トーセンジョーダンがN県T村でちょっと過ごす話   作:鶴岡

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今度のゴールデンウイークイベント、トーセンジョーダン達がメインみたいですね。楽しみです。


第10話 燃え尽き症候群

 ないわー。あたしが勝ったホープフルステークスがオープンだったなんて、まじないわー。

 

「うん?……あー、その、なんだ。トーセンジョーダン、大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよぉー。しょせんあたしはオープンウマ娘ですよぉー」

 

 オープン勝ったくらいでチョーシ乗ってましたあー。

 やっぱあたしなんか切った方がトレーナーも良かったんじゃねー?

 

「あのなあ……。こっちじゃオープンとはいえ、そっちのウマ娘達はみんなG1レースだと思って、ガチのレースをしたんじゃないのか?」

 

「んー?……んー。まー、そりゃターフの上じゃみんなガチよ。ガチのガチ」

 

 なんつうの?ジュニアの締めのレースだし全部賭けてるっつうか、来年のクラシック上げてくんのはあたしだーみたいなのはあったよ。どいつもこいつもティアラのブエナビスタばっか話題にしててみんなピリピリしてたし。

 

「んで、おまえはG1の方のホープフルを勝ったトーセンジョーダンなんだろ?」

 

「うーん。そりゃあたしらの方じゃそうだけどさー」

 

「じゃあ、しゃっきり背伸ばしな。勝ったお前がそんなんじゃウマ娘達のホープフルまでオープンになっちまう」

 

「それは、勝者の責任的な?なんか授業でやったなー。……でも、あたしがどうあっても、あたし向こうに帰らないから関係なくない?」

 

 皐月賞走ってから寮にも帰らず逃げ出したんだもん。その内トレセンも退学になるだろうし、向こうに帰ってもやる事無いもんなー。

 

「は?おい一人、……どうなってんだ?」

 

「ええ、確かにバーンアウトシンドロームの兆候も見られますが、その原因も爪にあるため、まずは早期に割れた爪を治すべく2人へ紹介しに来たのです」

 

 なんかまた急によく分からん名前の病気が出て来たな?

 

「ねえK先生?バーン、えーっと、あれ?バームクーヘンシュークリーム?……って何?あたしの身体って他にもなんか悪い所あんの?」

 

「ああ、そうだ。大きな怪我をしたりして入院期間が長いとなりやすい病気なんだが、……君は村に来てからも、来る前と同じくらいの量を食べているだろう?」

 

「う、うん。イシおばあちゃんのご飯めちゃうまだし、……もしかして?食べ過ぎた?」

 

 だってトレセンの食堂並みに美味しいんだもん、そりゃ食べちゃうって。

 

「そうだ。足の爪が割れてあまり運動できていないにも関わらず食べる量がかなり多いからな。そろそろ食事量を調整すると共に、早く爪を治して運動量を戻していかないといけない」

 

「そっかー。……走らないとダメ?食べる量を減らすだけでどうにかならない?」

 

「食事量の調整だけではまた他の病気になるリスクがあるから勧められん。走る以外にも、リハビリの初期には爪への負荷を減らす為に水泳などを取り入れる事もあるだろうが、トーセンジョーダンはウマ娘として走る為に鍛えられた肉体が既に出来上がっている。ならば、走るのが1番良いだろう」

 

「えー。……うーん、そんじゃまたちょっとくらい走るかー」

 

 食べる量を減らすのも嫌だしさ?

 

「別に、走りたくない訳じゃないんだろ?」

 

「そりゃああたしだってウマ娘よ。走れるなら走りたいけど、その度にまた爪が割れて痛いのはもうごめんなんだわ」

 

 レースを走りたいってほどじゃないけど、やっぱターフを思いっきり走りたいってのはあるのよ。でもさ、あたしには無理じゃん。

 

「では、もう2度と割れない爪になったら?どうだ?」

 

「割れない爪?あたしに出来んの?そんなの、すっごく良いなって思うけど、……あたしには無理でしょ。もう割れるのがクセみたいなもんだし」

 

「いや、出来るとも。君の爪は2度と割れなくなる」

 

 そんなの、無理だと思ってたのに。

 

「……それ、ねえ。K先生、それ、信じて良いの?」

 

「もちろん、それが治すという事だからな」

 

 あー駄目だわ。あたしこのK先生のギュッっとした視線に弱いわ。

 

 でも、それでも、もっと早くK先生に爪を診て欲しかったなあ。

 そしたら皐月賞だって、他のレースだってもっと走れたかもしれないのに。

 

「そもそも、君の爪の割れ癖はテーピングの多用によって血の巡りが悪くなっていたからだ」

 

「うん、そんなの村でも言ってたね」

 

「だからその血の巡りを良くすれば、これから生える君の爪は二度と割れないほど強くなる。寺井に来てもらったのはそのためだ」

 

「なるほど、ネオジムヤグ(Nd:YAG)レーザーを手配してくれなんて何に使うのかと思ったらそういう事だったのね」

 

「Nd:YAGレーザー?ああ、この前おまえさんとこのクリニックから届いてた機材がそれか。水虫の治療でもすんのか?」

 

「んー惜しいわァ大垣教授。確かにNd:YAGレーザーにはレーザーリネイルっていう水虫の治療法があるけど、今回利用するのはその副作用の方。レーザー照射により発生する熱で血行を促進して爪の強度や伸びる速度を高める事が出来るのよ」

 

 えっと?えーっと?なんかネオジオングレーザーってのが凄いっぽい?

 やっぱ医者の話はよくわかんねーわ。

 

「なるほど。それを使えば爪は強くなり、治療期間が短縮できるから運動機能の低下も極限できるんだな」

 

「えーっと、じゃあ今日はそのネオジオングレーザーとかいうのをやりにここに来た。ってこと?」

 

「ああ。……フフッ、そうだ。それとトーセンジョーダンの身体の精密検査もだな。レーザーによる治療と共に、村の診療所では出来なかった細かい検査をしていく」

 

 あれ?なんであたし今K先生に笑われたん?

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