キンジ・ア・ライブ   作:赤須

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更新遅れてしまい、本当にすみません。

それと1話にしてお気に入りが11も増えたことに驚きました!
ありがたいです!

今回は原作の5年前という設定の話です。
シリアスになってしまいますが、楽しんでいってもらえるとうれしいです。



Ⅰ弾 5年前

俺、遠山キンジ改め、崇宮士道改め、五河士道です。

 

閻の『羅刹』で死んだはずの俺がこの世界に転生してから何年と経っていったが、

やはり、前世に戻れないようだ。

イ・ウーでの激闘や極東戦役もない。ホントに平和すぎる日常。

争いもなく、死闘を繰り返すこともない……それなら喜ばしいことだ。

 

 

 

もしこれが平和だというのなら、俺にとってこの平和は、一時に過ぎないだろう。

 

 

 

なぜなら……歳が1桁しかなっていない俺を両親は捨てたのだ。

 

 

 

―――以降俺は五河家に引き取られ、新たな両親と義理の妹……五河琴里の家族に加わる。

前世での母親は俺が意識する頃には亡くなっており、『静かなる鬼(オルゴ)』と恐れられた遠山金叉こと父さんも武装検事として殉職し、両親が早くも……というのを俺は2度も味わうことになるな。

そう思えば思うほど、俺は虚しくなってくる。

だが、今の俺は両親が失おうと悲しむほど子供じゃない。

 

それに新しく迎えてくれた家族にもよくしてもらっているし、

悲しくないといえば嘘になるが、それでも立ち直らなくてはいけないと確信はしている。

 

(まあ、家族って言っても義理の両親は現在、海外の世界的に有名な会社に勤めているから、両親とはまったく会ってないけどな……)

 

そして、残された俺と琴里。いつになっても女子と2人きりは慣れないが、

当の本人である琴里はやはり両親の不在の時はいつも寂しそうな表情だ。

 

五河琴里。ツインテールなところから妙にアリアと似ているが、あいつのように拳銃を俺に向けてきたり、発砲してこないアリアと思えばいい。

 

前世にもかなめがいた分、いきなり妹が出来ただのは慣れっこだ。

しかし、琴里の場合は無邪気で明るい娘だが両親は家を空けることが多く、

事あることに泣いてしまうような―――いわば、寂しがり屋で泣き虫な妹でもある。

 

そんな琴里に俺は一緒にいてあげ、甘えさせてあげる役目も全うした。

時にHSS―――ヒステリアモードになりかけたこともあるが、

相手は妹なので、俺の性的興奮をギリギリで耐えてきた。

まぁ、ヒステリアモードになり掛けたのも、もう指では数えきれないほど……。

 

利点としては家事や炊事は前世よりも上手くなったような気がするな。

平和すぎるこの日々に満足しているわけではないが、それなりに満喫した生活を送っている。

 

俺はふと前世と現世のことについて思い詰めてしまった。

 

(……武偵のいない世界、か)

 

どうやらこの世界に武偵は存在しないらしく、

銃刀法などもキッチリと守られている。平穏すぎて今の俺にとっては刺激がないというか、

退屈な日々にも等しい。まあ、平和で何よりだが……

 

(今頃……アリアたちはどうなっているのだろうか)

 

死んだ身としては考えても仕方がないと、応えるしかないが、

やはり心配なのは隠さずとも思っていた。

 

(……銃でも撃って気晴らしするか)

 

BB弾が撃てるおもちゃの拳銃だがな。

 

あれからというものの、平和だからと言って日頃の鍛錬には怠ってはいない。

銃はないが、BB弾が撃てるおもちゃなどを使用し、空き缶を当てる射撃訓練をしているが、実銃ではないので、どうにも違和感がある。

 

まあ損はないだろう。不幸な事故なんていつ起きるか分からないしな。

今までの経験上、唐突に現れる。経験上、な……

 

 

 

 

 

五河家に来て5年以上経ち、前世のように犯罪が凶悪化するようなことが起きず、

何事もなく過ごせている。それは良い事なのだろう。

だが、この世界にはどうやら空間震(・・・)というものが世界の脅威になっているようだな。

 

空間震とは、原因不明の空間による地震。かなめ風に言えば非合理的な現象だ。

起きた地点は隕石のクレーターのように広がって家やビルがまるごと喰われたかのように消滅させられる。それも被害はそれぞれ異なるのだが、ある大きな空間震はユーラシア大陸に大穴を空けたそうだ。

 

自然の理にさえ逆らおうとするジーサードや神様の玉藻なんかに話したら驚くだろうな。いや、その前にこれを信じてくれるかどうかが大事なんだが……

 

「そういえば、今日は琴里の誕生日だったか」

 

―――8月3日……琴里の誕生日。両親は今日も勤務で休暇を取ろうにも取れないようだ。本当は琴里の誕生日を祝ってあげたい気持ちなのだろう。琴里もそれを知っても尚、自分の誕生日に両親がいないというのは寂しいみたいだ。それは人間として当たり前だ。

 

そこで俺は内緒のサプライズとして琴里に気付かれないよう、デパートへ向かう。

両親からもらっていたお小遣いを小まめに溜め、

集まった金で琴里に何か買ってあげてプレゼントしようと思った。

 

(そういや、アリアたちにも誕生日にプレゼントしたこともあったな)

 

今思えば懐かしい前世の記憶。アリアには指輪+拳銃を無暗にぶっ放さない。白雪は花束+ボディーガードでプレゼントをあげていたな。まだ理子やレキには誕生日プレゼントしていないが、その当時はジャンヌにご教授してもらったものだしな。

だが……この世界に女の何たるかを知っているジャンヌ先生がいない。

 

(……ど、どうすればいいんだ)

 

デパートの中にある店内を捜しまわるが、

色々ありすぎて何を買えばいいのか分からなくなってきたぞ。

それにプレゼントをしたのはアリアたちの年齢などに合わせてだ。

琴里ぐらいの娘には何をあげれば喜ぶか今一だなぁ。

 

「困ったな。それに早く帰らねえと、あいつ寂しがるだろうし」

 

とは言いつつも、やはり決まらない。

別にあいつの好きなチュッパチャプスでも構わないのだが、

それだとかえってマズいか……

 

やっぱりプレゼントは身に着けている奴の方が喜びそうだよな。

歩いていると、ふとアクセサリー店の棚にあった物に目が留まった。

 

(黒いリボン……、琴里のリボンは白いから真逆の色も試しに買ってみるのもいいかもしれん)

 

あいつは寂しがり屋だから……これでも付けてみりゃあ少しでも強くなったりして……

そう思った俺は黒いリボンを棚から取って店員にラッピングするよう頼み、購入した。

 

 

 

 

 

日が暮れて空が暗闇へと覆う中、俺は急いで家に帰ろうとした。

 

(しまったな、プレゼントを決めるのに時間が掛かっちまったか……急がねえと琴里に心配を掛けてしまうな)

 

それに、今日は琴里の誕生日。両親がいない今、

家で寂しく泣いているかもしれない。

そう思えば、思うほど俺は急いで帰ろう……と、走る速度を上げた。

 

次の瞬間―――俺の家の方から爆発による轟音が俺の耳に襲う。

……しかも大きいぞ。

プラスチック爆弾の比じゃねえな。

 

「琴里……ッ」

 

脳裏に過る琴里の顔。俺は全力で走る。

崩壊した建物、熱気によって溶けだされている瓦礫は、まるで地獄絵図のような焼け野原の光景であった。

そして―――巫女服のような姿で泣き叫ぶ琴里の姿が目に浮かんだ。

 

「お……にーちゃん……! おにーちゃん……ッ!」

 

「琴里ぃ……!」

 

俺は叫んだ。周囲に燃え盛る大地が広がっており、

琴里に近づこうと歩みを進めると……まるで俺と琴里を遮ろう意志があるかのように、炎が覆って来る。

 

「ぐっ……まるで超能力(ステルス)だな」

 

だが、それでも歩みを止めるつもりは俺にはない。

武偵憲章5条―――『行動に疾くあれ。先手必勝を旨とすべし』だ……!

今の俺はHSSじゃないが、妹を助けるのは兄として当然。

 

これは嘗てジーサードとの戦いで学んだことだ。

前世―――遠山キンジこと俺の妹……かなめがやられた時にあいつに妹だと認めてあげられなかったから、俺は後悔したんだ。もっと早くあいつのことを認めてあげればこんなことにはならなかっただろう、とな。

 

―――だから、今度こそ守って見せる……妹を……!

 

「ぅ、ぁ、ぁ、お、おにぃちゃん……っ、おにーちゃん、おにーちゃん……ッ!」

 

「待ってろ! 琴里ッ」

 

崩れ落ちる瓦礫を避け、焔のトンネルを潜った。

よし、これなら琴里を救えるっ。

その時―――琴里の口から何かが俺の耳に貫かせるッ。

 

「おにーぢゃん! 来ぢゃだめえぇぇぇぇっ!!」

 

「なっ!?」

 

瓦礫や周辺に燃える()には問題なかったが、

この()には気を回せなかったか……!

 

「ぐっ……あ!?」

 

俺はどうにか避けようとするが、

膨らむ焔に躱しきれず、弾き返されて体が後方へと吹き飛ばされる。

 

「おにーちゃん……っ!」

 

強襲科(アサルト)時代のころを再現に日頃、鍛錬してきた甲斐があったぜ。

どうにか受け身は取れたが、体中が火傷だらけだな。

 

俺がやられたと感じ取り、琴里は足を怪我しているのにも関わらず、

その痛みを我慢して俺の元に駆け寄ってくる。

 

「おにーちゃん……おにーちゃん! おにーちゃん……ッ!」

 

「こと、り……」

 

ああ、何だか意識まで失いかけてきやがった。

ちきしょう……琴里が目の前にいるってのに……

また守れなかったのか……俺は……

 

アリアも、琴里も――――――

 

「おにーちゃん……おにーちゃん……っ!!」

 

【―――ねぇ、彼を助けたい?】

 

泣き叫ぶ琴里―――その瞬間、彼女の頭上に『何か』がいた。

琴里は『何か』の出現に驚き、無我夢中で這ってさっきいた場所へと逃げる。

なんだ、あれは……何者なんだ?

 

「わ、私の体に……何をしたの!? 私……こんな力要らないっ」

 

【そう。でも彼、このまま死んでしまうけれど、それでもいいの?】

 

「……!?」

 

誰だ。琴里の近くに……あの『何か』は……。

『見える透明人間』こと緑松武尊のように『認識できない』と同じような、

いや、それ以上に認識しづらい。

 

だが、それ以前にこいつに怒りが湧いた。

こいつが琴里に何かしやがったのか……! と、俺の血が疼く。

琴里はビクッ、と体を震わせ、俺の方を見つめる。

一瞬、この怒りに気付いたのかと思ったが、どうやらそんな感じじゃあなさそうだ。

 

「おにーちゃんを、助ける方法が……あるの?」

 

【ええ】

 

そう答えた『何か』が、その助ける方法を、静かに語りだした。

探偵科(インケスタ)で習った読唇術を試みようと思ったが、口すら見えない『何か』に読唇なんてできっこなかった。

 

琴里はそれを聞いてこちらの方に視線を向ける。

何を聞いたんだ、琴里は……? 何だか恥じらっているような顔だし……

 

一度深呼吸をする琴里は頬を赤目らせながら、自分の顔を俺の顔に近づけてきた。

ゆっくりと、琴里の唇を俺の唇へと向かって行き、次第に重ね合う。

 

唇と唇の重ね合い―――つまり、これはキスである。

 

(……!)

 

この時、琴里が纏う巫女服が光の粒子となって空気に溶けていった。

琴里の和装が消え、今度は俺の体中に発生した青白い炎が火傷を癒していく。

俺はこの現象が不思議に思い、一瞬超能力の類いかと思ったが、

……この感じ、超能力という類いではなさそうだ。

 

それに、この何か(・・)が俺の体に入り込んでくるような感覚は……いったい……

 

そう考えている内に俺の体中の火傷が完全に癒えていく。

同時に琴里とのキスによって、俺の体の芯が熱くなっていった。

 

(これは……!)

 

―――忘れるはずがない。なにせ、前世ではこれによく助けられたんだからな。

転生した時に、あの感覚が残っていたから、もしやと思ったが、

その思った通り、あの感覚によって今、こうしてなろうとしている(・・・・・・・・)

 

まったく、前世からどうやってついてきたんだか……

厄介者ともいえる遠山家に伝わる特異体質が、俺の体中に廻らせる熱い血が『あの感覚』を思い出させてくれる。

……ま、転生してきたんだ……さもありなん、か。

 

そして―――

 

 

 

 

 

(―――ああ、なったんだな)

 

そう、今の俺はヒステリアモード。

 

ヒステリアモードとは、HSS―――ヒステリア・サヴァン・シンドロームの略称で、俺のような特定人物に一定以上の恋愛時脳内物質βエンドルフィンが分泌され、通常の約30倍もの神経伝達物質を媒介し、頭の大脳・小脳・脊髄など……中枢神経系の活動を異常なまでに亢進させるという。

 

結果的にヒステリアモードの発動時は論理的思考力・判断力・反射神経などなど、俺の能力を向上させてくれるという体質だ。

 

簡単に言えば、このHSSを持つ者が性的に興奮(・・・・・)すると、一定時間―――人格がスイッチで切り替わったかのように超人になれるのだ。

ま、二重人格とかじゃないんだけどな。

アリアもこのヒステリアモードの仕組みが分からず、二重人格とか言っているがあれは間違いだ。

人格は精神上の中だけであって、ヒステリアモードは神経上だ。

 

そして弱点というべきだろうか、このヒステリアモードは『女子を何が何でも守りたくなる』ということ。そして、一番難なのは、先程言ったスイッチの切り替えにキザな口調になるというところだろう。

この体質は『子孫の残すため』という異常な発達から生まれた物らしい。

 

「――――――ふっ、白雪姫の逆バージョンだな。これは……」

 

琴里と俺は、互いの口を離し、同時に息をついた。

俺は声を低くしながら一笑する。

 

「おにー……ちゃん?」

 

おい、俺よ……何が『ふっ』だ。カッコつけるんじゃねえよ。琴里が不思議そうな目でこっちを見ているじゃねえか。

……まあ数十年ぶりとはいえ、相変わらずのようだな。ヒステリアモードの俺よ。

 

俺はゆっくりと上体を起こし、

今にも泣きそうな琴里の頭に手を置いて撫でる。

 

「琴里、大丈夫か? ケガとかないよな」

 

さりげなく女性の肌を触り、慰めるわ、褒めるわ、優しく接するというところも、

ヒステリアモードの難所ともいえる。

 

俺は琴里に何も無いことにホッと息をつくと――――――

 

「おにーちゃんっ!」

 

助かったという俺に琴里は自分の姿が露わとなっているのにも関わらず、

ヒシッと抱き付いてきた琴里。

そして、俺は彼女の両肩に自分の両手で触れた。

 

「琴里、泣いているのかい?」

 

「うぅ……だって、だって……」

 

琴里は両手の甲で顔を覆い、鼻を啜っている。

俺はその時、彼女の表情を見て、納得した。

 

(ああ、怖かったんだな。きっと……)

 

そんな姿を見て、俺は上着を脱いで琴里に被せた。

 

「……取りあえず服を着てくれ、体を冷やしてはいけない」

 

「おにぃちゃん……」

 

俺は琴里の瞳に溜まっていた涙を人差し指で拭ってやると、

ふとある事を思い出し、自分のポケットや手にあれ(・・)がないとみて周囲を見渡した。

 

そこに俺が先程吹っ飛ばされた地点に紙袋があるのに気付く。

立ち上がり、紙袋のある場所に歩いて袋の紐を拾い上げた。

 

「……?」

 

琴里は不思議そうな目で俺を見つめている。

紙袋からラッピングされた黒いリボンを取り出し、

再び俺は琴里の元に戻った。

 

「―――琴里、お誕生日……おめでとう」

 

優しく、優しくと俺は琴里の頭を撫でる。

対する琴里はぽかーんと丸い目で驚いているよ。

もしかして、自分の誕生日を忘れられたとか思っているのかな?

 

まあ、前世の俺は誕生日を忘れると誰かさんから銃弾の発砲をもらいかねないから誕生日のことは必死で覚えたけどね。

……その誰とは言わないけど。琴里の誕生日を両親から聞いておいて良かった。

 

「リボン……」

 

「ああ、誕生日プレゼントだよ。俺の小遣いから買ったんだ。気に入ってくれたかな?」

 

俺がそう言うと、琴里はコクコクと首を縦に振った。

『良かった』と俺が口にすると、琴里はすぐにラッピングを剥がし、

黒いリボンを髪の毛の両端に結う。

 

その姿を見た俺は笑顔で言った。

 

「とても似合うよ。琴里。やっぱり女の子には涙は似合わないね。琴里には笑顔が一番可愛らしくて好きだ」

 

「……ほんとう?」

 

ああ、と、俺は頷き琴里の頬に触れると、

琴里はニコッと笑顔になっているのが分かる。

 

「本当だ。男に二言はない。琴里……今は泣き虫でも、せめてこのリボンを付けている間だけは強くなれ。琴里は本当に強い子なんだから」

 

「強い……子……」

 

俺が言った言葉を琴里は呟くと、さっきよりもいい笑顔となって、

鼻を擦って赤くなる。

 

……よかった。琴里が無事で。

 

……だが、まだ終わってはいない。

 

……まだ終わってないのだ。

 

俺は眉間を歪へと変え、琴里と俺の前に姿を現す『何か』に向かって睨み付けた。

 

ドクンッ

 

この時に生じる感覚―――ヤツは琴里の涙を流させた。そして、ヤツは琴里の心を奪った(・・・)

今の俺は通常のヒステリア・ノルマーレだが、さっきまで抑えていた獰猛な獣は抑えられなくなったようだ。

 

ヒステリアモードには派生形がある。

ベルセ・アゴニザンテ・レガルメンテ・ワイズマン―――

 

今の俺はヒステリア・ベルセ。通常のノルマーレは女を守るのだが、

ベルセは女を……奪う。ノルマーレよりも1.7倍もの力が引き出され、

相手に対して攻撃的な感じになる。たとえ、それが女性であってもだ……

 

あいつは琴里の心を奪ったんだからな。

 

【―――治ったんだね。何よりよ】

 

ベルセに変わりつつある俺に『何か』は小さく笑った。

 

「お前は……誰だ……!」

 

俺は女性を傷付けさせないよう、また女性に『何か』から視界を隠すよう、

琴里の前に立ちはだかり、俺は『何か』に向かって尋ねる。

 

【安心していいよ。私は君たちに危害を加えるつもりはない。―――むしろ最高の結果を残してくれた君たちに感謝をしたいくらいなんだから】

 

「これだけのことをして、危害を加えるつもりはない……だと? ふざけるのも大概にしろよ」

 

諫めるように喋る俺は『桜花(おうか)』の構えを敷く。

『何か』は不思議そうな声を漏らした。

 

【……ふぅん、君……変わった雰囲気をしているね。それに君の行動が読めないというか、僕の知らない何かが僕を狂わせているようだ】

 

シャーロックにも似たような事を言われたことがあったけな。

あの時のあいつはベルセの事を知らなかったから条理推理(コグニス)が外れたわけだし……

 

【君は、何者なんだい】

 

その問いに、俺は一度深呼吸をして『何か』に向かってニヤリと笑う。何者かもわからんのに、今の状況で笑っているなんてな……ベルセの影響かもしれんな。

 

「――――――俺はただの高校生……いや、今は小学生だがな。前世では荒っぽい……落ちこぼれの高校生さ」

 

『何か』はそれを聞いて微笑を浮かばせる。

近くにいた琴里は俺が何を言っているのか分からず、

不思議そうな瞳で俺を見つめていた。

 

【前世……か、なるほどね】

 

呟く『何か』は、霧のように流れ、こちらに近づいてきた。

 

(……!)

 

その伸ばしてくる手に恐怖感を抱かせる。

だから何だ。俺は嘗て数々の敵を撃退してきたんだ。

俺を殺した閻に比べれば……

 

瞬時に『桜花』でも喰らわせようと思ったが、

か、体が……動かない……? 

 

まるでヒルダの暗示術(メスメリズム)による金縛りみたいだ……!

 

【君の言っていることは本当だろうね。だから、君たちの記憶を消させてもらうよ。大丈夫。前世やこの事以外の記憶までは取らない】

 

「……!」

 

そして、俺は『何か』に額を触れられた瞬間―――俺の視界が暗くなった。

 

 

 

 




どうも、赤須です。
今回は緋弾のアリアのことを知らない方のために、
復習っぽく描いてみました。

感想・批評・誤字脱字などありましたら、よろしくお願いします。
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