※冒頭で実験的な演出があります。
(2024.01.19 追記) ここの数字は変えてない……まだ大丈夫……まほあこ原作の進捗次第で変わるかもしれない……
待たされるのは不快だが、今日のこれは自業自得だった。
手持ち
『始まった? ……こんにちは。私はラグドール。これから、
『カメラマンのホークスです。よろしく』
『彼に録画してもらう理由は、先入観の無い、第三者による検証が要ると思ったから。この先、彼女の能力を暴くため必要になるはずよ』
『この先ですか……俺ではアレを逮捕できない可能性があると?』
『記録中でも態度変えないのは好印象だけど、君はよく突っかかるおしゃべりツンツンバードだにゃ』
『にゃ』
『説明を始めるわ。彼女の個性【
……今言った
『これを視聴する関係者は、その都度、数の記録をお願いします』
ホークスはボールペンとメモ帳を取り出し、
と記録した。
『はい』
『まず、注意点から。これは私たちが
『支配者っぽいことはだいたい出来ますと』
『ひとつ目は【命令】。支配者が指示を出すと、被支配物はそれを実行する。操作能力ね。そのエネルギー源はマジアベーゼ本人と思われる。遂行後は力尽きるまで自律行動する』
『パワーの方はどれくらいでしたか?』
『力比べではピクシーボブに負けてたわ。今はもっといい勝負するかもにゃ』
『ああ、成長期かもしれませんね』
『ふたつ目は【命脈】と名付けた。支配者が受けるダメージを被支配物が肩代わりする。致死ダメージでもお構いなし。【サーチ】によると逆も可能。これは強力だけど欠点があって、二年前はマンダレイが……』
ホークスは動画を停止させた。
「
バイザーの隙間に指を入れて眉間を
(もう一人の
思案を巡らせていると、背後で扉を開ける音がした。
「お待たせしました。ホークスさん」
「いえいえ、こちらこそアポもなしに来てしまって」
ホークスは立ち上がって振り返り、頭を下げた。
彼はとある学校の応接室に、招かれざる客として飛び込んでいた。
「はじめまして。
その教師は挨拶をしながら、急須と
ホークスに奥の席を促し、その前に
13号と名乗った教師は、かつての宇宙服のような、全身をすっぽりと覆うコスチュームを身に纏っていた。
宇宙服と異なるのは、上半身の上着にあたる部分の裾が膝近くまで伸びているところだ。
これは救助活動時に着用する防火服の形状に近い。
「ご活躍はよく耳にしております。教師としても、救助専門のヒーローとしても」
「ありがとうございます。本日お越しいただきましたのは、どのようなご用件でしょうか?」
「はは、お忙しい所にすみませんねぇ」
「いえいえ、そちらもお急ぎのご様子なので」
(なら待たせるなよ……なんか警戒されとるなぁ)
笑顔を保ち、
「では早速ですが、オールマイト氏がこちらに訪問されている筈……」
「オールマイト氏は公人ですが、そのプライベートのご動向につきましては本校と無関係のため、本校としましてはお答え致しかねます」
「……そちらの教師に内定されていると存じ上げておりますが?」
「今は、まだそうではありませんので」
昨日決まった事実をぶっこんでみたが、取り付く島もなかった。
ダメ元で本音を漏らす。
「俺としてはそちらへ、筋を通しておきたかっただけなんですけどね」
「マスコミみたいなことをおっしゃる」
教師の表情はその重厚なコスチュームに隠されており、よくわからない。
しかし、その声には少し怒りが混じっているように感じた。
「ヒーロー公安委員会より、あなたへ『特別の配慮』を要請されてはおりますが、無理筋を通せという依頼は受けておりません」
お茶を飲みながらそれを聞いたホークスは、この場でのオールマイトとの会談を諦めた。
「承知いたしました。では本日はお会いできないということで、お
ホークスは席を立った。
それに合わせて教師の方も席を立つ。
「ひとつだけ」
去り際に教師へ声をかけた。
「……何でしょうか」
「市民を不安にさせないのがヒーローの第一義です。『柱』が揺らいでいるかのような態度は極力漏らさないようお願いしますよ」
「頼り過ぎだと思わないのか」
「それが何か?」
「……ご忠告はありがたく」
彼はその言葉を聞き流し、そそくさと退室した。
──隣の部屋で、その会話を聞いてしまったオールマイトは恐縮しきりだった。
(うわああ、ギッスギスぅーっ!!)
聞きたくて聞いたわけではない。
彼の鍛え抜かれた聴覚がそれを聞き取ってしまっただけである。
……などという言い訳も、眼前の人物に言われるがままこの部屋に来た立場では言い切れなかった。
「追い払い成功だね」
「せっかく会いに来てくれたのに……」
「相変わらず甘いお人だ。あなたも本来なら、あの程度はカマしていい立場なのさ」
彼にそう言ったのは、向いの席に座る、ネズミが服を来たような姿の人物だった。
その人物は、この雄英高校の校長であった。
動物に『個性』が宿ったという稀有な例であり、さらにその『個性』により授けられた知能と知性により、現代の個性社会における倫理、平和的思想の構築に多大な影響と功績を残した。
その可愛らしい見た目によらず、偉人に相当する人物であった。
オールマイトと同様、校長にも隣の会話は聞こえていたようだ。
知らぬそぶりで、ゆったりと専用の椅子に全身を預け、お茶請けのナッツをガリガリと
「いやはや、返す言葉もない。でもそういうの苦手なんですよ」
「そのせいで君の後を継ぐ子は苦労するよ」
「ううむ……」
オールマイトは笑顔の端に、少し困った表情を漏らした。
地味目のライトベージュのスーツに袖を通してはいるが、その肉体は身長二百二十センチ、体重は二百五十キログラム超の圧倒的巨体である。
その男が少し表情を変えただけで会場は凍り付く。
人前でいつも変わらぬ無敵のオールマイトスマイルは、そんな失敗を繰り返して身につけた究極奥義のひとつであった。
「自分でやらなくてもいいさ。でも後進を育てるつもりなら、最低限の腹芸は修めてくれたまえ」
「私もいい歳です。ある程度は心得もあるつもりですが……」
「その認識が『甘い』と言っているのさ」
「ぐふっ……」
痛いところを突かれてオールマイトは絶句した。
確かに正直、甘い願いが叶うならば、ずっと何も考えず『平和の象徴』を続けて、そのままくたばりたい。
しかし、まだ遠くだとは思うのだが、いよいよ『高齢者』の三文字が地平線の向こうからちらりと顔を出しており、さらにこの身体も膨大な古傷と内臓欠損を抱えている状態。
その状況でそんな無責任はさすがにありえない。
何より、受け継いできた『
本当ならば、こんなギリギリにならないようやっておくべきだったという負い目は確かにある。
「失礼します」
その部屋に、13号が入ってきた。
その片手にお盆を持っている。
「おや、お二人共こちらでしたか。お帰りになりましたよ」
「お疲れ様。どうだった、13号先生?」
ふんす、と鼻息も荒げて13号は答えた。
「立場と権限を利用することしか考えていない、いけ好かない子です。教育が必要ですね」
「あ、その急須いただいてもいいかな?」
13号が片付けようとした、お茶の入った急須を、慌ててオールマイトが預かった。
「……新しいのをお持ちしますけど?」
「いいんだいいんだ! これがちょうどいいから!」
「はぁ」
その部屋は給湯室を兼ねた、職員専用の簡易食堂だった。
当初、校長室で諸々の詳細を詰めていたオールマイトと校長。来客の知らせを受け、名前を聞いてその意図を察した13号が応対を志願したので、それを追ってコソコソと隣のこの部屋で様子をうかがっていた。
「なるほど、お聞きになられていたんですね。気を遣わせてしまいました」
「最後のはホークス君の言うとおりだね。オールマイト君はこのように健在だ。そういうのはまだ早いのさ」
「はい、反省します」
オールマイトは揺らぐ事なき緩やかな笑みを維持しながら、内心非常に焦っていた。
ヒーロー公安委員会の意に沿う行動をし、代わりに何らかの便宜を図ってもらう。
長年のヒーロー経験の中で、ヒーロー達の中にそういう不確かな『派閥』のようなものが存在することは知っていた。
ホークスは表向き、華やかなトップヒーローである。
しかし、裏では今代におけるその派閥の筆頭格ではないかという噂もあった。
「速すぎる男」という異名は、その便宜により活躍の場が用意されているのではないかという嫉妬と
そして今回、委員会側からのあからさまな『要請』もあった。
彼が何らかの意を受けて、自分に何かをさせようとしたことは間違いない。
オールマイトは、そんな
いや、思いつきはするのだが、それに加えて自分が軽薄な奴と思われないようにしたいという
ヒーローになってから、かれこれ四十年以上、平和を守るための揺るがぬ強さと意志、そして市民の心を上向かせるための愛想とユーモアに全てを注いできたこの男は、ローカルな人間関係の機微については
「僕は、災害救助が専門ではありますが、オールマイトさん」
「は、はい!」
「あなたが退かれた後の時代を生きるヒーロー達を育てているつもりです」
13号は、食器洗い機に
「我々より下の世代は、あなたがヒーローになる前の時代も、平和の
食器洗い機のスイッチを入れて、オールマイトの方に向き直った。
「でも、我々の世代は、あなたがどんな水準の『平和』を目指して、休みなく戦い続けてくれているのかを見ながら育っています。だから、僕はこれからの平和の守り方、支え方を学ばせて、生徒達をヒーロー社会に送り出すつもりです」
「うん」
「その時代が来れば、あのように、平和のためならどんな横紙破りも辞さない。そういった荒んだ姿勢こそが市民に不安をもたらすことになるでしょう。彼がそうならないよう、僕は今後もお小言を繰り返させていただく所存です」
そう言って、ぺこりと頭を下げた。
「では、次の授業がありますのでこれで失礼を」
退室していく13号を、オールマイトはじーん、と感じ入りながら見送った。
「ああ、
「見ての通りなのさ。君が支えてくれている平和は、次の世代に、新しい視点を育んでくれたよ」
校長は、専用の小さなカップに注がれた、紅茶の匂いを楽しむ手を止めた。
「君の時代の後を生きるヒーロー達のための倫理とカリキュラムは、もうとっくに構築済みなんだ。問題はまだそれを実践できる環境が、ごく一部の学校にしか行き渡っていないことさ。これは単純に予算と……私の実力不足だね」
「そんなことはありませんよ。いやでも予算は確かに……アレはちょっとなぁ」
うーん、と二人揃って腕を組み、首を傾げる。
「平和というのは難しいね。だからこそ、あなたにはもう少しだけ時間を稼いでもらいたいのさ」
「やって見せますとも!」
「もちろん『次代の象徴』も育ててもらうけどね」
「……重たいなぁ」
「ハハッ、腹を割って相談してくれたからには、僕ら雄英教師陣が全面的に手伝うとも。大船に乗ったつもりでいいのさ」
「よろしくお願いします」
オールマイトは深々と頭を下げた。
──晩春の朝。すでに日も登ったその街の空は青く澄み渡り、その街路でいくつかの木々が鮮やかな花を付けていた。
すこし冷えの残る空気を感じながら、
「ボッとするなよ。切り替える意識を忘れるな」
隣から、元ヒーロー、レディ・ナガンこと
海岸清掃のボランティア活動で知り合ったその女性は、過去の記録をよく調べてみれば、映像付きでその情報が手に入った。
当代でも最高クラスの狙撃専門個性『ライフル』の持ち主。
そんな人がなぜヒーロー活動をやめてしまったのか。
どうしてこんな所で、隠れるように細々しく暮らしているのか。
出久はまだ彼女に対してそれを聞けるだけの親密さを持てていなかった。
『
ボランティア活動の帰り道、そんな狙撃手の前で、趣味のカメラの話のつもりで言ってしまったのが運の尽きであった。
なぜか翌朝から、登校前にこうして
「眼は遠くを見るときは緩み、近くを見るときは締まる。緊張すればすぐに視野は狭くなる」
出久は座り込み、彼女はうつ伏せに寝転んで、それぞれのスコープを眺めていた。
ちなみにひとつの偽装ネットを二人で被っている。
何がとは言わないが、当初は距離感と体温のぬくもりがヤバく、鍛えられつつあってもクソナードの域を出ない出久にはアレがたいへんアレであった。
「だから基本はリラックスだ。だが散漫にはなるな」
「はい」
「散漫になるのは動物の本能だ。動物はそうやって視野の切り替えと乱数回避を同時に行う。人間は理性でそれより早く切り替えられる」
スコープで何を探すのか、筒美が指定する目標は毎日変わった。
今日の目標は「
「次は先入観だ。特別なものを見つけるためには、むしろ見る価値がないものの存在を意識しろ。『余計なものがそこにある』という先入観を持って見ることが、違和感を見つけるためのフィルタになる」
言われたとおり、スコープを操作して街を見まわし、雑踏の中を見るべきでないものから順番に意識していく。
すると、それは偶然だったが、確かにするりと不審な動きをする人物を見つけてしまった。
出久はすぐさま報告する。
「今、駅前のコンビニに入った異形の男性。様子がおかしかった」
「私も見えた。ドレッドヘアのでかい奴だな? 何に気づいた?」
「半歩進んでから、戻って店に入った。あとは顔がなんとなく」
「まあまあだな。あいつ葉っぱやってるぞ」
「えっ?」
スコープ越しに、その不審者が、コンビニから走り出るのが見えた。
おそらくバッグであろう、黒いものを小脇に抱えている。
「引ったくりだな。通報しろ」
「はい!」
出久は偽装ネットの中にある、電源がついて開きっぱなしのタブレットを素早く操作した。
タブレットはスコープに接続されており、その画面はヒーロー公安委員会が運営するネット通報サイトを表示している。
そのサイトにスコープの映像と位置情報を送信した。
すぐさま、パトロール中の警官が駆け寄り、逃走中の男は道を引き返して駅に駆け込む。
その鉄道は高架となっており、ホームに向かった男は何かを叫びながら雑踏をかき分けて、駅は大騒ぎとなった。
通報から三分もせずにヒーロー達が到着し、それを見た男は線路内に逃げ込み、突然巨大化した。
「うわっ、でっけー」
「近いな。巻き添え食らう前に下りるか」
「ですね」
二人は道具を手早く片付けて建物の非常階段を降りていく。
階段から、おそらく『個性』で怪物と化した
階段を降りて、筒美はライトバンの後部座席に荷物の入ったバッグを置いた。
そのバンの側面には黄緑色のラインで『えのるみいた』という気の抜けたロゴが入っていた。
「今日はここまでだ。送ろうか?」
「いえ、ちょっとヒーローの写真を……」
あからさまにそわそわし始めた出久に思わず吹き出しながら、彼女は運転席に乗りこんだ。
「学校ちゃんと行けよ」
「お疲れ様です!」
運転席の窓から手を上げるのが見えた。
出久は頭を下げてその車を見送ると、そそくさとリュックサックからカメラを取り出した。
重低音のエコー混じりの、それでいて華のある女性の巨大な掛け声が空気を震わせる。
『キャニオンカノン!!』
主要幹線を疾走した全長20メートルの女性ヒーローが大地を激震させて跳躍し、
「キタコレ」
「キタコレ」
「キタコレ」
「キタコレ」
「
出久は全力スプリントから、自分の毛根を信じて仰向けのヘッドスライディングを敢行し、地を這うようなアングルでその女性ヒーローの巨大な尻を撮影することに成功した。
※実験的な演出についての確認済み仕様(2023.05.01時点)
【文字を入れ替える演出】
・blinkの代わりにfadeでもいける
・absoluteの仕様上、行の頭から9文字目までしか機能しない
・overhiddenは可能
・inviewは不可能
・文字色の変更可能
・blur, vib 可能
・shakeも可能だが行の高さを確保しないと崩れる
・centerを差し込むとスマホで機能しなくなるため、sp, pc の切り分けが必要になる
・試行錯誤とテストに4時間