過労スタッフとサーヴァント(病み)の日常   作:かゆ、うま2世

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花のお姉さん

……あれ?俺は…

 

 

「……はっ!?」

 

 

あ、あの後どうなった!?俺は伊吹とどうなった!?

あれ?そもそも俺が酒を飲んだ相手は伊吹だっただろうか。考えてみれば酒呑ちゃんな気がしないでもない

というか、そもそも酒を飲んだかどうかすら怪しくなってきた。バレンタインのチョコを無理して全部食ってヤバかったのをトラロックに助けてもらってから寝たような気もする

お、俺は……俺は一体……!

 

 

「落ち着きなよ、マスター」

 

 

……今のは誰の声だ?

そもそもだ、俺は今どこにいる?

一旦落ち着いて周囲を見渡す。綺麗な花畑が広がっており、後頭部には柔らかい感触……

なるほどなるほど、いいシチュエーションだ、素晴らしいなマーリン

 

 

「……おはよ、マーリン。ここは夢?」

「おはようマスター。その通りだよ」

 

 

かの有名なグランドクソ女ことマーリンは、恐らくアヴァロンを模したと思われる空間で俺のことを膝枕してくれていたらしい。嬉しいね

 

 

「で、何で俺は夢に?」

「お姉さんも暇でね、こうやってマスターにちょっかいをかけるぐらいしかやる事がないのさ」

「やーい暇人クソニート」

「うわぁ、何も言い返せない」

 

 

マーリンが凹んでいる間に起き上がろうとすると、彼女はそれを阻止してきた。マーリンに抗議の視線を送ろうとするが、無言の圧力に負けて引き続き彼女の太腿の上に頭を乗せる羽目になった

ここに来る前に俺が何をしたのかは結局分からずじまいだが、夢の中ぐらいはゆっくりしようと息を吐く

それに、マーリンの膝枕はいい

掻き乱されていた精神を落ち着かせ、息を吐いて脱力───

 

 

「………!」

 

 

できなかった

真上を向いた俺の目に映ったのは、マーリンの顔ではなく胸だった

マーリンは結構ある。ランサーのアルトリアやオベロン程ではないが、割と大きめである

直視できなくなって、無言で視線を花畑の方へと向ける

 

 

「…おや、ふふふ。ちょっとサービスし過ぎたかな?」

 

 

バレている

なら無視するしかねぇ!

 

 

「まあまあそう恥ずかしがらずに。男の子だろう?もっと堂々と見てくれてもいいんだよ?何なら触ってくれてもいいし、もっと先の事だって……」

「……うるせ」

「ふふふ、可愛い反応してくれるじゃないか」

 

 

顔を赤くしているであろう俺を見て楽しんでいるようだ。勝てる気がしない

かと言ってこのまま揶揄われ続けるのも気に入らない。さて、どうするべきか───

 

 

「あ……?」

「………」

 

 

今、確かに夢が揺れた。軽い地震のような感覚だ。マーリンが望めば夢の中で地震を起こすこともできるだろうが、そんな無意味なことをするとは考えにくい

 

 

「……品のないノックだね。夢の中にまで干渉してくるとは」

「マーリン?」

「大丈夫、何も心配はいらないとも。怖いなら、お姉さんが抱きしめてあげようか?」

「結構です」

 

 

とりあえず、今の地震について考えよう

マーリンは"干渉"と言った。つまり何者かの意思によって夢の世界に影響が出たということ

夢に関わる力を持つ知り合いはいる。ついでに、そいつはマーリンの事が大嫌いだ

犯人候補は一人だけ

 

 

「……オベロンか」

「マスター?」

 

 

あかん、やらかした。俺に学習能力はない

 

 

「何で僕以外の名前が出てくるんだい?」

 

 

案の定、マーリンはご立腹だ。胸ぐらを掴まれて地面に叩きつけられ、マーリンが俺の上に乗る形になる

状況はまずいが、一つ言える事があるならば

……顔がいい

 

 

「ここは僕と君の夢だよ?僕は君の事以外考えないし、君は僕の事以外考える必要はない」

「重いなお前」

「ここまで僕を壊したのは他でもない君だろう?」

 

 

マーリンは妖艶な笑みを浮かべ、俺の手を掴み自分の胸に押し付けた 彼女の心臓の鼓動が伝わってくる

 

 

「心配しなくていいよ。二人で、ただ甘い時を過ごすだけさ」

 

 

そう言ってマーリンはゆっくりと服を脱ぎ始めた。だがいい、ギリギリだったが助かった

マーリンにバレないように地面を軽く指で叩く

 

 

「時間切れだよ、マーリン」

「……っ!?」

 

 

空間にヒビが入っていき、やがて粉々になって消えていく。その光景を見たマーリンは舌打ちをして呟いた

 

 

「……ちょっと、話をする必要がありそうかな」

 

 

その言葉を最後に、夢は終わりを迎えた

 

 

 

─────────────────

 

 

 

「んあ……」

 

 

ぼやけた目を擦りながら身体を起こ……せない。何かが俺に乗っているようで身動きが取れなかった

ぼやけた視界が晴れると、そこには──

 

 

「……おはよう、マスター」

 

 

目に光のないオベロンの顔があった

 

 


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