「ふぅ・・・」
俺は泥のような眠りから覚めた。目に映るのは、知ってる天井だ。いやはや、なかなか良い蹴りだったぜ、鈴音さん。
しかしなぁ・・・
そう、今しがた見た夢の内容に、思わず頭を抱える。中二病はとっくに卒業したつもりだったんだが・・・
心身両面のチートに痛すぎる言動。あれってたぶん『よう実』の世界線だよな?俺が綾小路より強いとか、何してくれてんのよ?それと、執拗に罵倒してきた黒髪ロングとメロンさんは誰?まさか新生活初日から黒歴史更新確定なの?
あとなんで俺、名前がローマ字表記になってたのかしらん?二つ名願望なんてものは、総武中の体育倉庫裏に置いてきたはずなんだが。これじゃもう、材木座を笑えねぇ・・・
いやそもそも、3年間小町と会えなくなる全寮制高校なんかに、わざわざ好き好んで行くわけ無いだろ!第1話でも書いたが、大事なことだから2回言ったぜ?
ふと気付けば、カーテンの外はうっすらと明るくなっていた。はぁ、仕方ない。そろそろ起きるか・・・
なぜか既にぐったりしつつ、身体を起こそうとしたのだが・・・
「お兄ちゃ〜ん!朝だよ!」
「ぐぇ?!」
Critical hit!
お、俺の
ノックもせずに入って来た小町が、そのまま飛び乗ってきたのだ。起き抜けの男の子は色々大変なんだから、優しくしなきゃダメ!絶対!
「入学式だから起こしに来て上げたんだよ!あ!いまの小町的に超ポイント高・・・お、お兄ちゃん?」
早朝から元気いっぱいな小町が、不意に語尾を濁して俺を凝視する。
「え?ど、どうしたの・・・?しっかりして!はわわわ・・・お、お兄ちゃんが大変なのです!」
ヴァイタルパートに直撃を受け、朦朧とした意識の先で、電ちゃん化した小町が狼狽えている。なにそれ超かわいいんですけど。いますぐケッコンして毎日秘書艦やって下さいお願いしますごめんなさい憲兵さんコイツです!
「そ、そうだ!こういうのって、舐めれば治るんだよね?ちちんぷいぷい、痛いの痛いの、飛んでけ〜!」ペロッ
「ひゃい♥」
艦息轟沈!LOST!
ふぅ・・・
やはり相変わらず朝から俺の兄妹ラブコメはまちがっている、らしい。(BPO案件)
真新しい総武高校の制服に袖を通し、早めに家を出る。え?今朝の出来事?あれは全国のお兄ちゃんが抱く儚い夢だ。俺が妹で暴発するなんてあるわけがない。俺妹。
スマホで時間を確認する。これなら余裕で間に合うだろう。見ろ、俺の高校デビューを飾るに相応しい青空だ。腐り眼は眼鏡で隠したし、ヲタク関連の話題なら負ける気がしない。それに文系科目は成績上位者に食い込めるはず。あれ?これってすでに勝ち組じゃね?さっきのが逆夢であることを願いながら、俺はペダルを漕ぐ足に力を込めるのだった・・・
ん?あのワンコ、リード切れてる・・・って反対車線から黒塗りセダンがっ?!
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている・・・
次回第10話『舞台裏(前編)』
そして全てが白日の下に・・・?