蛇寮の獅子   作:捨独楽

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ホグワーツ内部ではテレポートの類いはハウスエルフでもなければ出来ないという設定ですが、ダンブルドアならその制限を外したアイテムも製作可能ということでよろしくお願いします。火消しライターのテレポートの機能は原作にもあるし。


LOVE (2)

 ハリーはスリザリンの談話室までの帰り道で、ダフネ·グリーングラスとすれ違った。ダフネは豊かな黒髪をかきあげ、ハリーと遭遇したことに驚いたように言った。

 

「ポッター?……もしかして貴方、ルーピン先生のところにいたの?」

 

「その通り。ダフネもこれから?」

 

「ええ。名教師のお手並み拝見といったところかしら。貴方は当然うまくいったのよね?」

 

 ハリーは何とか成功したという風な態度を取り繕った。ダフネは首を横にふったハリーに驚き、まぁ、と手を口に添えた。

 

「どうも僕の頭が固かったみたいでね。馬鹿馬鹿しいイメージをもっと考えておけばよかったよ」

 

「あら。ゴリラ組にできることが貴方に出来ないなんて珍しいわね」

 

 クラブとゴイルは同じ寮の仲間ではあるが、仮にもクラスメートではあるが、ダフネからの評価は低い。ハリーだってパンジーに対する心証は良くはないのでお互い様だ。ハリーは内心で二人に黙祷を捧げた。

 

「それはクラブとゴイルに失礼だよ、ダフネ。君がうまく行くことを願ってるよ」

 

 

 ハリーはダフネが上手く行くことを願ったが、すぐに気分は沈みこんだ。リディクラスを使える人が増えれば増えるほど、ハリーは落ちこぼれということになる。何とも言いがたい葛藤がハリーを襲った。

 

 

***

 

 ハリーは次の日の授業のあとも、ボガートへの対策を考えていた。

 

(要するに。頭でイメージした内容が間違ってたんだ)

 

 バーノンの姿をしたボガートに対して何をすればいいか、ハリーは何となくわかっていた。単に馬鹿馬鹿しい姿を想像するのではなく、ハリーが最もしたいと思っていることをやればいい。

 

 しかし、ルーピン先生に対して想像したイメージを見せることは出来ないとハリーは思った。ルーピンだけではなく、他の誰にも相談することは出来ない。ハリーは自分の気持ちが暗く沈んでいくのを感じながら、魔法史のノートを取っていた。

 

 ザビニは一つくらい使えない魔法があるくらいで丁度いいと言う。ロンははじめてハリーより先に魔法を覚えたと笑っていた。確かに、使えない魔法があることはなにもおかしくないかもしれない。しかし、ハリー自身がそれでは納得できなかった。よりによってバーノンの姿をしたボガートに魔法を阻まれるということは、ハリーにとっては耐え難いことだった。そして自分がそう思うことに、ハリーは内心で後ろめたさを感じてもいた。

 

(……僕は……あの人がマグルだから怖いんじゃない。マグルだから憎いんじゃない)

 

 ハリーは、自分がバーノンやダドリーやペチュニアに対して恐怖しているという事実を認めないわけにはいかなかった。彼らをマグルという種族だと認識して、ひとくくりに魔法使いはそれよりも上だという思想に逃げて、恐怖を克服しようとした。

 

 しかし、マグルの全てをバーノンたちと同じものだと認識するのはどう考えても無理があった。意図的に考えないようにして目をそらしたって、そもそもマグルは魔法族を敵とすら認識していない。ハグリッドは出会う度にハリーの緑色の瞳を褒めてくれた。それは母親のリリーから受け継いだもので、マグルの血脈から受け継がれてきたものだ。

 

 ロンに負け、ハーマイオニーとも接して、シリウスからも教えられて。いや、そもそもマグルが魔法使いのことを必ずしも迫害するわけではないと知って分かった筈だ。マグルを憎んではいけないんだとハリーは自分に言い聞かせた。

 

 差別主義者になったところで恐怖は消えなかった。それどころか、友達との関係すら悪化した。そもそも、差別はよくないことだという常識くらいは、ある。ハリーは自分の感情の置き場がないまま、ぐるぐるとダーズリー家への憎しみを募らせていった。そして、バーノンの姿をしたボガートにリディクラスを実行するということは、マグルを差別するハリーの心を写し出すことになるのではないかと恐怖した。

 

***

 

 放課後になり、ロンとハーマイオニーはパーシーから魔法を教わるために決闘クラブへと足を運ぶ。ハーマイオニーのぼさぼさとまとまりのない髪の毛が目の前で揺れるのを眺めながら、ロンはポツリとハーマイオニーに尋ねた。

 

「なんで宝さがしをしなかったんだ、ハーマイオニー?俺らも行ってもよかったじゃないか」

 

「ロンは知らないのね、ルナに流れてる悪い噂」

 

「噂?どんなの?」

 

 ロンは首を傾げながら、ハーマイオニーに聞いた。

 

「ルナはね、レイブンクローの女子たちから虐めのターゲットになっているのよ。原因は去年、ルナがグリフィンドールの剣を抜いて目立ったことね」

 

「いやいや………夏休みが過ぎたら普通みんなそんな昔のこと忘れるだろ!?それに虐めなんて、レイブンクローの奴らがするとは……」

 

 ロンは吃驚してハーマイオニーを見るが、ハーマイオニーは残念ながらと言葉を重ねた。

 

「レイブンクロー生の嫉妬は深いのよ、ロン。ちょっと話を聞くだけでも、人より勉強ができる分だけ、人よりずっとプライドも高い子が多いって分かるの。貴方も話を聞いてみれば分かるわ」

 

「いやでも、虐めって……」

 

「……その寮らしくないというだけで、人は人を嫌いになれるの。それに一度そういう空気が出来てしまえば、流される人の方が圧倒的に多い。勉強が出来るかどうかなんて、雰囲気の前ではなんの意味もないのよ」

 

(……あー。まぁ、うん……)

 

 ロンが一年生の時の自分やハーマイオニーのことを思い出して顔をひきつらせているなかで、ハーマイオニーは腕を組みながら言った。

 

「私やロンみたいなグリフィンドール生と親しくしていることがルナのマイナスになるかもしれないの。というよりは、虐めの口実になるかもしれない。ただでさえホグズミード休暇で、私たちはルナの相手をしてあげられない時間が増えるじゃない?ハリーと親しいって噂が立てば、ルナにちょっかいをかける生徒は減ると思うの。グリフィンドールじゃなくてレイブンクロー生のルナが、レイブンクローらしい手柄を立てれば……」

 

「皆もルナを認めるって?そりゃ名案だ。レイブンクローの遺産が見つかればだけど」

 

「どう考えても見つかりっこないのは分かってるわ。だからハリーに、ルナと仲良くして貰う。スリザリン生とは揉めたくないっていう子は多いはずだから」

 

「ハーマイオニー。でもハリーと仲良くしたら、今度はスリザリン嫌いのレイブンクロー生から怒りを買うんじゃない?」

 

 ロンの指摘に、ハーマイオニーはそうね、と頷いた。

 

「これからパーシーに頼んで、クリアウォーター先輩経由でルナへの虐めを止めてもらう。ロンも頼んでね?」

 

「分かった。……ちゃんと対応してくれるかなぁ」

 

「するわよ。責任のある立場の人は、『問題がない』ということにして見て見ぬふりをしている人でも、『問題です』って指摘されれば動かないといけないはずよ。クリアウォーター先輩は監督生なんだから、仕事をしてもらわないと」

 

 ハーマイオニーとロンは顔を見合わせると、頷きあって決闘クラブの部屋へと足を踏み入れた。そこには眼鏡をかけた赤毛の首席生徒と、その彼女で、監督生のレイブンクローの女子、ペネロピー·クリアウォーターがいた。

 

***

 

 放課後にハリーとザビニ、ファルカスは珍しくドラコ、クラブ、ゴイルと連れだって移動した。ルナは、『必要の部屋』の前にいてハリーたちに手を振った。

 

「こんちは!このメンバーで行くのははじめて?」

 

「クィディッチ以外でドラコと一緒に遊んだの、森での罰則以来だね」

 

「森の罰則で遊ぶなよハリー……」

 

「それって遊んだって言えるの?」

 

 わちゃわちゃと雑談をしながら、ハリーたちはルナの先導で『必要の部屋』へと足を運ぶ。

 

「ふん。そんな都合のいい部屋があったなんてね。……しかし、レイブンクローの髪飾りがそこにあるわけがないだろう?もしも保管されていたとしても、誰かが見つけて持ち去っているに決まっている。千年間も誰一人として同じことを考えなかったとでも言うのかい?」

 

 ドラコの指摘はもっともな話だった。ハリーもそうに違いないと思った。伝説のアイテムが失われたのなら、きっとホグワーツではないどこか別の場所にあるに違いないからだ。

 

「まぁまぁドラコ。こういうのはあるかもしれないって想像しながら探すのがいいんじゃないか。書店でいい本がないか想像しながら探すのと一緒だよ」

 

「生憎、僕にはそんな時間を無駄にするような庶民的な趣味はないね。……まぁ、君に借りを返すために今回だけは付き合ってあげるよ。その馬鹿げた思い付きにね」

 

(よっしゃ!今回だけだな!!)

 

 ドラコの言葉に、ザビニが内心で喝采をあげていたことなど知るよしもない一行は、必要の部屋の入口付近まで来たところでルナにこう言われた。

 

「額の部分に大粒のサファイアが埋め込まれたティアラを想像して。レイブンクローの肖像画は知ってるよね?皆で髪飾りを考えながら部屋に入れば、きっと見つかると思うンだ」

 

「オーケー。三、二、一でレイブンクローの髪飾りを思い浮かべながら突っ込もう。皆もいいね?」

 

「分かった」「やるぞクラブ、ゴイル」「いつでもいいよ、ハリー」

 

 ハリー、ザビニ、ファルカスのトリオにドラコ、クラブ、ゴイルのトリオ。そこにルナが集まって丁度七人。数占いの知識に従えば、魔法的に最も縁起のよい人数だった。

 

「三、二、一!!」

 

 ハリーたちは言葉と共に、必要の部屋へと突入した。もしも部屋に先客がいた場合、廊下を勢いよく走るだけになっていたのだか、そうはならなかった。

 

 必要の部屋に足を踏み入れたとき、部屋には大小の様々な大きさのキャビネットが並び、ハリーたち七人を出迎えていた。外側から中が見える棚には、生物の標本が保管されていたり、金色の豪華なトロフィーが飾られているところもある。

 

 必要の部屋は、部屋自体に何か保護魔法がかけられているのか、飾られた物品には埃一つなく、窓のない部屋であるにも関わらず、カビ臭い匂いもない。ドラコは興味深そうに部屋を見渡していた。いつもの皮肉はどこへやら、今すぐに探索したそうにあちこちに視線を向けている。

 

「……じゃあ、まず、僕が部屋を回る」

 

 ハリーが言うと、ザビニは首をかしげた。

 

「いや手分けして皆で探せばいいだろ?」

 

 ハリーは自分の首に掲げたスニーコスコープを指さした。ロンがエジプト旅行で手に入れたお土産だ。

 

「それもいいけど、危険物がないか調べてからだね。スニーコスコープが反応したら闇の魔法がかけられたアイテムがあるから、その場所には赤い印をつけておく。そこには絶対に触らないってことでいいね?」

 

「ふん、随分と慎重だな、ポッター。闇のアイテムが学校にあるっていうのかい」

 

 ドラコの言葉にクラブとゴイルもうんうんと頷いたが、次のハリーの言葉を聞いておとなしくなった。

 

「これはハーマイオニーの言葉なんだけど。バジリスクがいた学校だよ、ホグワーツは。それでも安全だと思う?」

 

 その言葉に反論する人間は居なかった。学年一の才媛であるハーマイオニーの言葉が持つ魔力は凄まじく、ルナやドラコたちも含めた皆が、ハリーが部屋を一周するまで外側から見える物品を確認して回ったが、手は触れなかった。

 

 ハリーはスニーコスコープが反応する度に反応したキャビネットに魔法で赤い印をつけていったが、だんだんと反応の間隔が短くなり、しまいにはスニーコスコープが鳴りっぱなしになる棚もあった。ハリーは危険な棚から最も遠い棚から探索しようと言うと、ドラコはクラブとゴイルに最も安全な棚を探索させた。油断さえしなければ、ドラコにも危機管理能力はあるようだった。

 

「探索し終わった棚は、魔法で青い印をつけてね。二度手間がなくなるから」

 

「分かったぜハリー。じゃあこっからは別行動だな。ファル、行こうぜ。……マルフォイも来るか?」

 

「結構だよ。僕はポッターに借りを返す」

 

 安全マージンを取った上で、必要の部屋の探索は開始された。ハリーはドラコやルナと共に、高所にあるキャビネットをアロホモラ(開錠)で開いては中身を確認していった。

 

「うえー、これ二十年前の生徒のラブレターだ……二百通もある!?誰だこいつ!?」

 

「ギルデロイ·ロックハートだと?なんだ、何なんだあいつは……?」

 

「こっちのは……クィディッチチームの記念写真だね。誰か忘れていったっていうか、置いていったのかな」

 

 

 必要の部屋には、珍しい魔法のアイテムだけではなくホグワーツの卒業生たちが残した思い出の品物も数多く残されていた。ドラコは価値のあるものを選んでは満足そうに頷いていた。

 

 

「部屋に闇の物品の反応だらけだったときはどうしたことかと思ったが……こういうのでいいんだよ。学校の探検なんて」

 

 

 ドラコはキャビネットに圧縮して格納されていた年代物の箒、『シルバーアロー』を見つけて満足そうに笑った。

 

「レイブンクローの髪飾りはそうそう見つからないね。まぁ、簡単にある筈もないか」

 

 

 ハリーは鉛が含まれた化粧品を発見して、丁重に元の場所に戻した。過去のアイテムは、現代の知識でいえば危険で、製造を禁止された薬品もある。歴史的な資料としては価値があるとしても、実用の面では全く役に立たないガラクタも多かった。

 

「ねぇハリー。隣の赤い印のところ開けちゃダメ?」

 

 ルナは赤い印をつけたキャビネットを指差してハリーに尋ねたが、ハリーは許可しなかった。

 

「君がそれをする前に、僕が妨害呪文で君を止めるよ」

 

「ちぇ~」

 

「ちぇ~じゃないよ、ルナ」

 

 ロンの仮説に従えば、むしろ闇のアイテムのある箇所の方がレイブンクローの髪飾りがある可能性は高い。とはいえ、友人たちに命を危うくさせるつもりはハリーにはなかった。

 

「じゃあ私、この棚は全部調べたしザビ兄たちの方に行ってるね」

 

「ああ、気をつけてね」

 

 ハリーはドラコと二人、重量のあるキャビネットを慎重にアロホモラ(開錠)したり、棚の奥に隠されたアイテムをレベリオで見つけながら探索を続けた。探索に飽きたのか、それとも少し疲れたのか、ドラコは手を止めてハリーに問いかけた。

 

「もし髪飾りを見つけたらどうする気なんだい、ポッター。誰か意中の女性にプレゼントでもするのかい?」

 

 ドラコの問いかけにハリーは適当に答えた。

 

「それもいいかもね。でも、貴重な物品すぎるからね。先生に報告して、安全な場所に管理してもらうかも」

 

「バカだな君は。知恵が沸くアイテムなんだぞ?意中の人を射止めるのにだって使えるっていうのに」

 

「貰っても困ると思うよ。レイブンクローの髪飾りなんて派手すぎる」

 

 ハリーが笑いながら乾燥したチョウセンアサガオの種を見つけると、大きな悲鳴があがった。

 

「…………ぎゃぁぁああ!!!」

 

「ルナ!?」

 

「何事だ!?」

 

 ハリーは咄嗟に声の方向に振り向いたとき、額の傷がずきりと傷んだ。

 

(!?)

 

 ハリーの全身に冷や汗が走る。額の傷が痛むときは、大抵が『闇の帝王』絡みの案件か……ろくでもない闇の魔法生物に関する出来事だからだ。

 

「ルナ!!待ってろ今行く!!」

 

 ルナのもとまで駆けつけたハリーは驚愕した。血の気のない青い肌をして、腐敗した卵の匂いを漂わせたブロンドの女性……の『遺体』がルナの前に立ち、涎を垂らしながらルナへと近付いている!!

 

「ハリー……!!これは……!」

 

 ルナは杖を構えていたが、どうすればいいのか分からず困惑しきっていた。その顔には恐怖の色がありありと浮かんでいる。

 

 ハリーは、それほど醜悪なものを見たことがないと思った。女性の眼窩には光がなく、生命であるべきはずの輝きがない。そしてその女性は、サファイアが青い輝きを放つ髪飾りを身に付けている。ハリーはそれに気が付く余裕などなかったが。

 

 インフェリだ、とハリーは思った。命なき死体がルナを襲おうと近付いている。

 

(いや、おかしい!それはないっ!)

 

 あんな刺激臭に気がつかないということがあるだろうか。魔法でどこかにインフェリが格納されていたとしても、スニーコスコープが反応しない筈がない。

 

 ハリーが違和感を感じながらもかけ込むようにインフェリに近づき、とにかくルナから遠ざけるためにカダバ ロコモーター(死体よ動け)の闇の魔法を唱えようとしたとき。

 

 インフェリは大きな音を立てて姿を変えた。

 

「本物じゃないよ!キャビネットを開けたら出てきたンだ!!」

 

 ルナが叫ぶと同時に、ブロンドの女性の姿をしたインフェリは、バーノン·ダーズリーへと姿を変えていた。

 

 バーノンの怒号が、周囲一帯に響き渡る。ルナの悲鳴を聞いて駆けつけたザビニにファルカス、遅れてやって来たクラブやゴイル、そしてドラコもルナも、ずんぐりとした体格の良いマグルが怒鳴り声をあげる姿を見ていた。

 

 ハリーは迷わず呪文を唱えた。

 

「リディクラス(馬鹿馬鹿しい)!!」

 

 

 バーノンの姿をしたボガートは空腹感に苛まれていらいらと罵声を放ち続ける。ハリーはその姿を見て。

 

 

 ハリーははじめて、心の底から解放感を味わっていた。最初から、こうすれば良かったのだ。

 

「リディクラス!!」

 

 バーノンの周囲に、とても狭い部屋が出現し、バーノンはそこに閉じ込められる。窓もなく、明かりも蝋燭の光しかない物置だ。ハリーは自分が笑っていることに気が付いていなかった。

 

 しかし、ハリーのそのイメージは明らかな悪手だった。ファルカスがルナに駆け寄って立てるかどうか聞いていたとき、ハリーは強い罪悪感と羞恥心に襲われた。

 

「お前……何やってんだよ……」

 

「……ポッター……」

 

 ザビニが恐怖心を、ドラコが嫌悪感を滲ませたような目でハリーを見ていた。

 

(……っ!)

 

 ハリーは苦い気分で、二人から目をそらした。

 

(……あれしかなかった。そうだろう?僕は何も間違ったことはしてないじゃないか)

 

 ハリーは自分で自分に言い聞かせながらも、バーノンの姿とバーノンのハリーや魔法使いへの罵倒を、この場にいた全員に聞かれたという事実で一杯になって、ファルカスのようにルナに駆け寄ることすらできなかった。

 

 一同がなんともいえない空気に包まれているとき、ハリーが監禁したバーノンの姿をしたボガートが、ガタガタと音を立てて再び現れた。

 

 ボガートに対して、ハリーの一回目のリディクラスは効果があった。ハリーが心の底から望んだイメージを押し付けた結果、ハリーも心の底からそれを喜び、笑ったのだから。

 

 しかし二回目のイメージの時は、ハリーの笑いはすぐに霧散した。リディクラスによるボガートへのダメージはさほどでもなかったのである。

 

 しかも二回目のイメージは、『閉所にボガートを閉じ込める』という手段として具現化した。ボガートという生物自体、光のない閉所を好む。ハリーの笑いがすぐに霧散したこともあり、ボガートを閉じ込めるには至らなかったのである。

 

 再び顕現したボガートは、ハリーではなくザビニに近寄った。バーノンの姿はすぐに、ザビニの面影がある女性の姿へと変化した。その女性は、ルナの時に現れた死体と同じ、サファイアの宝石が埋め込まれた髪飾りを身に付けていた。その女性が誰であるのか、ハリーやファルカスやドラコには察しがついた。ザビニの母親だ。

 

 女性は杖を構えてザビニに近づく。ザビニは後退る。

 

「ブレーズ……私のかわいい子……ねぇあんたなら分かってくれるわよね?あのデブを殺したのも、その前もその前もその前も全部、全部全部全部あんたの為だった-」

 

「「リディクラス(馬鹿馬鹿しい)!!」」

 

 ハリーと、そしてファルカスが同時に杖をボガートへと向けた。ハリーの中に、女性のことを笑えるような明確なイメージがあったわけではない。ただ、ハリーは女性をザビニに近付けてはならないと思った。ザビニは明らかに女性を恐れていた。

 

「……プロテゴ(護れ)」

 

 そして。

 

 信じがたいことに、ボガートは持っていた杖をふって、リディクラスを防ぎ切ったのだ。単なるイメージの産物でしかないはずの杖でだ。魔法生物が魔法を使ったことで、ハリーたちは混乱と恐怖に陥った。




おめでとう。
ハリーのLOVEが上がった(Undertale風)!!
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