トーセンジョーダンがN県T村でちょっと過ごす話   作:鶴岡

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第11話 ドーナツとジェラート

 これから細かい検査をするって言われて検査着を着せられ連れられて来た部屋にあったのは、白くてでかいドーナツみたいな機械だった。

 

「これさあ、もしかしてあのドーナツみたいなのにあたしの身体を通すやつ?狭いのはちょっと嫌なんだけどー」

 

「ああ、これからやるMRIはそういう検査だ。狭いのは駄目か?」

 

「うーん、ダメってほどじゃないけど、狭いのはみんな苦手じゃん?」

 

「ツルマルツヨシもMRIは慣れるまで怖がってたな。まああん時はそもそもウマ娘の身体に使っていい検査が分からず俺らの方も怖くて大変だったんだぞ。あとそうだ、この検査は機械が結構うるさいからな、耳は目一杯絞ってこの頭部用ネット包帯で押さえとけ」

 

「えー、狭いのにうるさいの?嫌だなー」

 

 言われた通りにウマ耳を絞って、渡された網みたいな帽子を被って押さえつけるけども。

 

「うーん、耳がムズムズするー」

 

「それじゃ、その台に仰向けに寝てしばらくじっとしててくれ」

 

「はーい」

 

 

 

「うげー。まだ耳がゴワゴワするんだけどー」

 

 あの狭くてうるさいドーナツの検査が終わって、しばらく休憩だって大垣教授の部屋に戻って来たけど、もうあたしの身体は絶不調。しかも次の検査は注射で血を取るって言ってるしまじつらたん。

 

「まあ、ウマ娘にMRIはきついよなあ。でも、今にちょっとしたご褒美って奴を持って来てもらってるぜ」

 

「ごほーび?」

 

 なんだろうと思ってたら部屋のドアがノックされて、なんかオールバックでメガネの不機嫌そうないかつい顔した白衣の男がクーラーボックスを持って入って来た。

 

「紹介しよう。帝都大学病院(ウチ)の感染制御室で室長をやっている丹波だ。俺やKAZUYAと共にツルマルツヨシを治療した仲間でもある」

 

「丹波です。……そちらが今回の、ツルマルツヨシと同じ世界から来たというウマ娘か?」

 

 うわー、ちょっとマジで目線が怖いんだけど。

 

「トーセンジョーダンです。えーっと、……よろしくお願いします?」

 

「……ふん。大垣、検疫はやったのか?」

 

「いんや、これからだ。なんなら丹波、これからの血液検査も含めておまえに任せようと思ってたところだ」

 

 まじか、次の検査この人がやるのかよ。最悪じゃん。

 

「まあ、良いだろう。それと、これが注文のデザートだ」

 

 そう言って丹波の奴がクーラーボックスから取り出したのは、ちょっと前に見覚えがあった。

 

「あれ?これカライリヤの特濃にんじんジュースじゃん。だけど何か凍ってる?」

 

「乾煎屋の特濃にんじんジュースに生クリームを混ぜ、液体窒素で凍らせたジェラートだ。ツルマルツヨシの好物だったが、どうだ?」

 

「……これ、あたしが食べて良いの?」

 

「そうだ」

 

 やっぱり丹波って奴は不機嫌そうな仏頂面であたしの事を睨んでんだけど、でもその目はあたしの事を嫌っているていうか、この目はどっちかっていうとバレンタインデーでトレーナーにチョコを渡した直後のウマ娘がしてる目だ。

 

 てことはこれ作ったのコイツか。

 

「えっと、いただきます」

 

 恐る恐る、スプーンでひと口食べてみる。

 

「は、わあ!これ美味しい!めっちゃうまじゃん!?」

 

 やばい、マジでめちゃうまなんだけど。

 

「ねえK先生、大垣教授、乾煎屋にあんなジェラートあったかしら?」

 

「いえ、見覚えが無いですな」

 

「そりゃそうだ。あれは乾煎屋の特濃にんじんジュースと診療棟のコンビニで売ってる生クリームを、丹波が感染制御室のマグネチックスターラーと液体窒素で混ぜながら冷やして作ったもんだ。しかもジュースと生クリームの分量、それにマグネチックスターラーの設定にコツが要るのか美味く作れるのは丹波だけ。だから他じゃ食えんし、作ってくれるかどうかは丹波しだいだ」

 

「それはまた」

 

「凄いわね」

 

「つっても、その腕を磨いたのは丹波が医学生で吞んだくれてた頃、ツマミ代を浮かせるのに大学の実験器具で色々作ってたのが所以なんだがな」

 

「……それもまた」

 

「医学部ってどこも同じなのね」

 

「ふん。さて、人数分を作って持って来ていたのですが、……大垣()()の分はトーセンジョーダンさんのお代わりにしましょうか」

 

「え、もう1個食べて良いの!?やったー!」

 

 いやあ丹波のにんじんジェラートマジでうめーのにお代わりもあるとか最高かよ。

 

「それに味変で、この丸のまま凍らせたレモンを摺り下ろして振りかけるともっと美味しいぞ」

 

「まっじで!?……マジだ!もっとめちゃうまじゃん!」

 

 味変もあるとか丹波の奴、流行っての分かってんじゃん。ちょー最高じゃん。

 

「な、なあ丹波、冗談なんだよな?おまえの事だ、ちゃんと俺の分もあるんだよな?」

 

「……ふ、この私が先輩の分をナシにする訳が無いでしょう。ちゃんとありますとも」

 

 そんなやりとりの中であたしがジェラートを堪能してたら、それは来たんだ。

 

 ばたんと勢い良くドアが開かれて、白衣の若い男が入ってきて、その名前は出て来た。

 

「大垣教授!来客対応中の所、大変失礼しますッ!……緊急の来客で、例のメスです!ツルマルツヨシという女の子が、K先生のメスを持って来ました!」

 

「な、なんだって!?」

 

「……どうやら、大垣先輩の分はナシのようですな。こればかりは想定外でした」




ギャルウィークのピックアップでトーセンジョーダン引けました。
ええ、はい。これを書き始めた時はトーセンジョーダン来ていませんでした。

という事で次話でツルマルツヨシ登場です。
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