過労スタッフとサーヴァント(病み)の日常   作:かゆ、うま2世

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楽園の妖精と朝ごはん

「うめぇ…うめぇよ……」

「それならよかったです」

 

 

 

メリュジーヌの事で少し修羅場になった後、起こしにきた第三再臨のキャストリアに背負われて食堂に向かった。いい匂いした

現在、人が殆どいない食堂でキャストリアに見守られながら朝食を食べている。時刻としては10時頃。朝食を食べるか食べないか微妙な時間だったが、キャストリアが作ってくれたとのことで食べることにしたのだ

 

 

「時間を気にせずに食事を味わえるってこんなに素晴らしいことやったんやな……」

「……我が命、何よりもまず自分の体を第一に考えてください」

「我が命ってなんだよ。俺が死んだら死ぬの?」

「そうですが何か?」

「お前自分の立場わかってる?」

 

 

他愛ない…他愛ない?話をしながら朝食を口に運んでいく。美味い。本当に美味い。食事とはこうあるべきだ。胃袋を掴まれるとはまさにこの事だろう。

ていうか、仕事で手を酷使した反動で手がすげえ震える。すごい食べづらい

 

 

「あっ……」

 

 

持っていたパンが横から伸びてきた手に奪われた。横を見ると、どこか呆れたような表情のキャストリアと目が合った。その手には奪ったパンが握られている

 

 

「あーん、というやつです、我が命」

「は?」

 

 

食べるのに手こずっている俺を見かねての行動だったようだ。ありがたくないと言えば嘘になる。でも面倒事を生みかねない

そう思って奪われたパンを奪い返そうとするも、俺の手は空を切るばかり

 

 

「……嫌、でしょうか」

 

 

しゅんとした様子で見つめてくるキャストリア。そんな顔をされて断れる男がいるだろうか。少なくとも俺は無理だ。それに、正直ちょっとやってみたかった。まあいいか、と諦めて口を開く

 

 

「では…あーん」

「あー……」

 

 

………………気まずさMAXである。なんだこれ。恥ずかしい。すごく恥ずかしい。だがしかし!俺はやり遂げたぞ!!

 

 

「………」

 

 

恐る恐るキャストリアに視線を向けてみると、予想とは裏腹に驚くような表情をしていた

 

 

「……我が命、その舌の傷は?」

 

 

まずいことになりました

舌の傷に関しては十中八九メリュジーヌに付けられたものなのだが、それがバレるとまずい。だが嘘は通じない。

 

 

「いや……メリュジーヌに……」

「メリュジーヌが何を?」

「……キス、された時に……噛まれた」

「は?」

「ヒンッ」

 

 

その碧眼に光はなく、ただ冷たい視線だけが俺を貫く。ハイライトオフ、見慣れたものである

 

 

「なるほど……メリュジーヌが……」

 

 

声音だけでわかるほどの怒り。それはもう凄まじく怖い。だって目が笑ってないもの

その様子に顔を引き攣らせていると、無言で俺の頬に手が添えられ、反応する間もなく顔を近づけられる

 

 

「ちょっ、まっ───」

 

 

ちゅっ 唇に触れた柔らかい感触。視界いっぱいに広がるキャストリアの顔。数秒経ってようやく自分がされていることを理解できた。本日二度目のキスである

 

「ふぁ……んぅ……」

 

 

キャストリアを離すために手を使おうとするが、頬に添えられていた筈のキャストリアの手がいつのまにか俺の手首を掴んでいた

 

 

「はぁ…んむっ……」

 

 

ガタンと音を立てて椅子が倒れるのと同時に、俺の体はキャストリアによって食堂の床に押し倒される。俺に覆い被さるようにして見下ろしていた

 

 

「……立場がわかっていないのは、貴方の方です」

 

 

その言葉を最後に、再び口を塞がれる。今度は触れるだけではなく、貪るような激しいものだった

口内をキャストリアの舌が無遠慮に蹂躙していく。歯茎の裏まで舐め取られ、唾液を流し込まれる。まるで獣のような接吻だった

 

 

「ぷはぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

長いようで短い時間が過ぎ去り、やっと解放された頃には息絶え絶えになっていた

 

 

「……言ったでしょう、我が命、と。貴方は文字通り、私の命なんです。貴方が死ねば私も死にます。あぁ、もちろん、世界を滅ぼしてから。貴方のいない世界なんて、何の価値もないのですから。それとも……今すぐ私と共に来てくれますか?」

 

 

そう言って微笑んだキャストリアの目からは狂気的な光が垣間見えた気がした。その笑顔に思わずゾクリとする。恐怖ではない。ある種の美しさを感じたのだ

思わずビビって顔を引き攣らせていると、キャストリアは顔を赤らめて若干過呼吸になりながら、普段とは全く違うどこか嗜虐的とも言える笑みを浮かべた

 

 

「……やっぱり、わかってない」

 

 

そう言って、またもやゆっくりと顔を近づけてくる

落ち着け、考えろ

こんな所を他の奴らに見られたら修羅場確定。俺を巡ってカルデア内で内戦が勃発する。そうなったらオベロンに助けてもらお

ではなく、俺の今やるべきことはこの状況を打破すること。具体的には、キャストリアを止めることだ

……ええい、ままよ!

 

 

「ん、むっ──!?」

 

 

顔を動かして逆にこちらからキスをする。不意打ち成功。キャストリアの目が驚きに見開かれる。すぐに唇を離し、キャストリアの顔を見つめる。顔は真っ赤に染まっており、目には謎のぐるぐるマークが浮かんでいる

 

 

「わ、我が命……?」

 

 

呂律の回っていないキャストリアの声を聞き流し、耳元で囁くように告げる

 

 

「……退いて、くれるか?」

「ふぁい……」

 

 

蕩けた表情で返事をしたキャストリアは、いそいそと俺の上から退いた後、幸せそうな顔で倒れた椅子を起こして座り直した

勝った……

がしかし、油断は禁物。朝食は済ませたのだし、さっさと食堂を去るとしよう。

 

 

「え、へへ、我が命、我が命、我が命……」

「こわー……」

 

 

トリップしているアルトリアを横目に、そそくさと食堂を後にした

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