スリザリンではもしかして きみは真の友を得る
スリザリンのテーブルについてから、ハリーは監督生に対してお辞儀をし、痩せたノットという少年の隣に座った。そのとき、すでにノットの隣に座っていた少年が席を立たされていたのでハリーは彼に申し訳ないと思った。
スリザリンの寮生たちは一見すると落ち着いた雰囲気で、実際にはチラチラとハリーの顔の、髪の毛で隠された額の傷を見ようとしていた。それでもスリザリン生は好意的にハリーを受け入れたが、それを見る周囲の三つの寮生たちは友人たちと囁き合いながらハリーのことを見ていた。ハリーは、三つの寮から嫌われているような気分がしてひそかに不信感を抱いた。
(……そんな目で見なくてもいいじゃないか)
三つの寮生たちはまるで、ハリーがなにか悪いことをしたかのようにハリーを見ていた。確かにハリーは規則違反をしたかもしれないが、誰かを傷つけたわけではない。確かにスリザリンに組分けされたが、どこに組分けされようとハリーの自由のはずだった。
ブレーズ・ザビニという、まるで映画のなかから出てきたような整った顔の黒人男子がスリザリンに組分けされ、ハリーの隣の席に座る。彼は例によってハリーの顔を、額につけられた傷を見ようとしていたが、薄く馬鹿にするように笑った。
「あんまりいい顔じゃねえな、ハリー・ポッター」
魔法界がマグルの世界より優れていると断言できる点のひとつに、肌の色での差別はないということが挙げられる。マグル的な価値観やマグルの世界とあえて距離をおくことで、差別的な視線を受けずに育つことができた子供も確かにいる。
その結果、ザビニは人の痛みに鈍感で、控えめに言って性格が悪い子供になっていたが。
「ヒーローっぽくなくて悪かったね。僕は君みたいなイケメンじゃないけど、魔法はそこそこ出来るよ。よろしく、ブレーズ」
「そりゃあ、スリザリンはヒーローじゃねえ。ヒールさ」
このときのザビニは、どうやら年頃の子供が罹る病気になっていた。英雄よりも、悪役のほうが自由でかっこいいと心の底から信じていた。スリザリンに組分けされたのも、最高にカッコいいワルになるためだった。
ハリーは不当な罵声を受けるのは嫌だったが、歯の浮いたようなお世辞を受けるのにも落ち着かない気分になっていた。ハリーに向けられていたお世辞のほとんどはハリー自身の行動に関わらない、赤ん坊の頃に生き残ったらしいということについてで、ハリーについて適正な評価を下したのはロンとザビニで二人目だった。
ハリーはドラコともなにか話をしたかったが、まだ組分けは終わっていない。徐々に少なくなっていく新入生たちの姿を見ながら、スリザリンのテーブルだけ人数が少ないことに気がついた。
「……あんまりスリザリンに来てくれないね」
「スリザリンに入れるのは、選ばれた魔法使いだけさ」
ザビニがそう言った。混血でありながらスリザリンに選ばれた自分は、それこそ純血でスリザリンの魔法使いよりスリザリン生としての才能があると信じていた。
ウィーズリー・ロナルドの名前が告げられると、スリザリンのテーブルから揶揄するような下品な笑い声が響き渡った。ロンは一刻も早く組分けを終わらせようと、真っ赤に染まった耳が隠れるほど深く帽子をかぶった。
数秒の間のあと、組分け帽子は高らかにグリフィンドールへの組分けを宣言した。
ハリーはスリザリンで唯一、ロンに対して拍手した。
ハリーの拍手はスリザリンで浮いていたが、ハリーはそれでも構わなかった。ザビニやノットはなにかいいたそうな目でハリーを見ていたが、ハリーはそれに気付かないふりをした。
最後の生徒がスリザリンに組分けされると、いよいよ宴の始まりだった。といっても、ハリーには食事を楽しむ余裕はなかった。年齢や性別を問わず、スリザリンの生徒と挨拶を交わさなければならなかったからだ。ハリーの話す中流階級の英語ではなく、洗練された上流階級の英語で挨拶してくる生徒たちは、はじめのうちはパーキンソンだのグリーングラスだのといった、ドラコが自慢していた聖28一族の子供たちで、次第に知らない家の子供たちの名前になっていった。
ハリーは愛想良く、ときにはジョークを混ぜて話をしたが、全員の名前を覚えるのは無理だなと思った。記憶にとどめておくのは、良く話をする同年代の子だけにしようと思った。
ハリーがやっと子牛のソテーを口に運んだときには、校長席にはアルバス・ダンブルドアがついていた。ダンブルドアは学校内に通ってはいけない場所があることや、森への侵入を禁ずること、夜間の外出を禁止することなどを伝えると、暖かいベッドでゆっくりと眠るように生徒たちに伝えて宴は終わりを告げた。
スリザリンの談話室は、なんと城の地下にあった。新入生を先導する監督生が告げたピュアブラッドという合言葉によって、談話室への扉は開かれた。
するとそこに広がっていたのは、穏やかな緑色を基調とした高級そうな調度品で整えられた談話室だった。ふと窓の外を見ると、琥珀色の魚が窓の外を泳いでいるのに気がついた。
監督生の女生徒は、スリザリンについてこう締め括った。
「貴方たちの中には、この中にスリザリンらしくないと思っている生徒がいるかもしれないわ。でも、そう判断するのは早計よ。サラザール・スリザリンが認めた狡猾さや信念、素晴らしい魔法への才能が、貴方たちには備わっているの。それを認めて、仲間として団結することが、私たちの役割なの」
さらに、ガフガリオンという男の監督生はこうも付け加えた。
「俺たち上級生が、スリザリンの談話室で軽い冗談で言い合っている身内のノリを談話室の外で出すんじゃあねえぞ。
必ず後悔する。
公私の区別はきっちりつけて、今年もスリザリンに優勝をもたらしてくれ。期待しているぞ、新入生諸君」
そしてハリーはやっと、寮のベッドで休むことができた。ハリーの同室はザビニと、ブルーム・アズラエルというブロンドの金持ちそうな少年と、ファルカス・サダルファスというスリザリンにしては少しみすぼらしい男の子だった。それでもこの中では、ハリーがもっともみすぼらしかった。
スリザリン内にも、明らかな純血一族とそうではない一般家庭の出で序列の差はあるらしい。ハリーは、聖28一族の誰とも同じ部屋にならなかったが、ドラコがハリーのほうを羨ましそうに見ていたのに気がついていた。
部屋に入って、ザビニやアズラエルが持ち込んでいた高級そうな持ち物の数々を見て、一瞬ハリーは自分がいじめられるのではないかと身構えたが、その心配は杞憂だった。アズラエルやファルカスは、ハリーがどうやって鼠を見破ったのか知りたがったし、ハリーは曖昧に笑って質問をのらりくらりと受け流しながら、興味がないふりをしながらこちらを見ているザビニにヒントを出すつもりで愛蛇のアスクレピオスに蛇語で語りかけた。
『全部君と、君を連れてきてくれたハグリッドのお陰なんだよね。僕ってズルしてる?』
『褒美に鼠をくれるかい、ハリー?』
『いいよ。スキャバーズみたいな、でかいのをあげる』
部屋の友人たちは顔を見合わせて、ハリーがどうやって鼠を見破ったのか悟った。ハリーは、悪戯っぽく笑ってこう三人に頼んだ。
「友達のよしみで、このことは黙っててくれるかな。
蛇語って、あんまり普通ではないみたいだし」
真っ先にファルカスが頷き、アズラエルも仕方ないねと笑った。
「ありがとう、ファルカス、ブルーム」
話をしてみると、第一印象よりも善い人間であることは多い。ハリーを気遣ってか、二人はいたずらに蛇語のことを喧伝しないと約束した。
しかし、ザビニはそれを喧伝したくてたまらないようだった。
「蛇語使いなんて最高にワル……いや、クールじゃねえか!何で隠すんだよ!」
「変な目で見られたくないし……」
「そう言うやつは蛇語で脅せば一発で黙るぜ。やろうぜポッター!!スリザリンで天下取れるぜ!!」
結局ハリーは、自分にみんなを脅すつもりはないし、アスクレピオスが穏やかに成長するためにも、そういう虐めをするつもりはないということを説明しなければならなかった。それを聞いたザビニは不満そうだったが、友達との間だけの秘密だというと何だかんだで機嫌を直した。そして、寮の仲間にならいいだろう、という妥協点を見出だしてハリーも折れた。
スリザリン生にいい印象が持たれない原因のひとつに、寮生にいじめっ子が多いという周囲の三寮生からの視線がある。これは偏見かもしれない。
しかし、偏見ではない事実もある。金や権力や、容姿や、あるいは生まれや、魔法の才能を笠に着て他人を虐める人間のクズは、一年生から七年生までのスリザリンに一人はいる。そういう人間に対抗するために他の寮生は結束し、スリザリン内の生徒たちは身内のスリザリン生を庇って対応するので、しばしば寮ぐるみでの対立へと発展することがある。
ハリーは、スリザリンには悪目立ちするいじめっ子がいるという純然たる事実をこの時知るのだった。
ほぼオリキャラのザビニくんとオリキャラ登場。
ザビニくんは原作だと死食い人を揶揄してたのに映画で役者の都合て死食い人になったのは素直にかわいそうでしたね……
この二次創作では何かの間違いで原作でもそうなりかねない危うさがある生徒だと思って描写してます。
オリキャラたちの名前はゲームやらアニメやらからそれっぽいやつを拾ってます。