蛇寮の獅子   作:捨独楽

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ブレーズ·ザビニとかいう振れ幅の大きいキャラ
原作だとデスイーターではなかったのに映画だと闇堕ちしてやがる……!


悪魔の子

 

 

 ブレーズ·ザビニは豪勢な飾り付けがなされた自室のベッドに寝転び、呆然と天井を見上げていた。

 

 

(別に……死ぬことはなかったんじゃねえかな……)

 

 一昨日、ブレーズの父親が鍵のかかった部屋のなかで息絶えていた。死んだ父親であるデギン·ザビニのことを、ザビニはあまりよくは思っていなかった。なにせ、ザビニの母親より年上の息子たちがいる資産家のマグルで、ブレーズとは血も繋がっていなかった。そして、ブレーズの義理の兄たちは明らかに母親やブレーズのことをよく思っていなかった。ブレーズは物心ついたときからこの屋敷にいたが、どれだけ記憶を遡っても7歳より前の記憶がなかった。

 

 それでも、ザビニは豪邸のなかで個室を与えられ、メイドや家庭教師もつけられ、なに不自由ない暮らしを与えられた。そんな人が、別に悪事をしたわけでもない人間が、自分の母親に殺されたという事実がザビニの心を締め付けていた。

 

 ブレーズは自分の実の母親を見た。ザビニに対して美しくあれとしつけ、マグルは下等なものだと教え込んだブレーズの実の母親は、取り乱したように自分より40歳も年齢が離れた夫の死体にすがりついてすすり泣いていた。

 

 

 その実の母親の姿が、ブレーズには醜悪なものに思えて仕方がなかった。母親は、週末の度に魔法の世界へと息子を誘い、ブレーズにこう言った。

 

「ブレーズはマグルとは違うのよ、マグルとは」

 

 

 

「あんたは誰よりも美しく、立派な魔法使いになるのよ。スリザリンで純血の魔法使いに取り入って、連中の弱みを握るの。そうすれば、魔法使いのなかで生きていけるわ。私の愛しい子」

 

 ブレーズの母親にとって、マグルは愛すべきものではなかった。踏みつけて利用し、奪うだけのものだった。少なくとも、ブレーズの目にはそう見えた。

 

 

 

 少し前のブレーズならば、マグルだからと考えないふりをしただろう。ほんの少し前、ホグワーツに入るより以前ならば。ブレーズはかつてはマグルの私立校に通っていたが、容姿がよく、習い事をしていて、おまけに魔法のアイテムが使えたブレーズにとってマグルの世界はあまりにも張り合いがなかった。勉強すらせず魔法のアイテムによるカンニングだけで満点を取っても、だれも気付きはしないのだから。

 

 

 

 ブレーズの義理の父親の死亡から一夜明けた時、ブレーズの母親は、魔法世界の警察組織である魔法法執行部の職員によって拘置所へと連行されていった。その時、わざとらしく職員がこぼした言葉を、マグルであるザビニの兄たちも聞いていた。

 

「これで七回目というわけか?まったくもって懲りない女だ。……今度は、いったいどれだけの保険金をかけたのだ?」

 

 ブレーズがその場に居たにも関わらず職員がそう発言したことは、恐らくはザビニの母親に対する罰のつもりだったのだろう。その時だけは、ザビニの母親は鬼のような形相で職員を睨み付けていた。

 

 ブレーズを見て、ブレーズの下の兄、カルマ·ザビニは悪魔の子だとブレーズに言った。上の兄であるギーレンは多額の保険金と、実の父親が残した遺産についてザビニの母親には一ポンドも与えないと言いはなった。だれも、デギン·ザビニという老人の死を悼むことは出来なくなった。魔女によって、ひとつのマグルの家が壊された様をブレーズは見ていた。自分がそれに荷担したのだと、ブレーズの兄たちは信じて疑わなかった。

 

 

 ベッドに横たわりながらそんな場面を延々と思い返していたブレーズは、自室の電話がジリジリと鳴ったことで身体を起こした。

 

 

「もしもし。ブレーズだ」

 

 ザビニ家への電話は使用人が取り次ぐことになっている。ブレーズの部屋の電話が鳴るということは、ブレーズ個人への電話ということだった。使用人たちは律儀にも、悪魔の子に対してもマニュアル通りに電話をとりついだ。

 

「もしもし。ハリーだよ、ザビニ」

 

「んだよ、お前かよ。海に行ったんじゃねーの?」

 

 電話の受話器から、声変わりしかけたかすれ声が聞こえてくる。ブレーズは、学校ではザビニという自分の姓を呼ばせていた。

 

「行ったよ。行ったけど……君のお父さんのことを聞いて。大変だと思って……」

 

「俺は大変じゃねーよ。大変なのは俺の家だよ」

 

 ブレーズは苛立ちながら電話越しのハリーに言った。

 

「なんだよ。もう皆知ってるのかよ」

 

 ブレーズはそう口に出したが、なるほどとも思った。殺人犯が逮捕されたという記事は刺激的だ。たった数日で忘れ去られるとしても、一面に載れば見映えがいいだろう。なにせブレーズの母親は、マグルの映画に出しても主役を張れるほどの美貌を持っていた。

 

「今朝の朝刊で、ね……」

 

「記者たちもご苦労なこった」

 

 ザビニはつとめて平静を装った。自分を気遣ったような声をかけてくるハリーの姿勢が癪だった。

 

(同情なんてしてんじゃねえよ!)

 

 ブレーズは、ハリーに憐れまれるほど落ちぶれたつもりはなかった。

 

「まぁ。お前が気にすることは何もねえよ。お袋は自業自得だろ。お前には言ってなかったけど社交界でも有名だったんだぜ?六人もマグルを殺してるってな。今回も、有罪になるような証拠は残してねえよ」

 

「……」

 

 電話越しのハリーが絶句したのを聞いて、ザビニは少しだけ気分が晴れた。

 

「っつーか折角海に行ったんなら遊べっつーの。俺のことなんか気にしてて、お前は楽しめてるってのかよ」

 

「いや、そんな気分にはなれなくて」

 

 

「楽しめよ。お前がホグワーツの医務室で入院してたとき、俺はトレイシーとデートして楽しんでたんだぞ。お前が死にかけた後にだぜ」

 

「そりゃ、きみはモテるから」

 

 ブレーズはこれからもトレイシーが自分のそばにいるとはおもわなかった。ほとんど虚勢を張って、普段通りの自分を出そうと心がけた。

 

「……大体な。悪いことして捕まるなんて、考えるまでもなく当たり前のことじゃねぇか。なんにも珍しいことじゃねえよ。なんだよ、大騒ぎしやがって……!」

 

 

「でも、きみのお母さんだよ。ザビニだって大変だったんだ。そんな風に、悪くいうことは……」

 

 

「皆が皆、お前の親みてえに立派じゃねえんだよっ!ガタガタ言うなっ!!」

 

 ブレーズはついに怒りを爆発させて受話器を叩きつけた。ハリーからの電話を打ち切ってしまい、かすかな罪悪感と少しの解放感を感じていたザビニは、その日の晩にハーマイオニーから電話をかけられてしまい途方に暮れた。

 





マグルの配偶者に魔法をかけるとか恋人に魔法をかけることはよくあることなんだと思います(某お辞儀の両親を見ながら)。

でも以前に6回も不審な死に方してりゃそら目をつけられる。
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