「・・・説明は以上だ。何か質問はあるか?」
その言葉で、俺は我に返った。さっきは本鈴ぎりぎりで教室に飛び込んだので、周りのメンバーを確かめる余裕すらなかった。何とか遅刻扱いにはならなかったみたいだが、やはり主人公は最後に登場するんだな。(中二病)
で、現在は初顔合わせとなるSHRの真っ最中である。え?色々飛ばしすぎじゃないかって?いやほら、ぶっちゃけ作者自身、この辺の描写はもう読み飽きてお腹いっぱいといいますか、誰が書いても同じと言いますか、つまりアレがアレでして・・・(ひとりごと)
「どうやら何も無いようだな。では、これでSHRを終了する」
ざわめく生徒たちを見渡すと、静かに告げる茶柱先生。てか質問もなにも、あまりに胡散臭くて聞きたいことだらけですぜ。学校パンフレットの謳い文句と照らし合わせたら、余裕で法令違反ばっかだし。そんな時、
どこか中学時代の恩師と似た空気を纏う担任教師へ、心の中で毒づく俺。もちろん口には出さない。すると、教室を出ようとしていた彼女が、なにかを思い出したように振り返った。ひゃっ?!まさか聞こえてた?!
「ああ、ひとつ言い忘れていた。君らが持ち込んだ私物のパソコンやタブレット、スマートフォンだが、本校を卒業または退学する日まで、通信機能は一切使えなくなるから、そのつもりでいろ」
一瞬の間を置いて、一段と騒がしくなる教室。
「えぇ?!マジかよ!」
「うそぉ・・・信じられない・・・」
ここに俺たちは完全に外界から遮断され、高度育成高等学校という名のデスゲームに閉じ込められたのである。(ソードアートオンライン ハチマン・ダンス)
3年間、外部との接触が禁止ということは事前に知らされていたが、まさか電話やメール、LINEまでダメとはな。ネットの閲覧はOKらしいが・・・ま、もともと俺のスマホは目覚まし機能ぐらいしか使ってなかったから、大して影響ないか・・・あれ、どうしたんだろう、目から汗が・・・
つまり今後の連絡手段は、さっき支給されたお仕着せのスマホだけ、というわけだ。てか、背面にデカデカと校章があしらわれたこのスマホ、エッチなサイトとか見たら学校にバレるんですかね?私、気になります!そこんとこ、ぜひとも誰か質問してくれ。(懇願)
「せ、先生!質問があるでござり・・・ます」
すると、まるで俺の声が聞こえていたかのように、ひとりのぽっちゃり眼鏡男子が挙手した。ま、まさか貴様、エスパーなのか?
「お前は・・・外村か。いいぞ、言ってみろ」
「オ、オンラインゲームは出来るのでござr・・・ますか?」
なるほど・・・そうきたでござるか。確かに、例えば今後3年間、艦これにログイン不可とか言われた日には、本気で自主退学を検討するまである。なにしろ、俺の卒業までサービスが存続している保証も無いしな。(轟沈)
「安心しろ。ニジカレでもアカセカでも、好きなだけやるといい。但し学業に支障が出ない範囲でな」
ぷっ・・・みんな、そこ絶対にツッコむなよ?!下手に触れたら入学式前に退学者が出るぞ!しかし、あんな雰囲気の茶柱先生でもゲーム画面の前だとデレるんだろうか・・・がはっ?!(Critical hit!)
てか、これでせっかくゲットした椎名と一之瀬(と坂柳)の連絡先も無意味になったのね。(号泣)
さ、さて、気を取り直して茶柱先生の話を纏めてみよう。彼女曰く・・・入学祝いに電子マネー10万円分進呈!これさえあれば、学校敷地内で買えないものは無し!そして毎月1日には自動チャージ!ヤッタネ♪
そしてこの仕組みをSシステムと呼ぶらしい。nanacoやSuicaも真っ青な電子決済サービスだ。しかも全寮制で、生活費は学校側が負担してくれるまである。つまり、3食昼寝付きで青春ラブコメしてれば、お小遣いまで貰えるわけだ。俺、ツインテールじゃなくてニートになります・・・
そう、もし高校3年間こんな暮らしをしていたら、エリートなんて育つわけがない。(真実)
いや待てよ?毎月ひとり10万円ってことは、ひとクラスあたり400万円、学年全体では1600万円が使われていることになる。毎月そんな多額の国費を投入するとか、さすがにおかしい・・・だからちょっと待て。入学初日に学校の運営費を気にする新入生の方が、よっぽどおかしいだろ。(正論)
ま、いずれにせよ、日本の未来を担う人材を育成するはずの進学校が、そんな激甘生活をさせてくれるわけがない。はしゃいでる連中は、揃いも揃ってアホばかりなのか?
10万円分のポイントに盛り上がる周囲を醒めた目で眺めながら、今後の方針を考える。先ずは生活態度に注意しつつ、ポイントは可能な限り節約して様子を見るか・・・
もちろん、この推測情報をクラスと共有する気はないし、あとでこっそり疑問点を職員室に聞きに行く、なんてスタンドプレイも無しだ。期待していた諸君、残念だったな。だって俺、捻くれて臆病で理屈っぽくて疑り深い自意識過剰なぼっちの八幡だぜ?あれ?自分で言ってるのに、何だか泣けてきた・・・
んで、もしもそんなアクティブな俺が居たとしたら、そいつはたぶん・・・
(ムダな溜め)
HACHIMANだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
茶柱先生が去り、騒がしくなるDクラスの教室。こっちはおとなしく、モブに徹するとしよう。どうせ、リア充どもが上手く立ち回ってくれるんだろうし。
「みんな、ちょっといいかな?僕らはこれから3年間、ともに過ごすことになる。だからいまのうちに、自己紹介しないか」
早速、建設的な提案をするイケメン。ほら、言った通りだろ?
「さんせ〜」
「私たち、まだお互い名前も知らないし」
賛同の声を受けて、イケメンが先陣を切る。
「じゃあ、先ずは僕からやらせてもらうよ。名前は平田洋介。趣味はサッカーで、部活動もサッカー部に入る予定なんだ。早くみんなと友達になりたいと思っているから、どうか気軽に洋介と呼んでほしい」
いきなりハードルを上げてくる平田。あれを上回る自己紹介なんて無理だろ。コミュ力抜群のイケメンサッカー少年とか、もう勝ったも同然じゃね?現に女子の大半は堕ちちゃったみたいだし。
正直、ぼっち&コミュ障にとっては大ピンチな状況だが、幸い俺の席は窓際の後ろから2番目。自己紹介の順番は最後の方になるはずだ。対策を立てる時間的余裕は十分あるだろう。
・・・とか思っていた時期もありました。
「じゃあ次は、窓側の列から順にお願いできるかな?」
ふぁ?!なん・・・だと?おい平田!そこは普通、廊下側からだろ!
「うん!じゃあ次は私だね。はじめまして。櫛田桔梗って言います。宜しくね。この学校にオナ中・・・ケホケホ!同じ中学の人は居ないから、早くみんなとお友達になりたいな」
平田の指名に、仮面少女が立ち上がってこれまた完璧な自己紹介。あまりに天使っぽくて、裏の顔が透けて見えるようだ。関わらんことだな。だが、アイツは人気者になるだろう。現に男子の大半は堕ちたみたいだしな。平田と櫛田のせいで、Dクラスは男女ともほぼ毎晩オナ中に・・・ゲーホゲホッ!は?俺?俺はグラドルの雫たん一筋だ!!(カミングアウト)
・・・などと、ひとり芝居をしてる場合じゃない。これでは直ぐに順番が回ってきてしまう。
一気に追い詰められた俺は、必死で自己紹介の内容を捻り出そうとしたが、焦れば焦るほど頭が真っ白に。い、いかん、こうなったらもう、ハチコーンガンダムに変形するしかねえっ!(ここで例のBGM)
「じゃあ、次は窓際の君」
・・・間に合わなかった。この短時間で角割れになるのは無理だったわ。で、このあとショボい自己紹介して俺の高校デビューが終わるんですね分かります。あと平田、『窓際の君』とか将来会社で窓際族確定みたいな呼び方しないで!いや、俺はまだ専業主夫を諦めてはいないぞ。
BGMが処刑用のアレに変わる。指名された俺は、おもむろに立ち上がり教卓へと歩き出した。は?ちょっと何してるんですか?
黒板の前に着くと、教室全体をゆっくりと見回す。さっきはドタバタで席に着いたから、クラスメートたちをじっくり観察するのはこれが初めてだ。
しかしホント曲者揃いだな、このクラス。机の上に足を乗せている金髪野郎は論外にしても、見るからに不良の赤髪君に、プライドが高そうな黒髪ロング美人さんがふたりも!あれ、絶対双子か従姉妹同士だろ。てか、ずっと睨まれてるんですけど、俺、なんかした・・・?
ってか演技がガチすぎるだろ、雪ノ下・・・おっと、いかんいかん、俺たちは面識がない設定だったな。てへぺろ♪
あとは、俺の後ろの席に座る茶髪イケメン・・・
ほぅ、あんなのも居るんだな。一見、とらえどころのない無表情を装っているが、アイツは危険だ。実力は俺と互角だろう。くくくっ・・・少しは楽しめそうだぜ。まぁ、頼むから・・・
俺を失望させないでくれよ?
ぷっ!(俺の笑い)
中二病特有の自意識過剰な思考を垂れ流したハチは、やっと自己紹介に入った。もう、どうにでもしてくれ。
「千葉県出身の比企谷HACHIMANだ。宜しく頼む。己の実力には自信があるから、勉学、スポーツ、生徒会活動など、あらゆる面でクラスを引っ張ってゆくつもりだ。趣味はラノベやアニメの設定資料集、薄い本などを読み込むことと、プリキュアシリーズのフィギュア集め。特技は家事全般にネトゲの廃課金RTAだ。基本インドア派の捻くれぼっちだが、ゲームのリアイベとコミケのためなら全国どこへでも遠征する。尤も、この学校に在学中はオンラインでの参加になるがな。日常生活ではもちろんのこと、ネット上で遭遇した際も、どうか気軽に絡んで来てほしい。あと、俺が不愉快に感じる行為に及んだヤツには、男女を問わず容赦ない制裁を加えるから、覚えておいてくれ」
・・・あとが控えてるのにひとりで長々と語ってんじゃねぇよ!このKY野郎!ツッコむ以前に趣味と特技バラされた時点で詰んだわ。たぶんクラス中ドン引きだろうし、さっきのぽっちゃり体型眼鏡君が熱い視線を向けてきてるし。あ、俺
「あ、有り難う、比企谷君。ところで君が不愉快に感じる行為って、具体的にはどんなことなんだい?」
平田のイケメンフォローに、僅かな間を置いて答えるハチ。
「俺をいじめようとすることだ」
ぷぷっ!
それ、クラス全員に向けてドヤ顔で言うことか?何気に、いじめられっ子でしたってカミングアウトしてるようなもんだろ。馬鹿かお前?ここだけは、ハチじゃなくて八幡なのかしらん?
教室に漂う微妙な空気。そりゃ第一声で『俺をいじめたら泣くぞ』宣言されても、反応に困るよな・・・(ちょっと違う)
「い、いじめだなんて!絶対にそんなことはさせないっ!」
すると、なぜか異様に語気を強める平田。どうやらヤツにも事情があるみたいだが、それよりも、びくりと肩を跳ねさせた金髪ポニーテールに俺は注意を引かれていた。ギャルっぽい外見に似合わぬ、怯えたようなその反応。なるほど、アイツたぶん、中学でいじめられてたな・・・
得意の人間観察力でそう推測するが、俺には関係ない話だ。訳知り顔で他人を評価するなんて、どこぞのリア充どもに任せておけばいい・・・
ふっ・・・アイツは駒として使えそうだな・・・(ハチ)
だからそういう発想やめてっ!(八幡)
「それともうひとつ。みんな、天井を見てくれ」
俺の心の叫びを無視して話を進めるハチ。もう完全に人格入れ替わってません?これ。
「な、なんだあれ?!」
「か、監視カメラ?!」
「お手本のように完璧な配置の盗撮用カメラでござるよっ!!これならターゲットのプライバシーを丸裸にできるでござるっ!」
ハチの期待通りに驚愕してくれるクラスメートたち。いや、もちろん俺もとっくに気付いてたけどな。あと若干1名、シャレにならない
「ああ、見ての通りだ。防犯目的にしてはあまりにも多過ぎる監視カメラ。廊下や階段にもあったぞ。この事実と茶柱先生の説明を踏まえれば、来月のポイント支給額は恐らく・・・」
その間にも俺の思考になど関係なく、Sシステムの核心を突くハチ。だが次の瞬間、やつの言葉は突然の罵声によって遮られたのである・・・
次回第5話『炸裂!ゆきのん砲!』
奉仕部部長の本気を見るのです!!乞うご期待??(閲覧注意・・・)