過労スタッフとサーヴァント(病み)の日常 作:かゆ、うま2世
ドラコー√
最近、縁起でも無い夢を見た
『はははっ…』
『待っ……ドラコー…やめっ』
ドラコーに押し倒され、力では敵わず、何故か愛歌に連絡もできずに、そのまま最後まで……
「ま、結局夢は夢だしね〜」
どうでもいいか、と結論付けて仕事をする
「ドラコー、居る?」
「当然であろう」
最近、こうしてドラコーを呼ぶ事が多くなった。目的は単純、書類を運んでもらったり、飲み物を取ってきてもらったり
……パシッてる自覚はある。でも仕方ないじゃん!仕事が終わらないんだもん!!
「ドラコー、おいで」
「……ん」
まぁ、今回の用件はそのどちらでも無い
ドラコーを膝の上に乗せて思いっきり抱き締める
「あー…最高」
これで向こう3時間は頑張れる。てかこれが無いと頑張れない
少ししてドラコーを離す。ちょっと不満そうだったけど無視した。まだ仕事終わってないし
するとドラコーは部屋を出る扉に向かい始めた。珍しい事だ、俺が頼み事でもしない限りドラコーは基本俺の部屋から出ない
「すまぬな、今日は野暮用がある」
「へー……」
「そうだ、一つ忠告をしておこう」
ドラコーは顔をこちらに向けて、表情を変えないまま言い放った
「用心する事だ。仲間が、いつまでもそうであるとは限らぬからな」
それだけ言って出て行った。正直よくわからないし意味不明だけど、何か大事な事を言われた気がしたので頭の片隅に置いておく事にしよう
「これ持ってかなきゃ……」
途中、書類を持っていく用事が出来たので、部屋を出て廊下を歩く
「……なんか」
違和感。あまりに静かすぎる。普段廊下を歩いたりしたら母さんしかり色んな人が声をかけて来るくらいには騒がしいのがここカルデアだ
それが今は誰も居ない
「気のせい……じゃないよな」
そう断じるにはあまりにも不自然過ぎた
「誰かいるー?」
大声を出してみる。返事は無い。ただ静寂だけが返ってくるだけ
「っ……!」
後ろに気配を感じて振り返る。そこには──
「牛若丸…?」
牛若丸が立っていた。いつもの彼女はどちらかというと元気な方だが、今の彼女は何か違う
直感が告げていた
アレは─俺が知っている牛若丸じゃない
「………」
本能的に後ずさる。それを追うように、牛若丸はゆっくりと近付いてくる。そして──
「ッ───!?」
悪寒を頼りに首を傾けると、俺のすぐ横を刀が通り抜けた。それは確実に俺を殺す為の一撃だった
「クソッ!」
背を向けて走り出す。とにかく逃げるしかない。相手はサーヴァントだ、まともにやり合って勝てるわけがない
ただ──逃げ切れるとも言い切れない
「っ!?何で…!」
愛歌とも連絡が取れない。牛若丸が迫って来る。憎悪を宿すわけでも無い、俺を殺す事が仕事であるかのような、そんな無機質な瞳で
「いっ───!?」
右足の膝に強烈な痛みを感じ、無様に床に倒れ込む。頑丈であるが故に膝から下が無くなる事は無かったが、当分歩く事は出来ないだろう
そして、今の一撃で確信した。ここはカルデアじゃない。それっぽいだけの別の何処かだ
「やば……」
俺は頑丈だが、頑丈なだけ。殺されれば普通に死ぬ。つまり、このままだと殺されるって事だ
………それは、嫌だ
「……ドラコー」
無意識のうちに口から漏れた声。今になるまで気づかなかった。こんなに、彼女に入れ込んでいたなんて
「──死にたく、ない」
クソみたいな人生を送って、ようやくまともな生活を手に入れて、それで──
「死なせぬよ」
後ろから、血が噴き出す音と、肉を切り裂く音が聞こえて来た。恐る恐る振り向くと、そこにいたのは
「用心しろと言ったであろう」
返り血を浴びたまま、微笑む彼女だった
「……ドラコー」
「立てるか?」
差し出された手を握り、彼女の体を支えにして立ち上がる
「どうなってるんだ?」
「余が貴様をここに連れてきたのだ」
「………は?」
今、何て───
「カルデアでもない……地球ですらないかもしれない何処か。そこに再現したのだ、カルデアをな」
何を言っているのか全く理解できない
ドラコーは何を言って──
「喜ばぬか。念願が叶ったのだぞ?」
「いや、念願って…」
「貴様はもう余がいなければ生きていけぬ。あの女共も、もはや不要であろう?」
……あぁ、そういう事なのか?この世界は、俺の為だけに用意された物だったとでも言うつもりか?
「……馬鹿なこと言ってないで帰してくれ。敵に狙われて、愛歌に連絡もできないような場所にいられるか」
「……あぁ、あれか。あれも余が作った。貴様を傷つける為にな。そうすれば、貴様は余に助けを求める。必要ないとは思うが、ダメ押しとしてな」
「っ……」
絶句するしかなかった。まさか、本当に、全部こいつが……
「……馬鹿馬鹿しい、早く帰せ。飼い主の言う事ぐらいちゃんと聞け」
「飼い主……あの関係も悪くはなかったぞ?だが…もうそれは終わりだ。貴様はもう余の物。ここで永遠に暮らすのだ。他の者など忘れろ」
「…誰がなるか」
「余から離れて、どうする?余が作った英霊は一人だけではない。貴様ではすぐに死ぬぞ」
「………」
事実だ。今、ドラコーから離れるのは得策じゃない。説得も難しいだろうし、選択肢は死ぬかドラコーのものになるか……
「……何が不満だ?」
成長した姿へと変化したドラコーが、顔をほぼゼロ距離まで寄せて聞いてくる。正直かなり心臓に悪いので止めて欲しい。君顔がいいんだ
「仕事に追われる事もない。命の危険もない。欲は全て余が満たそう。何故拒む必要がある?」
「…………」
……確かに魅力的かも
いやいや、ダメダメ
「……その目」
「っ…」
顎に手を添えられ、強引に上を向かされる。ドラコーの紅玉のような瞳には、俺だけが写っていた
「……よかろう」
「んっ───!?」
気づいた時には床に押し倒され、唇を奪われていた。舌が入って来て、口内を蹂躙していく
「んっ、んんっ……」
長い時間、それこそ永遠とも思える時間が過ぎて、ようやく解放された
「はぁ……はぁ……」
頭がぼーっとしている。思考がまとまらない。目の前の女の事しか考えられない
「二度とそんな目ができないようにしてやる。余に狂え。余が、貴様に狂ったように」
「待っ……ドラコー…やめっ」
そうして、余りにも魅力的な獣に
俺の心は、堕ちた