蛇寮の獅子   作:捨独楽

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元ネタに比べてオリキャラたちが大人しすぎる……
ちょっとだけ元ネタの要素を入れてみます。


スリザリンの子供たち

 

 

 

 

 ある日、ハリーたち六人は魔法探究会の活動という名目で空き教室に集まっていた。六人の話題は、闇の魔術に対する防衛術の代役についてになった。

 

 

 

「信じられるかよザビニ?一目見て俺は自分の目を疑ったよ。ガマガエルが目の前にいるみたいだった」

 

 

 

「ウィーズリー、お前の目は正常だぜ。俺もあの魔女を人だと思えなかった」

 

 

 

「アンブリッジ先生スリザリンの卒業生らしいですよ。僕にはとてもそうは見えませんでしたけど」

 

 

 

「セルウィン家だって言ってたよ。本当とは思えないけどね」

 

 

 

「聖28一族?じゃあロンの遠縁の親戚なんだ?」

 

 

 

 ハリーがロンに話題をふると、ロンは嫌そうな顔をした。

 

 

 

「やめてくれよハリー、サダルファス。うちの親戚はただでさえ多いんだぜ?これ以上増えたらたまらないよ。あとうちはそういうのやってないからな」

 

 

 

 ザビニや、普段スリザリンに対して忠誠心を発揮するアズラエルですら酷評するクィレルの後任は、魔法省から派遣されてきたお役人だった。小柄で常にピンク色のローブを身に纏った、ガマガエルのような容姿の魔女、ドローレス・ジェーン・アンブリッジは防衛術の専門家ではなく、おまけに教師が本職でもなかった。彼女は魔法省の方針に従い、クィレルの計画したカリキュラムに従って授業を進行したが、防衛術の授業は非常につまらないものになった。

 

 

 

「やっぱり人間は顔だぜ。あんな顔じゃちゃんと教えられるわけねーよ。グレンジャーのほうがよっぽどマシな教師だ。インセンディオを教えてくれよ、グレンジャー。アンブリッジは教科書通りにしか説明しねえからわかんねえ」

 

 

 

 

 

「ザビニってすごくお世辞が上手いのね。きっとそうやって女の子を騙すんだわ」

 

 

 

 賢者の石の一件以来、ザビニは口にこそ出さないが、ロンやハーマイオニーを友人として認めるようになった。ロンやハーマイオニーも、ザビニがスリザリン生であるということをあまり意識してはいないようだった。他のスリザリン生が居るところで二人に話しかけるわけではないが、ハリーと一緒に、ロンとハーマイオニーの二人には手を出さないように他のスリザリン生をそれとなく牽制するようになった。もちろん他のスリザリン生には悪ぶって、あいつらは俺の獲物だからとか何とか言ってはいたが。

 

 アズラエルは二人に対して礼儀正しく、ファルカスはまだ打ち解けてはいない。それでも、友人関係が少しずつ動いていることは確かだった。

 

 

 

「ハーマイオニー。ザビニは騙すんじゃなくてひっかけるんだよ。自分についてこさせるんだ。だから安心して」

 

 

 

「て言うかザビニはまた彼女変えましたからね。これで三人目ですよ」

 

 

 

「ハリーお前言うようになったじゃねーか……!」

 

 

 

 ハリーたちはアンブリッジについての不満を話の種に、同好会の活動場所としてでっち上げた空き教室で自分達で魔法を掛け合って練習した。ハリーは母親の使った古代の魔法について図書館で調べようとアンブリッジ先生に閲覧許可を求めたが、彼女の返答はハリーの望んだものではなかった。

 

 

 

「まぁいけませんわポッターくん。まだ一年生のお子さまがそんなものに興味を持っては。あなたにはこの、魔法省推薦初級図書……テセウス・スキャマンダー著の『防衛理論初級』をおすすめしますわ。さあ、頑張ってくださいな」

 

 

 

 というのが、アンブリッジ先生の返答だった。ハリーはなんだか変なおばさんがやって来たなとしか思っていなかったが、アンブリッジが推薦した書物は内容も良くとても勉強になったので、ハリーは彼女は変なおばさんではなくアンブリッジ先生と呼ぶことにした。

 

 

 

 ハリーのせいでフクロウとイモリの試験前にクィレル教授が消えたわけだが、五年生も七年生ももはやそのことで動揺してはいなかった。彼らは防衛術を捨てるか、自分で完璧に自習するかで対応していたし、アンブリッジ先生は実技方面では無能という評価だったが、自分の評価を落とさないために過去問を配布するなどしたので、受験生たちからはそれなりに好評だった。

 

 

 

 

 

 アンブリッジ先生はむしろ低学年の生徒たち……具体的には、双子のウィーズリーの標的になって遊ばれていた。彼女は放課後は双子の起こした騒ぎを鎮圧しようとフィルチと一緒に学校中を駆けずり回るのが日課になっていて、ハリーたちは双子が逃げきるかアンブリッジ先生が勝つかを賭けるのが楽しみになった。

 

 

 

「ロン、ファルカス、アズラエル。みんな勉強はもう終わったよね?僕と決闘をやって復習してみよう」

 

 

 

「じゃあ今日こそハリーに勝ち越すぞ」

 

 

 

「応援してますよウィーズリー。僕はファルカスにボコボコにされておきますから」

 

 

 

「そこは勝つんじゃないんだ……」

 

 

 

 ハリーは浮遊魔法を自分の衣服にかけて浮いてみたり、変身呪文で出した動物でエクスペリアームスが防げないか試してみたりした。同レベルの相手と闘うことで、ハリーは少しずつだが、着実に決闘の腕や魔法の習熟度を上げていった。

 

 

 

***

 

 

 

 同好会の活動を終えてロンとハーマイオニーを見送り、ハリーとザビニが寮に戻るとき、ファルカスはトイレに行くと言って、アズラエルと二人で空き教室に残った。アズラエルはトイレに行こうとしたが、ファルカスは行かなかった。

 

 

 

「どうしたんですファルカス?」

 

 

 

「……ねぇブルーム。ザビニは変わったと思わない?」

 

 

 

「変わったというのは?」

 

 

 

「……前より、ウィーズリーとグレンジャーに近くなった」

 

 

 

 そう言うファルカスの眉間には皺がよっていた。

 

 

 

(もしかしてファルカス、ハリーやザビニがウィーズリーやグレンジャーと親しくするのを良く思ってないんですかね?)

 

 

 

 アズラエルはふとそんなことを思った。ファルカスの実家は闇祓いだが、没落する前はスリザリン出身者の中でそれなりに歴史のあった名家だったらしい。純血主義を家で教わっているのであれば、ハリーに二人が近づくのをあまり快くは思わないのかもしれなかった。

 

 

 

「ま、でしょうね。ザビニもハリーも二人と冒険をして、彼らのことを人としてリスペクトしてますから」

 

 

 

「……」

 

 

 

 アズラエルの言葉は、ファルカスの機嫌を損ねたようだった。

 

 

 

「そんなに心配しなくても、僕らがザビニやハリーの親友であることに変わりはありませんよ?」

 

 

 

 実はアズラエルは、ハリーたち四人の中では一番社交的で顔が広い。純血主義を信じる家の子供たちに、ハリーは何を考えているのかと問い詰められたことは一度や二度ではない。

 

 

 

「そうだけどさ……特にグレンジャーと親しくして、付き合うなんてことになったらどうするのさ。今度こそスリザリンの中に居られなくなるよ?僕はスリザリンの中でハリーに成り上がってもらいたいのに」

 

 

 

(まあ……そう思っちゃいますか……)

 

 

 

 ファルカスの言葉はどちらかといえば視野が狭かった。ドラコと交遊関係がありながらも友好的ではない現状、せめて寮の外に人脈を持っておくことは必要不可欠だとアズラエルは思う。ましてやファルカスの実家が元闇祓いの家系なら、小さなこだわりなんて捨てたほうがまだ成り上がれる可能性は高い。

 

 

 

「心配しすぎですよ。ザビニもハリーもめちゃくちゃ面食いじゃないですか。この間、パドマ・パチルとチョウ・チャンのどっちが美人かで喧嘩してたのを見てるでしょ?」

 

 

 

「……でも、好きでもない人のことを助けに行くかな?」

 

 

 

「ハリーは助けるでしょうよ。彼はどういうわけかそういう……お人好しなところがありますから」

 

 

 

 ハリーの思い人は誰かというのは、女子たちとの話題の鉄板だった。アズラエルは、ファルカスの思考が正常であることに安堵した。一部の上級生の女子は、ハリーはウィーズリーに恋をしているだのとのたまってきたからだ。

 

 

 

「ザビニも少し前までは僕と同じだったのに。今は、『グレンジャーはどっかの家のスクイブの末裔だった』とか言って、グレンジャーはマグル生まれじゃなかったって言い出すし……」

 

 

 

「それが僕らスリザリン流の方便なんですよ。みんな嘘だって分かってますけど、そういうことにしとけばだれも傷つかないでしょ?」

 

 

 

 魔法族に生まれて、魔法が使えない人間はスクイブとして家系図から存在を消される。しかし、スクイブと魔法族やあるいはスクイブ同士、スクイブとマグルとの結婚で生まれた子供が魔法を授かることはある。スリザリンの純血主義者は、それを利用してどこかの魔法族の遠縁ということにして、半純血の魔法使いをうけいれてきたのである。

 

 

 

「……」

 

 

 

「気持ちは分かりますよ。君は純血主義なのにグレンジャーやウィーズリーと仲良くすることが後ろめたいんでしょう?でも、ハリーはちゃんと建前を用意してくれたじゃないですか。部活の仲間と交流を持つことに口を出す奴はいませんよ」

 

 

 

 アズラエルは笑顔でファルカスを諭すが、ファルカスはまだ受け入れられないでいるようだった。

 

 

 

「アズラエルはどうして割り切れるの?君も純血主義なのに。純血主義を捨てたの?」

 

 

 

 ファルカスとアズラエルの中に、一種の緊張感が走った。しかしアズラエルは涼しい顔で、淀みなく答え合わせをした。

 

 

 

「僕は純血主義を捨ててませんよ?」

 

 

 

「じゃあ……」

 

 

 

「パパが教えてくれたんですけど、純血主義ってようは結婚相手を純血の子同士でしましょうねってことでしょう。僕はまだ結婚とか全然分かりませんけど、将来結婚する相手には純血の女の子として、誠実に対応するつもりです。純血主義なんてそんなんでいいんじゃないですかね?」

 

 

 

「いや、でも……それは……まあ良いのかな?」

 

 

 

 ファルカスの心に迷いが生まれたのを見て、アズラエルはさらにまくし立てた。

 

 

 

「この際だからぶっちゃけますけど、ハリーが純血でないのは魔法使いならみんな知ってるじゃないですか。ハリーが純血主義を信じるわけありませんよ。信じたらただのアホじゃないですか」

 

 

 

 アズラエルにとってこの一言は冒険だった。ハリーの前では決して口に出せない言葉だ。ファルカスは冷や汗を流して言った。

 

 

 

「……ポッター家は名家だよ」

 

 

 

「純血ではありません。ですから純血主義にハリーが入る意味がないんですよ。もしもハリーが、グレンジャーのことが好きでハリーが彼女と付き合いたいなら、僕たちはそれを友達として見逃すのがスリザリン流だと思いますけどね」

 

 

 

「止めないの?」

 

 

 

 責めるようなファルカスの視線を、アズラエルは受け流した。

 

 

 

「僕は止める勇気を持ち合わせていません。ファルカス、大丈夫ですよ、君は一人じゃない。僕も君と同じ純血主義で、ただ少しだけ、ずるいだけなんです」

 

 アズラエルの言葉に、ファルカスはしぶしぶうなずいた。そんなファルカスを見ながら、アズラエルは真面目な子ほど損をするよなあと頭の中で考えていた。




ファルカスの元ネタ→ゴーント家みたいな没落貴族のレイシスト。
アズラエルの元ネタ→マルフォイを百倍ひどくした資本主義の権化。
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