『皆、蛇の良さをわかってないんだ。君のような蛇と話せるってことを変なことだって思い込んでるんだよ、アスク』
『ハリー以外のヒトは俺たちの言葉を知らないんだって?教えてやればいいじゃねえか』
『皆、英語さえ話せればそれでいいって思ってるんだよ』
ハリーは寮の部屋でアスクレピオスを腕に纏わせながら話しかけた。アスクレピオスは、チロチロと舌を出しながらザビニの指をなめていた。ザビニはそっとアスクレピオスに餌を差し出した。
「……これは僕の勘違いか、単なる思い込みかもしれないんだけどさ」
ハリーは今度はアスクレピオスではなく、ザビニに話しかけた。
「あのタイミングでジャスティンが狙われたのは、僕に犯人の座を擦り付けるためだよね」
「混血の魔法使いがスリザリンの継承者なんて、スリザリンの純血主義からしたら赤っ恥もいいところだと思うんですけどねえ」
アズラエルは皮肉を交えて話すが、その言葉にはいつものような力はない。アズラエルは、この事態を深刻に捉えていた。
「噂が広まってから実行するまでが早すぎるぜ。この事件の犯人はイカれてやがる」
「無駄に目立つ僕なら罪を擦り付けやすいと思ったのかな。事件がこうも連続してくると、最悪『怪しい』とか『その場にいた』ってだけで容疑者になりかねないけど、僕はちょうど蛇語使いだもんね」
「疑わしきはまずは疑ってから無実を証明するのが魔法使いの原則ですからね。バナナージ先輩やハーマイオニーのお陰でハリーはギリギリ黒のグレーだと思われてますけど、もういつ犯人に仕立て上げられてもおかしくありません」
アズラエルの言葉は真実だった。一部の生徒たちがハリーを信じてくれていても、大勢の生徒たちはハリーが犯人だということにして、安心したいと思っているようだった。
「やられっぱなしは嫌だぜ。こっちからもやり返してやらねえと状況は良くならねえ。なんか案とかねえのかよ?」
ザビニが言うと、ファルカスは腕を組みながら言った。
「元々ハリーに恨みをもつ純血主義で、ハリーを追い出したいと思ってる奴には心当たりがあるよ。マーセナスを僕たちで調べてみようよ。あいつから何か情報が得られるかもしれない」
ファルカスの提案でハリーたちは談話室にいたマーセナスを観察した。マーセナスはここ最近苛立ちを募らせていたが、今日は監督生のマクギリスに愚痴を溢していた。
「だからさぁマッキー。純血主義は大事だけどさ、俺は今は受験勉強に集中したいんだよ。マッキーだって分かるだろ?」
「うむ……しかし、本当に君ではないのか?」
「俺にそんだけの魔法の腕があったら、将来のために全力で勉強して試験でOを取ることに使うね」
「っていうか、ハッフルパフの子が石にされたときマーセナスは私と図書館で薬学の問題を解いてたから。マーセナスが魔法をかけるのは無理よ。マダムが証言してくれるはずだけど」
「……ったく。何が継承者だよ。こっちはそれどころじゃねぇんだっての」
マーセナスは周囲のスリザリン生徒たちの疑いの目に苛つきながら、呪文学の問題に視線を戻していた。マーセナスの態度が本物か偽物かはともかく、イザベラ·セルウィンやマダムの発言には一定の信頼性があった。ハリーたちは犯人へと到達するための手がかりを得られずにいた。
***
スリザリン生たちも、学校全体を覆う重苦しい雰囲気と無縁ではいられなかった。コリンに続き、ジャスティンという被害者が出たことを学校は重く受けとめ、秘密の部屋事件が解決するまでクィディッチの試合は無期限の延期となってしまった。キャプテンのフリントは意気消沈して練習をせずに勉強をするようハリーたちに告げた。
「……あんなキャプテンははじめて見たぜ」
エイドリアン·ピュシーは落ち込むフリントがユニフォームを着替えて教科書を手にしている姿を呆然と眺めていた。デリックたちはもっと過激に、何でクィディッチが中止にならなければいけないのかと憤っていた。
「穢れた血なんかのことを気にしてクィディッチを止めるなんて馬鹿げてるぜ、そうだろ?学校に抗議してくれよ、ドラコ」
「いえ、父上も継承者が捕まるまでは大人しくしているようにと仰っていて……」
「そんなの!!穢れた血だけの問題だ!俺たちスリザリンの生徒は全員無事じゃないか!!」
ハリーはデリックがそうドラコに詰め寄るのを見かねて割って入った。
「僕らスリザリン生がみんなそういう考え方でいるから、こんなことになったんじゃないでしょうか」
ハリーはそう捨て台詞を吐いて、ドラコを連れてクィディッチ競技場を後にした。デリックはそんなハリーの背中に怒りの言葉をぶつけた。
「お前だって腹が立ってるだろう!あいつらはお前を裏切ったんだぞ!去年お前がどれだけホグワーツのために頑張ったのか連中は知ってるはずだ!!!」
クィディッチの競技場ですら、ハリーたちは何者かの掌の上で踊る駒でしかない。ハリーは単にその憤りを先輩にぶつけただけで、生産的なものではなかった。
デリックだけではなく、大勢のスリザリン生たちは不満を溜め込んでいた。それはマグル生まれの生徒たちが感じている恐怖に比べれば何てことはない逆恨みのような感情だ。スリザリン生たちは襲われていないのだから。
『どうして俺たちが、後ろ指を指されなきゃいけないんだ』
ハリーはスリザリン生たちがほとんどみんなそう考えているとわかった。元々純血主義を信仰していたパンジーですら継承者の登場を喜んでいるような態度こそ取っていたが、それはそうしなければ自分の立場が危ういからだ。ハリーのようにスリザリン生でありながら、そのなかで例外的な行為ができる生徒は少ない。仮にスリザリン生が他の寮生と仲良くしたければ、スリザリン生らしく陰ながら気付かれないように行動することになる。
もちろん他の寮の子供たちにしてみれば、そんなことは知ったことではない。虐めの被害者の視点に立てば、虐めっ子たちはもちろん、その周囲にいる傍観者も加害者なのだ。善意の傍観者に徹するスリザリン生がいたとして、それが他のスリザリン生と見分けがつくはずもなかった。
面と向かって好意を示さない相手を信頼するのは難しい。マクギリスのように人柄がわかりやすい男はバナナージのような友人に恵まれたが、そうではないスリザリン生たちは周囲から避けられ、恐怖の視線を浴びるという被害を被っていた。
「……僕だって他の寮の皆に対して怒ってます。だから僕は、真犯人を見つけ出そうと思ってます」
ハリーはデリックたちのほうを振り返ってそう宣言した。それは単なる思いつきではなくて、ハリー自身がそう決めたことだった。
(こんなことが続いちゃいけないんだ。スリザリンの皆のためにも)
「スリザリンの継承者だぞ!スリザリンを裏切るって言うのか!?」
「違います。僕は僕のために、自分の濡れ衣を晴らしてクィディッチをするために邪魔物を消すだけです」
ハリーの言葉にデリックは何を思ったのか、恐怖を込めてハリーを見た。ハリーは今度こそデリックに背を向けて競技場を去った。
***
ハリーたちは決闘クラブでバナナージからプロテゴ(防御魔法)を教わっていた。バナナージは座学の成績も良く、少し前から教師のようにハリーたちにプロテゴを教えてくれていた。今日はその復習もかねてプロテゴの理論からおさらいをしていた。
「プロテゴは魔法の障壁を作って維持することで、大体の魔法を防いでしまう魔法だ。決闘において、この魔法があるとないとで勝率は大きく変わる。さて、何で大概の魔法を防いでしまうのか分かる人?」
「はい!」
「ほい、ルナ」
「不思議な力で魔法を異世界のナルニアに送るからです」
ザビニやハリーはくすりと笑った。バナナージ先輩も苦笑した。
「残念だけど違うんだなぁ。他に分かる人?……グレンジャーさん」
「はい。魔法は杖から放出されたとき、魔法の効果を閃光の状態で放出するものが多くあります。ハリーが良く使うエクスペリアームズなどがそうです。多くの魔法は、閃光状態で魔法の効果を保存して放出されます」
ハーマイオニーはすらすらと教科書の内容を述べた。プロテゴは六年生で習うはずの魔法だが、彼女はその魔法の構築のための計算式まで完璧に把握していた。ハリーたち六人やマクギリスが見守るなか、黒板に魔法を成立させるための計算式が書き込まれていく。
「ですが、この閃光状態の魔法が対象に到達する前に魔力を込めた障壁で閃光を阻むことで、魔法の発動を防ぎ、閃光を跳ね返すことができます」
ハーマイオニーの解説にバナナージは満面の笑みで頷いた。
「そうだ。まさかそこまで解説できるなんて驚いたよ。グリフィンドールに一点あげようか。生物や障害物を盾にするようなやり方では防げない魔法も、その発動前にプロテゴが防いでくれる。決闘においてとても有効な魔法だよ」
「じゃあ何でみんなこれを習得しないんすか?」
ロンの質問に、バナナージはいい質問だと言った。
「実はこのプロテゴ、大人でも使いこなせる人は少ないんだ」
「どうしてですか?」
ハリーが聞くと、バナナージは一つ一つ丁寧に説明してくれた。
「一つは持続時間の問題だね。プロテゴを発動してから効果を継続させるまでの時間は、込めた魔力量や本人の習熟度に左右される。長時間プロテゴを持続させるのは熟練者じゃないと難しいし、最初はもって数秒ってとこだ。プロテゴばかりを練習するのは時間の無駄だって考える人や、あえてプロテゴを覚えないって人もいる」
「有効な自衛手段を覚えないなんて非合理的だわ」
ハーマイオニーの言葉に頷くと、バナナージは言葉を続けた。
「二つ目の理由が、通常のプロテゴで防げないカースクラスの魔法があるってことだね」
そしてバナナージは黒板にチャーム、ジンクス、ヘックス、カースという魔法の種類を書いていった。
「プロテゴの登場と共に、魔法使いの魔法の分類は見直されていった。強力な魔法生物に対抗するために元々あった魔法は、貫通力を高めるために魔力の増強効果が魔法自体に組み込まれている。そういう魔法はプロテゴでは減退できるだけで、発動を防ぐことはできない。だから、プロテゴの防御力以上の魔法はカースクラスに分類されているんだ。そしてまだ他にも理由はある。分かる人はいるかな?」
ハリーとハーマイオニー、ファルカス、ルナが挙手し、ファルカスが指名された。
「ファルカス、どうぞ」
「プロテゴの隙をつかれるからですか?」
「隙?」
「……プロテゴで守りを固めても、持続時間に限りがあるんですよね。だったらプロテゴをしたとき、周囲に変身呪文で罠を仕掛けたりしながらプロテゴの切れ目で勝てるように状況を整えればいい」
バナナージはうんうんと頷いた。
「そうだね。いい意見だよ。スリザリンに一点。自分がプロテゴを使うってことは、攻撃できる可能性をその瞬間捨てるってことだ。熟練者はその隙に自分が有利になるように準備を整える。だからプロテゴを使う手間で他の攻撃手段をしたほうがマシって考え方もある」
だから、とバナナージは言葉を結んだ。
「この魔法は今の君たちには早いかもしれない。最近だと出来たのはセドリックだけで、五年の先輩だってできないやつは多いくらいに高度な魔法なんだ。今できなかったとしても気負わずに、他の対抗手段を考えていろんな魔法を覚えていけばいい。そうすれば、プロテゴを使うための魔力の操作もできてくるよ」
そしてバナナージの指導によって、ハリーとハーマイオニーはプロテゴの基礎を習得することができた。維持できたのは数秒で、すぐに消えてしまったとはいえマクギリスのチャームを跳ね返してみせたのだ。ルナやアズラエル、ロンはプロテゴを保護障壁するための魔法の制御にてこずっていて、ザビニやファルカスは障壁の形に魔力を整えるのに苦戦していた。
(……やった。……僕はよくやったけど……これだけじゃダメだ)
ハリーは内心で焦っていた。メドゥーサを透明化させられる相手に対して、数秒のプロテゴだけではな心許なすぎる。ハリーはチラリとプロテゴを習得してマクギリスから感心されていたハーマイオニーを見た。
もしもハリーが継承者から罪を擦り付ける相手として狙われているとすれば、ハリーに近しい人間を襲う可能性は高い。そして、ハリーがもしも継承者なら、ハーマイオニーを放ってはおかないだろう。
(次はハーマイオニーが狙われるかもしれない)
ハリーは内心で胸騒ぎを起こしていた。この考えは馬鹿げた想像なのかもしれないが、そう思うたびに、額の傷がハリーに警鐘を鳴らすかのように傷んだ。ハリーはプロテゴを習得した今日、ついに決断してハーマイオニーに言った。
「ハーマイオニー。ちょっと二人だけでしたい話があるんだけど、この後空いてるかな」
「え?ええ、私は大丈夫だけど……」
「何だ?ついに告白か?」
「告白?ホント?」
(何いってんだよ……今はそんな状況じゃあないだろ)
ザビニが冗談で言った言葉に、ルナの目が興味津々という様子で輝いた。ハリーはそんな二人を内心で少し鬱陶しく思いながら否定した。
「秘密の部屋についてちょっと話したいんだよ。全く確信がある訳じゃないから、ハーマイオニーに相談したいんだ」
スリザリン生のアズラエルやファルカスは意味深に顔を見合わせた。マクギリス·カローはあからさまにほっと胸を撫で下ろしていた。
「じゃあ俺も一緒に聞いていいか?」
ロンはそう申し出たが、ハリーはごめんねと断った。
「馬鹿馬鹿しい話しかもしれないし……」
「何だよー。そういうバカな思いつきでも教えてくれよ。面白そうじゃんかー」
「話してもいいことだったら後で話すわ、ロン。……バナナージ先輩、決闘クラブの教室をお借りしてもいいですか?」
「魔法でしっかりと施錠することを忘れないようにな。……それから、分かってるとは思うけど絶対に一人にならないように」
バナナージ先輩は本当にハリーのことを疑っていないようで、スリザリン生とマグル生まれの女の子を二人だけで残すという暴挙を許した。ロンはアズラエルとザビニに引きずられながら恨みがましい目でハリーを見ていた。
教室に自分とハーマイオニーしかいなくなってから、ハリーはハーマイオニーにお礼を言った。
「ありがとうハーマイオニー。僕を信じてくれて。ロンもそうだけど、この状況でも君たちが友達でいてくれて、僕は……っていうか、僕だけじゃなくてザビニたちはみんな救われてる」
「そんなことは当たり前のことだわ。だって、あなたたちが継承者じゃないってことは私とロンが一番よく知ってるもの。今さら水くさいわ。前置きはもういいでしょう、ハリー?秘密の部屋についての話って?」
「うん。それなんだけどね。ちょっと早いんだけど、君にクリスマスプレゼントをあげたいなって思って」
そう言って、ハリーは鞄から包みを取り出した。
「……これは何?」
「スニーコスコープ。カース級以上の闇の魔術とか闇の魔法使いとか、あとは闇の魔法生物が側にいたら知らせてくれる。アズラエルの伝手を借りて買ったんだ」
ハリーはハーマイオニーに携帯型のスニーコスコープを手渡した。ハーマイオニーの手に収まった砂時計のような形状の箱は、何も言わずに彼女の手に収まっている。
「ハリー、こんな珍しいものを……」
「これは単に気休めでしかないよ。僕は大人じゃないから、人の内面まで見透かすような上等なスニーコスコープは買えなかった。それは単なるおもちゃに過ぎないけど、それでもないよりはマシだと思って」
ハーマイオニーにお礼を言われる筋合いはなかった。スリザリンの継承者がいなければハーマイオニーは今も楽しく授業を受けていたはずだが、今のホグワーツは誰もがスリザリンを恐れていて、授業でも笑みを浮かべる生徒はほとんどいなかった。
「それで、ここからが本題なんだ。ハーマイオニー、秘密の部屋の怪物がもしも君を襲ってきたらどうする?」
「……私は、プロテゴで身を守るわ。スニーコスコープがあれば、石になる前にプロテゴを唱える猶予があるかもしれないもの」
「それだけじゃ足りないと思うんだ」
ハリーはハーマイオニーの目を見て、本気で訴えた。閉心術を使うことはできず、ハリーの額からは汗が流れていた。ハリーの額の傷がずきずきと傷んだ。
「……ハーマイオニー。相手はカース級以上の怪物なんだ。君が身を守るためには……君もカースを覚えるべきだと思う」
ハリーはついに本題を切り出した。
(これしかないんだ)
と、ハリーは思っていた。ハーマイオニーを守るためには、手段を選んでいる場合ではないと思った。スリザリン生らしく、どんな手を使ってでも守れるだけの力が必要で、しかしハリーは寮も性別も違う。いつもハーマイオニーの側にいるわけではない。
「ハリー!?何を言っているの!?」
「……これを見てくれ、ハーマイオニー」
ハリーはハーマイオニーに無理やり持ってきたノートを見せた。変身魔法で普段は隠蔽していて、ハリー以外の生徒には単なるコンジュレーションの数式にしか見えないようになっている。しかしハリーが見せたノートには、確かにカース級以上の魔法……闇の魔術が書かれていた。ハーマイオニーの明晰な頭脳は、それが闇の魔術であることも、そしてその使い方も、制御の方法も理解したはずだ。ハーマイオニーの頭脳はこんなときでも知識を吸収するという使命を果たしていた。
(そ、そんな……)
「ハ……ハリー。あなた……どうしてこんな魔法を……?」
ハーマイオニーははじめてハリーに恐怖を抱いたように言った。
「去年ブラッジャーに狙われていたとき、対抗手段を覚えるために先生の許可をもらっていろんな本を読んだんだ。その中にたまたまカースの本もあった」
ハリーは嘘はつかなかったが、全てを話したわけではなかった。ハリーにカースの本を薦めたのは故クィリナス·クィレル教授で、彼は悪魔に魂を売り渡した闇の魔法使いだった。
「自分でカースを撃って試してみたけど、そのスニーコスコープはちゃんと反応したよ。……だから、君もカースを撃って練習した方がいい」
「そういう問題じゃないわ!カースなんて一歩間違えば大惨事を引き起こす魔法なのよ!法律で厳しく制限されてもいるわ!ハリー、貴方は自分が何をしているのか分かっているの?!」
ハーマイオニーはハリーのためを思って抗議した。ハリーが闇の魔術に没頭するかもしれないということは、ハーマイオニーにとっても見過ごすことはできない事実だった。
「ハーマイオニー、僕は死なないために……殺されないためにそれを学んだんだよ」
ハリーはハーマイオニーの言葉に心を痛めながらも彼女を説得しようとした。
「強力なメドゥーサかバジリスク相手に、万が一反撃の機会を与えたら君は死んでしまうかもしれない。カースだって人に撃てば犯罪だし、三種類のカースは人に使うだけで終身刑だってことはファルカスから聞いて知ってるよ。だけど、その三種類以外は、自分の身が危ういときは緊急避難として黙認されるって過去の判例が出てるんだ」
ハーマイオニーはハリーの言葉にかすかに心を動かされかけていた。彼女はパラパラとハリーのノートを見て、その内容を暗記した。
「命がかかっているんだ。僕も自分の身を守るために、みんなを守るためにそれを使わなきゃいけないかもしれない。使わない方がいいってことは僕だって知ってるよ。だけど、使わずに死んでしまったり石にされたら……」
「……ハリー。貴方が私のためにこのノートを見せてくれたことは分かったわ」
ハーマイオニーはノートから顔をあげると、ハリーの言葉を遮った。彼女は出現呪文で鳥を出現させると、杖で鳥を捉えてカースを唱えた。
「エクスパルソ(爆破)」
ハーマイオニーの杖から青い閃光が迸り、飛行する鳥に直撃した。その瞬間、大爆発か起きた。鳥は粉々に砕け散り、青い炎に包まれて骨すら残さず燃え尽きた。
「……すごいね、一発だよ。ボンバーダじゃこうはいかない」
ハリーはハーマイオニーの手腕を褒め称えた。しかしハーマイオニーはにこりともせず、決意に満ちた目でハリーを見た。
「なら次だね。いい魔法があるんだ」
ハリーは練習した魔法をハーマイオニーになら習得できると思い、次の魔法をと思った。これでハーマイオニーは安全だと、ハリーは思い込んだ。
「ハリー、私はこの魔法以外は使わないわ。少なくとも今は」
そしてハーマイオニーはつかつかとハリーに歩み寄って、ハリーの頬を軽くはたいた。
「……え?」
ハリーは自分がどうしてハーマイオニーに殴られたのか分からなかった。
「ハリー、自分が何を言っているのか分かっているの?プロテゴ·ディアボリカなんて……そんな危険な魔法を一人で練習して。もしも失敗していたら、貴方が死んでいたかもしれないのよ?」
ハーマイオニーの目には涙が浮かんでいた。ハリーは何も言い返せなかった。
「で、でも……」
「シリウスさんはこの事を知っているの?」
「……それは……」
ハリーはハーマイオニーに弁明することはできなかった。ハーマイオニーは深く決意をした目でハリーを見て言った。
「私、シリウスさんに手紙を書くわ」
「や、やめて。ちょっと待って、ハーマイオニー!!」
「いいえ!待ちません!ハリーは少し反省すべきだわ!」
ハリーが止める間もなくハーマイオニーは教室から出ていってしまった。ハリーはハーマイオニーを守るために教室を出て、グリフィンドールの談話室の前で大勢の生徒たちからハーマイオニーを泣かせたと批判され、追い返されてしまった。
闇の魔術オタクが人に好かれようなんて思うなよ!!
無免許で銃の使い方を知って銃を持ってるようなもんで本人にとっても周囲にとっても危ないやつ過ぎるんだよ!!
……なぁスネイプ?