……杖腕の二の腕に左手を触れた。

 

 それが何を意味するかは明らかであった。

 

 男が二の腕に触れた瞬間、周囲には漆黒の歪みが生じる。

 

 デスイーター達のテレポートであった。

 

 そして男もまた、その正体を明らかにした。

 

 

「……う、嘘。……嘘よ……」

 

 ガタガタと歯を震わせ、漆黒のローブを身に纏って唸るデスイーターは、シリウス・ブラックではない。しかし、ハリーも見知った人であった。

 

 笑ったときの顔が、ダフネと良く似ているとハリーは思っていた。

 

「どうして……貴方が!?」

 

 ラドン・グリーングラス。

 

 グリーングラス家当主であり、ダフネとアストリアの父。彼がヴォルデモートの命令を受けてハリーを釣り出したのだ。ポリジュース薬によってシリウスに姿を変えて。




君は
生き延びることが
出来るか
……原作読んだ時から思ってましたが、ハリー一行が神秘部に直行できたのは神秘部の役人にデスイーター(インペリオで操られた人も含む)が居たからだろうなって考えてます。
で神秘部にコネがある純血というと……グリーングラス家です。
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