俺は妹のアリスから放課後の屋上に来るよう呼び出され、
行くことになった俺は階段を上がっていくと……
【……待っていたわ、シドー】
「……」
【あれから、色々あったわね】
「そうだな……ホント、色々とな」
そこには俺の愛する妹のアリスが立っていた。
彼女とは様々な戦いを繰り広げ、絆という絆を結んできた。
アリスは俺の方を頬を桃色に染めながら、口を開く。
【シドー……あ、あたし……ずっと前から伝えたかったこと……口にしていい?】
「何を言っているんだ、アリス。兄妹なんだから隠さなくてもいいだろ……」
しかし、今ではその絆すらも超えた存在であると思っている。
が、それは決して触れてはいけないパンドラの箱のようなものだ。
触れれば、取り返しのつかないことが起きるから……
【じゃ、じゃあ……言うね】
「ああ」
法律以前に家族だから……俺はそれに従ってずっと堪えてきた。
好意を胸の内に隠し、ひたすら我慢してきた。
しかし、それは俺の間違いかもしれない。
兄が妹を……妹が兄を……互いの気持ちさえよければ……
【あたしね。ずっとシドーおにーちゃんことが……す……】
―――愛し合うことだって許されるんだって。
【好きぃ! シドーの事が! シドーおにーちゃんが好きなの!】
選択肢『受け入れる/受け入れない』
ピッと『受け入れる』の選択肢を迷わずコントローラーのボタンで打ち込んだ。
すると――――――
「ああ、俺もだ。俺も……お前のことが好きだ! アリス!」
【おにーちゃん……!】
そして、俺とアリスは互いの好意を打ち解けあい、愛し合っていることを知った2人は抱き付いた。その瞬間、まるで2人を祝福するかのような放課後の予鈴の音が響く。
ここから画面がそのままでスタッフロールが流れ出し、ハッピーエンドに流れるようなBGMを基に次々と今までやってきたストーリーの画像が表示される。
「お……」
この時、初めて俺はゲームに対する感動を覚えたかもしれん。
理子がなぜ妹ゴスと妹ゴス2・3が違うとか何となくわかってきた気がする。
すまない、理子……俺が間違ってた。
俺はコントローラーを宙に掲げ、喜びと感動を声に出しながら……
「終わったあああああ……! はは……な、長かった」
「……ん、まあ少し時間はかかったが、第一段階はクリアとしておくか」
「ま、一応全CGコンプしたみたいだし、とりあえずは及第点かしらね。……とはいっても、あくまで画面の中の女の子に対してだけど」
背後で俺のプレイ姿を見ていた令音はその無関心の表情で呟き、
琴里は溜息を吐く。
「じゃ、次の訓練だけど……実戦らしく生身の女性にいこうかしら。時間も掛かっちゃったわけだし」
「……ふむ、大丈夫かね」
「大丈夫よ。仮に失敗しても失われるのは士道の社会的存在だけだから」
「何が大丈夫だ。俺だけ不幸な目に逢うじゃねえか」
ひそひそ話とはいえ、こうまで目の前で喋られては嫌でも聞こえてしまう。
それを琴里は「むっ」と口元を尖らせる。
「盗み聞きなんて相変わらず趣味が悪いわね。この出歯亀ドーピング・トム」
「盗み聞きって、目の前で喋られてちゃ……いやでも耳に入るだろうが」
琴里は俺の言葉を「はいはい」で片づけられ、
話題を変えるかのような素振りを見せる。
「それで、士道。次の訓練なんだけど」
「……はぁ、もうどうにでもしろ」
いくらどうにでもしろ、とは言ったが何も……
「五河くん? どうしたんですかぁ?」
(なんで岡峰先生なんだよー……!)
あいつら、訓練と見せかけて実は俺を遊んでいるんじゃねえだろうか……。
つーかこれって一歩間違えればアウトだよな。
「……あ、あの……せ、先生……?」
『―――落ち着きなさいな。これは訓練よ。しくじったって死にはしないわ』
いやいや、死にはしなくても社会的に抹消されるだろ……!
主に俺の自尊心がっ、周りからの視線が痛くなるだけじゃねえかっ。
俺は心の中で舌打ちしながら、琴里の声をしっかりと聴く。
これは今、俺の耳元に付けられているインカムの通信からの声だ。
しかもこのインカムにステルス機能が備わっているおかげなのか外部からの視線ではまず気づかれない。変なところで優れているよな……ラタトスクってのはよ。
「先生に何か御用ですかぁ?」
「……っ」
相手は見た目こそは俺よりも背が低いし、大人という雰囲気はしないが、この人は年上だし独身と聞く(殿町からの情報で)。
だが、今やらなくては琴里に何されるかわからねえし、まかり間違えないよう気をつけなくちゃな。
確か、ゲームだと女性に会ったときはまず服を褒めることだっけか?
「先生、その服……可愛いな」
「え……っ、あの……そ、そうですかぁ? 突然そう言われると照れちゃいますねぇ」
ちょっと赤くなった頬に岡峰は後頭部を掻きながら作り笑いをする。
え、と……確かこの後にするべきは……
「はい、似合ってます」
「ふふ、ありがとぉございます。お気に入りなんですよぉ」
えーと……
…………ダメだ思いつかん。
ゲームの出来事を思い出すが、どれもこの状況に一致していない。
それが仇となったのか、沈黙が続く。
「あ、あの……五河くん……?」
「……は、はい!」
『ほらボサッとしない。ちゃんと続けなきゃダメよ』
インカムから琴里の声が聞こえてくる。
……そう言われてもな。
「ええっと、用は終わりましたか……?」
岡峰が手首の時計をチラッと見るなり、俺に向かって首を傾げる。
時間もかなり取り過ぎたのかもな。しかし、ここでやめるって言っても、
琴里たちが納得いかないだろう。
『……仕方ない。シン、今から私のセリフをそのまま言ってみたまえ』
その時、令音の声色が聞こえ、俺はもうそれしか方法はないので「た、頼む」と口にする。どうせ後で断るんだから……何とかなるだろ。
「あの、先生」
俺の耳元から先ほど述べた言葉を先んじて喋り、
それを俺は続けて声に発する。
「何ですか?」
「俺、最近学校に行くのが凄く楽しいんです」
「そぉなんですか? それはいいことですねぇ」
「はい……でも、それは先生が担任になってくれたからなんです」
「え……っ?」
俺の言葉に岡峰が、瞳を大きく開かせながら驚く。
思ったより反応が薄いな……
令音の言葉に続けて口を動かした。
「俺は前から……先生に会った時から……」
「ぃやはは……駄目ですよぉ。気持ちは嬉しいですけど、私先生なんですからぁ」
出席簿を団扇代わりに自分に向けて扇ぎながら苦笑を浮かべる。
教師としての判断か……前世にいた教師陣だったら有無を言わさず喰いに掛かるだろうな。さもありなん、だな。
「本気なんだっ。先生、俺と―――結婚してくれ!」
……ピクリ。
ん? 今、岡峰が笑ったような…………
暫し沈黙が出来ると、俯いた岡峰が小さな声でごにょごにょと呟いている。
「……ほ ん き ですか?」
「へ……?」
な、なんだ……こ、このドス黒い感触は……!
あれだっ、白雪だ。白雪が黒雪になる、あの感じだ。
一瞬の変化に俺は戸惑いながらも、小さく頷くと岡峰は一歩踏み出し、
俺の袖を掴んできた……っ
う、うおっ……近っ!?
「本当ですかぁ? 五河くんが結婚できる年齢になったら、わたしもう三十歳超えちゃうんですよ!? それでもいいんですかっ? 両親に挨拶しに来てくれるんですか? 婿養子とか大丈夫ですか? 高校卒業したらうちの実家継いでくれるんですかっ? うふふふふふっ」
や、ヤバい……! 蘭豹とか比じゃないぞ……!
今のうちに対策しなくてはっ。
『……ふむ、少し効き過ぎたか』
「れ、令音さんっ、これはやりすぎだろ! 何してくれてんだ!」
岡峰には聞こえないよう、かつ令音に怒るような口調で訴える。
『……いや、独身・女性・二九歳にもなれば結婚というのは必殺呪文ダマンテに匹敵するそうだ。かつての同級生は次々と家庭を築き始め、両親からも『孫はまだかのぅ。孫を見せてくれなければ楽には死ねんのぅ』など言われ、三十路という領域に一歩踏み込む状況だったからね。……だが思ったよりも、効果的中だったな』
「おい、これをどうやって対処するんだよっ」
無責任な琴里と令音に若干俺は舌打ちしつつも、
「―――ねえ、五河くん、すこ~し時間いいですかぁ? まだ婚姻届をかける年齢ではないので、とりあえず血判状を作っておきましょうか。美術室から彫刻刀でも借りてきましょうねぇ。大丈夫ですよぉ……痛くないようにしますからねぇ。うふふふふ」
ちょ、血判所って掌を血みどろにして契約書だかに張り付けるっていうあれのことだよな……!? この人、白雪とかなめ、メーヤと同じタイプかよっ。
『士道、もう目的果たしたから適当に謝って逃げなさい。これ以上関わられると面倒だしね』
琴里の言葉に俺も賛同し、素早く岡峰教諭の手を離し、
謝罪の意を込めて口を開いた。
「す、すまん! 俺にはそんな覚悟はありませんでした……! なかったことにしてください!」
パァン! と猫だましで岡峰の目を瞑らせ、
その隙を使って俺は全速ダッシュで駆け出す。
「あ、あれっ……い、五河くんがいない!?」
彼女が目を開いた時には、遠山キンジこと五河士道はいなかった。
岡峰教諭から何とか逃げることに成功した俺なのだが、
耳元で琴里の笑い声が響く。
……あのやろー……腹を抱えて笑ってやがるな。
『いやー、個性的な先生ねぇ。士道』
「ふざけんなっ! 完全に俺を遊ん――――――」
その時、俺に何かむにゅんとした感触が俺の体に当たり、
共に衝撃が走って言葉が途切れる。
「うお……!?」
「…………」
何かがぶつかったことによって俺は後方に倒れ受け身をとるが、
目の前にいる人物までもが後ろに転んでしまった。
インカムにばっか意識してたから油断してたな。
「す、すまん、俺の不注意だ。お前、大丈夫か……?」
謝罪しながら起き上ると……
「な……っ!?」
俺が目にしたのは、純白な素材でできているだろう木綿下着。一見、普通に見えるが、見方によっては表現が違うのだ。
そう、例えばM字開脚とか……って、今それを前にしているしっ。
(白は普通だが……も、モロに見ちまったぞ……!?)
しかも、それを目にできたということはズボンでは見ることができないからおそらくはスカートだろう。スカートを履くのは女子生徒しかいない。
「問題ない」
「と、鳶一……!?」
や、やっぱり女子かっ。しかも俺の隣の席にいる折紙じゃねえか……!
折紙はシュタッと立ち上がったが、
「どうしたの」
「……い、いや、気にするな」
ヒス的にも今は危ない圏内に陥っている。
今は折紙に意識してはダメだ。押さえろ、遠山キンジぃ。
普通の下着如きで、俺は、ヒスったり、しない……!
「そう」
折紙はそう答えただけで、彼女はスタスタと歩いていく。
次の瞬間、俺の右耳から琴里の声が聞こえ出した。
『―――ちょうどいいわ士道。彼女でも訓練しておきましょう』
「ちょ、何言ってんだっ。ただでさえさっきも酷い目にあったというのにまだ懲りねえのかよ!」
『先生だけで訓練終わりじゃないのよ。それに、相手はちょうど同年代なんだし、データとして集めるには適してるわ。精霊を相手にするAST要員。かなり参考になるじゃない。見ていても彼女がみんなに言いふらすようなマネはしないタイプだと思うし』
『……まあ、安心したまえ。我々の方からも全力でサポートするつもりだ』
「お前らなぁ」
呆れてものが言えないものの、
また脅しに何かしらとされては困るしな。
仕方ない、と俺は溜息をつき……
「……鳶一」
「なに」
人形みたいな無垢な表情の折紙が、まるで待っていた……といいそうな表情でこちらに振り向く。それに俺は驚きつつも今度はしくじらないよう、と心掛けながらそのまま言葉をつづけた。
「鳶一……お前、あの時俺の名前を呼んでたよな。実はさ、俺もお前を知っていたんだ」
「そう」
かなり無理があるような気がするが……疑いの表情が見られないな。
「私も、知っていた」
……だろうな。数日前に言っていたし、
とりあえず知ったかぶりでも演技はしないとな。
「それでな。二年で同じクラスになれたのも嬉しいんだ。授業中お前をずっと見てたんだ」
って、これストーカーじゃねえか。しかも口説くセリフがヒステリアモードみたいでクッサイセリフだなぁ。
「そう」
返しに折紙はそう答えると、
「私も、見ていた」
え、マジで……? っていうぐらい驚いた。
確かに俺が言った言葉には悲観を覚えるが、折紙……お前、何してんの?
つーか見られているのに、気付かなかったぞ。
「本当か? まさかだとは思うが、こっそり放課後の教室とかで俺の体操着の匂いとか嗅いでいるんじゃないだろうな」
「なぜそれを……。気付かれないようにやってたのに」
「……マジかよ」
特に驚いたようなセリフを口にしたわけじゃなく、
ただ平然と答える折紙には正直驚きを隠せない。
というか、どこいった学年主席だったあの折紙さんは……
「まあ、知ったところでお前にどうこうしようって思わないが、なぜ俺の制服の匂いなんか……」
「……それは、士道に気があるから」
「……?」
気があるって、あれか……俺が精霊とASTを黙認しているからか?
誰かに喋らないよう、常に監視しつつも俺の情報を探っているとか、そういう類なのだろうか。それなら納得がいくな。
一応こいつもAST……陸自の構成員だし、
「五河士道。私からも話したいことがある、大切な事……」
「なんだ」
折紙は感情こそ露わにしないが、その瞳からは意思が感じられる。
理由はともかく、真剣な目だからよっぽど大切なことなんだろう。
俺はそれに耳を傾けた。
「士道、私と付き合って」
「付き合う……? あ、ああ、わかった」
「そう」
買い物とかショッピングとか、その付き合うのことだよな。
まあそれぐらいなから大丈夫か。
口説きに言っている俺だが、それに気付かない彼女の方は至って普通に接しに来ているのだから。別に俺に好意を持ってるとか、そんなんじゃないだろ。
「……まあ、男に二言はないからな。わかった、付き合ってやる」
「そう」
気付けば、折紙の表情はいつもとは何かが違う……
そう、何かが……だ。どこか雰囲気が緩やかになったというか、
ほんわかになったというか、何かが変わったという感じがする。
そんなに嬉しいのか?
そういう反応、感情をあまり出さなかった時のレキとそっくりだな。
『―――ひゅー、やるわね。士道』
そこに司令官モードの琴里の声が聞こえてきた。
……やるわね?
「なんのことだ?」
『あらあら? もしかして士道、気付いていないわけ?』
気づいていないというか、わからん。
琴里は何が言いたいんだ……?
今の話に疑問を浮かべる俺は後頭部を掻きながら考えてみるが、
やっぱりわからない。どういうことだ。
と、思っていた次の瞬間―――!
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――――!!
「!」
途方から高鳴る音が街全体に響かせるような警報が耳に入った。
(……空間震警報、てことは精霊が出現したってことか!)
そう考えていると、折紙が同時に―――
「急用ができた。また」
折紙はそれを最後に立ち去っていく。
たぶん、また精霊と戦いに行くのだろう。
「おい、これからどうしたらいい」
インカムに耳を傾け、話しかける俺は琴里からの指示を待った。
琴里の方も警報になってから粗方策を講じているはず。
『……そうね。出現予測地点は割り出したわ。そこに向かって頂戴。
……場所は……
更新遅れてしまい、申し訳ありません。あと十香も今回出す予定だったのですが、
出せませんでした……申し訳ないッス。
あとキンちゃんって、基本的に「受け」ですので口説くという描写が思うように書けなかったのがちょっと悔しいですね。それに口説くのはヒスキンですしね。
じ、次回こそ十香を出したいと思います!
メインヒロインまだー、現地妻まだー、とか言わないでね?
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