英国魔法界の学生の分析
ニッグ=ホエール教授がホグワーツで出会った数名の傾向を分析した結果。パラメータはあくまでも傾向であり、単なる目安である。
はっきり言えば同じ人物であったとしても日々の精神状態や体調にも左右される。
0を最小、100を最大とする。
faith……信仰心
純血主義、保守的な魔法界の慣習に対する信仰心。
もしくは、英国魔法界・魔法世界に対する帰属意識。
高すぎると純血思想にかぶれることもある。また、マグルに対するうっすらとした差別感情も含まれる。
英国に限らず魔法界に産まれたヒトの魔法族は、その大小を問わず無自覚にこれを持っている。
なぜなら【魔法が使えること】そのものが、文明の発達したマグルの社会から背を向け、魔法族になることのメリットでありアイデンティティだからである。
この値が低すぎる人間は魔法界を諦めて半ば世捨て人になる(要するに魔法族ではなくマグル社会で暮らす)か、割り切って魔法族らしい魔法族として(社会的な)道徳を捨てて好きに生きるか、社会を改善するために過激な活動家になることが多い。
brave……士気
勇敢さ。グリフィンドール寮への適性。有事における戦闘意欲の高さ。この時代においては最も必要な資質であると同時に、大人がこれを高く保ち続けることは困難を要する。
justice……正義
自分が思う正義にどれだけ準じるかという傾向。ハッフルパフやグリフィンドール寮への適性。
誰かにとっての正義がすなわち万人にとっての正義とは限らない。
fear……恐怖心
恐怖心。この値が一定値を超えると人は壊れる。倫理観が壊れ攻撃性が増す。
人間の脳は過大なストレスを受けると萎縮するが、それは魔法族も例外ではない。
どんな人間であれ、許容限度を超えた恐怖に抗うことは難しい。
hunger……飢え
空腹の度合い。また、渇望の高さ。低い人間は空腹に対する慣れはあるが、生物である以上は、飢えには抗えない。高ければ高いほど満たされず、苛立ちやすい。
魔法族は『飢え』を軽視するべきではない。なぜならば、魔法という力は精神力に依存しているからである。
極限状態にちかいストレス下で飢えを感じ、コンディションが低下した身体は、精神衛生上の余裕を失わせ魔法の質を著しく低下させることは言うまでもない。
ちなみにディメンターは常にこの飢えに満たされており、満腹になったことがない。地上で最も憐れむべき存在である。
ambition……野心
願望の高さ。理想の高さ。この値が高いものほどスリザリン寮への適性は高い。
高すぎれば足りるを知らず身を滅ぼすが、低すぎるといざという時にチャンスを逃すこともある。
適度に己の願望を認識しそれに向けて努力することも魔法使いにとって必要な資質である。
wisdom……知恵
賢明さ。知識の量ではない。この値が高い人間はレイブンクロー寮への適性が高い。
たとえば世界を2分するような戦争の最中に、理性的かつ的確な判断が下せる人間はそう多くはない。
人は結果で物事を判断する生き物である。賢い人間が下した判断が最悪の結果を齎したとすれば、それは賢明な判断ではなく、先見の明のない愚者の愚行である。
***
ホグワーツ生徒の傾向分析
ハリー・ポッター
faith……80
brave……97
justice……50
fear……99
hunger……20
ambition……99
wisdom……50
ホエール教授の一言……生き急ぎすぎている青年。そうまでして英国魔法界にしがみつくほどマグルの世界が嫌いなのかと思う。自分を特別だと思いたがっている高校生。
後述するハーマイオニー・グレンジャーから、ダフネ・グリーングラスまでの学生とよくつるんでいる。
ハーマイオニー・グレンジャー
faith……5
brave……100
justice……99
fear……65
hunger……11
ambition……90
wisdom……85
ホエール教授の一言……危うい。グレンジャーは一歩間違えば際限なく踏み外してしまいそうな危うさがある。様々な国を見てきた経験から、悪い大人に騙され転がされて死んだ子どもを思い出す。
ロン・ウィーズリー
faith……50
brave……98
justice……60
fear……18
hunger……87
ambition……80
wisdom……55
ホエール教授の一言……特筆するような秀でたものは感じられない。英雄に憧れる凡人。
自分に何もないと思っているからこそ英雄になろうとしているのかもしれない。
ブレーズ・ザビニ
faith……21
brave……90
justice……33
fear……42
hunger……71
ambition……60
wisdom……60
ホエール教授の一言……おそらくはポッター一味の中で最も人格のバランスが取れている。クィディッチがうまい。
赴任中のとある一幕で、女子たちに組まれ何らかの報復を受けていた。
ブルーム・アズラエル
faith……1
brave……96
justice……95
fear……97
hunger……60
ambition……90
wisdom……30
ホエール教授の一言……良くも悪くも思い切りがいい。
有能な人間の言葉や、諫言を聞けるならそれなりに大成するが、聞けなければ破滅するタイプ。
精神性がガキ。
ダフネ・グリーングラス
faith……40
brave……45
justice……56
fear……80
hunger……35
ambition……88
wisdom……25
ホエール教授の一言……取り立てて特筆すべきところはない。強いて言うならば周囲の環境次第で変化する平均的な魔女。
ドラコ・マルフォイ
faith……70
brave……80
justice……60
fear……99
hunger……80
ambition……99
wisdom……40
ホエール教授の一言……何かを拗らせたまま大人になろうとしている少年。
傍観して鑑賞する道化として見る分には面白いが、日常生活の際に近くに居られる、或いは仲間にすると不快で困る類の人種。
アルバス・ダンブルドア殺害の主犯。
セオドール・ノット
faith……80
brave……5
justice……20
fear……80
hunger……20
ambition……65
wisdom……70
ホエール教授としての一言……自己主張をしない一匹狼であり、悪い意味で目立っている。
集団行動時はドラコ・マルフォイと組むことで孤立を免れていた。
ネビル・ロングボトム
faith……1
brave……97
justice……83
fear……97
hunger……69
ambition……66
wisdom……8
ホエール教授の一言……自分には欲なんてありませんという顔をしているが、かなり強欲。ナチュラルにグリフィンドールを上に、他の寮を下に見ている。
ホグワーツで水が合わず腹を下したとき、彼の育てた薬草にお世話になった。感謝している。
ザムザ・ベオルブ
faith……40
brave……88
justice……94
fear……21
hunger……13
ambition……81
wisdom……59
ホエール教授の一言……根本的なところで自分に自信がないので、他人の提示した正義に縋っている子供。
端的に言えば、学生運動に身を投じた学生である。
***
「……この手抜き文章について説明をいただけますか、ニッグ教授……いえ、ギンさん?」
ホグワーツで出会った生徒たちの傾向分析という題で出された報告書を手に持ちながら、年下の上司は冷たい視線をニッグ=ホエール…………否、ギンへと向けた。
ニッグ・ホエール教授はホグワーツという魑魅魍魎の総本山から見事生還を果たした。考古学教授として1年間の間講師を務めた彼は、現在、本来の職場において上司に詰められている。
ニッグの本名はギン・グレイブス。かつてゲラート・グリンデルバルドに殺害され、名前と顔を奪われた男の末裔である。早い話が、ギンは二つの名前を持っていた。
考古学会にはニッグ=ホエールとして籍を残しつつ、学者の権限を使い合法的に他国を渡り歩きながら国際魔法連盟の職員として様々な国に探りを入れる。それがギンの仕事であった。
安物の肘掛け椅子に腰掛け、頬杖をついて薄ら笑いを浮かべながらニッグに報告を求める上司は、報告者の書類に一度は目を通したが、二度はない。
目を通す価値もない、まさしくゴミのような情報だからだ。
「ええ、ホグワーツの生徒に教えてもらった分析でして。どうも向こうではこういうのが流行っているようで」
「勇気、知性、野心、正義感。ホグワーツ魔法魔術学校においては、この4つの資質が最も重要視されています。そしてその4つで学部を区分し、異なる環境で七年間を過ごさせる。ええ、知っていますよ。有名な話ですから」
パリスはにこやかに言った。
「……ギンさん。流行っているという表現は適切ではありませんよね。むしろホグワーツの全てと言っても過言ではないと思いますが?」
パリスはギンのおふざけに乗った。
「人を構成する要素を大まかに分けて4つに分類し、その個人が重要視する特質によって人をラベリングし、似た資質の生徒を集めることで成長させていくそうですね。千年分の実績がある由緒正しい方式だと聞いています。で?それが何の役に立つのですか?」
「ボクはダンブルドアの手駒を観察しろとは言いましたが…………貴方にラベリングごっこのお遊びをしろと言ったつもりはありませんが」
「ホグワーツの生徒自身が観察した結果に基づいた報告書です。お気に召しませんでしたか?」
「はい、気に入るわけがありませんね」
パリスは無言呪文でニッグことギンを金縛りにし、説教を行った。
「これは報告書としては失格。…………そもそもの問題があります。貴方が基準としたこの数値は指標としてはあまりに不適切ですよ」
「全くもっておっしゃる通りです」
ニッグ=ホエールは年下の上司に書類を提出したその瞬間に大目玉を食らっていた。
ニッグの眼前で忌々しそうにニッグを見据える年下の上司は、魔法族らしいローブに身を包んでいる……というわけではない。マグルの世界で広く用いられるビジネス用のスーツとネクタイ、そして機能的なパンツである。腕時計はフランスのメーカー、べ〇テのものであった。
パリス・ヒューストンは、国際魔法連盟魔法文化機関長官である。加盟国全ての教育機関に対して強い権限を持つ若き魔法使いはマグル社会に対して排他的ではなかった。
決して融和的でもなかったが。
そして彼は、アルバス・ダンブルドアとその手駒に対して並々ならぬ関心を持っていた。それだけに、今回提出された資料には落胆と怒りを隠せない。
「報告書における数値化された指標……たとえば恐怖値?ですが……これらには、単位が書かれていませんよね?」
「ええ」
「それでは恐怖値1と2の違いすらわかりません。こんな数値には何の意味もないと言っているのと同義ですよね」
「……そう言われますと返す言葉もありません。このような遊び心は貴方の好みかと思ったのですが」
若き上司は染めた金髪をかきあげ、ええ好きですよ?と微笑んだ上で言った。
「ボクは確かにホグワーツにいるダンブルドアの手駒たちについて調査してほしいと命令はしました。遊び心を滲ませていただけるのも嬉しいものです」
「しかし、それはそれ。これはこれ、で落第点です。数値化できないものを無理矢理数値化したがるのは結構ですが、客観的な指標としたいのであれば、それを推し量るに相応しい単位をつけるべきですね」
金髪を短く纏めたその上司は笑みを崩さない。
笑顔は社会人の基本スキルである。この場合は、『お前1年という期間を無駄にしてないよな?』という圧が込められていた。
「ボクは貴方からの報告者は公文書として保管し、上に上げなければいけない立場なわけです。明日の正午までに体裁は整えて提出してください」
「仰る通りです。すぐに書き直します、パリス長官」
ニッグのふざけた報告に対して、パリスと呼ばれた上司もにこにこと笑いながら報告書を右手の指でとんとんと叩く。
「それよりも、です。僕の言いたいことはあなたならお分かりでしょうが、大事なところですので敢えて口に出させていただきます」
とん、と報告書を指でたたいていたその上司は、ふわりと報告書をを上空へと浮かべた。
無言、かつ杖なしでのヴィンガーディアム・レヴィオーサ(浮遊魔法)によって浮かび上がった報告書は淡い輝きを放った。
スペシアリス・レベリオ(隠蔽解除魔法)がパリスの手によってかけられたのだ。
レベリオは基本中の基本のような魔法であるが、実は奥深く使用者の力量が問われる魔法でもある。
例えば隠蔽する側が本命の内容を誰にも知られたくない場合、レベリオによって強引な解除手段を試みた瞬間に本命の内容を焼き切るなどの対策を施すことはある。
レベリオがあまりにも便利すぎるがゆえに、隠蔽する側もレベリオの存在を想定しなければならない。
ギンは何も言わずとも本命の内容を隠す。それくらいの対策ができなければ、戦時下の国にスパイとして派遣したりはしない。
パリスのように公文書を管理する立場にある人間、つまり各国の魔法省の役人や国際魔法連盟の職員たちは、偽の文書に関する隠蔽魔法とその解除手段に長けていなければならない。
通常のスペシアリス・レベリオは無条件で解除の工程に入る。しかしパリス式のレベリオは、魔法による紙、インクの変化を探索する工程を追加しておく。インクや紙がレベリオを認識する前に、変化している部分を認識した上で書類に掛けられた保護魔法を停止させ、そして解除する。
このように手順を踏むことで対策を無効化するの立場のある社会人(プロ)の使うレベリオである。
パリス長官は本命を待ちわびながら部下へと微笑む。
「この文章が本命の文を隠すための偽装だとしてもですねぇ?一発で偽装と分かるような文面では意味がありません。ボクでなくても『こんな報告書はあり得ない』と疑いを持ちますよ」
「考古学では隠蔽される遺物が多いと聞きますが、もう少し巧妙に隠すべきではありませんか?」
その言葉が終わると同時に、スペシアリス・レベリオも切れる。ふわりと舞い降りた報告書の中身は……元のままであった。
スペシアリス・レベリオをかけてもなお、報告書に別の文言が浮かび上がることはなかった。
「……」
沈黙。長官は一瞬の間の後、ニッグを見、そして変わらぬ報告書を見た。
「え?……えー……」
本命の報告書が出てくるはずという推測が外れ、呆れと失望の声を出した上司を見て、ニッグは申し訳ありませんでした、とターバンを脱いで謝った。
「ダンブルドアから……海外の魔法使いに対する指示や要請は……ありませんでした」
「……」
パリス・ヒューストンは、はじめて笑みを消し、訝しげに唇に手を当てて考える素振りを見せた。
(……現在の英国魔法界の戦力では、デスイーターと巨人族の脅威を止められないことは明白。どこかで必ず、我々英国以外の魔法族の加勢が必要になる……)
(だからこそ、ダンブルドアから援軍の要請があると思っていたのですが)
パリスは英国魔法大臣より、ホグワーツ魔法魔術学校の校長の判断を重んじていた。
(ダンブルドアはリベラル派のトップと見なされ、本人もそう振る舞ってきました。ゴブリンや巨人族や異種族との融和、関係改善を訴えたことも一度や二度ではない)
パリスは過去のダンブルドアの言動を思い返す。
(……巨人族との融和も、ゴブリン族との和解も。まずは魔法族の側が誠意を見せて相手に歩み寄るべきだと。ま、誰も耳を貸しはしませんでしたが)
ダンブルドアはけしてお花畑な平和主義者ではない。むしろその逆で、魔法使いや魔女(ヒト)と融和するつもりがない相手に対しては毅然とした対応をする。ダンブルドアの意見に同意はしつつも、何もしない魔法族に対してもダンブルドアは寛容であり続けた。
それはアルバス・ダンブルドアが人の弱さというものに対して寛容であったからである。
譲歩すべきところでは譲歩し、対等な相手と認めて交渉するべきという意見は、ダンブルドア自身が、異種族に対しても優位的な力を保持しているからこそ。ダンブルドアは、相対的に見て己が強者であることを理解していたのである。
融和とは、あくまでも自分達の優位が確保された状態での譲歩でなくてはならない。
わざわざ自分から、将来の火種になるかもしれない種族間の和解などしたくはない。そんな大勢の魔法族の本音を、ダンブルドアは深く理解していたのだ。
(我々が迂闊に手を出せばことは『英国の魔法族』と『一部の巨人族やウェアウルフ』の問題ではなく、世界を巻き込んだ種族間闘争に発展しかねない)
ヴォルデモートの狡猾なところは、社会において虐げられている被差別側の種族も味方につけていることである。
巨人族やウェアウルフが英国に拠点を持つ者達だけならば、(戦力的な問題に目を瞑れば)戦う判断もできる。
しかし、闇陣営の中に自国や周辺国に拠点を置く者も参加しているなら話は変わる。闇陣営との闘争によって、今後何十年単位で自国内の政治的不安を抱えることにもなりかねないのだ。
(巨人族やウェアウルフ達の全容がわからない以上、迂闊に手は出せない。だからどの国も二の足を踏んでいる。とはいえ……)
パリスはとん、とん、と左手の小指で机を叩いた。
(……このままでは英国は滅びる。そうなれば、国際魔法連盟が標的になるのも時間の問題。尻に火がついた老人たちは動かざるをえない……)
現在の英国に、闇陣営を食い止める戦力はない。均衡を保っていたダンブルドアが死んだ以上、このまま順当にいけば英国魔法省の敗北は必然である。
アルバス・ダンブルドアが現代の魔法では治癒不可能な呪いを受けていたという報告を、パリスは既に受けていた。だからこそ、ダンブルドアはギンを経由して英国への助力を願うと読んでいた。
それがない、ということはつまり、今はまだその時ではないということ。
その時が来るまでの間の犠牲をダンブルドアは許容した。つまりは、そういうことである。
「ホグワーツの学生には、これはという人材は居ませんか?報告を見る限りは誰も彼も小粒に見えますね」
パリスはギンに問いかけた。
「仕方のない話です。英国は先の内戦以来、弱体化し続けていました」
「英国内の紛争を嫌い移住した者。英国にとどまり、戦争で命を落とした者。これら上位層や中間層人材の消滅は、光陣営か闇陣営かを問わず、英国を弱体化させました」
「……が。ホグワーツというシステムは変わっていない。システムが変わらず人口も人材総数も減少している以上、弱体化を解消する要因はありません」
ギンの話は事実であった。パリスも異論はないのか、ふむ、と頷いた。
「……とはいえ、それらを補填するためにダンブルドアも教育に力を入れていたのでは?と私は思うのですが」
「ダンブルドア一人で国という化け物をコントロールすることはできません。ダンブルドアはむしろこの件に関しては、秩序の維持側に回りました」
ギンの言葉は、英国で過ごしたことがない第三者だからこそ言えることである。
教育制度の改革。それを敢行すれば、ダンブルドアは理事会からの批判を免れない。ホグワーツというブランドそのものを棄損する行為であり、たとえそれが良いことであったとしても、ダンブルドアの支持者すら、ダンブルドアを批判していただろう。
「ホグワーツにおける四寮のシステムは、国民を分断させ常にその戦力が一定以下になるように調整するためのものです。一致団結など政治家は誰も求めていないし、英国の魔法族もまた、互いに見下し合う対象が必要だったのです」
「分断し、互いに憎ませあって統治せよ。人員管理の基本ですね」
ギンは無言で頷いた。四寮のシステムは確かに問題も大きいが、それ以上にメリットも大きいのだ。
子供たちはグリフィンドール、スリザリン、レイブンクロー、ハッフルパフという寮で、擬似的に組織の理論を体験することができる。管理する側の人間にとってみれば、子供達が常に一定の範囲の人間関係で動くのであれば都合がいい。通わせる親にとっても、子供達がどういう環境に置かれているのかを把握できるのは大いにメリットがある。
互いに相争い憎み合うことも、政治家にしてみれば長い目で見れば都合が良かったのだ。
「『差別は安堵』とはよく言ったものですが、結果的に自分達の首を絞めていては話になりませんねぇ」
「一つのシステムが千年単位で存続するというのは世界的に見ても異例です。問題は幾つもあり、それが膿となって吐き出されたとはいえ……実に理に適ったシステムだったと言えるでしょう」
「新しく作ったシステムが上手く回る保証はない……ということですね、ギンさん?」
「ええ。ホグワーツ魔法魔術学校にいくつもの問題があったとはいえ、先の内戦の後も当事者である英国魔法省や英国の国民がホグワーツの存続を望み、ホグワーツに子供を通わせたということが、ホグワーツ魔法魔術学校が英国の魔法族から必要だと認められていた何よりの証明です」
パリスは英国魔法界を愚弄したが、歴史学者であるギンは違った。パリスは英国に対してフラットな部下の見解に対しては機嫌を損ねるどころか、むしろ気を良くした。
「結局誰も、四寮制度以上のシステムを提示できなかったということですね」
「……とはいえ。先の内戦の影響は表れていました。失った人材の穴を埋めるため、英国魔法省は採用の基準を下げざるを得ませんでした。私はホグワーツの学生たちをつぶさに観察しましたが、上位層の人数が極端に乏しかったのが気になりました」
「ふむ……」
ギンの言葉は、致し方ないことである。
ヴォルデモートとの抗争によって大勢の魔法族の命が喪われた。それはつまり、魔法族として生を受けてからホグワーツ魔法魔術学校に通うまでの間に魔法を伝達する親や親戚達が居なくなったということである。
その代替として、伝統的な家庭教師とは別に、塾や通信教育などのシステムが少しずつ英国魔法界にも出来始めてはいる。が、それは親の収入に左右される。
結果的に、子供たちの学力や魔法技術にはばらつきが出てしまう。自己の意識と努力で這い上がれる子供と、そうではない子供の差が広がってしまっていたのである。
「現在の英国に残った魔法族は、保身と自己の権益にしか興味がない二流三流の役人か、闇の帝王に阿ることができず、ダンブルドアに縋るしかない弱者の二択です。ダンブルドアの見込んだ生徒たちは後者。他に選択肢が無いがゆえにダンブルドアに縋った子供達に過ぎません」
ここでギンはオクルメンシーを使い、本心とはあえて逆のことを話した。
オクルメンシーの使い手にも、様々な人間がいる。
社会人として常にそれを使い続けるタイプと、必要な時に本心を晒しつつ、必要な時にだけ使うタイプ。ギンは後者である。
「……英国魔法界の縮図であり、内情ですか。これが、ねぇ……」
「私がホグワーツで見たのはダンブルドアが手駒にするために選んだ子供たちと、かの闇の帝王の手先となった子供。少年兵達は、皆等しく哀れな犠牲者でした」
(期待外れもいいところですが……人を育てるなど、かのダンブルドアであっても難しいことなのは事実。そうでなければ英国はこうはなっていませんからねぇ)
パリスは内心の失望を表に出さないように努めた。
(ギンさんであればもっと実のあるデータや……ダンブルドアからの指示を入手してくれると思った私の落ち度ですね)
国際魔法連盟は、『ヴォルデモート』と自らを称する闇の魔法使いの動向を注視している。潜入員を送り込み内情を調査しているのだ。パリスも例外ではなく、使える手駒の中で最も都合のいいギンを、ニッグ=ホエールとして派遣した。
しかしながら、潜入任務に長けた諜報員達からもたらされる情報は、その全てが実あるものばかりではない。
潜入員が任務に失敗し、死亡あるいは操られるから、というだけではなく。
潜入員も人間であり、組織の一員である以上、自らの立場を確保するため実にくだらない情報を齎すことはこれが始めてではない。それらの情報の価値を決めるのは上司であるパリスの役目である。
「……わかりました。1年間の任務、ご苦労様でした。ギンさん。ビクトールも私の護衛任務、ご苦労でした。休憩を許可します。下がっていいですよ」
ニコニコとした仮面の笑みを浮かべながら、パリスはギンと、透明化の魔法で側に控えさせていたビクトル・クラムを下がらせた。
(……!?最初からここに……!?)
突如現れた伏兵に驚いたのはギンである。
ギンは思わず杖をクラムに突きつけた後、降参だという風に両手を挙げて苦笑いしながらクラムを賞賛した。
「いや、参った。ここまで驚いたのは、親戚の家に預けた息子が訪ねてきた時以来だ……」
(音や匂いは魔法で消せるとはいえ、欠片も悟らせないとはな……大した男だ……)
ビクトール・クラム。ダームストラング専門学校を卒業後、プロクィディッチチームではなく国際魔法連盟に就職した筋肉質な男は、固く唇を閉ざしながらパリス・ヒューストンの右手に佇んでいた。クラムはギンの称賛に対して、軽い会釈で返した。
***
「……どうして長官に嘘をつかれたのですか?」
「嘘?」
クラムはパリス長官の部屋を出た後、ギンを誘い、パリスに対する報告について英語で問い詰めていた。
クラムはホグワーツ留学の後、優秀な英会話の教師と本人の不断の努力によって、国際魔法連盟職員の一員として日常会話に不足ないレベルまで英語を話せるまでになっていた。
「僕はホグワーツ魔法魔術学校へ留学した経験があります。ハ……ポッター達が……ギンさんの仰るように何の才能もない凡人だとは、思えません」
「そうか、君は彼らと面識があったのか」
(……余計なことをしやがって)
ギンは内心でクラムに対して舌打ちした。
パリス・ヒューストンは事前にクラムから過去のホグワーツの内情を聞いていたに違いなかった。
ギンがわざわざ配慮してハリーやハーマイオニーといった生徒たちを過小評価した報告をしたのに、過大評価、あるいは適切な評価を下した第三者がいてはギンの配慮は無駄になる。
「……俺は自分の言葉を取り下げるつもりはない。人は変わる。君が見た過去のホグワーツの生徒たちが仮に天才であったとしても。神童がいつまでも神童で居られるとは限らない」
わかるだろう?とギンはクラムに対してにこやかに言った。
「たとえどれだけの才能があろうと、人は常に最善の選択ができるわけではない。少ないリソースと時間で、大人としてそこらの凡人と変わらない選択をしなくてはならない時は来る。当たり前だが、間違えることだってある。彼らはそういう選択を積み重ねてきた」
ギンはそう言ったあと、冷静にクラムに問いかける。
「だが、それを誰が責められる?ミスタ・クラム。クィディッチをやっていた君なら、一分一秒を争うような危機的な状況ではそういう瞬間が常にあることはわかっているはずだ」
「……才能の有無と、選択の是非とは無関係だということですか」
「そうだ。人は常に結果という名の過程の積み重ねを重視する生き物だ。才能という名の適性はあるとしても、選択そのものはいつだって単純で、残酷で、驚くほどありきたりなものだ」
クラムに反論はない。ただ、納得ができないという風にギンを見ていた。
クラム自身、別にハリーのことを特別気にかけていたわけではない。が、第三者から彼はつまらない人間だと言われたとき、クラム自身でも気付かない程度に苛立ちを感じた。
それは、トライウィザードトーナメントを共にした戦友に向ける微かな友情によるものであった。
「それに、俺はポッター達が弱者だとパリスに言ったがな。社会的な弱者、天才ではない凡人であることを何故恥じる必要がある」
「この状況下で闇陣営に与さず、光陣営の一員として戦う。その勇敢さに比べれば、他の才能など些細なことだ。英国社会を守る意志がある、と表明している誇り高き弱者なんだからな」
そう言っているギンは、一瞬、顔から笑みを消していた。
「誰にも寄り添わない人間は、誰からも寄り添ってもらえない。ポッター達は他者に寄り添うつもりはあるから、ギンさんの中では何の問題もない……ということですか」
クラムの言葉にギンは頷いた。
(危ういとは思っているんだがな)
ギンの本音は違う。
はっきり言えば、英国魔法社会の未来だの、闇陣営に脅かされる人々の命だのという重荷を背負うのはポッターやその友人たちの役割ではない。そんなものはさっさと魔法省にぶん投げて逃げてしまえばいいというのがギンの偽らざる本音だ。しかし、それを言う気にはなれなかった。
「そうだ。そして彼らは少なくとも、自分が寄り添うべき人間を見極める頭がある。優秀な凡人だよ。パリスが好みそうな人材ではないがな」
クラムはけして馬鹿ではない。ギンの言葉を咀嚼しながら受け止めようとしているクラムの姿を見て、ギンは内心で、(ビクトール・クラムに10点)と加点しながら頷いた。
「……ポッター達がアルバス・ダンブルドアに従い、ダンブルドアの指示を唯々諾々と受け入れて生きる選択をしたことはけして悪い選択じゃない。孤独な天才が生き残るには、今の英国は魔境すぎるからな」
大半の人間、つまり凡人は自分や家族、友人、或いは恋人などの身近な何かを大切にすればそれでよい。
身の丈に合った幸不幸を噛み潰し。
たとえ理不尽に見舞われ泣き叫ぼうとも。
より良い明日などないと自分を慰め、妥協と腐敗と堕落で生きる。それが凡庸な人間つまり凡人の生き方である。
それが出来ない人間、否、不幸を受け入れられずに暴走する天才に待つのは。
死である。死は、単なる医学的な死だけではない。
無もなき市民達と同じ、無意味で無益としか思えない死。
或いは、クラウチ一族のように。あらゆる尊厳を破壊し尽くされた末の破滅。生物学的な死が救いに思えるほどの社会的な死である。
「……ですが……どうして、長官に対して英国魔法省への介入を訴えなかったのですか?」
「英国に『例のあの人』をどうにかする戦力がないことは明白なら。これ以上事態が悪化する前に手を打つべきです。ホグワーツ魔法魔術学校に対しても早期に介入すれば、これ以上の被害が出る前に保護することができます」
「……さぁな。それはパリスの責任であって俺の責任ではない」
ギンは肩をすくめた。その後、クラムに忠告した。
「パリスに対して意見具申するつもりならやめたほうが良い。君の同期で、パリスに意見したことで左遷された男を覚えているか?」
「バナナージ。バナナージ・ビスト……」
クラムはフローバーワームを噛み潰したように、顔をしかめた。
(まぁ……何で介入しないかって言えば、タイミングの問題なんだが。それをクラムに説明してやる義理はないからな……)
ギンはお人好しではない。パリスや国際魔法連盟の上層部がホグワーツや英国魔法省への助力を躊躇っている理由について、その全てを懇切丁寧に説明する義理はなかった。
英国魔法界への援軍とは、成功すれば相応の見返りがある行為ではある。衰退しているとはいえ腐っても一国に対して消えない借りを作り、利権を得るメリットもある。
しかし、闇陣営という名のテロリストとの長期間の抗争に巻き込まれるデメリットも存在する。
英国魔法省がヴォルデモートの復活を認めた直後、英国魔法界の平均株価指数は暴落し、幾つもの外国企業が英国から撤退した。インペリオとアバダケダブラを躊躇わない狂人たちとの泥沼のゲリラ戦は、英国の経済活動を衰退させる行為だと誰もが思ったからだ。
誰が好き好んで他人の、英国のためにリスクを犯して生命をかけて戦いたいと言うのか。魔法族には英雄志望の人間も多いとはいえ、見ず知らずの赤の他人のためにそこまでしてやる義理はないと考える魔法族のほうが多い。
わざわざ内戦中の国に介入して闇陣営の敵になるということは、単に職員に生命の危機があるというだけではない。職員の所属する組織や家族、国にまで被害が及びかねない行為なのだ。
「個人的に親交もありました。潔癖なところはありましたが……気のいい男でした」
クラムの言葉にギンは頷いた。そして、バナナージの真実を告げる。
「人事部に根回しをしてビストを左遷させたのは、パリスだ」
ヴォルデモート復活直後にそれを訴えかけたバナナージは職員たちから疎まれ、孤立を深めていった。そんなバナナージを左遷したのが、他ならぬパリス・ヒューストンである。
「長官がですか?なぜ……?」
「バナナージを皆の視線から守るためだ。いいか、冷静になって考えてもみろ」
「国際魔法連盟の職員は英国とは縁もゆかりもなく、守る義理も存在しない職員だって多い。はっきり言えば、英国のために戦いたくなんてないんだよ」
直球の本音に、クラムは何も言えない。
「それでも戦いたい連中はいる。いるが……決して平和や友好のためばかりじゃない。英国の遺物や魔法的資産を見返りにしたい国の利権が蠢いている。バナナージが訴えたような平和のためのお題目を本気で信じていたやつはほぼいない」
否定する代わりにクラムは無言で頷いた。というか、頷くしかできなかった。
クラムの知る限り、ダンブルドアを尊敬し、ダンブルドアの言葉なら信じる、という先輩職員や後輩はいる。
が。だから正義のために英国に介入して殺し殺されの地獄の末に内命を落とせと言われて納得できる職員はその中でも1割にも満たないだろう。英国に家族がいるわけでもないのだから、それも仕方のない話である。
「……そんな環境で。『例のあの人』復活を触れ回り、周囲から諌められても『それでも』といい続けた男が疎まれないと思うのか?」
「……だから長官は、ビストを左遷したと?」
「ミスタ・ビストを買っていたからこそだ。左遷先で世間の荒波に揉まれて成長しろという気分だったのだろう」
新卒の職員に対して手荒すぎる『教育』であったと言える。ある意味そのおかげでクラムはここにいると言ってよい。クラムはバナナージの意見に同調しつつも、それを表には出さなかったからだ。クラムは心の中でバナナージに手を合わせた。
「パリスはな、ミスタ・クラム」
「魔法族らしい魔法族が好きなんだ。マグルの社会では孤立するような天才、集団から孤立してもなお己の信念や意志を貫こうとする若者。或いは、マグル社会ではあり得ない個人としての力を持ちながら良識を兼ね備えたダンブルドアのような善人がな」
(……長官はハーマイオニーのことを好きになりそうだ。放って置く理由がない)
と、クラムは思った。ギンが挙げた人物像にほぼ全てあてはまるからだ。個人として突出した力だけはないが、それは些細な問題に過ぎないと思った。
1年足らずの留学ではあったが、ハーマイオニー・グレンジャーはクラムにとって刺激的で忘れられない初恋の人であった。マグル産まれだからではなく、ハーマイオニーでなければ、ハウスエルフのために行動しようとは思わないだろう。
クラムは脳内でパリスへのプレゼン案を構築しかけたとき、ギンから衝撃的な一言を告げられた。
「そしてパリスは……長官はな。好きになった人間に嫌がらせをせずにはいられない。そういう性癖の男なんだ」
(ん?)
「ミスタ・ビストに対しても、純粋にミスタ・ビストの身を案じて……という気持ち半分、散々に虐め潰した後で顔を拝んで愉悦に浸りたいという欲求で左遷したんだろう」
ギンの主観によった聞き捨てならない言葉が耳に入り、思わずクラムは尋ね返す。
「……は?な……何とおっしゃいました?気の所為でしょうか、耳にコンファンドを掛けられた気がします」
(いや、バカな。そんなバカなことがあるか……?鵜呑みにすべきじゃない……)
下手くそなジョークでしょうと、クラムは笑う。ジョークであってほしかった。しかし、ギンは至って真剣であった。
「聞き間違いでもコンファンドでもない。ポッター達がミスタ・クラムの言うような高潔さがある魔法使いなら、パリスにとってまさに理想的な玩具だろう」
クラムの手に、クィディッチワールドカップ決勝戦の時のように嫌な汗が滲んだ。
130点もの差をつけられ、敗北までの道筋が確定したあの瞬間のような嫌な感覚である。
「……だから何も言うな、ミスタ・クラム」
ギンは英国式の英語でクラムに忠告した。クラムの顔を見て、ギンはフォローするつもりで言葉を付け加えた。
「パリス・ヒューストンがなぜ、この時代に長官をやれていると思う?顔か?コネか?」
「……仕事ができるからですか?」
「いいや、長官が性格上どれだけ問題があるとしても、勇敢で残酷だからだ。その点においてのみ奴には存在価値がある」
ギンはあっさりと酷いことを言った。
「パリス自身は善人として生きるつもりはさらさらない。が、奴は魔法界をより悪くしようという悪意よりは、悪を打倒して愉悦に浸りたいという欲のほうが強い。内戦に介入する過程で発生する自分や他人の死や破滅にも興味がない」
「英国に介入することでオレや君や、他の大勢の職員やその家族は命を落とすかもしれない。パリス自身にも妻も子供もいるが」
「負ければ全てを失う」
クラムは、部屋の温度が2度は下がったような感覚に襲われた。ダームストラングの教師たちとは違う、闇の魔法使いの脅威は、クラムがその身をもって知っていた。
「それが分かっていて、死ねと言える、そういう男だから奴は長官の座にいる」
「……つまり言い換えれば、勇敢で残酷と言うことですか」
「内戦に参戦する。それは俺や君のような職員達にイギリスで死ねと言っているようなものだ。よしんば内戦に介入して、全てうまくいったとしてもデスイーターの子息は被害を受ける。職員達もその家族も、面倒臭いテロリスト予備軍の標的になるリスクを抱えることになる」
「パリスはそういう人間達がいるのを承知した上で、どうでもいいと切り捨てられる。何かを成すときには必ずリスクがついてくるということを知っている」
クラムは頷いた。
残念だが、当たり前の話ではあるからだ。
クィディッチでさえ、勝者の影には敗者がいる。トライウィザードトーナメントでも、勝者であるハリーと、それ以外の敗者である自分たちがいた。正義の行為だとしても、必ず不利益を被る人間がいるというのはそれはどうしようもない自然の摂理なのだ。
「だからどうしようもないクズであっても、ダンブルドアに権力の座から落とされず放置された。こういう時を見越してな」
遠い目でそう話すギンに、クラムは問いを発した。
「……長官は今何を考えておられると思いますか?」
「ポッター達がパリスのお気に入りではないなら無難に英国魔法界に介入する算段を立てているだろうさ。あいつのお気に入りになるメリットはどこにもないから、それが唯一の正解だ。奴は自分にとってどうでもいい人間に対しては公平で公正な働きをするからな」
クラムは一瞬、全て終わった後転職すべきだろうかと考えた。
「あ~、心配はいらんぞ。パリスから特に何かされた覚えがないなら、君はパリスのお気に入りではないということだからな」
「その幸運に感謝します」
思わず本音を漏らしたクラムに対して言うじゃないか、とギンは笑った。
「……なんにせよ、俺達下っ端は来たるべき時に備えて杖を磨いていればいい。くれぐれも余計なことはしないようにすべきだな」
ギンはそうクラムを諭すと、疲れたので仮眠を取ると言って密会場所の倉庫を後にした。
(……人間的にはクズだが戦う意思と、戦うべき時期を見定める頭だけはあるリーダー……か。善人だが戦う意思だけは無いという人よりは、この時代には向いているのかもしれないが……)
ギンが去った後、クラムは思わず壁を殴りつけたい気持ちを堪えた。
(……ハーマイオニー。セドリック。俺たちが助けに行けるその時が来るまで、どうか無事でいてくれよ)
ビクトール・クラムは、善悪の境界線はどこにあるのだろうか、と考えながら、かつての想い人と友の身を案じた。
(ポッター。君が操られた俺を止めてくれなければ……)
今すぐにでも国際魔法連盟の魔法使いたちで救援に向かいたいという思いを、クラムは必死に抑えていた。
運命の日、トライウィザードトーナメントの最終日にハリーとセドリックによって操られた自分は敗北した。
敗北して良かったのだ。
負けていなければ、自分は今頃闇陣営の手先になっていたか殺されていたかのどちらかなのだから。
数年経って当時を冷静に振り返れば振り返るほど、英国魔法界はともかくセドリック達には感謝しかなかった。
だからこそ、自分を止めてくれた戦友たちに借りを利子付きで返したいという思いがクラムの中には消えないしこりとして残り続けていた。
***
自室に戻り、部屋に何も仕掛けられていないことを確認したギンは瞑目して思考に耽っていた。
はっきり言えば、ホグワーツ魔法魔術学校や英国魔法族のあれやこれやはギンにとって他人事である。
考古学者としての使命だった死の秘宝の探索についても、重要な品の一つについて目星をつけられた。古のサラザール・スリザリンが遺した部屋を確認しその修復作業に携わる事もできたのだから、ギンにとっては内戦の行末など気にする必要すらない。
が。考古学者としての勘が囁いているのだ。
新しい歴史が生まれるか、ヴォルデモートが作り上げた歴史が勝るか。いずれにせよ、英国魔法界とホグワーツが転換点を迎えようとしていると。
(……ホグワーツ魔法魔術学校には千年積み重ねた歴史がある。協調から始まった創設者達は、最後にはその友情が壊れ対立で終わる)
(始まりから対立していた歴史の上に、ヴォルデモートはスリザリン寮と他3寮の対立という歴史を重ねた)
ギンの脳裏には、ホグワーツで見た様々な生徒たちの顔が浮かんでくる。最後に彼が思い浮かべたのは、翡翠色の瞳を持つ眼鏡の青年だった。
(……彼らなら。俺の甘言にも乗らず、戦うことを決めたポッターなら)
ギンから見て、ハリー・ポッターは弱く脆く、そして、強い。
闇の魔術に染まりながら闇陣営に与しない怒りと義務感。
自己が絶望的な状況にあることを認識した上で、苦境の中に身を置く胆力。
仲間と共に時代の荒波を乗り越えんとする覚悟。
ハリー達の姿勢は激動の時代を生き抜く上では個人としての才能よりも、よほど重要な力である。
(新しい歴史を重ねられるかもしれない)
歴史とは積み重ねた結果のうえに成り立つものである。それは後世の生き残った人間によって容易く歪められてしまう。考古学者として、ギンは人間の醜さやあさましさを何度もその目にしてきたし、それを仕方ないと諦観してもいた。
が、歴史学者であるギンの脳裏にはハリー達の姿がこびりついて離れなかった。
積み重なった過去の残骸とは違う、今を生きる青年達に対する期待、そして、背負うには重すぎるものを背負っている者達に対する憐れみが、ギンの脳裏から忘却を許さなかった。
***
「……ホグワーツ魔法魔術学校の生徒たちは……貴方と何を話したのでしょうね、アルバス・ダンブルドア……」
夜10時。
家に帰らず執務室で夜を明かすつもりのパリス・ヒューストンは仕事を終え次の日の段取りを済ませたた後、アルバス・ダンブルドアの写真を前に涙を流していた。
「一度でいいから、ボクは貴方に遊んで欲しかった……」
パリスの瞳から、つ、と涙が滴る。
アルバス・ダンブルドアの冷酷さは、パリス・ヒューストンにとって憧れであり、模範にすべき姿であった。
海外の魔法使いであるパリスは、ある意味では英国出身の子供たちよりダンブルドアの実情を知っている。
ダンブルドアが、かつてグリンデルバルドとの抗争にニュート・スキャマンダーを巻き込んだこと。
ニュートはダンブルドアに対して恩があったこと。
ゲラート・グリンデルバルドのカリスマを削ぐために、本来なら戦うべきではないマグルを巻き込んだこと。
ヴォルデモートとの先の内戦の最中、ホグワーツの卒業生を中心に私兵を組織したこと。
どれもこれも残酷さと、そして、他者を慈しみ気にかける善良さがなければできないことである。
パリスには善性というものは欠片もない。演じることはできるが、全て上っ面だけの薄っぺらい嘘であることを自覚もしている。だからこそ、アルバス・ダンブルドアという存在はパリスにとって憧れの存在であり尊敬してやまない人間だった。
アルバス・ダンブルドアは強者であった。
真っ当に魔法社会を生きている魔法族の誰より強く、正しい。権力や世俗の利権から遠ざかり正しく生きようとするが故に、疎まれる。
だからこそ薄汚い凡人達はダンブルドアにはついていけない。パリスを含めて誰もがダンブルドアを崇め敬うが、ダンブルドア本人は孤独の中にある。
パリスはそんなダンブルドアの善性と冷酷さの両面、それ故の孤独に惚れたのである。
だからこそ、パリスはダンブルドアにかまって貰うためにありとあらゆる嫌がらせをした。権力の座に推薦し、それに乗らないダンブルドアの高潔さを触れ回りメディアを使って褒め殺しにして、ダンブルドアに対して要らぬ嫉妬が巻き起こるようにもした。
全ては英雄に対する報酬のつもりであり、ダンブルドアに対する敬意から来る善意。そしてダンブルドアに構ってもらいたいという私心から来る行動であった。
「……?」
ダンブルドアに対する嫌がらせ(ラブコール)の数々を思い返していた時、パリスはふと、ファイルに綴じて保管していた資料に異常が発生しているのに気付いた。
ギン・グレイブスがニッグ=ホエールとして調査し、提出した報告書が橙色に発光していたのである。
「馬鹿な」
人を舐め腐ったような行動ばかりする小者は、冷や汗を流しながら杖で身構える。
(異常はなかった。一切検知も出来なかった……!何の条件で起動した?……時間経過か?)
パリスは脳内で異常が発生した原因について考えた。
例えば、報告書がギンの手を離れた状態で発動する魔法がかけられていたならば、パリスが手紙を受け取った瞬間に発動していなければおかしい。
であるならば、手紙は時間経過と共に発動する魔法がかけられていたと見るのが妥当だった。パリスは発光する報告書に、無言でフィニート(終了魔法)をかけて魔法の発動を終わらせようとした。
しかし、フィニートが発動する瞬間パリスの杖が巻き取られるような重みを感じる。フィニートが弾かれたのだ。
『……この魔法が発動したということは、君がこの手紙を受け取っていたということだと信じる。パリス・ヒューストン……』
フィニートが弾かれた瞬間に、パリスが求めてやまなかった人の肉声が手紙から流れた。もはや二度と聞くことは叶わないと思ったその声は、偉大なる大魔法使いのそれに違いなかったが、覇気と力強さに欠けていた。
続くダンブルドアからのメッセージを聞いたパリスは、一言一句を聞き漏らすまいとダンブルドアの言葉に耳を傾けた。
***
パリスはダンブルドアのメッセージは十分にも及び、全てを聞き終えたパリス・ヒューストンはありったけの敬意を込めてこう言った。
(正気ではない)
ダンブルドアのメッセージを受け取ったパリスは、まずそう思った。ダンブルドアが善良な校長としての仮面と、酷薄な軍事指揮官としての仮面を使い分けられる存在であると認識しているパリスでも、ダンブルドア本人から受けた指示は残酷極まるものであった。
「この世界で貴方より残酷で、冷酷な人は居ないでしょうね、ダンブルドア先生……」
「ボクはミネルバ・マクゴナガルと、ルーファス・スクリンジャー。そして……ハリー・ポッターが哀れでなりません」
そう言うと、パリスはダンブルドアのメッセージが刻まれていたギンの報告書を元の位置に戻した。
パリス・ヒューストンは国際魔法連盟が舞台の上に立つべき瞬間をこの時認識した。海外の魔法使いがこの狂った内戦の舞台に立つときとはつまり、舞台の上で踊る役者が死んだときに他ならなかった。
***
***
「ここにいらしたのですね、ポッター先輩」
アスクレピオスの恨み言から逃げるようにハグリッドの小屋を後にしたハリーは、プラチナブロンドの髪を持つ後輩を目にした。
魔法で整えているのか、シュラーク・サーペンタリウスの髪は今まで一度もくすんだことはない。そんな後輩はいま、かつてないほどにその整った顔を歪めていた。
「シュラーク。一体どうしてここに?」
「フリットウィック教授がお呼びです。貴方を探してここに来ました」
シュラークはそう言うと、小屋から出てきたハグリッドに深々と頭を下げ、くるりとホグワーツ城へと向き直った。ハリーはハグリッドと抱き合うと、アスクレピオスのことを頼んだ。
「僕は本当に酷い飼い主だってことはわかってる。ハグリッド……アスクのことを頼めるのは、ハグリッドしかいないんだ」
「ハリー……いつ帰れる?」
ハリーは答えられなかった。ただ、曖昧に笑ってハグリッドへと親友を押し付けた。
(最低だ。本当に最低なやつだ、僕は)
最低ではあるが、ハリーにとってはこれがアスクレピオスにとって最善の選択であると確信していた。
ハリーは小屋に帰るつもりはない。死出の旅をするつもりであり、アスクレピオスをその旅に同行させて死なせることにハリーは耐えられなかった。
アスクレピオスは賢いが、人間とは違う。トランクの中で保護したとしても、そのトランクを紛失してしまう恐れもある。
何より、ヴォルデモートとの戦闘の際にアスクレピオスが捉えられると、インペリオと蛇語によって情報が抜き取られる可能性もある。
ハリーの死後もアスクレピオスの面倒を見てくれる飼い主を考えたとき、ハリーの頭の中にシリウスやマリーダという選択肢はなかった。
義理の両親にはまず、蛇の世話に関する経験と知識が欠けていた。グリモールド・プレイスでの生活でも彼らはアスクレピオスを面白がりはしたが、面倒を見ていたのはハリーである。
グリモールド・プレイスはダンブルドアの忠誠の呪文によって保護されていたが、セブルス・スネイプがダンブルドアを殺害し、屋敷を保護する魔法はその効力を維持できるかわからなくなった。
つまり、シリウスとマリーダは今、予め確保していた別の拠点に移っている。幼いジェームズ・ブラックを世話していたクリーチャーはハウスエルフの生物的本能によって、大きな屋敷や歴史ある建造物以外に長居することはできない。
つまり、シリウスとマリーダは逃亡生活を続けながらオーダーとしての任務と魔法省の仕事、ブラック家の財産の管理やジェームズの育児をしなくてはならない。二人に蛇に構う余裕などありはしないのだ。
ハグリッドはブリーダーとしての倫理観に欠けたところがある。しかし、生物に対する愛と、保護能力は誰にも負けはしない。ハリーにとっては、ハグリッドこそアスクレピオスにとって最善の飼い主であったのだ。
***
フリットウィック教授の部屋へと向かう間、シュラは無言であった。教授の部屋へと向かおうとしていたハリーは、シュラが教授の部屋とは別の道に進んでいることに気付いた。
「どうしたんだい、シュラ。君は道を間違えるようなことはしないと思っていたんだけど」
「間違いではありません。これが正解です」
空き教室に辿り着いた瞬間、シュラークはハリーの顔面めがけて拳を繰り出してきた。
意外なことに、素人丸出しの感情に任せた拳は、かつてのトラウマを、過去のダーズリー家での本能的な恐怖をハリーに巻き起こした。
「何をするんだ!?」
ハリーはのけぞってシュラの右拳をかわした。かわされたシュラークは、それでも止まらない。体重を乗せた左がすぐにハリーの眼前に迫っていた。
「く……(インペディメンタ(妨害))」
ハリーは思わず魔法に頼った。シュラークはハリーの妨害魔法によって、顔面以外の身体の動きを抑制された。
「シュラ……理由を言ってくれ。君は……」
ハリーの心臓は嫌な鼓動を刻んでいた。ハリーの脳裏には、1年前の出来事が蘇る。
(そうだ……シュラークが怒るのはいつだって誰かのためだった……)
この後輩は決して性格がよいとは言えず、むしろ駄目人間の部類に入る。だが、人一倍情に厚い。ハリーはそれを知っていた。
そんな男が、ハリーを憎々しげに睨みつけていた。スリザリン寮の後輩は、ハリーに向かって、わかりませんか?と吐き捨てた。
「……コリン・クリービー。彼は貴方の命令に従って参戦し、左足を永久に失うことになりました。現行の魔法では彼の失った左足を生やすことはできません」
「……!!」
「コリンは……貴方ならダンブルドアを護れると信じていたのにっ!」
ハリーは思わず魔法を解いた。殴られるべきだと思ったからだ。言い終えた瞬間、シュラークの顔は驚愕と困惑に染まった。
ハリーは受け身を取らずにシュラークの左拳を受けた。十五歳のシュラークは、過去のダドリー・ダーズリーよりは背が高く、運動神経も悪くはなかった。
シュラークが本気で殴ったことでハリーの左脇腹は痛みを訴えてきた。しかし、シュラークも拳を痛める結果になった。運動神経があろうが、シュラークは今まで本気で人を殴った経験などなかったのだ。
シュラークは一瞬、ばつが悪そうな顔をした。振り上げようとした拳が止まる。
拳のかわりに出てきたのは、ハリーを責める言葉だった。
「それで?大人しく殴られることが罪滅ぼしのつもりですか?」
「……」
闇陣営との抗争に巻き込むことはつまり、死ねと言っているのと同義である。
死にたくないから、闇の魔術に手を出すのも。死にたくないから敵を殺すのも、死にたくないから仲間を増やすのも、ハリーの中では変わらなかった。全て生き延びるための手段だった。
ハリー・ポッターは、己が生き延びるために重ねた罪の代償を支払うときが来ていた。
ハリーにとって悲惨なことに、ツケを支払うのはハリー一人にはとどまらない。ハリーが最も守りたかった友であり、後輩であり、親しい誰かであり、大切なものがある誰かなのだ。
「コリンの両親はもうコリンをホグワーツに通わせる気はないと仰って、コリンとデニスを引き取ってホグワーツを去りました。……貴方はコリンからホグワーツを奪った……!」
「違うね、シュラーク。僕は君から、君の親友を奪ったんだ」
ハリーは殴られるためにわざとシュラークの勘に障ることを言った。罵声を浴びせられるのも、殴られるのも罰としては同じだが、殴られっぱなしよりはハリーにとっては気が楽だったからだ。
(そうだ。僕はクソ野郎だ。罰を受けるべき人間なんだ)
ハリーにとってはシュラークの怒りは不当なものではなかった。
自分に置き換えて考えれば、シュラークの言葉は真っ当なものであるかのようにハリーには思えた。
ロンやハーマイオニーがダンブルドアの指示に従って戦い、利き手を失ったとしたらハリーはまず敵を憎むだろうが、それ以上に怒りの矛先は指示をしたダンブルドアに向くだろう。
(シュラは悪くない。僕はダンブルドアすら守れなかったんだから……)
「だから……だから僕はせめて、コリンに会いたい。会って謝りたい……」
(……皆が傷つくかもしれないと解っていて、僕は指示を出したんだ)
守るという行為は、何かを倒すよりもずっと難しいことなのだ。何かを失う恐怖に立ち向かい、失ったものの大きさに己の大切な何かを磨り減らしながら立ち続ける行為なのだ。
ハリーはもはや、自分自身の心の強さや正義というものについて全く信用してはいなかった。
ハーマイオニーとロンやアズラエルの案を聞き入れ、秘密結社を組織したのはハリーである。
闇陣営と戦えば死の危険がある。それをわかっていて、アンブリッジや魔法省を利用し甘言を弄して人を集めたのも自分の責任である。
ハリーの自己認識では、自分は何の言い訳もできない悪人であった。皆が望むような結果をもたらすことはできなかったのだ。
ハリーはこの瞬間だけは打算も何もなくシュラークの言葉をすべて受け入れて肯定していた。殴りたいと言うなら、いくらでも受け止めるつもりであった。
だからこそ、シュラーク・サーペンタリウスはハリーにそれ以上の追撃をかけることはできなかった。
「……どうして貴方は……貴方のような人が……」
シュラークの口から追撃の罵声が飛び出ることはなかった。
「……シュラ……?」
ハリーは一瞬忘れていたが、シュラークは、レジリメンスの達人であった。ハリーの心の底を垣間見たシュラークは、余計に怒りを深くしていた。
シュラークはハリーを睨みつけていた。が、ハリーに背を向け、空き教室の入り口に立った。
「……コリンはまだ、ホグワーツにいるかもしれません。選んでください。コリンに会いに行くか、教授の部屋に向かうか」
ハリーは迷わなかった。
「コリンに会いに行く。コリンは何処にいる?」
「保健室です。コリンの御両親とデニス、ムーディ氏とブラック氏もご一緒です。……フリットウィック教授には、僕からポッター先輩は後で行くと伝えておきます」
「わかった。ありがとう、シュラーク」
ハリーはシュラにそう言うと、保健室に向けて急いだ。その背中に向けて、シュラは大声で叫んだ。
「コリンが求めているのは、貴方の謝罪ではありません!それを忘れないでください!」
八つ当たりのようにふるった拳は、シュラの心を軽くはしなかった。シュラーク・サーペンタリウスは、コリン・クリービーが、最後までハリーの役に立てなかったと悔いる心を感じとってしまっていたのだ。それが、あまりにも理不尽でならなかった。
シュラは哀れでならなかった。ハリー・ポッターのことを尊敬し、いつか恩を返したい、ハリーのように立派な魔法使いになりたいと心の底から信じていたコリンの理想と、現実のハリーとは程遠かった。
現実のハリーは、薄汚れ血に塗れた魔法使いであり、コリンが胸躍らせ憧れた英雄とは違ったからだ。
それではあまりにもあんまりではないか。
たとえ世の中には良くあることだとしても。何かを信じて馬鹿を見た、というだけのことだったとしても。
せめて最後くらいはコリンの憧れであってくれ、と願って、怒りが収まらぬままシュラは教授の部屋へと足を運んだ。
***
ハリー・ポッターの厄介ファンであるコリンがいたのなら
ダンブルドアの厄介ファンも居たんじゃないかなー?と思って厄介ファンのオリキャラを出しました。
パリスはダンブルドアからもダンブルドアの支持者の国際魔法連盟職員達からも嫌われています。