蛇寮の獅子   作:捨独楽

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スネイプ視点のハリーたち
ハリー→ジェームズ(容姿的に)
ザビニ→シリウス(容姿的にザビニは女子人気があるので)
ファルカス→コリン、ピーター(取り巻き)
アズラエル→リーマス(良心枠)
ハーマイオニー→リリー(出自的に)
実際の立ち位置
ハリー→シリウス(外付け良心装置が必要)
ザビニ、ロン、ハーマイオニー→ジェームズ枠
ファルカス→ピーター(闇の魔術に興味あり)
アズラエル→リーマス(キレたらヤバイ枠)
リリー枠→不在


真の友

 

 目覚めたハリーは、ポンフリー校医からその日普通に授業を受けることを許された。ハリーにとって意外なことに、ハリーはポンフリーから説教を受けることはなかった。

 

(一体どうしたんだろう……?)

 

 ハリーはポンフリー校医から少なからず叱責を受けることは覚悟していた。前学期に入院したときも、一年生の時も、ハリーが無茶をする度にそれを叱ったのがポンフリー校医だった。ハリーは違和感を感じながらも、改めてポンフリー校医にお礼を言って大広間に向かった。

 

 大広間では、ドラコたち三人がスリザリン生たちから称賛を受けていた。称賛しているのは純血派閥の生徒たちで、クラブやゴイルは自分が魔法で誉められていることに夢中で、嬉しそうに顔をほころばせていた。それこそ、いつもならばがっついて食べる筈の朝食を忘れるほどに。

 

「ハロー、ポッター。君も無事で何よりだよ」

 

「カロー先輩。お早うございます」

 

 ハリーがザビニの隣に座る前に、大広間の視線はちらちらとハリーの方を向いているのを感じた。ハリーは視線から隠れるように、ザビニの斜め前の席に座っていたマクギリス·カローの影に座った。

 

「……お疲れ、ハリー。もう大丈夫なんだな」

 

「うん、まぁね……それで、どういう話になってるの?」

 

「どういう話とは?君たちがレイブンクローの髪飾りのレプリカを発見したことは、皆が知っているよ。クラブとゴイルがボガートを退治したこともね」

 

(なるほど、そういう流れか……)

 

 ハリーは頭の中で口裏を合わせるための話を思いついた。ハリーが闇の魔術を使ったことや、リディクラスの一件は隠しておきたい。クラブとゴイルのお陰で助かった、ということにしようとハリーは心に誓った。

 

「正直なところ、たかがボガートで君が負傷するとは思えないのだがね。一体何が起きたのか、良ければ話をしてくれないだろうか?」

 

「そんな。僕はボガートにはなにも出来ませんでした。失敗して怪我をしたんですよ。けれど、皆が助けてくれたんです。クラブとゴイルには感謝してもしきれません」

 

「……本当に、そうなのかな?バジリスクを倒した君が?」

 

 気がつけば、大広間の注目はハリーに集まっていた。

 

(……やられた……!?)

 

 マクギリスは最初からこれを狙っていたのだろうか。ハリーに注目が集まることを狙って、ここに陣取ったのだろうか。

 

「私は、君が純血主義に理解を示してくれたことをとても嬉しく思っているのだよ、ハリー」

 

 ハリーの心臓が大きく跳ねた。スリザリン生たちがハリーを見ている。ヒソヒソと何事かを囁き合っている。アズラエルたちは、マクギリスを恐れてなにも言えないでいた。

 

「クラブ君もゴイル君も、君が必要の部屋で見せた魔法を知りたいと思っている。どうかな?今度の茶会に君もー」

 

 

 

「マクギリス!今朝は監督生のミーティングがあるっつっただろ!油売ってんじゃねえ!」

 

「は、はい!すぐに!!」

 

 困っていたところに助け船をくれたのはガーフィール·ガフガリオンだった。今年七年生であり、スリザリンの監督生でもある彼は学年首席の座をパーシウィーズリーに奪われたものの、スリザリンの七年生として文句のない貫禄を備えており、下級生たちにとっては畏怖の対象となっていた。

 

 

 ハリーはグリフィンドールのテーブルから視線を感じた。ロンとハーマイオニーが、ハリーのことを心配そうに、そして、何があったのか聞きたいという目でハリーを見ていた。ハリーは二人の視線から逃げるように朝食を口に入れると、アクシオ(来い)でトランクを呼び寄せて、ザビニと共に魔法薬の授業へと向かった。大広間に残された生徒たちは、口々に隣の生徒と好き勝手に話し合っていた。

 

「動物園の蛇になった気分だよ。鑑賞する分には、さぞかし楽しいんだろうね」

 

 薬学の教室に入る前、ハリーは思わず呟いた。マクギリスは最早ああいう人なので置いておくとしても、ホグワーツ生たちの好奇心に満ちた視線は鬱陶しかった。ハリー自身に隠したいものがあるからだが。

 

 

「……ハリー。昨日あったことは気にすんな。マジで。事故に遭ったみたいなもんなんだからよ。あんなことになるなんて想像できねーよ。誰も悪くねえ。もちろんお前もな」

 

「皆、一月もすれば髪飾りのことなんて忘れるよ。クィディッチが始まるまでの辛抱さ」

 

「……ありがとう、二人とも」

 

「昨日何があったのかは、僕にも話せないことなんですか?」

 

 

「昨日も言っただろ。わざわざ話すほどのことじゃねえってことだよ」

 

 アズラエルは自分に話をしてくれないことに不満があるようだった。しかし、ボガートが相手だったということもあり最後には引き下がった。アズラエルは友人のデリケートな部分に土足で入り込む人間ではなかった。

 

「なら、笑い話として話せるようになるまで待っておきます」

 

 ハリーはザビニとファルカスが沈黙を守ってくれたことが嬉しかった。ハリーはザビニにダンブルドアについて問い質そうかと思ったが、やめた。ザビニはハリーの最も醜い姿、ハリーの恥を黙ってくれたのだ。ザビニがダンブルドアと親しいことは嫌だったが、ハリーは自分が闇の魔術を学んだことを思い出した。

 

(そうだ。僕だってザビニに不快な思いをさせてるじゃないか。……ダンブルドアと仲がいいことくらい、大した問題じゃないはずだ……)

 

 ハリーは自分にそう言い聞かせながら、薬学の教室へと足を踏み入れた。スネイプ教授の刺すような視線がハリーたちを出迎えて、ホグワーツでの何気ない一日がまた始まった。

 

***

 

「……今日はやけにスネイプ教授のあたりが強かったね」

 

「そうか?やらかした次の日はいつもこんなもんだろ?」

 

「だけど、僕だけじゃなくてファルカスからも減点したのは始めてだよ」

 

 ハリーが無茶をして入院した後の魔法薬の授業では、スネイプ教授はハリーの手際を見ては至らない部分を作り出して減点する。簡単に言えば、ハリーの作業中に質問に答えさせた上で、中断した魔法薬を見てハリーの手際が悪いと言うのである。スネイプ教授を尊敬しているハリーでも気づくほどに理不尽な扱いではあったが、今日はどういうわけかファルカスにまでそれを実行した。

 

「……多分スネイプ教授は、僕がハリーの友人なのが気に入らないんだ。僕の祖父は闇祓いだからね」

 

 ハリーたちの顔に陰りが見えた。スネイプ教授が、かつてテロリストの容疑をかけられていたことはあまりにも有名だ。

 

「ファルカス。そんなこと部屋の外で言うもんじゃありませんよ。誰に聞かれているかわからないんですから……」

 

「そうだね、ごめんアズラエル……」

 

「ま、魔法生物の授業で気分転換しようぜ。じゃーなアズラエル、ハリー」

 

 ハリーは一度ザビニたちと別れてアズラエルと一緒に古代ルーン文字学を受講する。ルーン文字の授業を受けたあとは、ハーマイオニーと一緒にタイムターナーをひっくり返して魔法生物学の授業を受ける予定だった。

 

 ハーマイオニーも、ハリーから昨日の話を聞きたがった。ハリーは後で話すと告げて、授業に没頭するふりをした。正直なところそれは嘘だった。古代ルーン文字の授業はまだ初歩の段階で、ハリーもハーマイオニーもアズラエルも内容は予習済みだったからだ。

 

 ハリーがハーマイオニーに邪険にしたのは、ハーマイオニーのことを嫌いになったからではなかった。昨日ボガートに対してしでかしたことが今もハリーの頭のなかにこびりついていて、後ろめたかったのだ。そのせいで、ハーマイオニーの瞳をまともに見れなくなっていたからだった。

 

(……ふーん?視線が合わせられない?なるほどこれは……?)

 

 アズラエルはそんなハリーの様子を横目で見て、一つの仮説を立てていた。

 

(どういう心境の変化があったのかは分かりませんが……そういうことですか)

 

 授業のあと、アズラエルはハリーの肩を叩いて言った。

 

「ハリー。僕は君のことを応援していますからね」

 

「……?待って。ちょっと待って。いきなりどうしたのアズラエル?」

 

 アズラエルは頭が回る。深読みもできるし、政治的な配慮もハリーたちのなかでは一番優れている。

 しかしそんなアズラエルだからこそ、間違えることも時にはあるのである。ハリーはアズラエルの言葉の意味が分からないまま、タイムターナーを起動させてハグリッドが教える魔法生物学の授業へと向かった。

 

***

 

 昨日の今日であるためか、魔法省の役人はまだハグリッドのもとを訪れてはいない。ハグリッドも初回の授業を反省してか、昨日の四年生の授業ではフロバーワームの観察という課題を出したようだったが、生徒たちから大不評を受けた。フロバーワームは、ルナ曰く『王蟲のなり損ない』という芋虫と団子虫を合わせたような蟲で、魔法薬の原料や食用として用いられるが、とにかく容姿が悪く可愛さがない。

 

 ハグリッドの魔法生物学を楽しんでもらいたいという熱意は本物で、今日の授業では子供のユニコーンを連れてきて、生徒たちと触れあわせてくれた。ハグリッドのことを馬鹿にしていたパンジー·パーキンソンですら、うっとりとユニコーンの挙動を眺めていた。

 

「素敵ね……こんなに可愛いなんて……」

 

「美しいだろう?ユニコーンはな、無垢で純粋な魂を見分けるという謂れもある。角に触れないようにそうっと撫でてやりゃあええ。きっと喜ぶぞ」

 

「はは、無垢で純粋だってよ。じゃー俺には懐かねーな」

「多分スリザリン生の大半が無理だよ。気にしないで、ザビニ」

 

「いやいやそこまで卑下することないだろ。お前ら普通に立派じゃん?」

 

 ロンが自虐するザビニを珍しくフォローするという歴史的一幕のあと、生徒たちはユニコーンと交流した。

 

 ユニコーンはグリフィンドール生だけではなく、パンジーやドラコにも、ザビニやファルカスやクラブやゴイルといったスリザリン生にもよく懐いた。ほとんどの生徒がユニコーンと触れあって大満足のなか、ユニコーンはハリーの差し出した手を嫌がり、森へ逃げようとした。

 

「コラコラ。落ち着けバルス。眼鏡のあんちゃんはお前を傷つけようなんて思ってねえ。……ハリー、もうちっと目線を低くしてそっと撫でてやれ。お前さんの蛇にしてやるように柔らかくな」

 

「はい、ハグリッド先生」

 

 ハグリッドのアドバイスのお陰で、ハリーもユニコーンの子供を撫でることができた。しかしユニコーンの子供は、ハリーから撫でられている間も警戒心を保ったままだった。

 

 スリザリン生やグリフィンドール生のほぼ全てがハグリッドの評価を上方修正し、満足感を得て大広間に向かうなか、ハリーは心の中に刺が刺さったまま歩いた。授業中にロンが何か聞きたそうにハリーのそばに来たときも、ハリーは何も言わなかった。言えなかったのだ。

 

(あの賢いユニコーンの子供はきっと、僕の心を見抜いたんだ)

 

 とハリーは思った。ハリーの心の中には、罪悪感が重石となってのし掛かっていた。

 

***

 

 

 その日の放課後に、ハリーたちは校長先生に呼び出された。呼び出されたのは、昨日ボガートと対峙した面々で、ドラコやクラブやゴイルも校長室にいた。ハリーとルナ以外の面々は、始めてみるフォークスや歴代校長の肖像画に興味津々といった様子だった。

 

「あ、火の鳥ちゃん!!」

 

「ルナ、校長室では静かにした方がいいよ……」

 

「いやいや。元気がよいのは良いことだよ。今日は君たちに、この髪飾りを返そうと思ってね」

 

「……え。レイブンクローの髪飾りをですか?」

「じゃあやっぱり、それはレプリカだったんですね?」

 

 ハリーたちは顔を見合わせ、困りはてた。破壊して既に機能を停止させたとはいえ、曰く付きのアイテムをもらってもあまり嬉しくはなかった。

 

「ああ。しかし、とても優れたレプリカだったので修復をさせてもらったよ。……ただ、それを受けとるべきものはこの世にはいないのでどうしようかと困ってしまってね」

 

「……?この世には……?」

 

 ダンブルドアは、回りくどいようでいてほとんどハリーたちに分かるように指示を出していた。まずレイブンクローの生徒であるルナが、次にドラコやハリーやファルカスが指示の意図に気付き、ルナが代表して髪飾りを受け取った。

 

「それ、どうするんだ?質屋に換金するのか?」

 

 ゴイルが興味津々でルナに聞くと、ルナはううんと首を横にふった。

 

「受けとるべき人が居るンだ。ついてきて」

 

 ハリーたちは、ルナの後をついてレイブンクローの談話室に足を踏み入れた。レイブンクローのセキュリティであるクイズは見えないがそこにあるものは何かという概念的な問いかけで、ルナは夢、ザビニは生命を、ハリーは死、ファルカスは信念と答えて通った。クラブとゴイルは通らせてもらえなさそうだったが、ドラコの血統という答えに情けをかけられて温情で通らせてもらった。

 

 レイブンクローの談話室ではルナも含めて、ハリーたちは針の筵だった。ルナが持っているものが何であるのか信じられない、あるいは信じたくないという生徒たちが、ルナの前に立ちはだかろうとした。少女たちはルナと同年代らしく背丈もルナと同じくらいだったが、ハリーには見覚えがなかった。

 

「ちょっと。……どうして……それをあんたなんかが持ってるというの」

 

 リーダー格の茶髪の少女は震えていた。ルナは普段通りの調子で朗らかに言った。

 

「ごきげんよう、レコア。私、これを届けたい人が居るンだ。そこを通してくれる?」

 

「…………だ、ダメよ!!だって……だって、スリザリン生と協力してそれを見つけたなんて……あんたの力じゃないじゃない!あんたの知恵じゃない!ルーニーなんてレイブンクローじゃないっ!」

 

 

 

「これは彼女が勝ち取ったものだぞ。君たちがでしゃばることじゃない」

 

「もし難癖つけようって言うのなら相手になるぜ?」

 

 ハリーとザビニがルナの後ろでレイブンクロー生を威嚇する。ドラコはふんと鼻を鳴らすと、レイブンクロー生に対して言った。

 

「ポッター。ザビニ。下級生に強く当たるのは感心しないね。ここは彼らのホームグラウンドなんだ。僕たちも彼らの理屈である『知恵』で相手をすべきだ」

 

「……確かに、ドラコの言う通りだ」

 

 ハリーは一理あると思い、ドラコに説得を任せた。そして、ドラコは。

 

「そこの君、レコアと言ったかい?君の両親は魔法省の官僚だったね……?僕の父は魔法省にも伝手があるんだが、その僕に歯向かうということがどういう」

 

「お前が一番脅してるじゃないか!!」

 

 ファルカスが憤慨して止めに入る。ハリーは冷や汗をかいて杖をドラコへと向けた。

 

「……シレンシオ(沈黙)」

 

 ハリーが沈黙魔法でドラコを黙らせた時には、レイブンクローの女子生徒たちは逃げ散っていた。ルナは、ドラコにお礼を言った。

 

「えーと。私って助けられたの?それともいじめの片棒を担がされたの?……まぁいいや。ありがとうドラちゃん」

 

「ごめんな、ルナ……」

 

 シレンシオのせいで抗議の声をあげることも出来ないドラコを伴って、ハリーたちはルナが目標としていたゴースト、灰色のレディのもとへ到達した。

 

 灰色のレディは、ルナが持ってきたティアラを見て、信じられないという風に泪を流した。頬からつつと流れる涙にハリーたちは気まずくなりながらも、代表してハリーがハンカチを差し出した。

 

「……ありがとう。それにしても、まさかスリザリン生がこれを取り戻してくれるなんて……」

 

「……まさかっていうのは?」

 

 灰色のレディは少しだけ悩んだ後、自分がレイブンクローの娘で、母親から髪飾りを『借り』て逃亡したこと、思いを寄せられていた男爵に殺害されたこと、男爵が灰色のレディを殺害したことを悔やみ、スリザリンの寮付きゴーストになったことを明かした。

 

「……そ、その…………」

 

 スリザリン生一同が絶句するなか、灰色のレディは一人一人の掌に口付けをしてくれた。ハリーは掌に雪を突っ込んだ時のような感覚を味わった後、灰色のレディからお礼を言われた。

 

「……悲しい歴史もあったけれど、あなたたちがそれを払拭してくれたわ。レイブンクローの知恵と、スリザリンの狡猾さはどちらも人が生きる上で、なくてはならないもの。私たちレイブンクローの子供たちは、知恵を求めるあまり他のことをないがしろにしがちなの」

 

 そう言って、ヘレナはルナを見やった。ハリーたちは、ヘレナの言葉に、ほんの少しだけ頷いた。

 

「……レイブンクローの子供たちに、あなたたちが仲良くしてあげてくれると嬉しいわ。きっとそれが、お母様の望んだこと。今はそんな気がするの」

 

 ルナからレイブンクローの髪飾りを受け取り、ハリーたちへと微笑んだその瞬間のヘレナ·レイブンクローは、ゴーストとしての縛りから解放され、生前の輝きを取り戻したようにハリーには見えた。数秒の後、ロウェナ·レイブンクローの肖像画のもとへと向かったヘレナのゴーストを、ハリーたちは晴れやかな気持ちで見送った。

 

 

「……行っちゃったね」

 

「俺らは帰ろうぜ。……あのゴーストさんは、これから色々と謝ったりなんやかんやでやりたいことが山盛りだろうからよ」

 

 こうして、レイブンクローの髪飾りをめぐる一連の騒動も終わりを迎えた。晴れやかな気持ちでレイブンクローの談話室を後にするハリーに、クラブとゴイルが駆け寄ってきた。ハリーは決闘クラブに行く前に、空き教室で二人を説得しなければならなかった。

 

「おいポッター、この後時間あるよな?お前が使った魔法教えてくれよ!」

 

「あの炎のやつ!かっこよかったじゃねえか!」

 

「……それは出来ない。あれは駄目な魔法なんだ。使っちゃいけない闇の魔術で、下手にやれば自滅する可能性もあるんだ」

 

「……ええ……」

 

「つまんねーな……」

 

「でも、代替的な魔法ならあるよ。決闘クラブで見ていく?」

 

 ハリーがクラブやゴイルをそう説得すると、二人はとても残念そうな顔をした。ハリーはその代わりに、二人に魔法を教えようとした。それを、ドラコが強い口調で止めた。

 

 

「待て、ポッター。ぼくの友人に手を出すな」

 

 ドラコは何かを覚悟したような、強い口調になっていた。今までにない雰囲気のドラコに、ザビニは何かを感じ取ったのか口を閉ざす一方、ファルカスが声を張り上げた。

 

「いや、教えてって言ってきたのはそっちだろ。何でもかんでもハリーのせいにするなよ」

 

 ファルカスの指摘に、ドラコは普段の高慢さを携えた仮面で対応した。

 

「ふん。それは失礼。……だが僕は、自分の気持ちに正直になろうと思ってね。 はっきり言うが……二人にはポッターに関わって欲しくはないんだ」

 

 そう言ったドラコの表情は、今までになく冷たかった。

 

「理由を聞いてもいいかな、ドラコ。……僕たちは、あの一件を一緒に乗り越えた友達で、仲間だと思うんだけど」

 

 ハリーは、内心で恐怖を感じながら言った。ドラコの冷たい目が、今までにない冷徹な口調が、ハリーに対する失望と、軽蔑を表現していた。

 

「……あのボガートが化けたマグルへの仕打ちは何だ、ポッター?」

 

「……っ!!」

 

 ドラコの声は、ハリーの恐れを的確に撃ち抜いた。ハリーは咄嗟に返答することも、閉心術を使うこともできなかった。

 

「君は昔、僕にこう言った」

 

「あいつらは僕らを化け物だと思ってる。だから平気で傷をつけられる」

 

「……やめろ」

 

 ハリーの心を想定外の痛みが襲った。それは、過去のハリーからもたらされた痛みだった。

 

「痛め付けて言葉の暴力で傷をつけてもなんとも思わない」

 

「やめてくれ」

 

「僕はそんな連中と同じやつになりたくないからスリザリンに来たんだよ」

 

「……………………」

 

 ハリーはもう、ドラコになにも言えなかった。言い返せずただドラコの顔を見返すしかないハリーには、ドラコが感じ取っている失望が、ありありと伝わった。

 

「僕は今の君を友達にしたいとは思わないし、大切な友人に君と関わって欲しいとも思わない」

 

 ドラコはきっぱりと、そう言いきった。ハリーは自分の掌の感覚がなくなっていくのを感じた。

 

「…………ラブグッドもウィーズリーもグレンジャーも、そんな君に心の底からは仲良くしたいとは思わないだろうよ」

 

「黙って聞いてりゃうだうだと好き勝手言いやがって!他に!!あの糞みたいな状況で!!何が出来たって言うんだ!!ハリーからも何か言ってやれ!黙ってる必要なんてねえぞ!!」

 

 ついにザビニが怒りを爆発させたが、ハリーは何も言えなかった。ただ、自分自身の恥を認めることしかできなかった。

 

「……僕は、あの時……僕は、心の底から楽しんでいた。………………楽しかったんだ」

 

 

「ブレーズ·ザビニ。ファルカス·サダルファス。お前たちはポッターが強いからついていっているだけだ。ポッターが、光の陣営として輝いているから着いていっているだけだ。そんなお前たちの言葉に、どれ程の説得力があるんだろうな」

 

「違う!」

 

 ファルカスがそう吠えたが、ドラコは振り返らずに去っていった。ハリーは、長い時間が経った後、ファルカスとザビニに頼んだ。

 

「……二人とも、ボガートのことは、黙っていてくれ……ロンにも、ハーマイオニーにも…………アズラエルにも知られたくない」

 

 頷いてくれた二人の顔を見て、ハリーは顔を洗うことを決めた。ハリーの頬からは、一滴の涙が流れていた。

 

 

 

 

 




リリー枠……ドラコ?!
……まぁ冗談はともかくとして。
スリザリンではもしかして、きみは真の友を得る。
真の友だから失うことだってあるんだ。
現実は悪夢と違って覚めないんだ。
ハリーが悪夢をいやがっていたのでつい……
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