過労スタッフとサーヴァント(病み)の日常   作:かゆ、うま2世

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飲酒(酒呑童子)

「酒呑ちゃ〜ん。酒飲もー!」

「あら旦那はん。うちの部屋に来るなんて珍しいなぁ」

 

 

俺が向かった先は酒呑童子の所だった。気分だ気分。伊吹童子の所に向かう未来もあったかもしれないが、それはまた別の機会にしよう

 

 

「そんで?何飲むん?」

「酒呑ちゃんセレクトでよろ〜」

「あら、ええん?」

「酒呑ちゃんが選んだ奴のが美味しいし」

「ふぅん。そない言うなら持ってくるわ」

 

 

そう言い残して、彼女は部屋の奥に消えた

 

 

「……すげぇなぁ」

 

 

俺の部屋とは違い、ここは完全に和室。以前ギルガメッシュの所に行った時にも思ったが、サーヴァント一人一人に出身地に合わせた部屋が作られているのはすごいと思う。作ったの俺だけど

関係ないけどギルガメッシュに会った時にはびっくりしたものだ。カルデアに来る前に冬木で見たやたら綺麗な女性と全く同じ見た目をしていたからな、きっと聖杯戦争でも起きていたのだろう

それでいうならラスプーチンやアムール、エリセにシトナイ、イシュタルとエレちゃんにカーマに……と数え出したらキリが無いぐらいに初めて会った時びっくりしたサーヴァントは多い。何で職場に外の知り合いが居るんだよ

 

 

「──誰の事、考えとるん?」

「ピッ」

 

 

普段の甘い声よりも数段低いトーンの声が耳元で聞こえてきたせいで変な悲鳴が出た

 

 

「あはっ、なんやその声」

「そんな事されたら誰でもビビるって……」

 

 

ケラケラ笑う彼女を見て、俺はほっと胸を撫で下ろす。声のトーン程怒ってはいないようだ

 

 

「んで、日本酒?」

「うん、日本酒」

 

 

彼女の手にはお猪口が二つ握られていた

 

 

「ささ、飲みましょか」

「おっけー、んじゃ乾杯」

「かんぱい」

 

 

ぐいっとお酒を喉に流し込む。やっぱり美味し……何だこれ、変な味がする。何というか、鉄っぽい……

 

 

「……酒呑ちゃん」

「どした?」

「どしたじゃないよ、血なんか入れないの。これ酒呑ちゃんの血でしょ?」

「あら、よく気付きはったねぇ」

「変なもの入れるんじゃないよまったく……まぁいいや、このまま飲も」

 

 

そう言ってまたお酒を胃の中に流し込んだ。酒としては変な味だが、こういうものだと考えればそう悪い味でもない

 

 

「え、飲むん?そのまま?」

「入れたのお前なのに何で驚いてんだよ」

 

 

酔いが回ってきたのか少しだけ頭がぽやっとしてきた気がする。まぁいいや、飲も

 

 

「相変わらず弱いんやね」

「うっせ」

 

 

俺はどうにも酒に弱いらしい。ストゼロとか飲んだら終わる自信があるぞ

 

 

「あー…酔ってきた、酒うめぇ」

「飲みすぎたら二日酔いなるよ?」

「そうなったら有給取る……いや待てよ、本当に取れるのか?」

「身体は大事にせんとあかんよ?」

「はーい…」

 

 

酒を飲む手が止まらない。血入りの酒が妙に美味い。どんどん酔いが回って頭がぼーっとしてくる

 

 

「あ…酒無くなった……酒くれぇ」

「ほんなら、次これ飲んでみる?」

 

 

酒呑ちゃんはどこからともなく瓢箪を取り出した。中身は恐らく酒呑ちゃんがいつも持ってる盃に入っているものと同じ。要するに宝具に使ってるあれだろう

 

 

「え?大丈夫それ」

「まだ唯の美味い酒やから安心して」

「んじゃ飲む」

「あ、ちょっと待ちい──」

 

 

俺は瓢箪を受け取り、そのまま直接口をつけて飲んだ

 

 

「美味っ!なにこれ美味い!」

 

 

酒呑ちゃんと酒を飲んだ事は初めてではないが、この酒を飲んだのは今回が初めてだ。これは癖になる味をしている

ふと酒呑ちゃんを見ると、何やら頬が赤くなっていた

 

 

「酒呑ちゃん?どうかした?」

「……別にぃ?」

 

 

変と言えば変だが、酒が美味いのでどうでもいい事にした。もっと飲もうとしたら、酒呑ちゃんに止められてしまった

それにしても最近仕事に追われて酒を飲んだのは久しぶりだ。最後に飲んだのは確か──

 

 

「……景虎ちゃんと飲んだ時か」

「………」

 

 

あれ、なんか寒くなったような気がする。心なしか酒呑ちゃんの顔も怖いし、もしかして口に出てた?

 

 

「…これ、もっと飲みたい?」

「うん、めっちゃ飲みたい」

「そっかぁ」

 

 

酒呑ちゃんが俺の目の前まで来て、何かを企んでいる様な顔で微笑む。そして、瓢箪に入った酒を口に含み──

 

 

「もう読めたぞ最近こんな事ばっかりだったからな!」

 

 

思い切り顔を逸らして回避──

 

 

「ちょっ!?」

「んふっ」

 

 

したと思っていた時期が私にもありました。普通に体掴まれて押し倒された

 

 

「酒はダミーか……やられた」

「気付いとった癖によう言うわ」

「何のことやらっ──っ!?」

 

 

唐突に指を咥えるようにして舐められた。びっくりして声が出そうになるが、ギリギリ出なかった

というかさっきからちょいちょい甘噛みされてる。痛くはないけど、なんかこう、ゾワってする

 

 

「…怖くないん?」

「何で?」

「ウチがちょっとでも強く噛んだら──ぶちん、やで?」

「…酒呑ちゃん、そんな事しないでしょ?」

 

 

彼女は優しい。少なくとも俺に対しては。こうして酒に付き合ってくれるし、なんだかんだ世話を焼いてくれる。彼女が俺に対して牙を向けるなんてあり得ないのだ、多分

 

 

「……今の、ずるいわぁ」

 

 

そう言って、酒呑ちゃんはゆっくりと口を離した。俺も起き上がり、全てはリセットされた、さぁ、酒の続きだ

 

 

「ん?」

 

 

聞き違いじゃなければ、俺の耳に何かの金具の音が届いた。ベルトのアレに似た音だ

音の方を見ると、そこに居たのは酒呑ちゃん。その手には、ペット用の首輪が握られていた

 

 

「……」

「どないしたん?」

「いや……何で首輪……?」

「ほな、これ持って?」

 

 

そう言って差し出されたのは首輪の紐

 

 

「いや、え?なんとなくやろうとしてる事はわかるから持ちたくないんだけど」

「持って?」

「ハイ」

 

 

逆らえなかった。俺は弱い

食堂のアーチャーのご飯の味を思い出しながら現実逃避していると、酒呑ちゃんが自分の首に首輪をつけた

まるで飼い犬と飼い主。俺が握るリードの先には、首輪を嵌めた酒呑ちゃんがいた

 

 

「……ウチ、これからずーっとこれ付けとくさかい、一緒の時は握っといてな?」

「あー……どうしよ」

 

 

酒呑ちゃんは首輪をトントンと叩きながら言葉を紡ぐ

 

 

「旦那はんに飼われてる以上…逆らう訳にはいかへんなぁ」

 

 

酒呑ちゃんはリードを引っ張って俺の体制を崩すと、わざと俺に押し倒されるような姿勢をとった

 

 

「……ウチ、何されてまうんやろ」

 

 

着物をはだけさせ、艶めかしい肌色を見せつけてくる。甘い声に、これ以上ないほどのお膳立て

 

 

「……わかってないな」

「……?」

 

 

俺の言葉に酒呑ちゃんは純粋な疑問を浮かべていた。いや、わかっている。この状況は間違いなくそういう流れだし、彼女の魅力は充分すぎる程に理解していた。俺の状況がもうちょっと違ったなら間違いなく襲ってた

 

 

「奴らは全てを知ってるんだ。お前の首輪を俺が握った事も、何故か知っている」

「………」

 

 

酒呑ちゃんの表情から余裕が消える

 

 

「取り敢えず……生き延びる事を最優先にしよう、お互いに」

 

 

瞬間、部屋のドアが吹き飛んだ

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