デクvsマジアベーゼ   作:nell_grace

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今年もよろしくお願いします(風邪をひいたり、DIYリフォームにいそしんだりしておりました……)
一度休んでしまうと復帰が大変ですね……本当にお待たせしております。

※1月の間に、前話までの投稿について修正を入れました。
※お話しの内容にまったく変化はありませんがほんのり読みやすくなったかもしれません。
こちらのイレイザーvsマスキュラーのシーンのみ、修正量は少ないですが『抹消』の解釈誤りがありましたので内容を変更しました。

【もくじ】
01.青山と1年B組
02.塩崎(しおざき)(いばら)
03.爆豪宅にて

※02に塩崎さんのちょっとおセンシティブな表現があります。
※03に爆豪くんと爆豪くんのお母さんについて原作改変要素があります。



(3)爆豪宅にて

 

01.青山と1年B組  

 

────────

 

青山(あおやま)優雅(ゆうが)は1年B組に混ざってヒーロー基礎科、戦闘訓練の授業を受けていた。

訓練の内容はヒーロー側と(ヴィラン)側に分かれて二人組同士で戦うというもの。

くじ引きの結果、順番が最後になった青山はヒーロー側として建物の入り口に立っている。

 

その身に纏うは白銀の塗装がされた鎧のようなコスチューム。

腹部と両肩、両膝に取り付けられた、カメラのレンズのような装置が目立つ。

背中は首から膝下まで、紫色で光沢のある滑らかな生地のマントで覆われていた。

首から下を装甲で固める一方、その頭部には身を守るものを着けておらず、左右に大きく伸びた赤いバイザーが目元を覆うのみであった。

 

青山はやる気に満ちていた。

初日を()()で休み、さらに()()()でコスチュームは緊急改修を強いられ、とどめに今週の授業もUSJ事件で潰れてしまい。

そんな境遇の彼にとって、これが初めて万全の状態で受けられるヒーロー基礎科の訓練であり、心は踊っていた。

 

 

──もちろん、後ろ暗さもある。

 

青山は柊うてなと同様に正体を隠して雄英高校に潜入した、(ヴィラン)の手先──今は悪の組織エノルミータの一員である。

入試に合格したのは本人の実力だが、その動機はヒーローとして全く相応しくないものであって。

だが、悲しい(かな)、彼の自尊心はすでに()がれ落ちてしまい、うしろめたいものを抱えながら日常を送ることに慣れてしまっていた。

 

それでも、それでもだ。

きらめくこの世界への憧れと、汚れてでも手に入れたい未来の平穏のために、柊やエノルミータとは関係なく、青山はこのまま学業を進めるところまで進めるつもりでいた。

 

 

──青山はぱっと相手の注意を引くような動きで横を向き、ウインクを交えて、少しおどけた調子で声をかけた。

 

「あらためて、よろしく、ネ☆」

「……」

 

だが、その相手は胸の前で両手を組み、目を閉じたまま、何も答えなかった。

その背中で、いばらの枝(つる)のような形をした髪がそよ風に揺れている。

 

彼女の名は塩崎(しおざき)(いばら)

1年B組に所属する生徒のひとりで、今回の訓練で青山と共闘する一時的なパートナーであった。

 

そのコスチュームは純白の、トーガと呼ばれる布の上着のみ。

ローマ時代の大理石像がよく身につけている、ひだのついた生地を被ったような衣装である。

彼女の衣装は本場のそれとはやや異なる形状で、ワンピースの形状にアレンジされていた。

そのコスチュームは左肩に引っ掛けただけのワンショルダーで、右肩から胸元にかけては健康的で血色感のある肌が大胆に露わになっている。

 

「えっと……事前に作戦とか、立てる?」

「……」

 

めげずに声をかける青山。

塩崎は口を開かず、左目を空けて青山を見つめ返し、少しの後また目を閉じた。

そしてまた祈るようなしぐさに戻ってしまった。

 

「フフ……」

 

再び無言で返され持たない間。

取り繕うように微笑む青山。

 

だが、今度はかろうじてコミュニケーションが成立していた。

つまりは、事前の打ち合わせはなしで、訓練開始を静かに待とう。

そういう意思表示だと理解した。

 

(独特な雰囲気だな……優しいけど、どこか厳しい感じだ……)

 

青山が昨年まで通っていた中学校はミッション系だった。

塩崎の態度はそこで非常勤講師を勤める牧師たちのそれを連想させる。

 

思い返せばその中学生活は、集団に溶け込み普通に『個性』を持つ、普通の優等生として過ごすことのできた、彼の半生でもっとも穏やかな期間だった。

雄英高校を受験することになってしまった、最後の一年を除けば。

 

(……やめておこう。思い返しても、どうして()()()()()のかなんてわからないし)

 

なにより今は授業中だ。

青山は思わず浮かんだ感傷を振り払うように、軽く首を振った。

 

そして隣で黙想している塩崎に(なら)い、両手を腰に、開始の合図を待つ。

目の前の訓練に集中しようと思うと、自然と背筋がのび、目線が上がってこれから挑む建物の入り口へと向く。

 

すると、塩崎のとげとげしい雰囲気が少し和らいだように感じた。

どうやら彼女の望む正解に適ったらしい。

 

(……さて、我らが総帥(マジアベーゼ)は『そこそこ本気だせ』とのご意向だったが、どうしようか?)

 

そのまま数十秒、考えを巡らせていると、建物に取り付けられたスピーカーから音がした。

 

『さあラストだ。ヒーロー側青山、塩崎。(ヴィラン)宍田(ししだ)庄田(しょうだ)。戦闘訓練開始!』

 

相澤(あいざわ)先生の声で、開始の合図がされた。

 

青山は立ったまま、まだ動かなかった。

どこかで回っているであろうカメラを意識して、いつも通り自信満々の笑顔を作って見せる。

 

考えがまとまっていなかったというのもある。

それに加えて、隣の少女の髪がざわりと音を立てて伸び始めたというのもあった。

 

(これは索敵……だから待ちでいいよね?)

 

青山はほのかに草の匂いを感じた。

塩崎の髪は植物の(つる)が成長するように伸び続けており、それは彼女を中心に数メートル全方位へと──青山の足元も巻き込まれている──展開した後、ゆっくり歩く程度の速度で建物に向かって進んでいる。

 

塩崎本人は動かず、目を閉じ、祈るような姿勢で立ったままだった。

数秒後、塩崎の顎が少し上がり、目を閉じたまま、彼女はようやく口を開いた。

 

「来ます。ふたり共です」

「ウィ☆」

 

青山が軽く返事をして身構えると、真正面、建物の入り口から何か大きなものが飛び出した。

 

それは2メートルをゆうに超える巨体だった。

特にその両腕は立派で、青山程度の体格なら片手で持っていかれてしまうだろう。

 

上半身は獣じみたブラウンの体毛に覆われて、頭部は完全に猛獣のそれだった。

色のついたゴーグルが装着されていることで、かろうじて文明人だとわかるその獣面が、大きな口を開いて言葉を放った。

 

「アアアッ青山氏ィッ!! 参りますぞォォー!!」

「めっちゃハイだね☆」

 

青山はその声を聞いてようやく、それが宍田(ししだ)獣郎太(じゅうろうた)だとわかった。

元は青山にとって親しみやすそうな、育ちのよい雰囲気の少年だったが、『個性』でこのように獰猛(どうもう)な姿に変身できるらしい。

 

塩崎の髪がざわりとうごめいた。

鋭い(とげ)を持った蔓がぶわりと広がり、網目を作るように絡まり、宍田を止めようと覆い被さっていく。

 

だが、宍田は大きな両腕を同時に振り、その蔓のカーテンを軽々と引きちぎってしまった。

蔓には見るからに痛そうな(とげ)がついているが、体毛から表皮まで頑丈なのか、宍田はまったくものともしていない。

 

「ここは僕が」

 

さらに前進する宍田を迎え撃つように、青山は一歩前に出た。

 

「はい」

 

塩崎は()の返事をしたものの、その場を動く様子はなかった。

 

「その装備……光学系の『個性』と見る」

 

猛然と迫る宍田の方から別の声がしたかと思うと、彼の背中から丸い人影が飛び出した。

 

「!?」

 

それはもうひとりの対戦相手、庄田(しょうだ)二連撃(にれんげき)だった。

丸っこい体が弾むような瞬発力で塩崎の蔓を飛び越え、そのまま青山に向かって腕を振りかぶる。

庄田が上から、それを追うように宍田が低い姿勢で迫り、二人は同時に青山へ殴りかかる形となった。

 

「まずは拝見」

「ですぞぉォーッ!」

 

青山は緊張に唇を軽く巻き込みながら、手を腰に、そのまま迎え撃つことにした。

開始前に検討していたいくつかの「きらめきプラン」は捨てて。

 

(やっぱりやりたいようにやろうかな。淑女を護るナイト役☆)

 

『ネヴィルレーザー・ファランクス』

 

青山の掛け声に、視覚的には何も起きなかった。

だが、彼に肉薄し、それぞれ拳を振るおうとしていた宍田と庄田の二人は体ごと弾かれた。

彼らの周囲の空間で、とても細かい何かが光りを放ちながら舞い散っている。

 

「むっ」

「なんとォッ!?」

 

青山は二人のうち、空中でより体制を崩したように見える庄田を狙った。

 

「!?」

 

が、そこで青山は庄田とばっちり目が合った。

 

(誘われたか!?)

 

観察されていることを察した青山だが、もはや攻撃を止められるタイミングでもなかった。

 

『ネヴィルレーザー!』

解放(ファイア)!』

 

青山と庄田が同時に叫んだ。

青山の腰につけられたベルトのバックルにあたる部位、その中央から太いレーザー光線が生じ、庄田のぽっちゃりした身体に照射されようとした。

だが、その寸前に青山は横殴りの衝撃を受けて大きくよろめいた。

 

「ぐっ!?」

 

倒れまいと腰を屈める青山。

その腹で暴れ出し、無作為に地面を引っ()き始めた光線を慌てて止める。

崩れた姿勢を立て直すと、庄田も軽やかに着地を決めていた。

 

「ふむ……」

 

(ヴィラン)チームの小さい方、庄田はすこし太めの丸い身体をよりマッシブに、筋肉を強調するようなラインの入った、ぴっちりした黒いスーツを身につけている。

その左目にはモノクルのような形状をしたバイザーを装着しており、それはモニターが付いていて、チカチカとなんらかの映像が表示されているのが見えた。

 

「マーク完了……その『個性』、威力、速さに加えて防御も申し分なし。遮蔽物を用いて迎え撃つほうがよいと見た。宍田くん、引き上げよう」

「おおっと!? 承知ですぞ!」

 

巨獣の姿をした生徒──宍田は尻餅をついた姿勢のままその攻防を眺めていたが、声をかけられてはっと気がつき、慌てて庄田を担ぎ上げると建物の中に駆け戻っていった。

 

「今の衝撃は……『個性』なのか?」

 

青山は打たれた顔をさすったが、傷や打ち身はできていなかった。

どうにか迎え撃つことはできたものの、あっという間の攻防で、気持ちがまったく追いついていなかった。

乱れた前髪をかきあげながら、息をつき、誤魔化すように塩崎に声をかける。

 

「大丈夫? えっと、髪とか……」

「……紫外線」

「え?」

 

だが、塩崎は空気を読まずに自分が言いたいことを言うタイプのようだった。

 

「光の波長を絞って、人の目に見えない光線を放ったのですね。しかもあんな小刻みに……」

「……見えたの?」

 

青山が問いかけると、塩崎の目が開き、その表情が初めて動いた。

彼女はうっすらと笑顔を作って見せた。

 

「見えたと言うのは語弊があります……さわりだけお答えしますと、私のように植物の『個性』を持つ者は光に敏感です。覚えておくとよいでしょう」

「なるほど……要改善だね、メルスィ!」

「どういたしまして。善き『光の個性』ですね」

 

寡黙そうな雰囲気の塩崎だが、口を開けば言葉ははきはきとして、普通に快活な印象を受けた。

 

「髪のことはお気になさらず。いくらでも伸ばせますので」

「ウィ」

(ひいらぎ)さんと青山さん、お二人の誠意は見せていただきました」

「フフ☆ こう見えて僕たち、まだまだ隠してるかもしれないよ?」

「良いのです。どのような『個性』かはよくわかりましたので」

 

青山はおどけながら、少し罪悪感があった。

彼もそうだが、柊の方は彼以上にひとかけらも実力を見せていない。

 

悪の組織エノルミータの総帥、マジアベーゼを称する柊うてな。

青山優雅を魔法少女に改造した黒幕のひとりでもある。

青山同様、正体を隠し雄英高校に通うかの(ヴィラン)は、学校においてほとんど個性『支配(ドミネイト)』を使っていなかった。

 

「『そこそこ』という事なら、こんなものでしょう」

 

──柊うてなが授業で見せているのは『魔力』のみ。

個性『使い魔創造(クリエイトファミリア)』と偽っているその能力は、彼女が魔力でそれっぽく見せているだけの捏造(ねつぞう)『個性』である。

 

「……それに比べて、あのふたりは……一体どういうつもりなんでしょうか……」

 

塩崎が建物の入り口をにらみながら低い声で言い放った。

青山は彼女の髪がざわざわと荒れていく様子を見た。

 

(え、急にご機嫌ななめ?)

 

表情の動きは小さいが、『個性』で動く髪の方には彼女の感情がよく乗るらしい。

塩崎は建物を見上げると、青山に近づき、その肩に手を乗せた。

 

「このまま、少々お待ちを……有言実行、その誠意に敬意を……そして無気力には戒めを。のちほど私も『そこそこ本気』をお見せしますので」

「う、うん……?」

 

とまどいを隠せず、青山はあいまいな返事をしてしまった。

彼はこの時点ではまだ、塩崎の性格を(つか)みきれていなかった。

 

 

──建物の最上階で、(ヴィラン)役である庄田と宍田のチームは、せっせと襲撃に備えていた。

強力な『個性』を持つ塩崎への対策を重視した位置どりだった。

 

「塩崎さんの蔓は垂直方向への展開に難がある。腰の高さほどの障害物でも足止め、時間稼ぎになるはずだ」

「心得ましたぞ!」

「おそらく時間ギリギリまでの勝負になる。焦れた塩崎さんをこのフロア近くまで引き込んで、乱戦、接近戦に持ち込もう」

 

宍田は獣化によるパワーを活かし、壁材などを()がして資材を増やし、通路を塞ぐ作業を進めていた。

 

「それにしても、青山氏の『個性』……あれは一体?」

「あれはおそらく『レーザー機銃』だ」

「なんとっ!?」

 

宍田は手を止めることなく動いたまま、ギョっとするジェスチャーをして見せた。

個性『ビースト』による獣化は、それに合わせて性格まで変えてしまうらしい。

 

普段は品行方正に手足が生えたような慎み深い人柄なのだが。

庄田はその豊かなリアクションを内心で笑いながら、表面上は仏頂面で見解を述べた。

 

「不可視の光線を小刻みに、バラバラに照射したんだ。秒に数十も放てればそれはもはや弾幕になる」

「なるほど! ですが『レーザー』では私の巨体が弾かれた理由の説明にはなりませんぞ?」

「僕の恵体(けいたい)も弾かれたな。なので見立てを修正すると、彼の個性は『レーザーの()()()()()』ということになる」

「ようなもの?」

「見た目はレーザーだが、実際は照射地点に対して物理的に破壊を……運動エネルギーを生ずるということだ。いわゆる、ブラスターか」

「それは厄介ですな!」

「かなり」

 

宍田は資材を担ぐポーズのまま庄田の方に振り返った。

 

「どうしてわかったので?」

「あの時、我々の周囲でキラキラ光るものが舞っていただろう? あれは君の体毛だよ」

 

驚きのあまり宍田は資材を取り落とし、大慌てでわさわさと自分の体を確かめはじめた。

 

「い、言われてみればちょっと毛並みを()かれた感じがしますぞ!?」

「物質を光とエネルギーにまで分解。つまり、()()()相応の破壊力だということだ。強すぎる力を日常に耐えられる水準まで()()()()()()()という意味では、小森(こもり)さんや鎌切(かまきり)君と同じタイプだな」

「あの短い攻防でそこまで……お見事ですぞ」

 

宍田は明るい声で賞賛を送ったが、一方でその毛並みがしおれているようにも見えた。

それに気づいた庄田は、率直に尋ねることにした。

 

「何を落ち込んでいる?」

「……色々と思うところはあります」

 

宍田は沈んだような表情で、両手の人差し指の先、鋭い爪をつつき合わせた。

 

「ですが、まずは庄田氏に使()()()()しまったことを……」

「それはいい。『ダブルインパクト』は最初から使うつもりだった」

 

庄田は手を振って否定する。

 

「……咄嗟(とっさ)()()に仕込んでみたが、秒足らずで発動すればそこまで拡散せずに残るな……思わぬ収穫」

 

そう『個性』を評価しながら手を握ったり開いたりして見せた。

 

「ですが、物間氏は隠せと……」

「僕は彼の意向に賛同していない」

「そうなのですか?」

「『体育祭までA組には個性を隠しておけ』という話だったが」

 

意外だ、という表情を見せる宍田に、庄田は拳を握って見せた。

 

「確かに僕はこの『個性』ゆえに策を好む。だが同じくこの『個性』ゆえに遠回しの(から)め手は好まないのだ。なるべくなら直接やりあえる範囲で競いたいな」

「おおー」

 

(しかし、来るのが妙に遅いな……?)

 

庄田は腕に取り付けたモニターを確認しなおした。

光点が二つ点滅し、対戦相手二人の位置を表している。

それは彼の『個性』をさらに活かすために考案されたサポート装備であり、あまり距離は補足できないものの、波長をマーキングした対象に絞ってレーダー波を照射し、追跡する方式の対物レーダーであった。

それによると、青山と塩崎はまだ動かず、建物に侵入すらしていない。

 

宍田がぼそりとつぶやいた。

 

「……皆さん、よく考えておられますな」

「急にどうした?」

 

庄田がバリケード作りに加わりながら続きを促す。

 

「私は生まれに恵まれたと自負しております」

「ふむ」

 

宍田も手を動かしながら、ぼつぼつと話しはじめた。

 

「それに見合う、不断の努力を以てここまで来たつもりです……ですがクラスの皆を、特に物間(ものま)氏を見ていると、私はまだ考えが浅いのではないかと……」

「いや、さすがに彼はやりすぎだと思う。あれでは、いずれ敵を作ってしまうだろう」

 

──だが、おそらくは、と庄田は考える。

物間は最初からそういった逆風も飲み込むつもりで、ああいう態度を取っているように見える。

かの皮肉屋の立ち振る舞いを、庄田はそう解釈していた。

 

「……バリケードはこのくらいで良さそうですな」

「あのふたりはまだ動いていない。どの方向にも動けるよう、核の手前で待とう」

「承知ですぞ」

 

フロアの中央に、(ヴィラン)側の防衛対象である、核を模したオブジェクトが鎮座している。

その前に陣取りながら、庄田と宍田は話を続けた。

 

「確かに見習うべきところはある。僕はヒーローに()()ために雄英を選んだが、ヒーローに()()()後の事まで考えていなかった。入学後しばらくはモラトリアムがあると思っていたけど、今思えば甘かったな」

「ううむ、私はそこまですら考えが至らなんだ……」

 

二人揃って、小さくため息をついた。

 

「我々雄英生は学生でありながら、体育祭ではメディアを通じて社会に露出する。である以上、体育祭にはもう()()()()()()臨まないといけないのだろう……少なくとも、物間くんと柊さんはそういう考えのようだ」

「ヒーローとしてのキャリア戦略というわけですか」

「あるいは実践の意識か。A組と差を感じるのはその辺りなのかもしれないな……だが1年B組の生徒として、僕はその考えに疑問を呈したい」

「と言いますと?」

「なぜならば、それだと()()()()()()がもっとも正しいということになってしまう」

「それは確かに……痛っ!?」

 

突然痛みを訴えた宍田の足元を見ると、彼の足首に鋭い(とげ)を生やした蔓が巻き付いていた。

 

「んなっ!?」

 

それを見た庄田の顔から、無愛想の仮面が崩れ落ちた。

彼は宍田以上に動揺していた。

この状態の宍田が()()()()()()()()ということが大問題だった。

 

「宍田君! 君の()()()()()()のはいつからだ!?」

「えっ!? あっ! あれっ?」

 

まだ状況を飲み込めていない宍田に向かって捲し立てると、彼は鼻先をひくつかせながら青ざめた。

 

「このほのかな草の香り……しか匂いませんぞぉ!? まさか塩崎氏が!?」

 

彼の個性『ビースト』は、発動すれば体格だけでなく感覚も獣じみて鋭敏になる。

特にその嗅覚は犬のように三次元の距離感を嗅ぎ分けられるようになり、索敵に十分使えるレベルまで増強されていた……そのはずだった。

 

「しまった……悠長にやっていたのは僕らの方だ!」

 

ふたりが互いの背を守るようにして身構えると、ザワザワと草の擦れるような音が全周囲から聞こえはじめ、ほどなく窓という窓から茨の蔓が伸び降りて、室内に入り込んできた。

 

「なんと、上からとは!」

「一体どうやって……」

 

ガチャンと何かが割れる音がして、窓から蔓が飛び込んできた。

その蔓の先端は輪を作る形で結ばれ、投げ縄のようになっている。

 

「なるほど、ああやって蔓を屋上まで投げ込んでいるようですな」

「なんという腕力的解決!」

 

さらに投げ込まれた蔓を足がかりに、巻きつくようにして無数の蔓が伸びてきた。

そのままフロア全体を覆うように緑のカーテンが広がっていく。

庄田が迎撃を選ぶに至った、その前提条件が崩れてしまっていた。

 

「くっ、僕のミスだ……」

 

消沈する庄田を複数の蔓が襲った。

だが宍田がそれを庇うように飛び出し、そのブラウンの毛皮で蔓を受け止めると、まとめて(つか)みあげ、力任せに引きちぎった。

 

「庄田氏、落ち着いて! まだ薄いです、十分振り払えます! 場を立て直しましょうぞ!」

「すまない!」

 

ちぎられた蔓がまだ動き、そのまま宍田に巻きつこうとする。

宍田はそれをひとまず巻きつくに任せた。

 

「ぬぅ……ガアアアッ!!」

 

そして雄叫びをあげ、上半身を膨らませるように力を込めて、体に巻きつく蔓を全てちぎり飛ばした。

 

「あっ(つう)っ! 痛い! 毛皮貫通した! このトゲのビスビス感! これは塩崎氏、だいぶ気難しくなっておられるご様子! いったいなにゆえ!?」

「次善の策に移る! 宍田くん、仕込みを増やすので少し時間を稼いでくれ!」

「承知ですぞぉー!」

 

そうしてふたりは絶え間なく迫る蔓をその場で迎撃しはじめた。

 

 

──1年B組の生徒達は柊うてなの『個性』にそれほど驚いていなかった。

 

それは、このクラスにもまた、塩崎(しおざき)(いばら)という実力の底知れない怪人がいたからだった。

 

 

 

──塩崎の頭髪の一部、蔓の一本が急激に成長し、先端がくるりと動いて輪を作る。

 

塩崎はその蔓を(つか)み上げた。

その間にも蔓はぐるぐると伸び続け、ロープの束のようにとぐろを巻いていく。

 

彼女が(つか)む蔓には、青山の位置から見てもわかるくらい鋭い(とが)がついているのだが、彼女がそれを気にする様子はなかった。

 

十分に蔓が伸びたところで、塩崎はふう、と軽く息を吐く。

 

「ああ、嘆かわしい。いまさら抵抗をしても手遅れです……あのふたりは考え違いをしていますね。この私がいる限り、彼らの勝ち筋は初手で力任せに押し切るしかありませんでした。それなのに、それなのに……」

 

塩崎はブツブツと早口で喋りながら、手に取った蔓をブンブンと風切り音が鳴るまで振り回した。

 

「この程度の障害、こうやって上に投げ込んでしまえば解決です……ふんぬっ!」

 

そして十分に遠心力を乗せたところで、大きく腕を振り上げて蔓を放り投げた。

蔓は直線的なライナー軌道で15メートルはある建物の屋上まで飛んでいく。

 

すでに同じ手順で数本の蔓が建物に投げ込まれており、それを足がかりに無数の蔓がざわざわと建物に向かって伸びていた。

 

 

──青山は塩崎の雰囲気に既視感を覚えはじめていた。

 

「ジャドール! パワフルだね☆」

 

過剰なジェスチャーで賞賛すると、塩崎はうっすらと嬉しそうな笑顔を見せた。

 

「……ふふ、鍛えましたから。ヒーローは体が資本と言います」

 

青山は塩崎の様子を見ながら、そろそろと近づいた。

彼女が突然に蔓をブン投げはじめたのでそこそこ距離を取っていたのだった。

 

「さて、そろそろ攻める頃合いかな? あのふたり、僕を観察していたようだが……」

「ええ、青山さんを意識しすぎたのでしょうか? それとも、この私があの男の(はかりごと)に賛同しているとでも? ああ、嘆かわしい、嘆かわしい」

 

ざわつく髪を避けながら青山は塩崎をなだめようとする。

 

「お、落ち着いてよ塩崎さん……謀り事って?」

「口にするのも汚らわしい……」

「あっ……うん、ごめんね」

 

この頃にはもう、青山は塩崎の性格を把握しつつあった。

 

──見た目によらず力押しでの問題解決を好み。

そうと決めたら実行に躊躇(ちゅうちょ)がなく。

興味の対象に解釈違いがあると急激に機嫌が悪くなる──

 

(あー、柊さんと似たようなタイプだ……)

 

「おっしゃるとおり、頃合いですね」

 

塩崎はふう、と大きく息を吐いた。

その固められたような表情は、(たかぶ)りやすい感情を抑制しようとするためか。

 

塩崎の髪がいままでにない密度で伸び始めた。

そして、束ねられた蔓が壁を作ったかと思うと、そのまま二人を覆ってしまった。

 

「うわっ?」

 

緑の壁が迫り、戸惑う青山と無表情の塩崎を囲んでいく。

それはやがて狭く薄暗い空間を作り出した。

頭上の蔓はわずかな隙間を作り、そこから光が差し込んでいる。

 

荊棘(いばら)でできたドームの中を、さらに蔓は伸び続け、青山の足元に滑り込んできたかと思うと、そのまま青山の体を持ち上げてしまった。

 

「このまま、あのふたりの元へと進みます」

「髪、踏んじゃってるけどいいのかな?」

「お気になさらず」

 

自らも蔓の上に乗りながら、塩崎が宣言する。

全方位を壁で囲まれたこの状態のまま、移動までできるらしい。

 

「す、すごいね。でも……」

()()()()

 

なんの意味が。

そう言いかける青山を遮るように、塩崎は言葉を被せてきた。

 

「よい機会ですので、少しだけ内緒話をしましょう」

「えっ……?」

 

青山はすっかり面食らっていた。

その、塩崎が自分を見る目が、いままでになく感情豊かだったから。

 

初対面であるはずの彼女が、妙に好意的というか、打ち解けた様子なのが、青山はとても気になっていた。

 

 

02.塩崎(しおざき)(いばら)  

 

────────

 

(つる)が絡み合い、束ねられて作られた小さなドームは、その形を保ったまま、構造物と化した全体を芋虫のように伸び縮みさせることでゆっくりと進んでいるようだ。

 

その中で、青山は塩崎と向かい合うように立っていた。

 

蔓のうごめきに合わせて差し込む光がゆっくりと動き、薄暗い中のふたりの姿を明滅させている。

こうして密室に閉じ込もった、そのあたりから、青山は塩崎の雰囲気が変わったのを感じていた。

 

塩崎は、まっすぐ青山をみつめていた。

その眼差しには、先ほどまでとうって変わって、はっきりと表情が表れていた。

 

「うしろめたいものを抱えて生きること。それ自体は普遍的です」

「!?」

 

声の調子も少し上ずらせながら、塩崎は朗々と語りはじめる。

 

「人は古来より、心より身体を先に成熟させることで、嵐の日々をしのいで生きてきました。遅れがちな心の成長。その未熟さゆえに、人は生きれば必ず罪を抱えることになります。それが原罪。紀元前から悟られている人間の本質の一部」

 

遠回しに、己の振る舞いについて指摘されているような気がするのは、気のせいか。

青山は塩崎を警戒しはじめていた。

 

「罪悪感を覚えるからこそ、悔い改めようとする。より()い姿を見せようとする。大人は若き日の反省をもとに、より正しき在り様を子に説き……」

 

この説教は、さらに深い密談への誘いだ。

それを察した青山は耳につけていたインカムを外し、電源を切った。

この音声をモニタリングしている相澤先生には、ふたりが「内緒話」をしようとしていることまでは伝わっているだろう。

授業中に何やってんだとにらまれたり怒られたりはするだろうが、自然な流れではあるはずだ。

 

「私たち子どもはそれを受け止めて未熟なりにより善くあろうと努めるのです」

 

予想通り、塩崎も耳に手をあて、青山と同じ行動を取った。

 

 

──そうか、僕だけではないのかもしれないと青山は思った。

雄英に合格できる実力があり、家庭ごと、その悪意でがんじがらめにされてしまった。

そんな不幸な条件を満たす人間が、僕だけではなかったというのか?

 

あの悪意の象徴ともいえる(ヴィラン)AFO(オール・フォー・ワン)

その正体を知ったのは悪の組織エノルミータに加わり、ヴェナリータから裏社会の情報を得てからだが──あの男がこの高校に送り込んだ手先は僕だけではないのかもしれない。

青山はこの段階ではそう予想していた。

 

「その中で露悪的に振る舞い、(はかりごと)に誘い、人の心を惑わし引きずり落とすような行為はひどい悪行だと思うのです」

「何が言いたいんだ?」

 

泡立つ感情が漏れ、すこし尖った声になってしまった。

青山は内心で舌打ちをしながらも、突っ立っている風を装い『ネビルレーザー』の準備をはじめる。

 

「つまり物間(ものま)は邪悪だと……おっと」

 

塩崎は少し困ったように眉を寄せた。

 

「すみません。あなたまで(とが)めるつもりはありませんでした……いけませんね、私はこの悪い癖がなかなか直りません……」

 

塩崎は少し迷うようなそぶりを見せたが、意を決した様子だった。

青山に熱のこもった視線を向けて、温かみのある笑顔で微笑みかける。

 

「あなただけではない、とお伝えしたかったんです」

 

やはりか。

青山は表情を消しきれず、顔は不快を露わにして固まった。

 

「何か、知っているのか?」

 

──彼女が()()であるのなら、力ずくででも聞き出す必要があった。

むしろ逆に、今まさに自分がそうされようとしているのかもしれなくて。

 

僕がとっくにAFO(オール・フォー・ワン)を裏切っていることは、どこまで伝わっているのか?

 

この時、青山は過敏になっており、取り返しのつかない引き金に指をかけようとしていた。

暴力に縁のない優しい家族を暴力で守りきることが、悪の組織に魂を売り、力を望んだ彼の最優先事項だったから。

 

「はい。知ってしまったのは食堂の時です。あの、マスコミが入ってきて、騒ぎを起こした日」

「ん?」

 

青山は意外な答えに戸惑いながら、その日を思い出す。

確かにあの時、食堂で騒ぎになり、彼は塩崎を見たというか、彼女はとにかく目立っていた。

 

「食堂全体に張り巡らそうとしていた私の髪にいちはやく気づき、刃物のようなもので切って邪魔をする人がいたのです。私は鎌切(かまきり)君だと思って即座に締め上げたものの、彼は無実でした」

 

青山は今朝、自己紹介をし合ったB組の生徒、いかつい容姿と『個性』で誤解されがちであろう、かの異形の男子生徒に少し同情した。

 

「私は悪意でそうするのではないのだと、安心してもらうために。それはそれとして、そのように鋭い刃物を雑踏の中で持ち出すのは危ないと諭すために」

 

塩崎は青山を指差した。

 

「私は避難誘導をしながら、刃物の持ち主を密かに探しておりました……このようにして」

「うひゃあっ!?」

 

青山は思わず甲高い声をあげてしまった。

突然、胸元を何かがまさぐる感触を覚えたからだった。

 

慌てて見下ろすと、足元でうごめく塩崎の蔓が見えた。

それは青山のコスチュームの隙間に入り込み、()()()()()を通って──腹を登り()()()()から首筋へと乗り上げて背中に入り、身体に巻き付いていた。

 

信じがたい手段で、()()()知られたことを理解し、ぞわりと鳥肌が立つ。

 

「い、いつの間に、こんなっ……!?」

「ふふ、驚かせてごめんなさい。あなたが『見えない光』を放てるように。私も『感じない(とげ)』を作れるのです。これが私の『そこそこ本気』です」

「戦いの方じゃなくて?」

「あの程度のふたり相手なら、片手間ですね。ふたりとも、素質はあるというのに……全く嘆かわしい」

 

またプリプリと怒り始めた塩崎だったが、青山の視線に気がついてはっと両手で自分の(ほお)を押さえた。

そして申し訳なさそうな表情をしながら腕を組みなおし、話を続ける。

 

「あの日も私はこのようにして、うっかり知ってしまいました……青山さん、あなたの秘密を。あなたが女性であり、それを隠しているということを」

「ああ、そっちかぁ……」

「?」

「いや、こっちの話」

「そうですか……」

 

塩崎は青山の顔色をうかがうように、そっと首を傾げながら尋ねた。

 

「怒らないのですね?」

「ん……ああ。黙っていてくれるとありがたいかな、くらいだよ」

「それは誓って……あの、怒らないなら、お尋ねしたいことが」

「ウィ」

「このシルクの下着……オーダーメイドですよね。どこのブティックですか? お恥ずかしながらなかなかサイズの合うものが見つからなくて……私もこういうのがいい……」

「けっこうグイっと来るね! 秘密だよ! あとそろそろこの蔓どうにかしてくれないかな?」

 

答えてやりたかったが、青山が身につけているのは運良くサイズの合った母親からの借りもので、本命は絶賛オーダー済み製作中、どこに頼んだかは母親任せでわからなかった。

 

「むぅ……」

 

塩崎は残念そうな顔をしたが、要求には従って蔓を引っ込めた。

小さな(とげ)の生えた細い蔓が、肌の上を這っているのが見えるのに、それが肌に触れているという感触が全くない。

あるのはわずかな衣擦れの感触だけだった。

 

「詳しい事情をお聞きするつもりはありません。ですが、私はあなたのその『運命』と試練の道を応援したい」

「運命? 試練?」

 

青山は聞き返しながら、そのフレーズを、最近どこかで聞いたような気がしていた。

 

「人にはいつか必ず、定められた『運命』が訪れます」

「運命とは?」

「導きの光。社会との精神的結合。この世界で、己がこうすればもっとも『善く』あれるという役割に気づくこと」

 

即答されるとは思わず、しかも自身が見出したものと似たような回答であることに驚きながら、青山は質問を続けた。

 

「それで? 僕の『運命』を知ってしまった君は、どうしたいの?」

「特に何も……」

 

青山が見つめ返すと、塩崎ははにかんだような表情をして目を逸らした。

 

「……ただ、お伝えしたかったのです。あなたの運命を知る者がここにいると……」

 

そして、少しのためらいの後、言葉を続けた。

 

「そうですね……そして、知るからこそ、お助けできることもあるのではないかと。あわよくば、協力関係を結べないかと……」

「ふうん……それはお友達になろう、ってことでいいのかな?」

「お友達……?」

「僕は誰でも歓迎さ☆」

「ふふ……そのような交流を育めたら、素敵ですね」

 

塩崎はにっこり微笑みながら目を閉じ、見慣れた祈りの姿勢をとった。

 

「雄英に来てよかった。やはりここが試練の地。私の『運命』と出会う場所」

「君の?」

「はい。私は、雄英高校ヒーロー科を志すより前から……常日頃より、この手でこの世界に光をもたらす(すべ)を探し求めていました」

 

青山はそれを聞きながら片眉をあげた。

ずいぶん崇高な……と皮肉を言いたくなるのは、自分の境遇からくる嫉妬だろうか。

 

「そしてある日。テレビでとあるヒーローを見て、大いなる導きを得たのです」

「テレビで?」

「はい、沖縄のヒーローです。右の(ほお)を打たれれば、左の(ほお)を差し出す。あらゆる(ヴィラン)の攻撃をその身に受け止め、受け切ってから返すという、壮絶で、とても美しいヒーローです」

 

青山も、そのインタビューは見たかもしれない、と思い出した。

だが、あれは決してそんな耽美(たんび)な雰囲気じゃなかった気がする。

 

「なぜそのような戦い方をするのか? そう尋ねたリポーターに、彼女はこう答えました。『これもまた愛だ』と」

 

塩崎の声にさらに熱が籠っていく。

 

「そこに私は光を見出しました。世界は理不尽と不可解に満ちている。でもそこには愛も確かにあるのだと。道に迷ったときは、愛の光を見れば良いのだと」

「ええ……」

 

青山はちょっと引いた。

 

「そう、愛なのです。彼女の立ち振る舞いにあこがれて、私はヒーローの道を、彼女の母校である雄英高校への受験を決めました」

「そうだよね。あのインタビュー、わりと最近だったよね……、え、あの期間で合格レベルまで学力上げたの?」

「頑張りました」

「すごいね……うん……すごい」

 

青山は塩崎の事情をおおよ理解できていた。

ただ、それはそれとして、身の上話がはじまったあたりからとても気になる出来事が発生しており、ぜんぜん頭に入ってこなかった。

 

「うん、わかった……わかったけど……あの、なんで()()()()()してるの?」

「……」

 

周囲を取り囲む蔓の束が一本解け、塩崎の身体に当たった。

その蔓はそのまま塩崎の胴体を這い廻るようにして巻きつくと、すでに身体に巻かれている他の蔓に絡まり、きゅっと引っ張りあった。

蔓は白い衣と、その下にあるとても柔らかいものの中に食い込み、埋まっていく。

やがて収まりがついたらしく、ぎちり、と荒縄が締まるような音をたてた。

 

それに対して塩崎は黙ったまま、何かを押し殺すようにしながら苦しそうな息を吐くだけだった。

 

つまるところ、塩崎は話をしながら、自分の髪で自分を縛っていた。

話が進むにつれて縄は徐々に増えていき。

白くゆったりした薄衣は締め上げられ、その豊満な身体のラインがくっきりと浮かび上がっていた。

 

特に胸のあたりがギッチギチで、(とげ)が痛々しく食い込んでいる。

下着はつけていないようで、目のやり場に大変困る。

 

塩崎は目を閉じ、祈りのポーズは崩さなかったが、その額に汗が浮かんでいた。

 

「これは罰。授業中に、このように内緒話にふける自分への……ふうっ」

「その割には楽しんでない?」

「いえ、決してそんなことは!」

 

塩崎は慌てて否定したが、固かった表情はすっかり何かに緩んでいる。

 

「でも、どうしたことでしょう? 同性だから大丈夫のはずなのに……あなたが殿方のような姿をされているからでしょうか? あなたに見られていると思うと、胸の奥から、なにかこう、ものすごい羞恥心と背徳感が……あふっ」

「君けっこうレベル高いな!」

 

青山は思わず一歩後退(あとしさ)った。

 

「それ、性別関係なくみだりに見せていいものでもないと思うよ!?」

「はい。クラスの女子のみんなにもそう言われましたので、いまのところあなたとクラスの女子にしか……」

「合成の誤謬(ごびゅう)!」

 

青山は頭を抱えた。

やっぱりこの子、柊うてなとノリが近いと思った。

恥じらいもある。社会的な善悪の概念もある。

それでも自分が『良い』と思ったことは、やって見せてしまう。

 

『個性』が強すぎると、みんなこうなってしまうのだろうか?

だれが言ったか、荒唐無稽なはずの個性終末論が現実味を帯びてきた気がした。

 

しかも趣味嗜好(しこう)の類がだいぶ柊と()み合っている気がする。

いずれこのふたりが出会うのは確定として、自分はその場に絶対居合わせたくないと心底思った。

 

「私の『運命』が何なのか。今はまだわかりません」

 

塩崎の閉じていた(まぶた)が開かれる。

 

「私に訪れる運命は試練か、それとも福音か。ですがいずれ私も、その時を迎えることでしょう……そのために私はここまで来た」

 

その瞳はまばゆい位にキラキラしていた。

 

「ああ、クオ・ヴァディス。私も必ずや『運命』を見つけます。青山さん、共にがんばりましょう」

「そ、そう……がんばってね」

「ええ。さて、そろそろ最上階です。気を引き締めましょう」

「それちゃんと(ほど)いてからにしてね?」

 

青山はようやく彼女の人物を理解し、その誤解を解いていた。

 

塩崎は特にこちらの「事情」を知っているというわけではなく。

ただ強力な『個性』でいちはやく青山の秘密を暴いてしまっただけで。

 

常闇と同じように、独自の世界観を持ち。

柊と同じように、ちょっと妄想力が強い感じで。

そこに特殊な性癖を付け加えたような。

 

そんな厄介な女子に、自分は目をつけられてしまったのだと。

 

 

──緑の壁が開かれると、フロア中にみっちりと緑が生い茂っていた。

そして、青山の目の前に蔓の絡みついた核のオブジェクトがあった。

 

「うわぁ……」

 

さらに、それに立てかけられるような形で緑の柱が二本立っており、庄田と宍田が(はりつけ)にされていた。

捕まった二人は無惨にボロボロだった。

塩崎は本当に()()()()()で二人の制圧までしてしまったらしい。

 

「……塩崎さん、僕らの負けだ。拘束を解いて欲しい」

「いいえ、このまま説教を」

「ご無体な! これ以上敗者に鞭を打たないでいただきたいですぞ!」

 

仏頂面は相変わらずだが、疲れ果てたという様子の庄田。

毛並みは血も混ざってボロボロ、傷だらけもいいところだが、まだ元気そうな宍田。

 

ふたりの前に向かって、塩崎はゆっくりと歩いていく。

彼女を縛っていた蔓は解かれているが、純白のトーガには妙な形のシワができてしまっており、青山は友人としてちょっと心配になる。

 

厳かに、二柱の前に立った塩崎は口を開いた。

 

「私も鬼ではありません。クラスメイトの面前で言われるより良いのでは?」

「いや、これは授業なのだからそのほうが適切ではないだろうか?」

「なるほど、罪なきものたちに総出で石を投げられる。時にはそれを良しとする場合もあるというわけですね」

「どっちでもいいから早く降ろして欲しいですぞー」

「はぁ……そうだよね」

 

僕もなんか疲れたな、と思いながら、青山は戦闘訓練のルールを思い出した。

 

「えっと……(ヴィラン)は制圧し、核も確保しましたということで、タッチ」

 

すると、相澤の気の抜けた感じの声がフロアに響きわたった。

 

『はいしゅーりょー。ヒーローチームWin(うぃん)。押してるのに目一杯時間使いやがって。さっさと戻ってきなさい』

 

その後、地下のモニタールームに集まって、すっかりノリノリの塩崎が相澤先生を差し置いて説教を続けたところで終了時間となり、その日の戦闘訓練は終了した。

 

 

──放課後、コスチュームの詰められたケースを抱えて歩きながら、青山はひとり悩んでいた。

 

「ちょっとバレたこと、報告するべきだろうか? でも、なんか大丈夫な気がするというか、関わると余計ややこしくなりそうな気がするというか……う〜ん」

 

ヒーロー基礎科の授業が終わると、青山はお手洗いに行くフリなどしてわざと遅れて更衣室に入り、ひとり居残りで着替えを済ませた後、1年A組の教室に戻ってきたのだった。

 

「あら、青山ちゃんだわ」

「青山おかえりー」

「サリュー☆ みんなもおかえり、寂しかったよ」

 

ドアを開けると、教室の中にはクラスメイトたちが揃っていた。

そのほとんどが席を立ち、荷物を片付けたり、おしゃべりに興じたりしている。

 

声をかけてくれたのは、横並びに座っておしゃべりをしていた芦戸(あしど)蛙吹(あすい)だった。

青山は教室に入ってすぐの自席にケースを置き、その上に両肘をついて手にあごをのせるポーズをして、そのふたりに話しかけた。

 

「補習はどうだった?」

「つっかれたぁー」

 

芦戸は返事をしながらぐったりとした様子で両腕を伸ばした。

蛙吹は青山のポーズの真似をして見せる。

 

その日、青山と(ひいらぎ)を除く1年A組の生徒達はUSJ事件での独断行為に対する懲罰的措置と事件の事情聴取を兼ねた、校外で救助訓練の補修を受けていた。

聞けば、午前中は説明会と聞き取り調査、午後は弁当を食べたあとで実戦演習を行い、ついさっきバスで戻ってきたばかりのようだ。

 

「実際体動かせたのは1時間くらいだったけどさー、帰りのバスで爆睡しちゃったよぉ」

「私もよ。障子(しょうじ)ちゃんの肩にもたれかかっちゃったわ」

「お、何か芽生えましたかな蛙吹さん」

「まだそこまで仲良しじゃないわ」

「えぇー、でもぉ、恋は下り坂って言うじゃない?」

「私と三奈ちゃんがそういう話をするほどでは、ってことよ?」

「ギャフン!!」

「冗談よ」

「ひどいよ梅雨(つゆ)ちゃん! 謝罪と賠償に十分間の膝まくらを要求する!」

「ハイハイ、悪かったわ」

「チチまくらなら三分にまけてやるけど!」

「調子に乗らないで」

 

芦戸は椅子を隣に近づけて横になり、蛙吹の太ももに頭を乗せた。

 

「こってり絞られたというのはわかった。お疲れ様☆」

「そっちはどうだったの?」

「うてなちゃん悪さしなかった?」

 

尋ねられた青山は、手にあごをのせたポーズはそのままに、目線だけ右にずらした。

 

「朝は全部自習。昼からB組に混ざって戦闘訓練だったよ……柊さんはいつもどおり」

「わぁ、いいなぁ!」

「羨ましいわ。お友達増えた?」

「まあね……でも僕は組んだ子が強すぎてぜんぜん活躍できなかった……今回も……」

「あはは、青山はまたまたついてないねぇ」

「お(はら)いでもしてもらったほうがいいんじゃないかしら」

「うん……」

 

青山はずらした目線の先で奇妙な光景を見た。

 

「ところで……あれは何をしているの?」

 

芦戸と蛙吹は、青山が見ている方向に心当たりがあるようで、そちらは見ずに答えた。

 

「……きっと爆豪ちゃんにとっては大事なことなのよ」

「隙あらばマウンティングとか、しみったれた奴だよねぇ」

「立場が危ういという自覚の裏返しだわ」

「ねー」

「??」

 

教室の奥側に半ば人の輪ができており、その中央でふたりの生徒が何かを言い争っていた。

 

「そんな……オールマイトが、オールマイトが……」

「ついに差がついちまったなぁ、クソサド女がァ……」

 

それは床に膝と手をついて悔しそうに顔を(ゆが)める柊と、それを嘲笑しながら見下ろす爆豪だった。

 

「謹慎をブッチしたうえに、(ヴィラン)のふりした特殊コスチュームで全力戦闘だなんて! そんなのずるい! 完全にノーマークだったーッ!」

「そォだ! オールマイトとガチ戦闘訓練だった! この経験を得て俺はひとつ先のフェーズに進んだのだ! USJでロクに仕事しなかったてめぇとは違ってな! つまりもはや俺の方が確実に上!」

「写真はないんですか!? せめてもう少し情報をください! どんな感じのコスだったんですか!?」

「ハァッ! 絶対に教えてやらんわ! てめえらも黙ってろよ!」

「ぐぎぎ……」

「お前知ってるか? オールマイトが本気だすとなぁ……おおっと、これ以上は教えてやんねー!」

「こ、こんのクソガキャァ……」

 

まったくかみ合っていない柊と爆豪の口論は、必然的に取っ組み合いに発展した。

 

爆豪は表面的には元気にふんぞり返っていたが、訓練でまた負傷したのか、身体は絆創膏だらけで体幹もふらつき、見るからに満身創痍(まんしんそうい)だった。

 

柊はそんな爆豪を難なく床に組み伏せると、オールマイトの情報を聞き出そうと、どこからともなく取り出した親指締め器みたいな金具で拷問にかけようとしたあたりで、飯田と八百万のクラス委員コンビに制圧されてその場はお開きとなった。

 

青山は、また今夜にでもこの愚痴を聞かされるのかなぁと、げんなりしながら帰宅の準備をはじめた。

 

 

 

03.爆豪宅にて  

 

────────

 

「そんな……そんな……オールマイトが……特殊コスチュームで戦闘を!?」

「クソサド女と同じリアクションしてんじゃねぇ!!」

「ぐはーっ!」

 

勝己(かつき)は驚きのあまり四つん這いになっていた出久(いずく)の腹に向かって、良い子は真似しちゃいけない感じのサッカーボールキックを入れた。

 

「ひどいよかっちゃん!」

 

ごろりとカーペットの上を転がった出久は立ち上がり抗議する。

蹴りを喰らった腹にダメージはない様子だった。

 

「ファンにとっては由々しきアレなんだよ……それで、オールマイトのコス、どんなだった?」

「教えん!」

「そこをなんとか!」

「ウゼェ! 後にしろ!」

 

勝己はイライラと鼻息荒くしながら、ガシャリと音を立てて乱暴に椅子に座った。

出久もカーペットの上にあぐらをかいて座った。

 

「その怪我、訓練で?」

「あァ? テメェこそなんだその切り傷は?」

「ええっと、バイト先で(ヴィラン)に絡まれて、やられちゃって……」

「うわ、ドンくせぇなぁ! 労災出るんだろうな!?」

「はは……たぶんね」

 

ふたりとも、顔に、腕にと、肌のあらゆる箇所が絆創膏だらけ、傷だらけの姿だった。

 

そこは勝己の自室だった。

「体育祭でクソサド女をブッ殺して1位になる」ことを直近の目標にしている勝己は、クソサド女こと(ひいらぎ)うてなの『個性』を攻略する方法を出久に調べさせていた。

それに対して出久はすでにレポートを完成させ、勝己にメールで提出していた。

 

この日、勝己は日中の救助訓練補習でこってり絞られてしまい、夜のトレーニングが不可能になったため、出久のクソボリューミーなレポートを自分で読むよりはせっかくだから口頭で報告させようと、出久を呼びつけたのである。

アポなしでいきなり「来い」とだけ言われた出久は要件を察してホイホイとやってきた。

 

勝己と出久はあるときから徐々に疎遠になったが、そこからさらに幼い頃まで(さかのぼ)れば、そういう気安い関係だった。

 

ふたりの確執は、まだ解消されてはいない。

出久は勝己に対して大きな劣等感を抱えたままであり、勝己の方は自身の中に(くすぶる)る謎の敗北感の正体をまだわかっていなかった。

 

だが、根っこの感情はともかく、きっかけとなった出来事に限定してある程度けじめをつけたことで、表面上は幼い頃の付き合い方に戻りつつあった。

 

「事件で起きたことは、ガッコーやケーサツと守秘契約を結んだから詳しくは話せねぇ」

 

勝己は机に肘をつき、唇を突き出し、つっけんどんな態度で話しはじめた。

 

「だが、アイツがある程度飛べるってのはもう間違いねぇな。そうでなければあの日アイツは()()()()()()()

 

勝己は今日の救助訓練補習で得た経験から推測を述べた。

 

USJ事件の再現を図り、(ヴィラン)役をつとめたオールマイト。

そして勝己とクラスメイトの(とどろき)は、オールマイトの腕力で地面ごと数百メートル吹き飛ばされる役をした。

結果、勝己は墜落寸前でどうにか体勢を立て直せたが、氷を生やして減速しようとした轟は風圧に負けて()()()()、後から追いついたオールマイトに救出されていた。

 

それを聞いた出久は予想通りといった表情だった。

 

「なら、生体の一部からでも『使い魔』を作れるのは間違いなさそうだね。そして自分の身体をその対象にできるのも。とどめに『使い魔』の能力を自分で開発できるのも」

「クソチートが……しかもスタミナでは敵わないってマジなのか?」

「うん、材料が自前じゃないというのがヤバい」

 

出久が自分の鞄からノートを取り出して、付箋の貼り付けられたページを開いて見せた。

そこには勝己も知っている、何人かの有名なヒーローの名前と『個性』が書かれており、そしておそらく『個性』の発動回数の限界と思われる数字が並んでいた。

 

その列の数字の違い、そしてちらほらと現れる「(ムゲン)」を見れば、勝己にもどういう傾向があるのか理解できた。

 

「発動型『個性』の使用限界は、もちろんその規模や本人の体力次第ではあるんだけど、発動するときに何を消費するのかと、どの程度操作を働きかけるかでおおよそ決まるんだ」

 

出久は「シンリンカムイ」の行を指差した。

 

「例えばシンリンカムイ。彼は自分の身体から樹木を生やして、さらに生み出された樹木を自分の意思で操作する。これはもっとも消耗の激しいタイプなんだ。だから彼はガチガチの短期決戦スタイルなんだよね。これをAタイプとする」

「フン」

「次にエンデヴァー。身体から何かを生み出して、そのままぶっ放すタイプ。これがBタイプで、Aの次に消耗が大きい。自分の身体を一時的に増強するような『個性』もこれに近いかな」

「クソポニーにアホ面……しょうゆ顔は? いや、確かにアイツも弾切れ起こすな……」

 

「そしてセメントス。無から何かを生み出す力はないけれど、既存の物体を操作できるような能力。これがCタイプで、能力が発動している間は消耗し続けるんだけど、AやBに比べると持久力は何倍も優れている」

「丸顔はこのタイプだな。アイツ、あの酔う癖どうにかしたらまだいけるんじゃねぇのか……?」

 

それを聞いた出久がくすりと笑い、勝己はそれを脊髄反射レベルで聞き(とが)めた。

 

「あァ!? 何がおかしい?」

「あ、いや、ゴメンゴメン! かっちゃん、クラスメイトのことを気にするようになったんだなぁ、って思ってさ。アドバイスしてよかったよ」

「チィィッ!!」

 

勝己が不機嫌感マックスの表情で盛大な舌打ちをかました。

 

「だからごめんて」

「っせぇ! 続けろ!」

 

出久は苦笑しながら、数字の代わりに「(ムゲン)」の記号が書かれた行を指差した。

 

「最後に、そのCタイプの亜種として、さらにぶっちぎりのDタイプがいる。外界に対して1度だけ何かを起こして、そのままやりっ放しにできるような能力。精神や意識に働きかけるような個性が多いんだけど、代表といったら当然ベストジーニストだよね。彼は繊維に対して編む、縛る、結ぶといった操作をするけど、その後は仕上がりに任せることが多い。その継戦能力はご存じの通り……」

 

出久は一呼吸入れながら、ノートの下に小さく書かれたリストを指差す。

そこには「A:100 B:200 C:500 D:-」と記載されていた。

 

「僕が調べた限りだと、このタイプの『個性』が息切れを起こすケースはなかった。いや、何かあるんだろうけど、現実的な範囲で個性のスタミナは切れようがないといったところかな」

「クソ耳はこっち寄りだな……」

「そのあだ名ひどすぎない? まさか女子じゃないよね?」

「……アイツもそうなのか」

「ほぼ確実にDタイプだよ。今までの話を聞いた限り、Cタイプと考えると()()()()()()から」

「チッ……」

 

勝己は机に(ほお)杖をつき、考え込むような仕草をした。

その様子を見た出久は慌ててポジティブな話題に切り替えようとする。

 

「あ、でもね、この前提でいくとその子の『個性』っていろいろ弱点も見えてくるんだ」

「言え」

「ひとつ目は不可逆性。『使い魔』に変えてしまったものを元に戻すことはできない。作り直しはできるのかもしれないけど、材料を生み出すわけじゃないからどんどん目減りしていくだろうね」

「その代わり効果は永続だろ? 一発勝負なら逆にメリットだわな」

「そうかもね。それでも、自分の身体に個性を使うのは相当の覚悟がいると思うよ」

 

勝己は顔を上げて腕を組んだ。

何か考える取っ掛かりができたのだろう。

出久はほっとしながら話を続ける。

 

「ふたつ目は非操作性。『使い魔』と言いつつ、自律行動するロボットを作るようなものだから。作ったものを『個性』で直接操るようなことはできない。できるならCタイプになるから、もっと早く限界が来るはずだ。『使い魔』の方で何かを読み取れるように作られていて、それで間接的に操作してるんだ。まあ普通に声とか、ジェスチャーとかだろうね」

「……確かに、アイツ命令してやがったな。指示待ちのときもあったかもしれねぇ」

 

「最後に、複雑性。とにかく手がかかる。急にメチャクチャ強い使い魔を作れと言われても作れない。さっき能力を自分で拡張できるって言ったけど、逆に言えば材料に合わせて『イチから全部』設計しないといけないんだと思う」

「即興で何でもやれるわけじゃねぇのか……でも」

「まあ、経験からくるテンプレみたいなのはあるだろうから、簡単なものなら手癖でバンバン作れるんだろうね」

「だがそれは単調な動きしかできねぇ。だから、そういう時ほどデカブツ頼りになる、か……なるほど、なるほど」

 

勝己が唇の端をつりあげながら手を(たた)いた。

 

「体育祭、ヒーロー科は持ち込み禁止だから、あの子はそうやってやりくりしてくるだろうね」

「追い詰めちまえばルールなんぞ踏み越えて切り札出すわ。それをブッ殺して俺が勝つ! そしてアイツはそのまま除籍確定だ!」

「ええ……その子ってそんなダーティな感じなの?」

「ああ、アイツはそういうヤツだ。ククク……」

「こわ……」

 

憎い相手への勝ち筋を見出して、意欲に火がついたのだろう。

勝己の顔つきが煌々(こうこう)とギラつきはじめ、出久はその熱量にだんだん引き始める。

 

「よしデク! 次はBタイプの中で息の長いヒーローを調べろ。なるべく上位のヤツだぞ。体育祭はまる一日がかりだ。完璧に勝つためにも、そういうのを参考にして長期戦をやり繰りする……」

「いや、Aタイプ」

「はぁ?」

 

勝己が顔をしかめながら出久の方を見た。

 

「かっちゃんはAタイプだよ」

「なんでだよ?」

「本題はそっちなんだ。今日はそのあたりを確かめようと思って……」

 

出久は相変わらずの──幼い頃、出会ったときから変わらない──無害そうな笑顔で勝己を見ていた。

 

 

──ふたりが一階のリビングに降りると、出久は熱烈な歓迎を受けた。

 

「出久ちゃん! いらっしゃい! 四年くらいぶりかしら? ウチに来たのはもっと前よね? んもぉー、すっかりゴツくなっちゃってー」

「おオおお、おじゃましてますぅ!」

「セクハラをやめろやクソババァ!」

 

顔を見たとたん出久にがばりと抱きつき、そのまま出久の肩やら背中やらを擦り始めた勝己の母親、光己(みつき)に、勝己がマックスの大声で怒鳴りつけた。

光己はそれを無視してさらに出久に顔を寄せていく。

 

「おお……!?」

「ちゃんと挨拶もできて偉いわぁー、アイツが出久ちゃんとこに押しかけたときなんて絶対、ムッスリ黙って椅子に踏ん反り帰ってたでしょう? そんで『出久の母よ、我は粗茶を所望しておる。酒でもよいぞ』とか言ってたに違いないわ」

「だから何なんだそのキャラは!」

「いえ、かっちゃんは僕より礼儀正しかったです……最初別人かと思いましたし」

「あら、そーなの?」

「別人って何だゴラァッ!」

 

かつてない勢いで勝己の機嫌が悪くなってきたので、出久は必死で勝己を擁護したが、あまり効果はなかった。

ようやく出久から離れた光己は上機嫌な様子でキッチンに向かう。

 

「ねぇ、ご飯食べてく?」

「こいつにエサはやらんでいい」

 

スパァン! と気持ち良いくらいに透き通った打撃音がした。

気の抜けていた出久には何が起きたのか、早すぎて見えなかった。

 

「い、いえ、少しお話をしたいだけなので、親からはそろそろ帰ってこいと……」

「残念! じゃあ一杯だけ飲んでいきなさい。飲み物持ってくるわね!」

「チッ……!」

 

勝己が頭をさすりながらソファーに腰掛け、出久は遠慮がちに少し離れてその隣に座った。

 

 

──お盆にグラスといくつかのボトルを乗せてリビングに戻ってきた光己は、同じソファーに微妙な間隔を空けて座る勝己と出久を見ると、にんまり笑ってふたりの間へ、無理やり挟まるようにして座った。

 

光己に頭をモフモフされながら、出久は彼女に事情を話す。

 

「ああー、ついに気づかれちゃったかー。この私の美貌の秘密に! この私の美貌に!」

「2回言うとかないものねだりに聞こえッ……!」

 

勝己が悪態をつこうとしたが、再びスパァンと音がして遮られる。

注視してなきゃ見逃しちゃう感じのものすごく早いフォームで光己が勝己の頭を(たた)く音だった。

 

つまり、この席順は右手で勝己を引っぱたきながら左手で出久をイジれるという、彼女にとってのベストポジションであるらしい。

光己はアイスコーヒーのグラスを手に取りながら、楽しそうに出久の質問に答えた。

 

「出久ちゃん正解よ。確かに私の『個性』には()()()()もあるわ」

「……やっぱり」

「ただ、そんなに大袈裟なもんでもなくてね」

「そうなんですか?」

 

光己はグラスを置いて、手のひらを出久の(ほお)にあてた。

出久はその(ほお)に滑らかな人肌の感触を覚えた。

氷の入ったグラスに触れていた手はとてもひんやりしている。

 

「私、この『個性』に目覚めたばかりの頃は、よく原因不明の熱を出してたの」

 

個性『グリセリン』は、体内でグリセリンを生成し、肌から分泌するという能力だ。

グリセリンは医薬品や化粧品などに幅広く利用される物質で、様々な物質と反応しやすく化学原料として非常に大きな需要がある。

そのためグリセリンは工業生産によって大量に供給されており、とても手に入りやすい。

それゆえに彼女の『個性』は貴重でありながら、大した社会的評価はされなかった。

 

「グリセリンって、水と反応して熱を出すのよね。中学上がるかどうかの頃に、自分で調べてそれを知った、すぐ後だったわ。この能力が使えるようになったのは」

「おお、冷たくなった……」

 

出久の(ほお)に触れていた手がほんのりと冷たくなった。

5℃前後だろうか。

氷に触れた手よりは冷たいけど、肌が痛みを覚えない程度の冷たさ。

そのまま光己が手を擦りつけると、ぬるりと出久の(ほお)に軟膏のようなものを塗られる感触があった。

彼女の手から分泌されたグリセリンだろう。

 

「まあ、冷却といってもこの程度なのよ」

「ありがとうございます! かっちゃん、これだよこれ!」

「何がだよ! ちゃんと説明しろやクソデク!」

 

スパンとまたいい音がした。

 

「あんたねぇ、仲のいい幼馴染でもクソはないでしょうが」

「仲良くねーわ! バッバァてめえはもう用済みだから引っ込めや!」

 

スパンとまたまたいい音がした。

ぶたれるとわかっていて、よくあれだけ言い返せるなあと出久は変なところで感心した。

 

「かっちゃん、ニトログリセリンの融点は14℃で、完全に結晶化するのは8℃。その間の、部分的にシャーベット状になったときが一番爆発しやすくなるんだ」

「……つまり、俺の手でもそれをやってるって事か?」

 

勝己は自分の手を見ながら首を傾げた。

 

「おそらくね。ただ、かっちゃんの手から分泌されてるのはニトログリセリンとは似て非なる、超常的な爆発物質だ。たぶん適温も本物とは違うだろうし、全く同じに考えてはいけないと思う。それでも、かっちゃんのお母さんが言ってたように、そう意識するだけでもだいぶ反応が良くなるんじゃないかな?」

「やだぁー、私もみっちゃんて呼んでよぉー」

「だまっとれ! 色気づいてんじゃねぇぞクッソババァ!」

 

勝己の罵声の直後、予想通りにスッパァンと音が響いた。

今日一番の快音で、出久もさすがにあれはめっちゃ痛そうだと震え上がった。

 

「くっ……冷却か……まー試してみるわ」

 

勝己は頭頂部に手をやり、痛みに耐えて気丈に平静を装ったが、若干声が震えていた。

 

「うん……あ、それじゃ、僕はそろそろお(いとま)します。ご馳走さまでした」

 

出久は立ち上がり、光己に向かって頭を下げた。

 

「またいらっしゃいね出久ちゃん! いつでも歓迎するわ! 勝己がいないときでも私目当てで来ていいからね!」

「いい加減にしろババア! オイ真に受けるなよ!」

「ハハ……ありがとうございます、それでは!」

 

妙にいそいそと、荷物をまとめてリビングを出ていく出久。

怪訝(けげん)な表情をしてそれを見ていた勝己に、出久はちらりと目配せをした。

 

出久が玄関を出て、ドアの閉じられる音がした後で、勝己はゆっくりと立ち上がった。

 

「……ちょっとコンビニ行ってくる」

「そう? じゃあ駅前の売店で鬼道軒のシューマイ買ってきてくれない? お父さんの晩酌にするから」

「コンビニっつったろーが!」

 

 

──勝己が外に出ると、出久はまだ見える位置にいて、ゆっくり歩いていた。

 

勝己はすぐに追いついて声をかけた。

 

「おいデク、Aタイプの件をまだ聞いてねーぞ」

「ご、ごめん」

 

出久はもじゃもじゃの頭を書きながらごまかし笑いをした。

 

「ここからはちょっと、かっちゃんのお母さんには聞かせられない話になるから……」

「んなこったろーと思ったわ。お前演技下手くそだからババァに気ぃ使われとったぞ」

「あはは……面目ない」

「コンビニ行くからこっち回んぞ」

「うん」

 

道を曲がり、勝己の後ろに出久がついていく。

出久はすこし控えめの声で話しはじめた。

 

「かっちゃんの個性は不思議なところが多くて」

「あぁ?」

「体内で爆発物質を生成し、手のひらから汗と一緒に分泌して、そこから起爆する。Bタイプ……ただ『爆破』という結果を起こすだけの個性だとしたら、こんな回りくどい形にしなくてもいいはずなんだ」

「……」

「かっちゃんの個性がこんな形になった理由を考えたとき、僕は答えをひとつしか思いつかなかった。Aタイプ……つまり、かっちゃんの爆発物質はかっちゃんの意思でコントロールできるんだ」

「ハッ、妄想だな。できた試しがねーよ」

 

勝己は笑い、否定的なそぶりを見せながらも、出久の言葉に耳を傾けていた。

 

出久は大量に仕入れた知識を足がかりにして、まったく未知の領域から勝己に出せない答えを引き込んでくる。

その分析思考のプロセスは勝己には完全に守備範囲外の領域であり、だから勝己にとって出久の発想はあまりにも特異で、そして好奇心と探究心を刺激されるものだった。

 

幼い頃から、ずっとそうだった。

だからいつも遊びと冒険のお供にしていたことを思い出した。

 

「おそらく条件がある。体内で爆発を起こさないように……液体のとき、汗に溶けている状態では当然だめ。量が少な過ぎてもだめで、かっちゃんの身体から離れ過ぎてもだめで……」

 

勝己が立ち止まり、振り向いて出久の方を見た。

出久は両手を動かして、身体の輪郭をたどるようなジェスチャーをして見せる。

 

「気体にして、全身に纏うような状態だ。その状態で、ある程度の密度を保つことが条件。全身から汗と爆発物質を分泌し、それを揮発(きはつ)させて……身体中で、威力や方角を自在にコントロールして『爆破』を起こす。おそらく、それがかっちゃんの『個性』の完成系だ」

「今は手からしか分泌できねぇが……」

「たぶん、身体が拒否してるんじゃないかな。まだ早い、耐えられないからって……」

「チッ……」

「だから、かっちゃんはこのままでも、そのうち、勝てると思うよ……?」

「あぁ? ()()()()でも、()()()()だと?」

「あ!」

 

デクははっとした表情で口を手で押さえた。

 

「デク!!」

 

ボン、と音がして、夕暮れの薄暗い道に閃光が生じた。

勝己の手のひらに煙が生じていた。

勝己が手の上で小さな『爆破』を起こしたのだった。

 

出久はその音に思わず肩を(すく)め、縮こまるようにしてしまう。

それは小学生時代の出久にとって、その音は勝己の癇癪(かんしゃく)がはじまる合図であり、彼のトラウマになっていた。

 

「語るに落ちたなァ……テメエ、今のままでは俺があのクソ女に勝てねぇと思ってやがるな……?」

「自分のことになるとメチャクチャ鋭いよねかっちゃん……」

「っせぇわ!」

 

勝己は出久に詰め寄り、その襟首を(つか)み上げた。

 

「しかも、()()()()()()?」

「うっ!?」

 

図星を突かれた出久は思わず背筋を伸ばす。

 

「本当に隠し事が下手クソだなお前は。今のままでは俺はきっと勝てねぇ、だが勝てるかもしれねぇ方法は思いついた。そんなところか?」

「うう……」

「言えや!」

「いやだ!」

 

出久は襟を締め上げる勝己の手を振り払った。

その抵抗は勝己が想像していたよりも力強く、勝己はよろめいてしまった。

 

「あ、ゴメン……」

 

すぐさま姿勢を戻し、勝己は出久と(にら)み合った。

そうしてみて、はじめて勝己は出久の体格が自分とまったく同じだということに気がついた。

ガンを飛ばした程度では、もう出久は(ひる)みもしなくなっていた。

 

「でも、ダメなんだ。これは……危険すぎる」

「チッ……」

 

その眼差しは真剣だった。

心底勝己を心配しているからだというのは、これまでの付き合いでよくわかっていた。

だから、勝己は感情を押し殺し、目を閉じて、さらに言った。

 

「……話してくれ」

「ええっ……!?」

 

頭こそ下げなかったが、それは懇願だった。

出久はそれを見て、その大きな目を皿のように見開いて驚いた。

 

 

──雄英高校に入学し、彼の覇道にさっそく土をつけやがったクソサド女こと柊うてなを倒すため、勝己が出久に協力を依頼してから半月以上が過ぎていた。

 

その間、出久の明晰(めいせき)な仕事ぶりを目の当たりにして、勝己の胸中を去来するものがあった。

 

デクはこの能力だけでも()()()()

勝己が出久に言われて1年A組のクラスメイト達を観察するようになり、彼らと出久と比べてみて、得た結論はそれだった。

 

そして気づいてしまった。

この男が、雄英高校に合格する可能性があったのではないかと。

 

「かっちゃん……」

「俺は体育祭で完璧に勝って一位になる。ならなきゃならねぇんだ。どんだけヤベェ話でもいいから、教えろよ、その方法を」

 

勝己がどうしても勝ちたい理由はいつの間にか、もうひとつ増えていた。

 

 

 

──集合住宅の共用部。いつもの階段を登る出久の足取りは重かった。

 

「うう、話してしまった……ああ、大丈夫かなぁ」

 

出久は後悔し青ざめながら、自宅への階段を登っていた。

 

「あれでかっちゃん無茶して、再起不能にでもなったら……責任取り切れないよ……」

 

出久は自分のアドバイスで暴走した勝己に訪れるかもしれない、最悪の未来をいろいろなパターンで想像しながら、最高にネガティブな気分で自宅の鍵を開けてドアを開いた。

 

「ただいまー、あれ?」

 

玄関に見慣れない靴が二足あった。

 

「お客さんかな?」

 

首をかしげながら出久はリビングに向かった。

出久の母はいつもと変わらぬ様子で台所に立ち夕食の準備をしていた。

 

「ただいま」

「おかえり。出久にお客さん来てるわよ」

「僕に? 誰?」

 

出久が尋ねると、母親は振り返って出久を見た。

出久とよく似た大きな瞳に、リビングの蛍光灯の光が反射しているのが見えた。

 

「とりあえず出久の部屋で待ってもらってるから」

「ちょっと! いきなり僕の部屋に通すのやめてよ! 誰なの?」

「さすがに今回はお母さんノーコメントだわ」

「なにそれ!? ちょ、ちょっと怖いんだけど!?」

 

出久が躊躇(ちゅうちょ)するそぶりを見せると、母親は軽く突き飛ばすようにしてその背中を押した。

 

「いいからとりあえず話してきなさい。あ、夕飯ご一緒しませんかって聞いてね」

「わ、わかったよ……」

 

わざとゆっくり、自室に向かって廊下を歩く。

なんとなく察しもついていた。

おそらく高校の先生だ。

学校をサボってMt.レディ事務所でバイトしていたのが早くもバレてしまったのではないだろうか。

 

(怒られるだけで済めばいいけれど……あー、まだ給料もらってないんだよなぁー、バイト辞めさせられたら速攻踏み倒されるかなぁー)

 

ため息を隠し切れず、猫背になりながら出久は自室の扉を開けた。

 

「し、失礼しまーす……」

 

そっと扉の隙間からのぞき込んだが、人影は見えなかった。

 

「あれ?」

 

出久は扉を開けて自分の部屋の中に踏み込む。

部屋の中央まで歩いて、辺りを見回そうとしたところで、ベッドの方から、ささやくように細い声がした。

 

緑谷(みどりや)ぁー……」

「え……えぇーっ!?」

 

聞き覚えのある、女の子の声だった。

声のしたほうを向けば、出久の目は驚きのあまり飛び出しそうになった。

 

小さな女の子がベッドで横になっていた。

ボランティア団体『えのるみいた』に養われている、一緒に活動をしたこともある、明らかに訳ありっぽい女の子。

見た目はお人形みたいなのに日本語ペラペラで、出久を子分のように扱うおませさん。

 

かつてはそんな印象だった、その頃よりちょっと大きくなった女の子、(ひいらぎ)ロートスが泣きそうな顔をしてベッドから出久を見つめていた。

 

「助けてぇー……」

「どういう状況なの!?」

 

そしてその後ろでは、彼女をがっちりと抱き枕にした筒美(つつみ)火伊那(かいな)が出久のベッドで横になり、静かに寝息を立てていた。

 

 

 






【あとがき】  トップにもどる

まほあこアニメがえろ……えらいことになってますが、こっちは引っ張られそうになりつつもKENZEN進行で進めて参ります!
本作のかっちゃんは原作に比べると終盤まで中途半端な状態のまま、デクと友達付き合いする感じになります。

次回、ミルコ参上! 
そして厄介ファン同士の泥沼レスバがついに決着か? (2024.02.22 こちらのエピソードは8話でやることにしました……すいません!)
そして体育祭編開幕まであと2回! (2024.02.22 ごめんなさい! あと3, 4回……)
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