ようこそ利己主義者のいる教室へ   作:眠り鼠

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ついにこの学校のシステムが明らかになりました。
主人公は相変わらずドライです。


ようこそ実力至上主義の教室へ

 

翌日、私はいつも通りに学校に向かった。

学校に向かう途中、生徒たちの視線を感じた。

登校時間ギリギリで駆け足気味だったため、注目を浴びてしまったのだろう。

私は気にせず教室に入るなり自分の席に座った。

 

 

程なくして教室内に星之宮先生がやってきた。

手には多くのプリントが抱えられており、おおよその数は200枚といったところか。

テストでも行うのだろうか?そんな連絡は貰っていないのだが。

 

 

「みんなおはようー!今日はね、全員にテストを行ってもらいます!」

 

 

クラス内が騒然となる。

それもそうだろう。

1学期が始まってまだ間もないというのに突然テストを行うとは思うまい。

 

 

「安心してね。今回のテストは成績に反映されない学力調査みたいなものだから。」

 

 

そう言って配られたプリントには日本史の問題が載っていた。

タイマーが動きだしテストが始まった。

名門校の問題に期待を寄せ問題文を読むと拍子抜けした。

問題は中学レベルであり、入試よりも簡単な内容だった。

スラスラとマークシートを塗り潰し、たまの記述問題もサクサク片付けていく。

 

 

残り3問だ。

 

 

 

"原始・古代から近世の瀬戸内地方について述べた文として正しいものを、次の1〜4のう ちから一つ選べ。

 

1 縄文時代には、魚群を見張るために高地性集落がつくられた。

2 平安時代には、源経基が海賊を率いて反乱を起こした。

3 室町時代には、主要な港で幕府や寺社などが津料を徴収した。

4 江戸時代には、堤を築いて潮の干満を利用する揚浜の塩田が普及した。"

 

 

 

1は魚群を見張るが間違い、2は源経基が藤原純友だから間違い、4は揚浜が間違い。

よって正文は3になる。

 

 

しかしこの問題は大学入試や応用問題集に出てくる難易度のもの。

そして中学日本史では学習していない範囲のものだ。

勿論4月時点でも学習範囲から大きく逸脱している。

残りの2問も現在の学習範囲になく難易度の高いものであった。

 

 

私は中学時代既に高校日本史の授業に入っていたため難なく回答できたが、一般的な公立中学に通っていた生徒には解けないものだろう。

問題の出題形式も大学入試を意識しているようだ。

 

 

やはりこの学校はきな臭い。

生徒の実力を図るためにしてもここまでの難易度の問題を出題する必要はない筈だ。

5教科分を終えるとやはりどの科目も最後の3問の難易度が跳ね上がっていた。

 

 

試験が終わると皆最後の難問について語り合っていた。

 

 

「最後難しかったよね?」

 

 

「うん。全然分からなかった。社会と理科の問題習ってなくない?」

 

 

「それ言ったら数学の問題も習ってないよ!」

 

 

「てか、この学校って勉強難しそうだよね?」

 

 

「それ思った。なんかついていけるか不安になってくるよね。」

 

 

どうやら彼女達はこの学校のレベルの高すぎる授業に早くも置いていかれそうになっているらしい。

 

 

ちなみこの学校の授業は、私にとって簡単すぎて退屈極まりないものだ。

まあ数学の長い計算問題と証明は手こずってしまったが、得意分野である日本史と今回の国語の問題はあまりにも簡単でつまらないものだった。

 

 

多分全科目9割を越えているだろうな。

社会科に関しては満点だと自信をもって言える。

 

 

ちなみに国語の試験で豆知識っぽい問題が出題された時は吹き出しそうになった。

 

 

"「紫式部」という名前の由来は?

 

①源氏物語の中の「紫の上」の名をとった

②単純に紫色が好きだった

③代々、紫色の着物を引き継いで着ていた

④当時、一番格の高い人間が着る服の色が紫だった"

 

 

正解は①だ。日本史を好きになり、日本史の文化作品に興味を持ち、平安朝廷や内裏の女御や更衣に興味を持った結果源氏物語にドハマりしてしまった。

そのおかげでこの問題は簡単に解く事が出来た。

 

 

やっぱり日本史は素晴らしいな。

私はそんな事を考えながら教室を出て寮に戻った。

 

 

5月1日。この学校にやってきて約一月が経過した。

 

 

「みんな聞いて!10万ポイントが振り込まれていないみたいなの!」

 

 

一之瀬の発言にクラス内が同調しざわつき始める。

だが私にとっては想定内だ。

 

 

「7万ちょっとしかないんだけど?」

 

 

朝のホームルーム開始のチャイムが鳴る。

ざわついていた生徒達も黙って席に着席した。

星之宮は大きなポスターとテストの答案らしき物を持って教室内にやって来た。

 

 

「みんなおはよう。今日はこの前のテストを返却します。名前を呼ばれたら返事をして取りに来てね〜!」

 

 

順番に名前を呼ばれ、私も答案用紙を受け取る。

国語98点、数学93点、英語97点、理科96点、社会科100点。

5教科の合計は484点だった。

 

 

やはり苦手な理系科目の失点が多いようだ。国語は最後の記述問題を誤答していたらしい。

社会は予想通りの結果だな。

 

 

「はい、みんなテストについて言いたい事もあると思うけど、これから大事な説明をするからよく聞いてね。」

 

 

星之宮はポスターを貼り出した。

ポスターには名前と点数が順位通りに書かれており、私の名前は数学と理科以外一番上に書かれていた。

 

 

彼女はマーカーでポスターに赤い線を引いていく。

 

 

「赤線の下に名前が書かれている人は赤点となり即退学がウチのルールです。」

 

 

赤点で一発退学とは厳しすぎやしないだろうか。

星之宮の発言でクラスメイトは放心状態となり固まってしまった。

 

 

「今回のテストでは赤点は無し!平均点も高く、よく頑張りました。この調子でち中間テストも乗り切ろうね。」

 

 

赤点が無いと言われた途端におおく多くの生徒が安堵したようだ。

 

 

「テストについて言いたい事はあると思うけど、今から学校のシステムについて説明します。よく聞いてね。」

 

 

星之宮はもう1枚のポスターを取り出し黒板に貼り付けた。

ポスターには以下の内容が書かれている。

 

 

 

─────────

Aクラス 940 CP

 

Bクラス 745 CP

 

Cクラス 490 CP

 

Dクラス   0 CP

─────────

 

 

 

「この学校では、優秀な生徒達の順にクラス分けがされるようになってるの。最も優秀な生徒はAクラスへ、ダメな生徒はDクラスへと。このクラスはBクラスなので、基本的にはDクラスとCクラスよりは優秀で、Aクラスには劣る生徒が集まっています。」

 

 

この発言に多くの生徒が顔を顰めた。

まあ入学してすぐにAクラスとの差が如実に出てしまったから仕方ない事だ。

私は中学時代に経験しているのでショックは少ないが、大半の生徒は辛いんだろうな。

 

 

「この紙に書かれた数値はクラスポイントと呼ばれ、このポイントに×100した数が、毎月一日に支払われるプライベートポイントになるよ。クラスポイントによってこれからクラス変動もあるからね。」

 

 

皆頭に?を浮かべているようだが、言葉通りの意味だよ。

恐らく"クラス変動"の意味を測りかねているのだろう。

 

 

「この学園には希望する進路を叶えるという謳い文句があるけど、この幸福を享受出来るのはAクラスのみです。」

 

 

残酷な真実を知ってしまったクラスメイト達はざわつき始めた。

人の話は静かに聞こうって事くらい小学生でも分かると思うんだけどなあ。

 

 

「クラスポイントが他クラスのポイントを超えればクラス変動が置き、上のクラスに行くことが出来るよ。」

 

 

この言葉には希望と絶望が満載だ。

Aクラスの生徒からしたら絶望的だし、不満を感じるだろうが、その他のクラスからしたら一抹の希望なのだ。

 

 

クラスのざわつきも消え、全員が星之宮の言葉に耳を傾ける。

 

 

一通り話し終えると彼女は質問を募った。

一之瀬が挙手をする。

 

 

 

浮き足立つクラスメイト達とは違って的確な質問をした。

彼女の評価を改める必要がありそうだ。

 

 

「質問です。今のお話を聞く限り4月の段階で私達は1000クラスポイントを持っていた事になりますが、今月は745クラスポイントに減少しています。これは何故ですか?」

 

 

浮き足立つクラスメイト達とは違って的確な質問をした。

彼女の評価を改める必要がありそうだ。

 

 

「それについては教えられない決まりなの。」

 

 

一之瀬はわかりやすく落胆した。

彼女の気分に合わせてクラスメイトも落ち込んでいるようだ。

 

 

まるで鏡合わせのような光景に思わず笑いそうになるが、なんとか堪えた。

空気に耐えかねたのか、星之宮はグレーゾーンな発言をした。

 

 

「みんな落ち込まないで。特別にアドバイスをしてあげる。まず生活態度や授業態度を正して、テストの勉強をしっかり行う。当たり前の事が当たり前に出来るようになろうね。」

 

 

もうその発言が答えだろ。

 

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 

アドバイスを貰えた事で一之瀬は嬉しそうに笑った。

それを見て他のクラスメイト達も嬉しそうにするのだから、これはもう一種の信仰なんだと思う。

 

 

小学校や中学校で先生が口うるさく言っていた事だ。

出来ない方がおかしいな。

 

 

そう考えるとギャアギャアうるさいDクラスや喧嘩の絶えないCクラスはかなりやばいな。

いや、Cクラスはまだ良い。

問題はDクラスだ。

一体何をしたら0ポイントになるのだろう。

 

 

Aクラスに興味はないが、個人でAクラスに行く方法については気になるな。

私は手を挙げる事にした。

 

 

「如月さんどうぞ。」

 

 

「はい。Aクラスに個人で行く方法は存在しますか?」

 

 

クラスの温度が5度くらい下がった気がするが気にしない。

 

 

「うんあるよ。2000万プライベートポイントを支払えばクラス移動が出来ます。後退学の取り消しにも2000万プライベートポイントが必要だよ。」

 

 

この発言はまあ驚いた。

1ポイント1円の価値だとしたら、2000万円の価値がある額になる。

Aクラスに行きたい訳では無いが、プライベートポイントは多く持っていたほうが得だな。

 

「ありがとうございます。」

 

 

「はーい。他に質問のある人はいるかな?無さそうだね。次は中間試験の範囲についてだけど──」

 

 

説明を終えると星之宮は一息ついた。

教師も毎回説明をしなきゃいけないのだから大変だな。

 

 

「最後に、先生は全員が中間テストを赤点を取らない方法があると信じています。頑張ってね〜!」

 

 

「最後に、先生は全員が中間テストを赤点を取らない方法があると確信しています。頑張ってね〜!」

 

ん?

今の発言はおかしいぞ。

 

 

教師の気持ちが含まれていたとしても、テストの結末を確信しているかのような発言をするのは有り得ない行為だ。

教師という立場でこの言葉を残す意味はなんだろう。

まるで、本当に赤点を回避出来る方法が存在するかのような口ぶりだった。

 

 

テストで赤点を取らないために行う事は勉強をする事。

今の発言で考えると、赤点を取らない方法は勉強する事となるがこれは確実性がない。

 

 

…そういえば中学時代にはテストの度に過去問を先輩から後輩に譲るという文化があったな。

同じ問題が出ないとはいえ、範囲が同じならトレーニングとして効果的だ。

つまり過去問を解く事が赤点を回避する方法の可能性が高い。

他にあるならカンニングとかになるが、それを許すとこの学校のシステムの根幹に関わる問題が起きるので違うだろう。

 

 

後で堀北会長に過去問について聞いてみよう。

 

「ねぇ、如月さんも一緒に勉強しない?」

 

 

そこまで親しくもないのに一之瀬に勉強会へ誘われた。

ちらりと隣に立つ神崎に視線を向けるとばつが悪そうに目を逸らされた。

 

 

「悪いけどこの後予定があるの。またね。」

 

 

「あっ、ちょっと!」

 

 

制止する声を振り切って教室を出る。

神崎め、余計な事言うなよ!!

 

 

後勉強会って効率悪いから参加したくない。

私は一人で黙々と教科書や問題集、参考書を解いている方が頭に入るタイプだ。

恐らく私の順位が一番上にあったから教師役として参加して欲しいのだろうな。

残念だが、このクラスに興味がないので手伝う理由もない。

赤点を取るような生徒がウチのクラスにいるとも思えないし、私が教師役となるのは時間の無駄でしか無い。

 

 

この日の放課後、私は堀北会長に会うために生徒会室に向かった。

道中Dクラスの横を通ったが雰囲気は最悪だ。

流石不良品の集まりである。

 

 

生徒会室の前まで来るとノックをし、返事が聞こえたので中に入る。

 

 

「失礼します。一年Bクラスの如月です。」

 

 

中には書記の橘先輩がいた。

堀北会長の姿は見当たらないので外出中のようだ。

 

 

「こんにちは。如月さんはどのようなご用件でしょうか?」

 

 

「実は少しお聞きしたい事がありまして。堀北会長はいつ頃に戻られますか?」

 

 

「すみません。私もつい先程帰ってきたばかりなので……そう時間はかからないと思いますよ。お急ぎの案件ですか?」

 

 

「いえ、そう言う訳ではありません。」

 

 

「でしたらここでお待ち下さい。お茶をお出しするのでソファーへどうぞ。」

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

私は橘先輩に促されるままソファーへ座った。

暫くすると紅茶が運ばれてきたので、それに口をつける。

生徒会室で出される紅茶は市販品とは比べ物にならないほど美味しかった。

この学校では飲み物一つでも相当なお金がかかっているんだろうな。

 

 

「この紅茶美味しいですね。何処のですか?」

 

 

「これは───」

 

 

橘と女子トークに花を咲かせる。

この先輩表情がコロコロ変わって面白いなぁ。

 

暫くすると生徒会室の扉がガチャリと音を立てて開いた。

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