過労スタッフとサーヴァント(病み)の日常   作:かゆ、うま2世

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修羅場

「──楽しかったかい?」

 

 

底冷えするような声が、俺に跨る女から発せられる。唇が触れそうなほどに顔を近づけ、光はなく、されど根底にある愛が伝わる眼差しを向ける

 

 

「僕以外と見る夢はどうだった?あぁ、答えなくていいよ。最悪だったに決まってるんだし。僕が聞きたいのは何でよりによってアイツと夢を見ていたのかってことさ」

「いや、ちょっと、オベロン?」

 

 

状況を未だに飲み込めない俺を置いてけぼりにして、彼女は勝手に言葉を紡ぐ。

 

 

「夢が見たいなら、僕に言えば良かっただろ?それとも何かな、やっぱりあの女の方がいいってわけ?」

「おーい?オベロン?俺のターンはいつ?」

「……ゆっくりやろうと思ってたけど、そういう事なら仕方ないよね」

 

 

あの時のように、オベロンは服のボタンの一番下に指をかけ、一つ一つ丁寧に外していく

……オベロンさん!?

 

 

「あの時は断られちゃったけど、今度は断らせないからね。大丈夫、気持ちよくしてあげるから」

「後が怖すぎるからやらねーよ!」

 

 

咄嗟にオベロンの手を掴んで止める。危ない、胸が見えるところだった。今もお腹見えてて結構心臓に悪いけど。

 

 

「……無駄だよ」

 

 

オベロンは小さく呟いて、指をパチンと鳴らす

たったそれだけで、俺の体はピクリとも動かなくなった

 

 

「なに、を…」

「金縛りって知ってる?」

「何で…そんな」

「何でって……いつも僕に寝かされてるのを忘れたのかい?」

 

 

意識はハッキリしているのに体が動かないという初めての感覚に戸惑う俺を見下ろしながら、オベロンは妖艶に笑う

 

 

「さぁ…一緒に溶け合おうか」

 

 

そう言って、胸のボタンに手を掛けようとして────

 

 

「っ……!」

「うぇっ!?」

 

 

オベロンは唐突に俺を胸に抱き寄せた

突然の謎行動に困惑するが、原因はすぐに分かった

 

 

「僕のマスターから離れなよ、害虫」

 

 

姿勢の関係上姿は見えないが、声でわかる。マーリンだ。

 

 

「クソ女が何の用?悪いけどお取り込み中でね、さっさと出ていってくれるかな?」

「僕のマスターにその汚い手で触るのをやめるなら喜んで出て行くとも。マスターと一緒にね。ほら、マスターも嫌がってる」

 

 

二人の顔は見えないが、おそらく今にも火花が散りそうなくらい睨み合っているだろう。怖すぎるっぴ

割と焦りながらも、体が動かないので俺にできることはない。そんな事を考えていると、俺の体が意思に反して動き、オベロンの体に手を回して強く抱きしめた。

多分犯人はオベロン

 

 

「あぁ…悪いけど、マスターが離してくれなくてね。君の出る幕はないと思うな」

「………」

 

 

マーリンがキレてる!

顔見えないけど絶対キレてる!

 

 

「ふぅん、そう。ま、気付けないようじゃ君はマスターに相応しくないかな」

「……!?」

 

マーリンがそう話した直後、頭に当たる柔らかい感触が増えた。同時に体も動くようになり、オベロンの体に回していた手が離れていく。恐らくマーリンが得意の幻術を使ったんだろう

そんな事は割とどうでも良くて、重要なのは───オベロンとマーリンに文字通り挟まれたという事である

これが本当のサンドウィッチマン

ちょっと何言ってるかわかんない

 

 

「……離しなよ」

「虫よりも、花の方がいいんじゃない?」

 

 

んなこと言ってる場合じゃねぇ!

互いに弱くない力で俺を引っ張り合ってるものだから割と痛い

あと頭に当たる感触がだいぶ幸せな事になってきた

 

 

「そんなに強く引っ張ったらマスターが痛がるだろ?早く離しなよ」

「離すべきは君の方だろ?怖い怖い、虫は力が強いからね。マスターも痛がるだろうし」

「………」

「………」

 

 

オベロンが力を更に込める。負けじとマーリンも腕に力を入れた。このままだとマジで頭千切れるかもしれない

あっでも柔らかいナリィ…

 

 

「……こうなったら、マスターに決めてもらおうじゃないか」

「いいね、それ。マスター、どっちを選ぶんだい?」

「嘘やろ?ここで俺に振るの?」

 

 

どうやってこの状況を切り抜けるか。片方を選ぶ事は許されない。仮に選んだらもう片方がどんな行動に出るか想像すらできない。どちらも選ばなかったらそれはそれで大変な事になる気がする

仕方ない、賭けに出るぜ!

 

 

「……どっちもじゃ、ダメ?」

「ダメに決まってるだろう?」

「ダメじゃないか、ちゃんと選ばないと」

 

 

ダメだった

しゃあない、最終手段だ

 

 

「二人ともやめろ」

「できないね、ちゃんと選んでもらうまで」

「そこだけは同意見だ」

「……それは」

 

 

こういう態度は慣れないが、これが現状を打破する唯一の方法だ

 

 

「俺の言う事が聞けないってことか?」

「っ…」

「う……」

「わかったら大人しくしててくれ。お前達が争う必要は無いんだよ。面倒事が増える」

 

 

よし!!!手が離れた!!勝ったッ!第3部完!

頭が解放されたので、そのままベッドに倒れ込む。あー疲れた…

 

 

「……それでこそだよ。マスター」

「…珍しく話が合うね」

「はい?」

 

 

寝転がった俺の両サイドにはオベロンとマーリンがいる。これどういう状況?

 

 

「争わなければいいんだろう?」

「なら、これが最適解だ」

「えぇ……」

 

 

さっきまでバチバチにやりあってた二人が速攻手を組んでる。俺の取り合いしてたんじゃ……

 

 

「僕達のせいで疲れただろうし、お詫びとして……ね?マスター」

「うん、うん」

 

 

オベロンが妖艶な笑みを浮かべながら、マーリンは普段見せないような満面の笑顔を見せながら、それぞれ顔を近づけてくる

 

 

「あーむっ」

「んんっ!?」

 

 

マーリンに耳を甘噛みされた。ぞわりとした感覚に思わず声が出る。それを見ていたオベロンは不服そうに頬を膨らませた

 

「僕も忘れないでほしいな」

「おいっ…」

 

 

オベロンは足を絡めてきて、体を密着させてきた。彼女の豊満な胸と、肉付きのいい太ももが押し付けられる。そして、甘い香りが鼻腔をくすぐる。ヤバい、これはかなりクるものがある

 

 

「…俺は寝るからな」

 

 

色々と限界なので、寝たふりでもいいので大人しくする事にする。下手に動いたらもっと酷いことになりそうだし……

 

 

「じゃ、僕達も好きにさせてもらおうかな」

 

 

結局、その日は二人に一日中密着されて過ごした

 

……何も無かったよ?

………本当に何も無かったからな!!!

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