黒歴史確定の自己紹介が終わると、ちょうど入学式を知らせる校内放送が流れた。教室には身の置き場がないので、早めに体育館へ行っとくか・・・
ステルスヒッキーを発動して、そっと脱出しようとしたその時。
「ハチ君、一緒に入学式へ行きませんか」
不意に教室の入り口が開く。みんなの視線を集めて入って来たのは、この学校での友人第1号、椎名ひよりだった。あれ?お友達契約は解除されたはずだが、どうしたんだ?
「で、その後は図書館に行きましょう。マゼラアタックの件、まだ決着はついていませんから。あと、改めて連絡先の交換もお願いしますね」
そう言いながら、俺の右手を引く天然ひよりさん。いやだから、あれは戦車だって!
「早速名前呼び?!」
「さらりと連絡先をゲットした?!」
「あの野郎、ちょっとばかりイケメンだからって・・・!」
「うそ・・・彼のこと、狙ってたのに・・・」
「銀髪系ガノタ美少女でござる!彼女は拙者の母になってくれたかもしれない女性でござるよっ?!」
山内や池といった、思春期真っ盛りの男子から注がれる負の視線が怖い。女子全般からの目も・・・あと、ひとりヤバいのが居た気がするけど気のせいだろ。外村、戯言はやめろ!
「おや、抜け駆けはいけませんね、椎名さん」
そこへ現れたのは(お友達)2号さん坂柳有栖。あ、深い意味は無いからね!
「ハチ君、一緒に入学式へ行きましょう。もちろん、連絡先の再交換もお願いします」
奇しくも椎名とほぼ同じセリフで微笑むと、俺の左手を取る有栖さん。これぞホントの両手に花。
「なっ?!比企谷のヤツ、早くも二股かよ?!」
「そんな・・・アイツに寄生して守ってもらおうと思ってたのに・・・」
自分で寄生とか言わんだろ、普通。
そしてトドメの一之瀬帆波。
「比企谷君、良ければ一緒に入学式行こう・・・ってあれ?お邪魔だったかな?にゃはは・・・あ、そうだ!私も連絡先再登録してもらえるかな?」
とか言いながら、俺の傍に立つ帆波さん。Why Japanese JK?
「なっ!更に美少女がっ?!」
「クソッ!初日から全部持って行きやがって!」
「ふはははは!銀髪ガールにリトルガール、そしてストロベリーガールか。実に見ものだねぇ」
あらぬ誤解を招きかねない状況に、俺はへばりついてくる坂柳を諭したのだが・・・それはむしろ、最悪の結果を招いた。
「あー、その、悪いんだが離れてくれるか?」
「ぐすん・・・わたくしを散々弄んだあと『お前だけでしゅ』と枕元で噛みながら囁いてくれたあの言葉は、うそだったのですか?」
「それこそ、うそだろ・・・」
「レディコミも真っ青の鬼畜展開・・・」
「ヤらせはせん!ヤらせはせんぞー!!」
悲しげに泣き真似をする坂柳に、騒然とするクラスメートたち。くそっ!
こんな時に限って、頼みのハチは現れない。このままじゃ俺の高校生活が、始まる前に終わる。仕方あるまい。さっきのあれ、やってみよう。(見切り発車)
「あまり調子に乗っていると・・・」
いったん言葉を切り、殺気を込めてトドメを刺す。
「潰すぞ?」
「ぷっ!」
わ、笑った?!笑ったな?父さんにも笑われたことないのに!
「も、申し訳ありません。あなたにそんなギャグセンスがあるとは・・・クスッ」
あれれ?おかしいな?ハチと同じことやったつもりだったんだけど。ていうか、殺気ってどうやって出すものなの?やる気スイッチならぬ、殺る気スイッチがあるとか?やだそれ怖い。誤作動したらヤバくね?
「では、入学式後に図書館で」
「いえ、ハチ君は私とカフェに」
「えっと、私も一緒にいいかな?」
見えない火花散る女子トークと、そのど真ん中でポリゴンの破片と化した俺。
「わかりました、では私たち全員でハチ君のお部屋に集まるのはいかがでしょう?」
何がわかったのか、さっぱりわからん。
「はい。受けて立ちます」
「う、うん!私もそれで大丈夫だよ」
部屋の主が預かり知らぬところで、どんどん話が進んでゆく。え?俺のセリフはどうしたのかだって?この状況に割り込めるわけないだろ!
ふぅ・・・ようやく美少女オンエアバトルが終わったみたいだ。あとは一刻も早く体育館へ・・・
・・・とはいかなかった。
「あら?まだ居たの?ゴミ谷君」
「早く消えろと言ったはずだぞ、ヒキタニ!」
「女子と無理やり手なんか繋いでキモい!謝ってよ!」
帰ってきた3人組。ヲワタ・・・
「おや、あなた方は?」
静かに尋ねる坂柳有栖女史。あ、これ絶対激おこぷんぷん丸だ。
「あなたこそ誰かしら?ここは小学校ではないわよ」
「そうだよ!子供はお家に帰るし!」
「そこにいるヒキタニから、無理やり何か恥ずかしいことをされたんだね?お嬢ちゃん?」
次々と地雷を踏み抜く3バカさん。お前らはもう、死んでいる。あたたたたたたっ!終わったぁ!
「ふふふ・・・ハチ君、この方々はお知り合いですか?」
「いや、今日初めて会ったが・・・」
「わかりました」
あ、有栖さんの殺る気スイッチが入った。ポチっとな。
「そこの御三方、あまり調子に乗っていると・・・」
いったん言葉を切り、殺気を込めてとどめを刺す坂柳。
「潰しますよ?」
「ひゃっ?!」
「ひぃっ?!」
「ひゅうっ?!」
無様に腰を抜かしたゆきのん他2名。こりゃコイツら、入学式を待たずに退学かもな。ま、自業自得ってやつだ。
そう思いながら3人の傍らを通り過ぎた俺だったが、なぜだか一瞬、やけに辛そうな表情を見せた彼らの横顔が、しばらく頭から離れなかった・・・
てか、いまのシーン、
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「失礼します」
ノックをしてから、俺は静かに職員室の入り口を開けた。入学式までの僅かな空き時間を使って、ライバルたちを出し抜くためだ。ん?椎名たち?取り敢えず先に行っててもらったよ。さすがに、あのまま衆人環視の下で体育館まで移動するのは、俺のメンタルがもたないからな。
「1年Dクラスの比企谷ハチ・・・コホン!HACHIMANです。茶柱先生はいらっしゃいますでしょうか」
入学式へ人員を割いているためか、教職員の姿は疎らだった。これならゆっくり用件を果たせるだろう・・・しかし俺が入室した途端、明らかに空気が変わったな。やはり、ハチの
え?ああ、確かにさっき、職員室へ質問しに行くことはないって言ったな。あれは本当だ。ハチマンウソツカナイ。もうわかるだろ?そう、いまここに来たのはハチの判断だ。これから担任の女教師を言葉責めにして裸に・・・ゲホゲホ!じゃなくて質問攻めにして、Sシステムを裸にしてやろうって算段だ。
「えっと・・・サエちゃん?あれ?さっきまで居たはずなんだけど・・・」
そう言いながら出てきたのは、いまどき美人が自意識過剰を着て歩いているような、若い女性教師だった。
「それより君、かっこいいね。先生が同級生だったら、絶対放っておかないんだけどなぁ」
なぜか上目遣いでぐいぐい来る、あざとい女教師。生徒に対する距離感がおかしい。おまけにこっちのほっぺを、人差し指でつんつんし始める始末。あ、そう言えば、中学で俺が折本に告って振られたのを言いふらした女子どもって、まさしくこの先生みたいなタイプの娘ばっかだったな・・・
「ん?なんか失礼なこと考えてない?」
一見馬鹿っぽそうなのに、なぜか読心術に長けているところなんかもそっくりだ。
「私は星之宮知恵。1年Bクラスの担任で、サエちゃんとは下の名前で呼び合う仲なんだ。それで、比企谷君はどんな用なのかな?」
いたずらっぽく微笑みながらも、探りを入れてくる星之宮。やはり、これは下手に関わるべきではないな・・・
「いえ、ご不在ならまた後にします。有り難うございました」
が、会話を切り上げた俺の前に素早く回り込む星之宮。うぜぇ。
「あーん!もう!そんなに慌てなくてもいいじゃない。もう少し先生とお話しよ?」
並みの男子高校生なら、余裕で3回は轟沈してしまうほどの破壊力で、彼女は微笑んだ。無論、俺は勘違いなどしない。
「あの・・・星之宮先生?」
「チエって呼んで!」
ぷっ!
年齢的にも痛すぎるぞ、それ。コイツ、もうぶっ飛ばしちゃってもいい?そして遂に
「チエは欲求不満なのか?」
「へ?」
いきなり名前呼びのハードルを飛び越えた
「そんな無警戒な距離感だと、初心な男子高校生は勘違いで過ちを犯してしまうかも知れないぜ?」
お前のセリフがすでに過ちなんですけど!?
「まあ、チエほどの蠱惑的な女性が相手なら、むしろ男冥利に尽きるというものだが」
噴飯もののセリフを垂れ流しながら星之宮を抱き寄せ、僅かに乱れたその前髪を指先で整えてあげるハチ。彼女の顔は怒りのあまり表情が抜け落ち、真っ赤に染まっている。マズい。いくらなんでもやり過ぎだ。相手は国立高校の教師だぞ・・・?
「ぐぇ?!」
不意に頭へ衝撃が走り、視界に火花が散った。
「私の同期に何をしている、比企谷」
振り向けば、硬いクリップボードを手にした茶柱先生が立っていた。この時代に、マジすか?
「ぶったね・・・二度もぶった・・・親父にもぶたれたことないのに!!」
「一度しか、ぶってないが?」
ダメだこのひと。
「なんだ。サエは
ぶたれたショックでハチが壊れたらしい。
「なっ?!なぜそれを・・・」
てかビンゴなのかよっ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「間もなく入学式だ。こんなところで油を売ってないで、早く体育館へ行け」
比企谷を体育館へ向かわせたふたりの同期は、静かに睨み合う。
「決めた。サエちゃん、彼は私が・・・ケホケホ!うちのクラスが貰うから」
「ほざくなよ、チエ。ヤツは私の若いつばめ・・・ケホケホ!大事な生徒だ」
「まさかサエちゃん・・・
「なっ?!そ、そう言うチエはどうなんだっ?!」
「もちろん狙ってるよ?あれほどの子、今後出てくるかわからないし、ラストチャンスかも知れない。何なら今夜、合鍵作って突撃しちゃおうかな♪」
「させるかっ!私にとってもラストチャンスなんだ!何なら、ヤツの部屋の合鍵はここにあったりするぞ」
言いながら、見せびらかすようにカードキーを掲げる茶柱。もはや色々と手遅れである。
「なっ?!いつの間に・・・わかったよサエちゃん。なら3Pで手を打とうか」
「お前は実に愚かだな、チエ」
待て待て待て待て!!俺の守備範囲は16歳から25歳までだ!(大炎上謝罪会見待ったなし)
てか俺、肝心の質問、忘れてない?(またもや大爆発)
次回第7話『やはりこの学校の金銭感覚はまちがっている』
入学初日に数千万ポイントゲットだぜ・・・!そんなの二次小説でも無理ですから!あほらし。