九転超えて十となる狐   作:hamラビ

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結界師見返してたら再熱。





その名は山吹乙女

 

 

 

 

 

 

「山吹 乙女と言います。皆さんどうぞ仲良くして下さいね」

 

陶器のような白い肌、腰より長い艶やかな髪、吸い込まれそうな漆黒の瞳。服に至るまで全てが白と黒で形成された美しい転校生。

どこか浮世離れした彼女はそう言うと、誰もが見惚れる笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

____突然だが、君は羽衣狐という妖を知っているか?

 

少しでも日本の「妖怪」に興味があればまあ、大抵は聞いた事が有るだろう。「鬼」「河童」「天狗」「ぬりかべ」「ろくろ首」「ぬらりひょん」日本には数多くの妖が存在している。そんなあまたの妖怪達の中でも大妖怪と畏れられる内の一つに「羽衣狐」と言う妖が居た。

 

取り憑いた人間の寿命分しか生きられない代わりに、何度も転生を繰り返す。そうして転生する度に尻尾の数が増えていき、妖力も増大していく妖の中の異端____それが羽衣狐という妖だった。これはそんな畏ろしく残虐で冷徹...だが確かな慈愛を持った一匹の妖怪の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

羽衣狐は闇の世を作りたかった、妖が上位者として君臨できる世界。

明暗わけずとも全て闇に堕ちればいい.....そして自分の「子」こそが世の象徴となるのだと信じていた。信じていたのだ。

 

あの時までは

 

「何故じゃ清明...!なぜ妾を、母を見捨てた...!?」

 

「産んでくれて有難う母上.....もう貴方は要らない」

 

妾の悲願、愛しいややこ、産まれてくれてありがとう。羽衣狐の歓喜の涙は愛しい息子...清明の手によって絶望へと塗り替えられていた。

 

 

「ああ...!嫌じゃ、嫌じゃ嫌...ッ!清明、せいめぇぇぇ!」

 

これから始まるのに、あと少しなのに.....ッ!

 

何度も転生した、人の世に紛れ権力だって手に入れた。多くの人間を操り、京の都の妖達を従え、長い時をかけて盤石な組織を作り上げた。全ては愛しいややこの為に、全ては清明の為に!!!

 

悲痛な叫びを無視して清明は、鵺は非常にも母の体を切り裂いた。

 

 

「ぐ、ぁっ、妾の.......私の...千年は何だったのだ...ああ...」

 

 

____________母は地獄でまってるぞ。

胎を裂かれた哀れな狐は、そう言い残して息絶えた。

 

 

 

 

 

 

暗転

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

幼き日の夕暮れ。

帰路についていた少年の視線の先に、川辺で蹲る少女が居た。よく見ると少女は泣いていて、しきりに痛い痛いと呟くものだから、心優しい少年は慌てて駆け寄ると「大丈夫...?どこが痛いの?」と声を掛けた。

 

少女はピクリと肩を震わせると、俯いた顔をゆっくりと上げ少年と目を合わせた。

 

「ここがずっと痛いの、痛くて痛くて泣いてしまう」

 

黒曜石の様な漆黒の瞳からハラハラと涙がこぼれ落ちる、それがとても綺麗だったもので一瞬、少年は意識がどこかに飛んでってしまいそうだった。

 

「ここって...お腹?僕の家近くなんだ、お薬のむ?」

 

少女は悲しそうに首を振る。

 

「違うの.....もう駄目なの...」

 

どうして、どうして、と胎を抑えてまた蹲ってしまう。少年はどうすればいいか分からず、かと言って放っておく事も出来なかったので、ひたすら少女に寄り添い背をさすり続けた。

 

そうして暫く経つと、もう泣き声は止んでいて。

 

 

此方をジッ...と見つめる、その子が、笑って何かを________。

 

 

 

(あれ、何を言われたんだっけ...?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリリリリリリ!!!

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁ!?」

 

突如として響き渡る轟音に、少年____墨村良守の意識は覚醒する。

飛び起きた彼を見たクラスメイト達は呆れ半分といったふうに、やれやれと肩をすくめる者やくすくすと笑う者もいた。

 

 

「まったく、やっと起きたか墨村」

 

俺の授業で寝るんじゃないぞ〜と教師が気の無い注意をすると、私物である目覚まし時計を懐へと戻した。毎回思うがこの起こし方はどうなんだろう。

 

「ん?何してる墨村、さっさと挨拶しないか」

 

「あ、挨拶?誰に」

 

「はぁ〜、お前と言う奴は寝ぼけてるのか?」

 

全くこいつは...頭が痛いといったふうに大きくため息をついてから、横を見ろ馬鹿者。横をと頭を小突かれる。寝起きなのもあってか、そのぞんざいな扱いに少しイラッとしながら良守は「横がなんだっつうの」と文句を言いながらも、教師と反対の窓際へと視線を向けると。

 

 

見覚えのない女の子が隣の席に座っていた。

 

良守は「誰ぇ!?」と驚いたが、すかさずクラスメイトが「転校生だよ」とフォローする。教師は「昨日も言っただろうが」と呟くが、基本的に良守はずっと寝ているので、そんな事知り得なかったのだ。

 

 

ふと、くすくすと品の良い笑い声が聞こえてきて、それが件の転校生が自分を見て笑っていると気づいたもんだから、何だか気恥ずかしくなった良守はそんな空気を変えるべくゴホンと一つ咳払いをして向き合った。

 

 

「えっと。なんか恥ずかしい所見せちまったな、俺は墨村良守。これからよろしく」

 

頬をかきながら、少し気まずそうに挨拶をする。

それに応えるように転校生も良守と目を合わせ口を開いた。

 

「私は山吹 乙女と言います。墨村さんって面白いんですね」

 

 

どうぞ、仲良くして下さいね。そう言って微笑む転校生.....山吹の笑みを、良守は昔どこかで見た気がした。

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 

『くふ、相変わらずじゃったのう...良守』

 

『この地に愛された可愛い子、同時に邪魔な術者よ』

 

『どうか妾を楽しませておくれ____』

 

 

 

 

 

 

 







羽衣狐√とか別に考えてないのに、ちょっとそんな感じになっちゃった...。妖の執着って愛に似てる気がするんですよね。

これも全部羽衣狐が魅力的すぎるんや!(責任転嫁)

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