入学式は終わった。このあとは、なぜか部屋に美少女たちが来ることが決定している。(理解不能)だから俺は、足早にコンビニへと向かっていた。おもてなしをするためだ。こちとら、伊達に専業主夫を夢見ちゃいない。渾身のフルコースをお見舞いしてやる。腕が鳴るぜ。こらそこ!コンビニメニューじゃ手抜きでしょ、とか言わない!
まあ、取り敢えずはタピオカミルクティーとプレミアムロールケーキを買っときゃ大丈夫だろ。え?専業主夫の意地はどうしたのかだって?バカ野郎!家事の基本は手抜きという名の効率化なんだよ!それに、まだ寮の部屋すら確認していないのに、どうやって手料理をしろと?(支離滅裂)
とにかくあまり時間がない。速攻で買い物を済ませるとするか・・・
「ククク・・・お前、比企谷だな?」
しかし、行く手を阻む雑魚3匹。ヤンキーと水色髪の美少女に、今朝のグラサン黒人さん。凄い組み合わせだな。
「俺は龍園翔。1年Cクラスの王だ」
「
「・・・」
そこ笑ってくださいお願いしますごめんなさい!この微妙な空気に耐えられないから!
ていうかお前も新入生?俺と同い年とかウソだろ?その外見、明らかに留年してるでしょ?龍園だけに。ふははははっ!
「で、俺になんか用・・・すか?」
半分敬語になっちゃったよ。(泣)てかコイツ、いじめっ子の匂いがぷんぷんしてるんですけど。ここは無難に躱して、戦略的撤退あるのみ。別名、しっぽを巻いて逃げるとも言う。
「クククッ・・・てめぇはなぜだか、俺と同じ匂いがするんだよ」
え?!あなた見かけによらずそういう嗜好のひとなの?素行不良の匂いフェチとか希少キャラじゃね?小町に厳しく言われて、身だしなみには気を付けているつもりなんだけど、匂いとか言われたら小学校時代のトラウマが・・・
(回想シーンスタート)
うわっこいつ、ヒキガエル菌が臭うぞ!やだー!先生!ヒキガヤ君が臭いでーす。あははは!
ほんと、子供って残酷。(号泣)
(回想シーン終了)
「・・・き、貴様ぁ!!私に思い出させたなぁっ?!!」
やったぞ小町。お兄ちゃん、殺る気スイッチが入ったよ。
「なっ?!!や、やっぱてめぇ、只者じゃねえな?!アルベルト!殺れ!」
「Yes,Boss. I hate handsome boys. So I crush you.」(わかったナリ。ワガハイ、イケメンは嫌いナリ。だからお前をぶっ飛ばすナリ)
言うが早いか、見た目に似合わぬスピードで迫りくる巨体。待て待て待て!暴力反対!話せばわかる!人類みな兄弟!あとなんで、同時通訳がコロ助風ナリ?
しかし残念だが、俺はあくまでラブコメ仕様のヘタレ主人公。ソードスキルも戦略級魔法も無い、ただの千葉県民なのである・・・
「なんてな」
6割の力でハチの放った回し蹴りがヤツの顔面を捉え、その巨体がぐらついた。ふぅ、待ちかねたぞ
「コ、コノヤロウッ!!」
怒り狂ったアルベルトが吠える。てか、そこは日本語かい!
あれからハチは、ドラゴンボーイと愉快な仲間たち相手に無双。え?戦闘シーン?さぁ、知らない娘ですね。さて、あとは一刻も早くコンビニ経由で寮に帰って、恐怖の女子会に備えるとしよう。だが・・・
ちょっとちょっと!どこ行くんですかハチ君?コンビニは反対方向ですよ?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
で、どうしてこうなった?
「ふぅ・・・まぁ、こんなものか」
プライベートポイントを賭けて、空手部、柔道部、合気道部などなど体育会系の部活を連破した俺は、その足でゲーム系の文化部も制覇した。てかハチさん半端ねぇ。表すなら、まさしく『蹂躙』のひとこと。一度でいいから経験してみたかった中二病シチュエーションだが、実際目の当たりにするとドン引きだ。傍から見れば、やったのは俺なんだけどね。
フィジカルコンタクトのある競技は、試合開始と同時にほぼ瞬殺。痛いのは嫌なので攻撃力に極振りしたのは間違っていない。完全パクリの深夜アニメが出来上がってしまったが、実際に痛い思いをするのは俺なので、これは素直に助かった。てか、この文化系体型(どんな身体だよ?)で、まともに猛者揃いの上級生とやりあってたら、命がいくつあっても足りないまである。
で、文化部の方も似たりよったりの結果だ。囲碁将棋、百人一首にオセロ、トランプ、人生ゲーム、ウマ娘、艦これ・・・ルールの穴を突き、瞬時に慎重かつ大胆に最適な一手を導き出す思考回路。もはや人間業とは思えない。え?単なる運ゲーやクソゲーが混じってるって?はて、なんのことでしょう?
頭脳明晰スポーツ万能高身長眼鏡イケメンとか、これがチートというものなのか?超絶ハイスペックすぎて、もはや原形を留めていないまである。こんな八幡、初めて見たわ。てか、これってもう俺である必要性ないだろ。ぶっちゃけ、キリトでもカミやんでもスバルくんでも良くね?(暴論)
で、いまや俺の端末画面には、既に数千万を超える多額のポイントが表示されている。まさか本当に賭博紛いの荒稼ぎが出来るとは。ふはははははっ!(トランス状態)
って、大丈夫か?この学校。(素面)先輩たちの金銭感覚ヤバいだろ。一度に百万単位で賭けるとか、あのままだと確実に卒業後は身を持ち崩すぜ?
つか、これだけポイントがあれば、人生余裕で勝ち組だ。ちょろイン。先ずは手始めにマッカンの自販機を導入して、定期テストでは念のため、苦手な理数系科目は点数を事前購入してクリアするとしよう。あと、面倒な学校行事は全てパスできる権利や、遅刻欠席をチャラにする権利なんかも買っておくか・・・
あれれ?なんだかまっしぐらに負け組へと転げ落ちて行く気がするぞ?やはり俺のポイントの使い方はまちがっている?(あたりまえ)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして、ようやく辿り着いたセブンイレブン高度育成高校店。なるほど・・・ここが
中へ入ると、思わぬ知り合いに遭遇した。相変わらず無表情な綾小路だ。その隣にいる澄まし顔の黒髪美少女は、自己紹介を嫌って退席したメンバーのひとり。早速お買い物デートとは、ひょっとしてあのふたり、あんな顔してむっつりスケベなのか?(ブーメラン)
そんなお二人様の会話が漏れ聞こえてくる。
「なあ、お互い名前ぐらい知っておいた方がいいだろ」
「拒否しても構わないかしら」
なるほど・・・悲しいな、綾小路。まあ頑張れ。所詮は他人事だ。俺は陰でエールを送って離脱を図ったのだが、またしてもが・・・
「おい、やめておけ。そんなツンデレ、構うだけ時間の無駄だ。むしろ放置プレイしてやりゃ、すぐにあちらから名乗ってくるさ」
だからなんでそうなる?
「え?そ、そうなのか?」
急な横槍に驚く綾小路だったが、その割にヤツの表情筋はほとんど動かない。
「あなた、誰?まさか綾小路君の友達・・・なんて居るわけなかったわね、ごめんなさい」
一方、さらりと毒を吐くツンデレさん。例の雪乃ちゃん?とそっくりな容姿だが、当然、名前は分からない。
「で、もう一度聞くけど、あなたは?いい加減、名前くらい明らかにすべきじゃないかしら」
「拒否しても構わないかしら」
「ぷっ」
いま、綾小路が笑った?
堀北へ同じセリフで意趣返しをした俺が、予想外の出来事に目を向けていると、
「まさかとは思うのだけれど、いまのそれ、私の口真似じゃないわよね?」
「逆に尋ねるが、それ以外の何に聞こえた?」
「・・・」
冷たい怒気を放ちながら、こちらを睨みつけるツン。一度目を閉じ、こめかみに指を当ててから・・・デレた。
「はぁ、堀北鈴音よ・・・教室ではむやみに話しかけないでちょうだい・・・って、あれ?」
嫌々ながら自己紹介した彼女が見たのは、コンビニから出てゆく男子ふたりの後ろ姿だった。言葉通り、ハチは放置プレイに出たのである。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!私は堀北鈴音よ!聞いてるの?!」
「ほらな?」
「ああ、本当に比企谷の言う通りになったな」
大声で名乗りながら追いかけてくる堀北を見て、俺と綾小路は密かに目を見交わしたのだった。
次回第8話『やはり俺がチェスをするのはまちがっている』
ふふふ・・・今夜は帰りませんよ、ハチ君?
それを言うなら帰しませんよ、じゃね?