蛇寮の獅子   作:捨独楽

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ロンの杖とかいう特大デバフ
(最初の持ち主に忠誠を尽くし、他の持ち主には真の意味での忠誠を捧げることはしない)


決闘クラブ

 

「……決闘までさせる必要があったの、アズラエル……?」

 

 ハーマイオニーは決闘クラブの決闘場で向かい合うロンとハリーを交互に見ながら、悲しそうに言った。二人とも一日前までの和やかな雰囲気ではなく、お互いにやり場のない怒りを抱えて今にも爆発しそうだった。

 

「お互いに言っちゃいけないことを言い合ってましたからね。あれ以上はダメですよ」

 

 具体的に言えば、ハリーはロンの家族が法律を破ったことに触れかけたし、ロンはロンでドラコと親しくしていることはおかしいと言いかけた。

 

「でも、だからって決闘なんて野蛮だわ」

 

「本格的にやばくなる前に公衆の面前に連れてくる必要があったんですよ……」

 

 アズラエルは疲れきった顔でハーマイオニーに言った。

 

「二人とも、人の目があるところで思想をぶちまけるほどバカじゃない筈ですし……ここなら先輩がいますから。決闘クラブなら、二人がヒートアップして止まらなくなる前に誰かが止めてくれる筈です」

 

「要するに他力本願ということ?」

 

「自分で出来ないことは人に投げるっていうのは、ビジネスの世界では常識なんですよ。うちのパパの口癖ですけど。今僕はそれをひしひしと実感してます。二人の頭がここまで固いとは思いませんでした」

 

 アズラエルはチラリとロンを見て、それからハリーを見た。ロンの家がマグル差別をしないという考え方は有名だったが、ハリーが頑固にマグル嫌いを否定しなかったこともアズラエルにとっては想定外だった。

 

「……純血主義とかマグル保護とか……そんな考え方なんて、大人が言ってるお金を生むための建前っていうか。単なる道具だと思うんですよね。それで友達を無くすなんて馬鹿馬鹿しいじゃないですか」

 

「アズラエルは、ファルカスと同じ純血主義なの……よね?」

 

「家の方針でやってるだけですよ。本気じゃありません」

 

 アズラエルはハーマイオニーの言葉に肩をすくめた。周囲にスリザリン生の姿がなければ、その姿はグリフィンドール生と変わらない。

 

(……でも、私たちが居ないところでは……)

 

 ハーマイオニーはブラウンの姿を思い出した。アズラエルが内心で自分達のことを友達だと思ってくれていたとしても、影で差別されているのだと思うのは気分が悪かった。アズラエルはそんなハーマイオニーの気持ちを知ってか知らずか、こんな言葉をハーマイオニーにかけた。

 

「本気でそう思ってたらパーティーに君たち二人を誘いませんって。僕は自分の両親には、君は混血の魔女でロンはウィーズリーだけどマグル保護とか考えてないって嘘ついてましたからね」

 

「……自分のご両親に?!」

 

 ハーマイオニーはアズラエルの二枚舌に驚いた。どこまでも狡猾に、どこまでも面の皮の厚い男子だと思った。

 

(確かに私を傷つけたことはないけど……別方向に人として信用できない子なのでは?)

 

 ハーマイオニーが内心でアズラエルに引いているとも知らず、アズラエルは言った。

 

「黙ってればバレないと思いまして」

 

 アズラエルは、その言葉の後でブロンドの髪をかきむしって言った。

 

「僕らがそういう差別をしてるっていうのは……事実としてありますけど、僕はただ、そういうのじゃなくて……僕らの世界にも楽しいものがあるってことを二人に知ってほしかった。それだけなんです」

 

 ハーマイオニーはアズラエルに対して複雑な気持ちだった。

 

(他にどうしようもないということは、分かるけれど……)

 

 アズラエルや、純血の一族の立場でご両親に反抗なんて出来るわけがないというのはハーマイオニーにも分かる。その中で、彼ができる限りのことをしていることも分かる。

 

 理屈の上ではそう納得することはできても、感情はそう簡単に割りきれるものではなかった。勝手に自分の両親をなかったことにされているのは気分が悪かった。それに。

 

「……純血主義の中で、わたしとコリンと何が違うの?」

 

 ハーマイオニーにとって、純血同士でしか結婚しないという考え方はひどく前時代的で、合理的ではなかった。ハーマイオニーやコリンのような存在を蔑むのもそうだ。

 

(新しい考え方を排斥していっても、腐り続けるだけだわ)

 

 アズラエルは、ハーマイオニーの言葉に目をそらした。アズラエル自身、まだ自分が純血主義を信仰していた頃ですら、純血主義を窮屈に思ったことは幾度となくあった。だが、ハーマイオニーの言葉は止まらなかった。

 

「マグル生まれだからって理由で見下されるのは……私もコリンも同じよ。あなたたちがそういう理由でコリンを嫌った訳じゃないのは分かっているけれど」

 

 ハーマイオニーの視線を受けて、アズラエルは罪悪感に押し潰されそうになっていた。

 

(僕は……甘かったんですね)

 

(……同じ境遇の人が差別されてて、自分だけが違うなんて……ハーマイオニーが我慢できるわけがないって、気が付くべきでした)

 

 差別された側の痛みというものを、アズラエルは理解していなかった。大人の真似をして利口ぶって、その辛さというものを軽く考えていたのだ。言われた方は、ぶつけようのない怒りを抱えながら泣くしかないということに、もっと早くに気が付くべきだったのだ。

 

「もしもそうだったのなら……私、皆とは友達では居られないわ」

 

「誓って違います。コリンをマグル生まれだからっていう理由で嫌った訳じゃありません」

 

 アズラエルは自分がウソと本音を使い分ける悪癖があることを重々承知していたが、これは本当だった。

 

「僕らは、コリンに対してはできる限り親切に対応したつもりです。ファルカスもそうです」

 

「……ただ、スリザリンにはそういう風潮がある。僕が、時と場合を選んで使い分けているのは事実です」

 

 アズラエルはハーマイオニーやロンが眩しく見えていた。自分には、彼らのように絶対に正しいということのために行動することは出来ない。自分や友達の安全を守るために、今後も純血主義の友達の前では、ハーマイオニーのことを見下さなければならないからだ。

 

「そうやって柔軟に動くということが出来ない人もいるのよ。普通の人は、簡単に自分の考え方を変えるなんて出来ないわ、アズラエル」

 

「……ええ、その通りです」

 

 アズラエルは、自分がいかに恵まれていて愚かだったのかを実感しながらハリーたちの試合を見守っていた。

 

***

 

 決闘の審判は、ハッフルパフの五年生で監督生でもあるバナナージ·ビストだった。彼はファルカスがここに来たことを喜び、ハリーたちを連れてきたことも面白がった。彼はスリザリンに対する偏見はなく、ハリーがコリンを石にしたとも思っていなかった。

 

 

「決闘して腕を試したいって?いいね。最近はそういう活きのいいルーキーがいなかったんだ。歓迎するよ、ファルカスの友人たち」

 

 と言ってハリーとロンのお試しでの決闘を認めたバナナージだったが、グリフィンドール生のリー·ジョーダンをはじめとした聴衆はこの決闘を面白がった。聴衆の中にはハリーがコリンを石にしたと噂している人たちもいた。

 

「ポッターとウィーズリーの決闘だってよ。面白そうじゃん!なぁ皆、どっちに賭ける?俺はウィーズリーに五シックル賭けるぜ!」

 

「俺はポッターっす!!三シックルと四クヌート」

 

「ウィーズリーに五シックルよ!賭けは大穴狙いじゃないとね!」

 

「ジョーダン!それからリヒティとクリス!うちは賭けは禁止だって言っただろう!エクスペリアームス(武器よ去れ)!!!」

 

「あ、待ってくださいこれはほんの冗談で……」

 

 バナナージはリー·ジョーダンが賭けで集めた金を全て没収し、全員に返却して決闘場の中央に戻った。ハリーは決闘場の右側からロンの燃えるような赤毛を見ていた。

 

「それではこれより決闘を執り行う。ハリー·ポッターの立会人はファルカス·サダルファス。ロン·ウィーズリーの立会人はブレーズ·ザビニが、そして勝敗の判定はこの俺、バナナージ·ビストが務める」

 

 ロンの立会人になると申し出たのはザビニだった。ロンはそれを了承して向かい合っていた。周囲の観客は、グリフィンドール生の立会人にスリザリン生がいることに驚いていた。

 

 

 バナナージ·ビストが言葉と共に杖を一振りすると、決闘場の回りが炎に包まれた。炎はロンの赤毛と共鳴するかのように赤かった。

 

「この炎には実害はない。炎のように見えるだけの作り物だよ。決闘クラブ独自のルールとして、先にこの炎の線を超えたもの、杖を失ったもの、戦闘能力を喪失したものは敗北とする。両名、分かったかい?」

 

「「はい」」

 

「……ああ、そうだ。当たり前のことだけど一つ言い忘れていた。この決闘では、互いに後に残る怪我をさせたものは問答無用で反則負けとする。いいね?」

 

 決闘の開始目前になって、ハリーはロンに対する怒りが沸き上がって来るのを感じた。

 

(マグルと暮らしたこともないくせに。どうしてマグル差別は良くないなんて言えるんだ!)

 

 ハリーはロンが友達だからこそ、自分の痛みを分かってくれないのが許せなかった。よくマグルのことを知りもしないのに、運が悪かったなんていう理屈で、ハリーの感情が間違っていると言われることは許せなかった。友達だからこそ、ロンにハリーの思想を、マグルへの差別感情を認めさせたかった。決闘に勝って、ロンにこう言うつもりだった。

 

『君もダーズリーと暮らしてみろよ。一日でマグルが嫌いになるから』

 

 と。ロンは真っ直ぐにハリーの目を睨み付けていた。

 

 

(……ファルカスの話では仲がいいって聞いていたんだが……)

 

 決闘場の中央に立っていたビストは、ハリーとロンの雰囲気が友人に向けるものではなく、どこか殺気だっていることに気が付いた。

 

(……もしかしたら、止めに入らないといけないかもしれないな)

 

 

 ビストは内心でそう考えながら、ハリーとロンをむかいあわせた。

 

「……決闘者は互いへの敬意を忘れず己の技量を試すように!礼!!……それでは、はじめっ!!」

 

 

 ハリーは開始の合図と共に、右後ろにバックステップしながら自分ができる最高の呪文を唱えた。

 

「エクスペリアーム……」

 

 ロンの杖が魔法を撃ってもハリーに届く前に、ハリーがロンの攻撃能力を奪えばいい。ハリーはエクスペリアームスの最大射程まで退避しながら、最速で武装解除の呪文を唱えた。

 

 

 初心者同士で行なう決闘場での決闘では、互いの魔法を試し合うために最初の数回は遊ぶのが通例になっている。どうでもいい小手調べの呪文を使ってから本命の魔法をぶつけ合うのが、決闘の作法だった。

 

 だが、ハリーにそんな余裕はなかった。自分にできる最大の手段を使いロンを一刻も早く無力化することが、最善だと確信していた。実際、その判断は正しかった。

 

 ハリーが呪文を唱え終えるより、ロンの杖の一振りのほうが早かった。無言で放たれた緑色の閃光が、ハリーの顔面に直撃した。

 

 

***

 

 ロンは耳の先から頭の中まで真っ赤に染まりながら、決闘の開始が告げられるまでずっとハリーのことを考えていた。

 

(……バカやろう)

 

 ロンはハリーがマグル差別をしていることも、ファルカスが純血主義だったこともはじめて知った。生まれた頃からウィーズリー家にいたロンは、自分が純血だと思ったことも、人よりも優れていると思ったことも一度もない。自分の先には常に自分よりも優秀な兄たちがいて、自分は単なるおまけでしかなかった。

 

 そんなロンでも、マグルをマグルと言うだけで差別するのは良くないことだというのは分かる。何故なら。

 

(俺らにだってマグルの血は流れてるんだぞ!!)

 

 純血ですと言い張っている家だって、ロンたちウィーズリー家だって、それこそハリーだってそうだ。ハリーの母方の祖父母はマグルのはずだ。それなのに、マグルを差別するなんて馬鹿げた考え方を、友達が持っているなんて信じられなかった。

 

(自分自身を否定するようなもんだろ。そんなこと、絶対に止めねぇと……!!)

 

 要するに、友達が滑稽で愚かで馬鹿げた考え方に嵌まるかもしれないのを見過ごせなかったのだ。ハリーだけでなく、ファルカスも友達だった。

(純血主義なんていう考え方は、人を傷つけるだけなんだ。自分も……他人も)

 

 ロンはそう信じていた。純血主義者たちに自分の親族を殺された恨みは、自覚はなくとも教育としてロンの中に受け継がれていた。

 

 そして、ロンの中にあるのは怒りだけではなかった。友達なのに肝心なことを黙っていたことに対する怒りは勿論あるが、間違った方向にいきかねない友達を黙って見ていることはロンにはできなかった。ロン自身にその自覚はなくても、その姿はまさにサラザール·スリザリンの暴走を止めるために立ち向かうゴドリック·グリフィンドールの姿そのものだった。

 

 ロンはハリーと同じように、自分にできる最大最速の魔法を撃つことで勝負を決めようとした。ロンはハリーと何度も決闘ごっこをして、ハリーの強さを分かっていた。だからこそ足を止めて、確実に最速に呪文を撃つことを選んだ。

 

***

 

「エクスペリアーム……」

 

 ス、という言葉をいい終えるより先に、ハリーの顔面に緑色の閃光が直撃した。

 

「ハリー!大丈夫!?」

 

 ハリーを心配したファルカスが叫ぶ。ロンは魔法が直撃したにも関わらず、追撃して来なかった。ハリーはもう一度武装解除の魔法を撃とうとした。

 

「エクスペリアー……?!」

 

 ハリーはその瞬間に、激しい吐き気に襲われた。耐えきれずに地面に伏せたハリーは、公衆の面前であることも忘れて嘔吐した。ハリーの口から吐き戻されたのは、ハリーの昼食ではなかった。うようよとうねる巨大ななめくじが、ハリーの口から吐き出された。

 

「それまで!勝者、ロン·ウィーズリー!」

 

「いよっしゃーあ!クヌートゲットだぜぇ!!」

 

 リージョーダンをはじめとした観客たちが沸くなかで、アズラエルはほっとした顔でロンを見ていた。

 

(……ありがとうございます、ロン……!)

 

 武装解除術を習得し、高い反射神経を持つハリーに向かい合っての決闘で勝つことは現時点ではハーマイオニーでも難しい。ロン以外で勝つことはできなかっただろうとアズラエルは思った。アズラエルは、ハリーがこれ以上面倒になる前に終止符をうってくれたことに、心の底から感謝した。

 

 

 

 バナナージ·ビストは勝負の終了を宣言すると、ハリーを抱き起こして体内から発生しているナメクジを消失させた。バナナージはさらに、反対呪文によってハリーの症状を治した。ハリーは涙目になりながらバナナージにお礼を言った。

 

「……ウィーズリー。呪文の詠唱を防ぐ魔法をかけるのはいい判断だ。この魔法を無言で撃てるようになるほどに練習していたのかい?」

 

「え、あー、いや……ハリーに勝つならこれしかないって思って、夢中で……」

 

(つまり無意識か。変身魔法を無言で!!)

 

 バナナージ·ビストはロンの杖をじっと見た。商社に務めている親族を持つ関係上、杖などの道具の知識はそれなりにある。ロンの杖は古びたトネリコと、ビスト家にとって縁の深いユニコーンの毛が使われていた。

 

(使い込まれた杖だ。お古だな。こいつは最初の所有者に忠実なはずだ。それで無言呪文を成功させたのか?)

 

 トネリコとユニコーンの杖は、最初の所有者に対して強い忠誠心を発揮する杖だ。最初の所有者に忠義を尽くすいい杖なのだが、別の所有者に対しては魔力を十分に発揮しない杖でもある。ビストはウィーズリー家の家庭事情を察して、ロンに対して同情した。ウィーズリー家が貧乏であることはホグワーツ生の常識だった。

 

(……この子はちゃんと鍛えたら伸びるかもしれないな……)

 

 バナナージ·ビストはロンを決闘クラブの一員として認めた。一年生のときに、忠誠心が十分ではないだろう杖でトロルを倒した才能を埋もれさせるわけにはいかなかった。

 バナナージが五年生でありながら六年生のパーシーや他に在籍している七年生を差し置いて決闘クラブの部長に抜擢されたのは、彼が他の魔法使いが気にしない知識を持ち、偏見による判断ではなく正しい理解をした上でそれを乗り越える能力があると期待されてのことだった。事実、バナナージは正しい判断をした。バナナージに誉めてもらったことで、ロンは少しだけ自信を持つことが出来たのだ。

 

 

「呪文を使ったときの感覚を忘れないように練習をすることだね、ウィーズリー。地道にやっていけば、君はいい魔法使いになれるよ」

 

 バナナージは敗北したハリーにも笑いかけた。

 

 

「ハリー。相手から距離を取って魔法を使うのはいい判断だ。最初にエクスペリアームスを選んだのも悪くない。あとは、それを無意識で出来るようにしよう。相手の視線や杖の動きに注意していれば、呪文をかわして撃つことも出来るようになる。君の戦略は間違ってないよ。あとは、練習あるのみさ」

 

 ビストは話をしながらはハリーの杖を見た。ハリーの杖は、彼が今まで見たなかで最も珍しい杖の一つだった。

 

(柊に……不死鳥の羽根?!柊は幸運を呼び寄せるとは言うけど、不死鳥の羽根なんて見たことがないぞ!!

感情的で不安定な人間を好む杖、か……)

 

 ビストが持つ杖の知識は正しかった。ハリーの内面は感情的で不安定なタイプの魔法使いだったからだ。

 

(この子も将来が楽しみだけど……注意が必要だな。決闘術は少しずつ教えようか)

 

 精神面に不安要素がある人間に危険な魔法……特に、カースなどは軽々しく教えられない。バナナージはハリーの能力を高く評価した一方で、ハリーには基本的なチャームやヘックスから教えることにした。その方がハリーの成長のためになると思ったからだ。その判断はシリウス·ブラックとも同じものだった。

 

 ハリーはバナナージがそんなことを考えているとは知らず、悔しさを滲ませていた。

 

(また負けた……ドラコだけじゃなくて、ロンにも……僕に何が足りないんだ?)

 

 正々堂々と決闘をして、完膚なきまでに負けた。ハリーは敗北を受け入れて、ロンの言葉に従わなければならなかった。最初からそういう約束だった。ハリーが負ければハリーのマグル差別を撤回するし、ハリーが勝てばロンのマグル好きを改めるという条件で、ハリーとロンは本気の決闘をした。そして、ハリーは負けたのだ。

 

「いい戦いだったよ。両者向かい合って。互いの健闘を讃えて、礼!」

 

 ハリーはロンに綺麗なお辞儀をした。それはアズラエルに教わったものだった。ハリーの心の中には、マグルに対する恨みが渦巻いていたが、ロンとの約束を守らなければならなかった。誰のためでもなく、ハリー自身のために。

 

 決闘が終わったあと、ハリーはロンと握手して言いづらそうに言った。

 

「……君が正しいってことを認めるよ」

 

 ロンはほっとした顔をして言った。

 

「じゃあ、これでもう変な考え方はやめるって―」

 

 安堵した顔のロンに、ハリーは言葉を被せた。

 

 

(約束は守る。守るよ?……今はね)

 

 

 ハリーの負けず嫌いで感情的な部分は、ロンに負けたままでいることを許さなかった。

 

「一ヶ月後にここでまた勝負しよう。それで僕が勝てば一勝一敗でイーブンだ。それなら僕が考え方を改める必要はないだろ?」

 

 

 ロンはぽかんと口をあけて、そして怒った。

 

「お、お前全っ然反省してねえじゃねぇーか!!」

 

「諦めろよロン。ハリーは負けず嫌いなんだ」

 

 ザビニがニヤニヤと笑いながらロンと肩を組んだ。

 

「何だ君たち。何か賭けでもやってたのか?」

 

 

「いいえ、バナナージ先輩。何もなかったんです」

 

 バナナージに説明するハーマイオニーは満面の笑みだった。ハリーもロンも、前よりも口喧嘩をすることは多くなるかもしれない。それでも、前よりも距離が縮まった悪友としてやっていける。そんな気がしたのだ。

 

「ハリーが負けたのは残念だけど、これで僕たちも元通りだね」

 

「まぁ……いいでしょう。ハリーが暴走しても、次もきっとロンが止めてくれます」

 

「みんなして俺のこと何だと思ってんの?!」

 

 アズラエルはロンに負担を丸投げした。こうしてハリーたち六人は、決闘クラブにも顔を出すようになった。魔法探求会としての活動は、決闘クラブとしての活動と重複することが多くなった。その中で、ハリーたちはめきめきと呪文の腕を上達させていくのである。

 




ハーマイオニー→石化、武装解除、レヴィオーサその他多種多様な呪い
ハリー→武装解除、レヴィオーサ、インセンディオ、ボンバーダなど(武装解除と浮遊魔法以外は対人戦封印)
ロン→武装解除、なめくじの呪い、レヴィオーサ
自分がスリザリンの三人の立場だったらハーマイオニーを相手にするのも嫌だけどロンだけは怒らせたくないと思う。
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