キンジ・ア・ライブ   作:赤須

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0弾 プロローグ

――――――精霊が目の前に現れると思うか?

 

 

 

ファンタジーとかSFとかじゃなくてさ。

現実的に俺の目の前に現れたんだ。

実際のアニメとかラノベの小説にはもってこいの導入だろうな。

主人公はそんな精霊の助けとか聞いて、冒険とかして、

正義の味方のように物語が描かれるだろう。

 

そして、俺―――遠山キンジはアリア(あいつ)のため、

アリアの隣にいたいため、パートナーでいたいため、

 

俺は、アリアの体の中に埋め込まれている色金を封じる殻金を集め、

緋緋神(ヒヒガミ)とやらの恐ろしい戦と恋の神を呼び起こさないために、

―――戦って、戦って、今―――

 

 

 

 

 

…………蒼穹(そら)に舞う富嶽の上で……遠山キンジと閻の激闘が繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

「誰ぞに似ていると思えば、摂津守(せつつのかみ)殿の面影……いや、よく似ておるな。瓜二つよ」

 

「摂津守?」

 

「我が祖、酒呑殿の仇である清和源氏の頼光殿よ。遠山の……汝は遠山金四郎景元殿の胤裔か?」

 

俺はその問いに小さく頷く。すると、閻の様子から綻びを表情で表した。

高笑いする閻に俺は不思議そうに見つめていると、

 

「道理で加藤氏は頼義殿と挟んで、頼光殿の子が密かに渡されておったのだな」

 

少し納得がいかないな。確かに遠山金四郎は俺の先祖だし、

加藤景員も鎌倉末期の遠山家の先祖でもあり、彼は源氏の味方になったのも知っている。

たぶん、閻はそのことを言っているのだろう。

 

「頼光公も酒呑様や土蜘蛛を討ったものだが、汝も竜悴公姫(どらきゅりあ)九龍猿王(がうろんもんく)を討った剛の者。基の宿命、千年隔世して生じたとみられる。それと逢い見えるとは、縁は異な物よ」

 

閻の昂る戦闘意欲に牙を剥き、ニヤァ……と笑う。

 

「親は2人、祖父母は4人。その前は8人、16、32、64―――祖先は、羃乗的に増えていく。千年も遡れば天文学的な人数だ。その中の誰かが君の祖先の仇だったとしても、どうでもよくないか。やった方が言うのもなんだけど」

 

「否。言わばこれは、親の仇討ちよ。なあ皆の衆」

 

俺や閻の周辺で観戦している鬼たちは閻の言葉に賛同して叫び声をあげる。

ガヤガヤと酒瓶を叩いたり、足で床を踏み鳴らしたりと……

(まるで俺が悪者みたいだな)

鬼たちのところでセーラまでもが横目で俺をブーイングしてきているよ。

 

「―――鬼にも様々な種があるが、我らの一族は人のように婚姻はせぬ。従って、誰が誰の親という物の考え方もせぬ。先に生じれば皆が祖、後に生じれば皆が子。人に喩えれば、我らは親同士が戦った因縁の敵のようなものよ」

 

どうやら戦いから離れないようだ。

逆に好戦的な感じもする。

 

しかし……気になる点があるな。

 

「閻―――君はどうやって一族の子孫を残しているんだい。皆が女性に見えるのだけど……」

 

「当世、我らが緋鬼は生まれた時みな女性(にょしょう)。鬼も十八と人は言うが、十八歳を過ぎれば鬼は姓が変わり、他の多くと子を残して死んでいくのだ」

 

……ま、まさか雌性先熟の種だったのか。

生物の中には時々見られるパターンで、ベラやブダイ、トラギスにも同じ習性がある。

 

俺はなるほど、と心の中で納得した。

鬼が強い理由は、後に男となって(・・・・・・・)子孫を残せるのは、戦闘能力が高い一個体のみ。

 

つまり、彼女らはブラド曰く強い遺伝子の個体同士が重なるのだ。

さらに何代も続けば、後の世代はさらに強くなる。気が付けば強キャラの一族になるのか……

閻のような長寿の者がいれば乱婚による文化で、誰が誰の親なのか分からなくなる。

そうなれば祖先はみんな親同前と見ても当たり前。

 

「頼光殿は門外不出の奥義を二つ、用いて酒呑様を殺めておる」

 

「じゃあ門外不出でもなさそうだな。見られても無視されたんだろ?」

 

「否。頼光殿は技を見た我を捕らえたが、幼子と見て我を見逃したのだ」

 

どうやら頼光は殺生は好まない性格なのだろう。

玉藻も遠山侍は変わっているとか言われたことがあるような気がするし……

まあ、今代の俺には大迷惑だよ。

 

「人如きに助命されたは、生涯の恥。その恥、今宵雪ぐ」

 

閻が持っていた金棒の金剛六角が手元には無かった。

酒もない。座の脇に据えられているようだ。

 

「―――おい。閻。早う」

 

鬼の親方様である覇美が酒を口にして喉を潤させながら、

閻に命じた。

 

「御意」

 

覇美に閻は応答する――――――次の瞬間……!

 

「―――『羅刹(らせつ)』」

 

構え無しの掌底が俺の胸に減り込んできた。

それも深く、深く……!

 

ズッッッッッッン―――!

 

彼女の最大にして本気の一撃(・・・・・)が俺の心臓を停止させた。

何もできず―――橘花による防御もままならず―――俺は―――

 

一撃で―――突然死した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時に生じる突然死が、俺の人生において第2の人生とも言うべきなのか、

俺は気が付けば死後(・・)―――いや、転生した世界にいた。

 

それを理解できた理由は、まず―――

見たことも無いような街並みと風景に俺は立っていたからだ。

 

 

 

そこに1人の女性が俺と対峙している。

気が付いた時にはすでに俺はこの女性に目を奪われていた。

 

紫原石(アメジスト)のように輝く強固そうな鎧のドレス。

 

夜空の星々に匹敵するほどの美しさを持つ長い髪。

 

涼しげな表情に凛とした美貌が俺の心をくすぐる。

 

 

 

アリア、白雪、理子、レキ、ジャンヌ、平賀さん、風魔、ココ4姉妹、

 

パトラ、玉藻、ヒルダ、萌、菊代、猴、孫、メーア、カツェ、リサ、セーラ、

 

数々の女性を見てきたが、それらと勝るとも劣らないほどの魅力と可愛さを持ち、

 

そして兄さんがカナに変化した状態にも勝るのではないかというぐらい、

 

絶世なまでに――――――美しかった。

 

 

 

そして、俺―――遠山キンジの視界が白く包み込まれた。

体中が軽くなり、魂すらも霞んでくる。意識すら忘れてしまうような、そんな感覚だ。

だが、それすらもなくなっていく。

暗く、真っ黒に、闇に覆われていった。

 

 

 

(な、なんだ、これは……?)

 

ふわりとした寝床。俺は寝ているのか。

探偵科(インケスタ)の習慣のせいで思わず探りたくなるのだが、

これは死後のようだ。だが、天国や地獄とはまた違う。

 

(ここは……どこなんだ)

 

気が付けば自身の体が鈍った感覚と強張った感じがする。

重いというか、動けないな。

しかも探ろうにも視界が曇っているのか、ぼやけているのか、

全く分からない。

 

血の巡りからHSSを発動していないようだ。

考えようにも、今の俺では凡人しか考えられない今、

どうしようもないな。

 

(一体、何が起きているんだ)

 

困惑する俺はあることに気付いた。

目で体中を見たわけじゃないから確証したわけじゃないが、

体中を動かそうに感覚で分かる。

 

(う、嘘だろ……)

 

どうして動けないか、ようやく理解できた。

五体満足はあるが、頭も体で支えられるほどの力がないこと。

そして明らかに四肢の長さが短すぎることだ。

 

この時に遠山キンジは自分の想像が遥かに超えていたことに驚愕せざるを得なかった。

 

……なぜなら、

 

 

――――――赤ん坊になっていたからだ……!

 

 

 

その時、顔は見えないが1人の女性らしき人物が、

俺の隣に寝ていて、細い手を俺の頬に触れながら口を開く。

 

「生まれてきてくれて……ありがとう。そしておめでとう……」

 

寝ていた俺をどこか懐かしく思わせるような手で、

優しく包み、俺の耳に囁いた。

 

「――――――今日からあなたの名前は、崇宮士道よ」

 

 

 

 

 

……嘗て凶悪化する犯罪に対抗するため、武偵として生きてきた俺は、

アリア(あいつ)と出会い、アリアのために……幾多の戦場を渡り歩いた。

 

双剣双銃(カドラ)の理子

 

銀氷の魔女―――ジャンヌ

 

無限罪のブラド

 

勧善懲悪にして兄の金一

 

砂礫の魔女―――パトラ

 

そして、稀代の天才シャーロック

 

これら以降も数々の猛者と戦ってきた。

そして……俺は次第にこう呼ばれるようになった。

 

 

 

――――――『不可能を可能にする男』……『(エネイブル)』と……

 

 

 

遠山キンジ改め、崇宮士道としてこの刹那の物語を歩んでいくことになった。

 

 

 

 

 




キンジの性格が掴みきれず、違うキャラになってたらどうしよう……

感想・批評・誤字脱字がありましたらよろしくお願いします。
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