ようこそ利己主義者のいる教室へ 作:眠り鼠
主人公は性格が悪いので注意です!
それではお楽しみください。
放課後になり、今日も図書室に向かうことにする。
最近の私楽しみは読書だ。
今日の目標は、漫画を片っ端から読み漁ること。
目標として成り立っていないし、そもそも漫画は読書に分類されるのかという疑問もあるが私は華麗にスルーする。
そう、アントルシャ・サンクの如く軽やかに美しくスルーする。
「すみません。この本の貸し出しをしたいのですが。」
司書の人に話しかける。
「はい。学生証を提示してください。」
言われた通りに学生証を提示する。
「如月美星さんですね。貸出期限は二週間です。返却日は再来週の月曜日です。」
「分かりました。ありがとうございます。」
私は早速、席に着くと本を読み始めた。
漫画の内容は異世界転生ものだった。
主人公がトラックに轢かれて死んでしまい、神様のミスによって生き返ることが出来たのだが、記憶を失ってしまうというテンプレ展開。
しかし主人公はチート能力を手に入れており、次々と敵を倒していくというもの。
一通り読んだのだが、続きが気になって仕方がない。
暫く続きを読み耽っていると肩に何かが触れは感覚がした。
振り返ると小説を手にした銀髪の美少女が立っていた。
「そろそろ図書室が閉まるそうですよ。」
どうやら私は時間を忘れて没頭していたらしい。
私は彼女に礼を言うと、鞄を持って外に出ることにした。
私達は校門を出て、帰路につく。
隣を見ると、彼女はどこか寂しげな表情をしていた。
どうしたものかと考えていると彼女が口を開いた。
「あの、漫画を読んでたみたいすが、読書がお好きなんですか?」
「うん。大好きだよ。元々小説を読むのが好きだったんだけど、この学校に来て人生で初めて漫画を読んだんだ。それでハマっちゃって…。」
私の家では漫画やアニメ、ゲームは低俗なものだと言われており、触れさせてすら貰えなかった。
その為か中学に上がる頃には反抗期に突入していた。
私が答えると彼女からは意外な言葉が飛び出してきた。
「実は私もそうなんですよ。この学校の図書室を利用してから初めて漫画を読みました。。」
「え? 本当!? 私達って意外と似ているのかな?」
「そうかもしれませんね。」
彼女はクスリと笑う。
その笑顔はとても可愛かった。
「私は椎名ひよりです。良かったらひよりと呼んで下さい。」
「私は如月美星。宜しくね、ひよりちゃん。」
それから私達は色々な話をした。
趣味のこと、勉強のこと、クラスのこと。
話題が尽きる事は無かったが、寮に着いてしまった。
「今日は楽しかったです。今度お休みの日にでもカフェに行きませんか?」
「こちらこそ、有意義な時間だったよ。お誘い楽しみにしてるね。今日はありがとう!またね!」
私は手を振りながら、自分の部屋へと戻っていった。
部屋に戻りベッドの上に寝転ぶ。
楽しい学校生活の始まりだ。
明日からも頑張ろう。
そんな事を考えながら眠りについた。
翌日の放課後、私は構内の構造を知るために散策を始めた。
監視カメラの多さには慣れたつもりだったが、カメラが視界に入るとどうしても気になってしまう。
校舎は母校よりも大きく、芸術科目が一年時にしか無いにも関わらず、書道室、美術室、音楽室が三部屋ずつそんざいしてい存在している。
そして設備も最新のものが備え付けられており、新品の石膏や最新モデルの音楽プレイヤー等かなりのお金がかけられているようだ。
暫く歩いていると特別棟と書かれた校舎と本校舎とを繋ぐ渡り廊下を発見した。
特別棟の中へ足を踏み入れると衝撃的な光景を目にする事となった。
「何これ…」
そこには監視カメラが一台も無かったのだ。
どういう事かと思案していると背後から足音が聞こえてきた。
「おい、そこで何をしている?」
振り返ると、入学式で挨拶をした生徒会長が立っていた。
私は咄嵯に言い訳を考える。
「あ、えっと校内の探索をしていました。今月入学したばかりなので、早く場所を覚えたくて…」
私がそう言うと生徒会長は納得したのか、それ以上追求してくることは無かった。
ふぅ、助かった…。
内心冷や汗を流していた。
それにしても、まさかこのタイミングで出会すとは…。
正直面倒くさいことになったと思いながらも、この機会を逃すわけにもいかないと考えを巡らせる。
上級生の、それも生徒会長との繋がりは何かしらの役に立つ筈だ。
「堀北会長、この学校について質問があります。」
「なんだ?」
「この学校において最も優秀なクラスはAクラスであり、卒業後の進路希望が叶えられるらのもAクラスのみ。今月振り込まれた10万ポイントは私達に対する正当な評価の表れであり、評価によって毎月振り込まれる額が変動する。私達は今後卒業後の進路のためにAクラスを巡った争いが始まる。今私が話した事はあくまで予想ですが、間違いはありますか?」
「面白い考えだな。どうしたそう思ったんだ?」
やはり今の時期では答えてもらう事は出来ないようだ。恐らく来月の1日に全て明らかになるのだろう。
「まず入学初日にこの学校の監視カメラの多さに疑問を持ちました。私の通っていた中学には裕福な方が多く在籍していたので監視カメラも多く設置されていたのですが、この学校はその量が異常です。」
「確かに多いかもしれないが、それは防犯上の理由からだ。」
「本当に防犯のためだけなのでしょうか?」
私はわざと挑発するように言った。
ここで相手の反応を見る必要がある。
だが相手は冷静さを欠くようなことはなかった。
流石は生徒会長といったところだろうか。
しかし、その余裕も次の一言で崩れ去った。
「職員室に3台、生徒指導室に4台、会議室に3台、保健室に5台…生徒と教師が使う部屋の監視カメラの台数を比較した場合、明らかに数がおかしいんです。」
職員室は約3クラス分の大きさだ。
なのに1クラスに4台のカメラが設置されている。
教室よりも大きい職員室なのに設置されているカメラの台数は教室より少ない。
つまり防犯対策では無く、生徒を監視している可能性が高いという事が分かる。
「俺からは防犯対策のため、としか言いようがないな。」
「そうですか。」
「他の理由はあるか?」
私は頷き有栖との会話を思い出す。
「次に気になった事は入学式前のホームルームで担任の先生が口にした言葉です。10万ポイントは私達に対する正当な評価。そしてポイントを使い切った生徒に対して学校側は救済措置を取らないという発言。」
「ほぉ?」
感心したように堀北会長は声を溢した。
「裏を返せば評価が下がればその分支給額も下がるという事だと思いました。」
堀北会長は私の言葉を聞いているだけで何も言ってこない。
もっと情報を出せという事だろう。
ならもう一押しするしかない。
私は堀北会長の目を見据えて告げた。
まるで、宣戦布告をするかのように。
あなたに勝ってみせると言わんばかりに。
「そして救済措置が無いと言いながら無料の商品が置かれていたり、食堂には無料の定食がメニューにあったりと救済措置といえるものは施されています。これらが救済措置でないとしたら学校の想像している救済措置とは何なのか?」
すると会長は少し驚いた表情を見せる。
その瞳はどこか楽しそうに見えた気がした。
「救済措置とはポイントの支給として捉えられていたとしか思えません。世の中にも生活保護や借金ってシステムもあるのにそれらがない…つまりポイントの有無も何らかの評価に繋がるとしか考えられないんです。」
「面白い、実に面白いな。良ければ連絡先を交換しないか?」
よし、目的達成だ。
テッテレー!生徒会長の連絡先をGETした!
互いのメールアドレスと電話番号、個別チャットのIDを交換した。
端末を鞄に仕舞おうとした時、ピコンッと音がした。通知を確認するとメールが一通届いており、そこには200万ポイントが振り込まれたと書かれていた。
端末を確認すると209万1002ポイントと表示されていた。
「あの、このポイントは何ですか?え、どうして…。」
「面白い考察を聞かせてくれた御礼だ。」
私が例を言って去ろうとした時、会長から呼び止められる。
振り返り視線を合わせる。
生徒会への勧誘だったが丁重にお断りさせて頂いた。
何故断ったのかと言うと、単純に面倒だからだ。
クラス内の信頼度があればあるほど私は拘束される事になる。
生徒会は時間という大きな代償を払ってまで入る価値はない筈だ。
私はただこの学校生活を楽しんで卒業したいだけ。
そう思い、堀北会長に頭を下げてから特別棟を後にした。
後ろから足音が聞こえる。
「おい如月、おまえ堀北会長と知り合いだったんだな?」
特別棟を出てすぐに神崎に声をかけられた。
クラス内では寡黙だが主要人物の一人として一定の地位を築いている男子生徒だ。
一之瀬のような明るさはないが、男子生徒を纏めている優秀な男だ。
「いや、さっき初めて出会ったよ。」
「そうか、なにを話していたんだ?」
私はどう答えるべきか迷った。
下手なことを言えば今後の学校生活に影響を及ぼす恐れがあるからだ。
ここは適当に誤魔化すことにしよう。
「生徒会の事について質問していただけだよ。」
「なるほどな。それでどうなんだ? この学校は。」
「そうだね。多分だけど実力主義なんだと思う。」
「実力主義、か……。」
「うん、学力・運動能力・コミュニケーション力、他にも色々あるけど、とにかく総合的に優れた生徒がAクラスで卒業出来る仕組みになっているみたいだね。」
「な、何を言っているんだ?この学校は卒業時に生徒の望む進路へ斡旋してくれる学校ではないのか?」
やはり知らないようだ。
まぁ無理もない。
あの入学式の日は誰も説明されなかったのだから。
だが校内や敷地内の施設を見ればひんとはのこさヒントは残されている。
きっと神崎程の男なら異変くらいには気づく筈だ。
だがその真実があまりにも残酷で目を逸らしてしまったのだろう。
それではこれから苦労することになるだろう。
でもそれも自業自得だ。
私はそんな神崎に真実を告げた。
「残念ながら、それは表向きの話だね。」
「っ!?」
「生徒の希望通りに就職させるなんて甘い話は無いんだよ。でも、この学校を卒業した時点で、既に就職先や進路についての心配は必要ないと思う。」
「ど、どういう意味だ……?」
訳が分からないと言った様子で彼は私を見つめた。
「言葉通りの意味だよ。つまりこの学校に入学出来た生徒はその時点で勝ち組なわけ。」
「そ、それは本当なのか……?」
「望む進路を叶えられるなんて馬鹿げた話はないよ。叶えられなかった生徒がこの学校を詐欺だと糾弾したら?世間にバラしたら?学校も国も困るよね?あはは。」
私は目を細めてニヤリと口角をあげて悪役のように笑って見せた。
彼は俯き黙り込んで私の言葉の真意を考えている。
そして30秒程経った頃ハッとして頭を上げた。
何かに気づいたようだ。
「…………まさか!」
私の言ったことが信じられなかったのだろうか。
いや違う、これはむしろ信じ込んでいる。
そんなに簡単に信じて良いのか?
詐欺に遭いそうで心配だよ。
まあ詐欺にあったとしても私に不利益がなければどうでも良いが。
クラスメイトが詐欺に遭様なんて絶対に面白いに決まっている。
その表情は驚愕に染まっていた。
当然といえば当然か。
世間にこの学校の真実が公開されれば受験者数も減るし、詐欺だとして評価がマイナスされる。
場合によっては賠償問題にもなり、国営の学校なので政府に責任問題が発生し国民のからの信用失われる筈だ。
だからこそ、他クラスの生徒が満足して去れるような交渉が行われ、希望に近い進路を斡旋される。
まあ、あくまで予想だが他クラスの卒業生の不満を何らかの形で解消しているのは間違い無い。
「言わなくても分かってくれたみたいだね。今話した事はあくまでも予想、希望的観測に過ぎない。」
私は神崎に向き直って上を指差し言葉を続けた。
黒光りする私たちを常に見る第二の目、そう監視カメラを指差して。
「あれの数が異常に多いよね?恐らく私達の生活態度を確認しているんだよ。だって10万ポイントは私達に対する正当な評価の表れなんだからさ。」
「なるほどな。確かに俺も違和感を感じていたんだ。如月は随分頭が回るんだな。あまり話した事は無いが、印象がかなり変わったよ。」
これで神崎の私に対する評価も変わったはずだ。
何せ彼の言う通り殆ど話した事がないのだから、印象が変わるのも無理はない。
「Aクラスを目指すなら希望的観測をクラスメイトに話すのは辞めた方がいいよ。」
私はそう言い残してその場を去った。
神崎隆二は天才か秀才か。
私の敵か味方か。
これから彼がどんな事を成し遂げるのか実に楽しみである。
それにしても、堀北会長が言っていたように、この学校は本当に面白い。
私が今まで生きてきた中でこんなにもワクワクしたのは初めてだ。
自然と笑みを浮かべてしまう程にね。
でもこれは始まりにすぎない。
私はこの学校を絶対に誰よりも楽しんで卒業する。
そう胸に誓い、私は帰路についた。