蛇寮の獅子   作:捨独楽

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ハリー・ポッターのキャラクターは寮生ごとにMBTI性格診断出来るらしいです。オリキャラ達もちゃんと性格の表現が出来ているでしょうか。


真の平和主義者

 

「昔々あるところに、三人の兄弟が居ました……」

 

「いやいや違うぜハリー。もっとながったらしく丁寧に言ってやるんだ。『むかーしむかーし、あるところに三人の仲のいい兄弟が……』ってな」

 

 ハリーはジェームズにお伽噺の読み聞かせをしていた。ジェームズは中々寝付いてはくれないらしく、近頃はお気に入りの物語を聞いて眠るのだとマリーダは言っていた。マリーダはジェームズがハリーの読み聞かせを聞くなか、ジェームズが魔法で破壊したコップの修復(レパロ)をしていた。

 

「なついな……三兄弟の話かぁ。ジニーに読み聞かせたよな……」

 

「ウソつけ。その時はロンだってチビだったじゃないの」

 

 

 ジェームズの部屋にはクリーチャーに代わりハリー、ロン、ザビニ、そしてジニーがいた。ジェームズはキラキラしたものに興味を示していて、ザビニやジニーが居ると喜んだ。絵本のページを破ろうと魔法を使おうとするジェームズをハリーはにっこりと微笑んで止めた。

 

「ハイハイ魔法は抑えまちょうね~」

 

「うー!」

 

 ジェームズがぐっと拳を握ると、本が引っ張られる。ハリーは笑みを崩さずよしよしと義弟を撫でた。

 

「才能が有りすぎるってのも考えもんだなぁ。ジニーの時はもっとしおらしかったのに」

 

「だからあたしの時のことなんてロンは覚えてねーでしょうが。ったく……」

 

「むかーし昔、あるところにとても仲良しな三人のきょうだいがいました……」

 

 ジェームズを見ながらジニーを弄くるロンを尻目に、ハリーはジェームズに読み聞かせる。三兄弟の物語をハリーも始めて知ったが、ジェームズは絵本の中の宝石のように輝く石に釘付けになった。

 

「あんまり絵本がキラキラし過ぎているのも考えものだなぁ。これじゃ目に悪いよ……」

 

 魔法の絵本は魔法で作られた写真や絵画と同じように動いて見るものを楽しませるように出来ている。しかし、ハリーは目を悪くするのではないかと思い、色彩設定を少し下げた。ジェームズは抗議するかのように唸った。

 

「兄弟の物語ね。ガキの頃はなんとも思わなかったけど、選んだアイテムで結末が変わるってのも中々教訓めいてんな」

 

 ザビニはお伽話を思い返して言った。ハリーは笑みを崩さなかったが内心は複雑だった。ロンやザビニと違ってハリーは始めてお伽話というものを知ったからだ。魔法界で誰もが知っていることについて知らなかったというのはハリーにとって密かなコンプレックスであった。

 

「結末はアレだったけどよ。三兄弟の物語だったらやっぱり杖が良いよな。ハリーはどう思う?」

 

 ロンが話を振った。

 

「……杖か。確かに悪くはないけど、蘇りの石も捨てがたいかな。何か別の使い道もありそうだし」

 

 ハリーが欲しいと思うのは蘇りの石だった。最強の杖はもしも存在するならヴォルデモート殺害に大きく貢献するだろうが、お伽話の内容からして持ち主に破滅をもたらすためのろくでもない杖だった。

 

 持ち主に災いをもたらすという杖を自分が扱えるとは思えなかったので言うと、ロンはそっかと頷いた。

 

「お前はもう持ってるもんな、透明マント。ちょっと古いけどいいマントだぜ」

 

「ありがとう。でも、ウィーズリーウィザードウィーズのジョークグッズにも透明ハットがあったよね。双子なら透明マントの量産も可能なんじゃない?」

 

「いやいや。それは許可が降りねぇって。だいたい再透明化処置が可能なデミガイズの毛皮が高価すぎて採算とれねーよ」

 

 ロンはムリムリと否定した。透明マントの素材であるデミガイズという魔法生物は絶滅危惧種であり、その毛皮は滅多に市場に出回ることはない。

 

「ハリーのマントはシリウスに頼んで定期的に透明化魔法をかけ直してるんだろ?大事にしろよ」

 

「うん。シリウスには感謝してもしきれないね」

 

(……いや……)

 

 ハリーはロンに答えながら、内心で疑問を抱いた。

 

(……僕は一度も、あのマントに再透明化の処置をしていない)

 

 胸中で沸き上がった疑問の答えあわせをしたいとハリーは思った。ホグワーツに行ったとき、アルバス・ダンブルドアに聞いてもいいかもしれないなと思いながら、ハリーは義弟へ三兄弟の物語を語った。

 

***

 

「無理矢理にでも敵を憎まないと戦争なんてやってられませんよ、ハーマイオニー」

 

「……憎悪を煽りすぎると歯止めがきかなくなるわ。そのリスクはアズラエルも解っているでしょう?」

 

 ハリーが弟の世話に興じる一方で、ハーマイオニーとアズラエルは裏の集会をめぐる運営方針について話し合っていた。

 

「過激な手段を取ったとき、確かに最初は必要だからその手段を取るわ。けれどね、アズラエル。過激な手段を取ったことを正当化するために、必要がない場面でも過激になることは無意味なのよ」

 

「ハーマイオニーはいつも正しいですねぇ」

 

 アズラエルはぐぬぬ、と唸って目を反らした。状況に応じて必要ならば過激な手を取ると言えば聞こえはいいが、不必要な場面でも闇の魔術を行使して無意味な犠牲を出すリスクがあることはアズラエルにも解っているのだ。

 

 二人は対立関係にあった。と言っても険悪ではない。同じ陣営であり仲間という前提で、より犠牲を少なく勝つためのビジョンについて議論しているのだ。

 

 あえて分類をするならば、アズラエルはハリーを強く支持するタカ派であり、ハーマイオニーはダンブルドアを強く支持するハト派であった。どちらもデスイーター、そして例のあの人に立ち向かうという点で一致しているが、手段には差がある。

  

 アズラエルやハリーはより攻撃的思考であり、デスイーターの殺害も辞さない。ハーマイオニー、ひいてはダンブルドアは、可能な限り殺さず捕縛すべきという立場だ。人道的にはハーマイオニーに理があり、短期的な戦闘という場面に限定すればアズラエルやハリーの主張にも理があった。

 

 過激でデスイーター相手ならばあらゆる手段を用いても構わないと言いたげなアズラエルの方針は、こと戦闘という一点に絞れば正しいことはハーマイオニーもよく理解している。折角ステューピファイによって沈黙させた敵が、エネルベートで戦闘に復帰されては意味がないからだ。

 

 しかし、過激な人間によって率いられた組織がいかに脆く危ういものかを理解する経験が今のハーマイオニーにはあった。ゆえに、ハリーやアズラエルの全てを全面的に肯定するわけにはいかない。

 強く立場を明らかにして意見を説くことで、牽制しなければならないとハーマイオニーは感じていた。そう考えるように至ったのは、言うまでもなく神秘部での経験が影響していた。

 

 

「神秘部で私達が生き残ることが出来たのは強かったからではないわ。オーダーの支援があったからよ」

 

 ハーマイオニーは戦訓から学ぼうとしていた。神秘部でドロホフを相手に生き残れたのはハリーの助力があったからこそだが、だからこそ、同じ轍を踏まないために出来ることはあった。

 

 例えばドロホフを無力化した時点でザビニとの合流を優先していれば、ハリーとハーマイオニーを含めた五人でベラトリクス一人を相手に出来ていたかもしれない。怒りに呑まれ感情のままにあばれるというやり方では、救える命も救えないとハーマイオニーは感じていた。

 

「敵の排除や攻撃の有効性を軽んじている訳じゃないわ。でも、それにばかり固執してしまうといざという局面で冷静な判断が出来なくなる。ハリーが起こした問題と同じことを起こすリスクだって考えられるのよ」

 

 間違いなく正論だった。アズラエルの理性的な部分はハーマイオニーが正しいことを認めていたが、アズラエルもアズラエルでその全てを肯定するわけにもいかなかった。

 

「その程度のリスクは想定内でしょう?」

 

 アズラエルはポーカーフェイスを崩さなかった。内心はデスイーターへの怒りで煮えたぎっている。

 

(そんな風に割り切れたら誰も戦争なんてやってないんだよ!)

 

 アズラエルはそう叫びたかった。

 

(これは復讐戦なんだよ!!)

 

 と、声をあげたかった。だが、魔法界においても私怨からの報復殺人は本来許されてはいない。あくまでも、テロリストに対して自衛し、魔法界を脅かす闇の勢力の暴走を止めるための正義の戦いだというスタンスは守らなくてはならない。だからアズラエルも、ハーマイオニーと同じように耐えていた。

 

 デスイーターへの怒りを仲間であるハーマイオニーに向けるのはどう考えても間違っていると理性が告げていた。だから拗ねたように言う。

 

「こちらに杖を向けてくるのはなにもデスイーターに限った話じゃあありません。インペリオで操られた人間や魔法使いが向かってくることだってあり得た。それでも敵を殺して数を減らすことには意義があると思いますけど?」

 

 占い学で培った論点そらしのスキルでアズラエルは議題をそらした。過剰なカースや、戦闘における闇の魔術の行使は必要経費だと。

 

「自分が操られるかもしれないという可能性を考慮しないのは片手落ちよ、アズラエル。過激な手段はあくまでも最後の最後の選択肢とすべきよ」

 

 ハーマイオニーは即座に反論した。闇の魔術を使え、敵を殺せと気軽に言うが、そんな単純ではないと。

 

「闇陣営の狡猾なところは、こちらが従わざるを得ないというところまで追い込んでくることよ。私達は本気で抵抗訓練をしているし、トンクスからは強い精神力だと褒められたわ。……それでも、『絶対』はあり得ない。三年生のときは、大勢のホグワーツ生がインペリオで操られたわ」

 

「……だからこそ、基本はステューピファイ。……プロテゴハットが普及し始めている今だからこそ、そうすべきなのよ。闇の魔術を使える人が増えて、それが敵に回ったらどうするの?」

 

 ハーマイオニーは敢えて言及はしなかったが、操られた人間について話すときファルカスのことが頭を過った。それはアズラエルも同じことだろう。

 

 誰だって親しい人間に杖を向けたくはない。ましてや、その親しい人間から闇の魔術を受けたくはない。

 

「……」

 

 アズラエルはムーディーが神秘部の戦いについて書き残した戦況を振り返るためのノートを見ていた。デスイーター達は予言の奪取を優先してハリーを狙ってきた。

 

 予言が壊れることを恐れてか、不確定要素を増やしたくはなかったのか。デスイーター側の都合によって、インペリオにより仲間が操られることはなかったが、何かひとつでも状況が違えば同士討ちしていたかもしれない。

 

 そして、仲間からカースを受けていたかもしれないのだ。

 

「勝つために。そして犠牲をより少なくするために、力は必要です。君の意見は仲間として尊重します。……しかし、あくまでも僕は自分の考えを変えるつもりはありませんよ、ハーマイオニー」

 

(……アズラエルに釘を刺すためにも、根回しはしておかないといけないわね。)

 

 ハーマイオニーは同じ轍を踏まないためにも根回しをすることにした。政治的駆け引きや裏工作が苦手なハーマイオニーではあるが、もうそうも言ってはいられないのである。

 

 

***

 

「裏の集会の方針会議の場では貴女の意見を支持して欲しい……?私が?」

 

「ええ。議論の時に私に追従したり、アズラエルがヒートアップした時にティータイムにしてくれるだけでいいの。……お願いできないかしら、ダフネ」

 

 ハーマイオニーがまず味方に引き入れようとしたのはダフネであった。ダフネはスリザリン生ではあるものの、ハーマイオニーとダフネは同年代の女子として友人関係を構築してきた。ダフネとしても、ハーマイオニーの頼みを断り辛い気持ちはあるだろうとハーマイオニーは読んでいたのである。

 

「……それは……理由を聞かせて」

 

「私とハリーは、今年予定が立て込んでいて裏の集会にも中々顔を出せなくなると思うの」

 

「ダンブルドア校長先生の個人指導を受けるのよね?」

 

「ええ」

 

 頷くハーマイオニーの内心は誇らしさに満ちていた。間違いなく光側の指導者の一人であり、最も勇敢で気高い魔法使いから認められたという嬉しさはハーマイオニーの中にもあったのだ。

 

「……でも、裏の集会に参加できないということはアズラエルを止める人間が減るということでもあるわ。アズラエルも、私達全員のために過激なことを言っているのはわかるけど……」

 

「……少し気負いすぎている。だから、落ち着かせてあげたいの」

 

 ハーマイオニーの言葉にダフネは迷っていた。

 

「……でも……私が反対したらミスタ・アズラエルは私のことを疑うかもしれないわ。私がグリーングラス家の魔女だから温いことを言っているのではないかって……」

 

「いいえ。その心配はないわ、ダフネ」

 

 ハーマイオニーは冷静に断言した。こういうとき大事なのは実際にどうであるかと言うよりも、言うときの人間の自信である。ハーマイオニーは、はったりをかましたのである。

 

「貴女は私達のために神秘部で戦って、シノを救護してくれた。私達全員にとってなくてはならない仲間で友達だってアズラエルも理解しているはずよ。アズラエルは……仲間の言葉を決して無碍にはしないわ。勿論、ハリーも」

 

 ハーマイオニーの言葉に、ダフネは頷き、了承した。

 

「……そうね。……そうよね。私にも出来ることはある……わよね。解ったわ。ハーマイオニーの意見を支持するから」

 

「ありがとう、ダフネ」

 

 ハーマイオニーとダフネは握手を交わした。異なる価値観を持つ魔法族同士が手を取り合うということは、決して綺麗事ばかりではない。しっかりと話し合ってハラワタを見せあい、時には相手の欲する言葉を与えることも必要なのだ。

 

 人はそれを、政治と呼ぶ。

 

***

 

「……内戦が終わったらどうするか、か。オーダーは解散して、私も今まで通りの仕事に戻ることになるだろうな……」

 

 夕食の席でハーマイオニーは政治の話を切り出し、リーマスやキングズリーに意見を求めた。リーマス同様、キングズリーも展望はない、と言った。

 

「そのときの状況次第だろうな。私はオーラ-としての任務に戻らなくてはならないだろう」

 

 ハーマイオニーには勝算があった。

 

 確かに、アズラエルの意見は短絡的に考えたとき正しい。ホグワーツの同年代にも支持者は出るだろうとハーマイオニーは思う。

 

 だが大人達は立場上それを黙認したとしても、肯定は出来ないと読んでいたのである。内部から外部から圧をかけておいた方がいいと、ハーマイオニーは思った。

 

(ハリーには大した効果はなくても、アズラエルに対しては効くはずよ)

 

 案の定リーマスもキングズリーも、過激な発言は控えて日常に戻ることを告げていた。アズラエルはリーマスに尋ねる。

 

(……よし……)

 

「ウェアウルフのコミュニティはどうなるんですか?誰か顔役がいた方がいいと思いますが」

 

「……現在、ウェアウルフ達の間では意見が割れている。グレイバックに追従するしかない、という者達と、魔法族側が自分達を積極的に迫害したいわけではないから事態を静観したいという者達だ」

 

「後者の方々もいらっしゃるんですね。良かった……!」

 

 ハリーは喜ぶと共に意外そうな顔をした。ウェアウルフ達にとっても、魔法族ひいては英国魔法界には鬱憤があるのではないかと薄々察していたからだ。

 

 リーマスは込み入った話になる、と前置きした。ハリー達に緊張感が走った。リーマスがこういう話をするとき、真剣に聞かなければならないとリーマスの教え子達は知っていた。ザビニもロンも真剣にリーマスの言葉に耳を傾けていた。

 

「知っての通り私達ウェアウルフらは、大半が満月の夜に……ウェアウルフに噛まれた魔法族だ。グレイバックを嫌悪し憎んでいる者達も多いが、表だって反抗すればコミュニティで爪弾きに遇う。だから言い返せないんだが……」

 

「……グレイバックさえ居なければ、ひっそりと静かに日々を過ごしたいという者達も多いんだよ」

 

 リーマスは敢えて言及しなかったが、そう考えるウェアウルフ達が増えたのはシリウス・ブラックの存在も大きかった。

 

 シリウスが根回しし、ドロレス・アンブリッジが起草した反人狼法は廃案となった。シリウスがその後根回ししたウェアウルフへの支援策は利用者が少なすぎたことから効果があったとは言えないが、ウェアウルフ達も、シリウスやシリウスと親しいリーマスの言葉には耳を貸したいとは思っていたのだ。

 

 勿論、ウェアウルフ族が基本的に虐げられる環境であることに変わりはない。しかし、あわよくばグレイバックを排除したいという派閥も出来たことは僥倖だと言えた。

 

 問題は……それを話すリーマスの表情に喜びが見えないことだった。

 

「ルーピン先生、あまり嬉しそうじゃないですね……?」

 

 ロンが尋ねると、リーマスは自分の事情を語った。

 

「……ああ。……フェンリル・グレイバックという男の罪深さについては、私が今更語ることもないが……やつが堕ちるに至った経緯を、知ってしまってね」

 

 そしてリーマスはハリー達に語った。なぜ自分がグレイバックに噛まれるに至ったのかを。

 

 リーマスの父親のライアルは魔法省役人であり、誠実な人間だったという。ある時、ライアルはマグルを殺害した容疑をかけられていたフェンリルが役人達に詰められているところに遭遇した。

 

 フェンリルは嘘つきであり、もう少しで役人達の追求を逃れるところだった。ライアルは現場検証を行い、マグルの死因がナイフではなく狼人間による感染症によるものだと指摘した。そして、フェンリルが狼人間であることも突き止めた。

 

「……その時、私の父はこう言った。『ウェアウルフなど死んでしまえばいい』と。父が指摘したウェアウルフというのは、言うまでもなく目の前にいたグレイバックだった。だが……」

 

 絶句するハリー達に、リーマスは言葉を続けた。

 

「仲間と共に難を逃れたグレイバックは父の言葉を忘れなかった。……そして、私は噛まれた」

 

 ライアルの言葉はフェンリルだけではなく、ウェアウルフ達の心も傷付けたのだろう、とリーマスは言った。

 

「……誰かを批判したり、……或いは傷付けるような言動は。たとえそれがどれだけ矮小な悪人であったとしても慎むべきだと私は思うよ。……私が君達に教えられるのは、それだけだ」

 

 リーマスの言葉はハリーや、アズラエルやザビニの心に影を落とした。ザビニは思わず目をそらした。ウェアウルフなど死んでも仕方ないとかつてザビニも口に出したことがあったからだ。

 

 

***

 

「ねぇ、ハリー。服を買ってくれるわよね?」

 

「……そうだね。マルキン婦人の洋装店で探そうか……」

 

 ハリー達は大勢のオーラー達に護衛されながらダイアゴンアレーを闊歩していた。指揮を取っているのは、アンブリッジの指示でハグリッドの小屋を燃やしたオーラー、キシドラ・アンビシャスだった。キシドラは小屋の一件についてハリーに謝罪し、命に代えても君を守る、とハリーに宣誓していた。

 

(……いや……有難いけど……)

 

 魔法省、ひいてはオーラー達と敵対せず護って貰えるというのはハリーにとって始めての経験だった。マリーダとジェームズを含めた大所帯で動くため非常に窮屈でもあった。しかし、護られることに感謝しなければならないとハリーは自分に言い聞かせていた。

 

 あまりに大所帯であったので、ロンやハーマイオニーは別の護衛がつくことになっていた。マルキン婦人の洋装店につくと、ハリー、アズラエル、ダフネ、マリーダの近くにはキシドラと部下達が護衛役として追従してくる。あまりに物々しい雰囲気であった。

 

「……母上。異臭がすると感じておられるのなら、この場に裏切り者がやってきたからですよ」

 

 聞き慣れた声がした。ハリーは声の先を見た。

 

「……久し振りだね、ドラコ。そしてマダム・マルフォイ。……元気そうで何よりだよ」

 

 ハリーはダフネを貶められたことに対する怒りとドラコへの煽りの意味も込めて挨拶した。アズラエルはマルフォイに何か言いたげにしていたが、口を閉ざしていた。

 

「……貴様と話すことなど何もない。僕に口をきくな、人殺しめ」

 

「あまり強い言葉を使う必要はありませんよ、ドラコ」

 

 ナルシッサはじっとハリーを見て、次にダフネの顔を見て厭らしく嗤った。

 

「英雄様とその信奉者は、そう遠くない将来両親と同じ場所に送られるのですから」

 

「止めたまえ。この場で殺し合いでも始めるつもりかね!」

 

 キシドラはドラコと、ドラコへと杖を向けたハリーとアズラエルを一喝した。ハリーは杖を下げたが、アズラエルは下げなかった。

 

 

「……っ!!痛いぞ!」

 

 ドラコは右腕の採寸をしていたマルキン婦人の手を強引に払いのけた。

「む」「……!」

 

(……右腕……?)

 

 キシドラとハリーは、ピンときた。ハリーの脳裏には、闇の印が強さを増していると言ったカルカロフの言葉が頭を過っていた。

 

 そして、リーマスの忠告も。

 

 

「……オーラーに護られているからと言っていい気になるなよ、ポッター。お前達には未来なんてものは存在しない」

 

「君はどうなんだ、マルフォイ」

 

「未来を気にする余裕があるなら馬鹿なことは止めろ。僕と違って君はまだ引き返せる」

 

「は?ハリー。君は何を言ってるんですか?」

 

 アズラエルはまだ気がついていない。ハリーも、マルフォイの挙動から直感的に推察しただけで確証はなかった。しかしナルシッサははっと青ざめてクチを覆った。

 

「……気分が悪いわ、ドラコ。こんな店に来る価値はありません。もっと大きな店に変えましょう……」

 

 そう言って去っていくドラコ達の背中を見ながら、キシドラはハリーの肩に手をおいた。

 

「……少年。君はよく耐えた。……そして、君が察していることが何なのか私にもおおよその見当はつく……」

 

 年嵩のオーラーは、ハリーに対して礼を言ってからこう続けた。

 

「マルフォイ邸には家宅捜索をかけ、あらかたの闇の物品は押収した。だから現在の彼らを再度取り調べることは難しいが……報告はしておく」

 

 キシドラはオーラーとしてそうハリーに誓った。ハリーは頷くことが出来なかった。そうであって欲しくはないと思っていたからだ。

 

***

 

 数日後、キシドラの部下の一人ゴールドスタインの姓を持つオーラーの自宅に闇の印が打ち上げられた。駆けつけたキシドラが目にしたのはインペリオによって操られて家族を惨殺した部下の変わり果てた姿であった。

 

 




ハーマイオニーとアズラエルはどちらも平和主義者です。まぁ最終的な平和状態の定義とか、平和を維持するための過程とかの意見に違いはありますが。
純血主義者を殺して今後は恐怖で統制したいアズラエルVS英国魔法界のクソさを見る限り根絶やしには出来ないから純血主義のデメリットを明らかにして中~長期的に支配したいハーマイオニー。
陣営は同じでも政治的スタンスは違います。めんどくさいね。

マグルの中世史ならデスイーターに荷担した一族の根絶やしもアリなんですが、中途半端に現代的な世界観の英国魔法界だと族滅なんて出来るわけもなく、スリザリン……もといホグワーツというシステムがある以上憎悪や怨みは引き継がれていくわけで。
しかも魔法族は平均寿命百歳とかなわけで。
いやー恐ろしいですね。
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